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馬酔木  作者: 川蝉
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二人のはじまり

 放課後、私は教室へと向かって人気のない廊下を歩いていた。


 日直ということで担任に頼まれた、授業で使うという資料運びの手伝いをしていたらこんな時間になってしまった。



 もう誰も残ってはいないだろうと思っていたが、教室を覗いたら中には生徒が一人いた。誰かと思えばクラスメートの黒崎である。


 よりにもよって黒崎かと私は自分の不運を嘆いた。黒崎といったら授業をよくサボったり、他校生ともしょっちゅう喧嘩をしている不良だ 。そして何よりその目つきがヤバいと騒がれている。「あの目は人一人殺っている目だ」とクラスの男子が言っていたが同意である 。つまりはそれくらい目つきが悪い。機嫌が良さそうな顔など同じクラスになったが一度も見たことは無かった。


 なんでまだこんな所にいるんだと思ったが、黒崎は動く様子はない。窓際の机の上に座って薄暗い窓の外の景色をじっと見ている。そしてここで重要なのは彼の座っている机が私のものだということだ。


 これは困った。机の横に掛けてある鞄を回収したいのに、これでは彼のすぐ近くまで行かなければならない。早く退いて欲しい。


 しかしいつまでも廊下から教室を覗いているわけにもいかない。黒崎に気づかれて怪しまれるだろうし、何より私は早く家に帰ってごろごろしたい。


 私は静かに教室に入り、自分の机に近づいた。近づいてきた私に気づくと、黒崎は私に視線を向けて眉間に皺を寄せた。相変わらず鋭すぎる目つきですね痺れます。だからちょっと睨まないで。


「なんだよ」


「いやそこの机の横に掛けてある鞄を取りに来ただけだから気にしないで」


 とりあえず急いで自分の用件を言うと、黒崎は興味を無くした様に私から視線を外した。しかし机の上から退いてくれる気はないらしい。まあ私は鞄を取れればそれでいいけど。


 そんなことを思いながら鞄を取ろうとして下を見た。


「え、なにこれ」


 私と黒崎がいるところを中心に床に魔法陣のようなものがあった。


 なんだこれは、もしかしたら黒崎が床に自分で描いたのだろうか。だとしたら意外な趣味である。まさかこんな時間に教室に残っていたのもこれをこっそり描きたかったからなのか。


 混乱した頭でいろいろ考えているうちにそれが突然光り出したので仰天した。おいおい黒崎、お前にこんな力があったなんて知らなかったよ。知りたくなかったよ。


「おい、どうなってんだ?!」


 黒崎は驚いたように座っていた机から立ち上がりこちらに怒鳴ってきた。どうやら黒崎にとってもこの現象は謎なようだ。計画通り、とかいう顔されたらどうしようかと思った。


「それは私がききたい!あと実はさっきから足がこの魔法陣にズブズブ沈み込んでいる感じがするんだけどどうしよう!」


「はァ?!」


 なに言ってんだコイツ、という声をされたが黒崎が私の足元を見るとそこには確かにすでに膝から下は魔法陣へと吸い込まれている私の足があったため、彼はぎょっとしていた。


「くそッ!とりあえずさっさと俺の手に掴まれ!」


 あ、この人意外といい人なのかもしれない。この時私はそう思った。控えめに言っても悪人面の彼が、こんな風に手をさしのべてくれるとは失礼だが思っていなかった。彼の言葉は嬉しかったけれど、その手を掴むことはできない。


「ありがとう、でももう無理だよ」


「なに言ってんだテメェ!」


「いやだって黒崎君ももう吸い込まれかけてるし」


 そう、私達二人の足元に魔法陣があるのだから、私が吸い込まれているということは、彼もまた同じ状況でも不思議ではなかった。黒崎は自分の足の様子に気づいていなかったのだろうか。


 足を動かそうとしても動かないから、この魔法陣から脱出することはできない。黒崎の手を掴んでももうどうにもならないだろう。吸い込まれた部分の感覚がないから気持ち悪い。そして魔法陣が発する光はどんどん強くなってきた。


「うるせえ!いいからこっちに掴まれって言ってんだ!」


「え」


 そしていきなり黒崎に腕を掴まれたのと同時に光は更に強くなり、私の視界は真っ白になって意識は途切れた。










「ようこそ我が国を救う救世主よ」



 その後気がついたら映画の撮影にでも使われそうな、まるで城の中のような場所に立っていた。私の隣には黒崎が立っていて、まだ私の腕を掴んだままだった。痛いのでそろそろ離して欲しい。


 足元にはあのよくわからない陣があって、その陣を取り囲むように白く輝く鎧を着た兵士達が立っており、私達に向けて剣を構えている。


 目の前の一段高い所にある玉座のようなところには、顔中に深い皺が刻まれた白髪のおじいさんが座っていた。明らかに日本人ではない顔立ちをしている。それなのに言葉がわかるのが変な気分だ。服装も派手でお金をかけている感じがしてなんか王様っぽい。そして先ほどの言葉を発したのもこの人だった。


 こちらのことを一切気にせずぺらぺらしゃべり続けているこの人の話を聞いていると、自分は王であり、隣国との戦争に負けそうだから、国に古くから伝わる召喚術を使って異世界から救世主を召喚したと言っていた。そしてこの場合の救世主とはどう考えてもその召喚陣とやらの上に立っている私達ということになる。おいおい、マジかよ。


 そんな異世界召喚なんてファンタジーみたいな展開あってたまるかと思ったが、自分に向けられる兵士達の剣を見ると信じるしかないような気になった。だって切れ味めちゃくちゃ良さそうで冗談には見えない。 下手になにかやらかしてわざわざ身をもってその切れ味を試したくはない。


「アンタらは俺らが戦えるように見えるのかよ。さっさと元の場所に帰せ」


 身長180センチくらいあってガタイもよく、鋭い目つきをしたお前なら十分戦えそうだけどな。


 相手の話を遮り、そう言いながら黒崎は私の腕をぐいっと掴んだまま一歩前へと進み出た。引きずられるように私も前に出る。頼むから早まるな黒崎。言ってることはまともで安心したけど、とりあえず敬語とか使ってくれ。


「安心しろ、救世主よ。歴代の救世主達は召喚されたことにより、今まで戦いを経験していなかった者でも、それまでとは比べものにならないほどの身体能力を手に入れ、鬼神の如き活躍をしたと記されている。なに、流石にいきなり戦場へ行けとは儂も言わん。まずはある程度我が軍で戦闘の訓練を受けてもらう」


 鷹揚に頷きながら王様はそう言った。いや安心できないから。要するに私達が戦うということは確定事項なんじゃないか。拒否されることを考えていないような態度に腹が立ってきた。


「比べものにならないほどの身体能力、ねえ…」


 隣でそう呟く声が聞こえたので、自分よりも高い位置にある黒崎の顔を見上げると、随分と楽しそうな顔をしていた。いつも不機嫌そうな顔しかしていなかったが、楽しそうな顔をしても何かあくどいことを考えてるようにしか見えないことがわかった。嫌な予感がする。


 そして黒崎は掴んでいた私の腕を離すと、囲んでいた兵士のうちの一人から剣を奪い、近くの兵士を蹴り飛ばすと、一気に王様へと距離を詰めて剣先をその喉元へと突き付けた。早技だ。それにしてもそんな簡単に突破されていいのか兵士達よ。あと蹴り飛ばされた兵士は5メートルは吹っ飛んでいた。


「なるほど、確かにこれはスゲェな」


 すごいのはお前のその度胸だよ。


 私達を囲んでいた兵士達は、突然召喚された一人が剣を奪って自分達を攻撃し、王様へと刃を向けたことに動揺していた。しかし、すぐに王様に危険を及ぼそうとしている黒崎の方へと走り出す。あれ、これ黒崎マズくないか?


 いくら喧嘩っ早くて目つきが悪い悪人面でも、同じ世界から来た唯一の人間が殺されてしまうのだけは絶対に嫌だ。それに意外といい人なのかもしれないってさっき思えたばかりなのだ。まあ、この一連の行動で彼がヤバい人だともよくわかったが。


 そして私もまだ自分の近くに待機していた兵士から剣を奪うと黒崎の方へと走り出した。




 ガキンッという鈍い金属音が辺りに響いた。


 とりあえず彼に振り下ろされようとしていた剣を受け止めたのだが、ふとこんな動きは本来自分にできるはずがないことに気づいた。


 後から走り出した私が追いついて振り下ろされた剣を受け止められるなんてありえない。剣なんて重い物を軽々と持っているところもおかしい。


 目の前の兵士は必死に剣に体重を乗せて、下から持ちこたえる私を潰そうとしているのだが、正直余裕で耐えられる力だった。


 試しに一気に力を込めて剣を上に払い上げると、相手の剣は弾き飛ばされた。その隙に相手の胴体に蹴りを入れるとその兵士は吹っ飛んでいった。


「…確かにこりゃすごいわ」


「だろ?」


 背後を振り返ると、黒崎が面白いものを見るようにニヤニヤしながらこちらを見ていた。


 こんな力が今の自分にはあることに、なんだかぞくぞくしてきた。体が勝手に作り替えられたようなものなのに、この力に興奮している。剣を握り、振り下ろされる剣を受け止めた時の感覚が忘れられない。なんだろうこの高揚感は。もっと感じたい、と思ってからあれ、と少し疑問に思った。自分はこんなにも好戦的な性格だっただろうか。しかしそんな疑問もこの興奮により、すぐに消えてしまった。まあいいや、とりあえず今の私の顔は黒崎と同じようにニヤニヤした笑みを浮かべているのだろう。私達なんだか悪役っぽいな。



「それ以上近づくならこのジジイの首が胴体から離れるぜ。なんせいきなり自分の身体能力ってやつが跳ね上がったからな、力加減が上手くできねえんだよ」


「貴様らよくも陛下を…!」


 兵士達は剣を構えこちらを睨んだまま動かない。私は黒崎の前に立ち、剣は下ろさないまま周囲を牽制する。悪役っぽいっていうか、この状況を見たらほとんどの人が私と黒崎を悪役だと断言する自信がうまれてきた。黒崎の言葉とかもろ悪役だった。


「俺はな、最初はさっさと元の世界へ帰しやがれと思っていたが、もともと誰かを痛めつけるのは嫌いじゃないし、こんな力が手に入ってそれを思いっきり奮えるんなら、今は戦場にだって行ってもいいと思ってるんだよ」


 そんな物騒な性格してたのか。いや見た目通りといえばそうだけど。


 黒崎の言葉に、剣を突き付けられた王様は震えながら声を発した。


「だ、だったらこの国を救ってくれ!お前達は救世主なんだ!救世主として召喚されたんだ!神に愛されしこのカルレア王国を侵略しようとするあのロスディアナの連中を殺せ!」


「ちょっと黙れ」


 黒崎は剣先を王様の首に押しつけた。首からは少し血が流れ、王様からヒイッという情けない声が聞こえた。


「戦ってもいいとは言ったが、テメェの言うことをホイホイきくとは思うな。なんせ俺達は救世主なんだ。こっちの意志を無視したりなんてせず、丁重に扱ってくれるんだろ?」


「もちろんだ!だから早く剣を下ろしてくれ!」


「そりゃあ良かった。おい、お前は何かこのジジイに言っとくことはないのかよ。言いたいことがあるならせっかくだし言っとけ」


 そう言って黒崎が話を振ってきたから、私も背後の二人と向き合った。言っておきたいことか…


「ええと、私もさっき剣を振り回したのが予想以上に興奮したので、戦うことに対しての抵抗とかは最初あったはずなんですけど、今は特にないです」


 そう言うと何故か黒崎が「ブハッ」と吹き出した。おい、なんで笑ってんだよ。剣先がぷるぷる震えてるから王様の首から出る血がやばくなってるぞ。


「ただ、一つ質問したいことがあるんですけど、私達って元の世界に帰れるんですよね?元の世界で行方不明扱いされるのも困るので、帰してくれるときは召喚されたときから時間がそんなに経っていないようにもして欲しいんですけど」


 そうこれが一番重要だろう。最終的にちゃんと元の世界には帰らせてもらわないと困る。私は別にこの世界に骨を埋める気なんてないのだ。


「救世主としての役割が終わったら、元の世界に帰還させよう。時間については陣に手を加えればなんとでもなる」


「それはほっとしました。ちなみに今回の救世主としての役割と言いますと」


「もちろん我がカルレア王国を隣国ロスディアナ王国に勝利させることだ。もしも勝てなければ貴様ら帰れるとは思うなよ。召喚の際にはあらかじめ救世主としての役割を陣にも記している。そしてその陣から召喚された貴様らは、その役目を果たさなければ帰還できない体になっているのだ!だから無事に帰りたいのならば、」


「うるさい」


 黒崎よりも無害そうに見えたからか、王様は私に対してはどんどん偉そうにしゃべり始めていたため、イライラして持っていた剣の先を王様の額に突き付けてしまった。大体それ脅迫じゃねえか。王様の首に剣を当てている黒崎はそんな私の様子を見てますますニヤニヤとしている。お前学校ではいつも不機嫌そうな顔で周りを睨んでばかりだったのに、さっきから楽しそうだなおい。


「言いたいことわかりました。つまり、ロスディアナって国にこの国が勝てば希望通りに帰してくれるんですね。それとさっき彼が言っていた、私達の意志を無視したりせず、丁重に扱ってくれるということ、これらを守ってくれるならいいです」


「わかった!約束しよう!だから早く剣を退けてくれ!頼む!」


 王様からそんな言葉を引き出せたので、私は剣を下ろした。黒崎を見ると、彼も首に当てていた剣をやっと下げていた。



「というわけで、これから世話になるぜ」


「よろしくお願いします」


この時の私達二人の顔を見た王様は盛大に顔をひきつらせていたと思う。





 その後私達は兵士に周りを取り囲まれながら移動し、ある一室に案内された。召喚される人物は一人だけだと思っていたから、用意ができている部屋はここしかない、広さは十分あるから今夜はここで二人過ごして欲しい、と兵士の一人は早口で言うとすぐに扉を閉めてしまった。


 厄介なものはまとめておきたいとか思われてそうだなあ。扉の外には絶対大勢の兵士達が待機しているだろうし。


 部屋の中を見渡すと確かに広かった。そして豪華だ。床には高そうな絨毯が敷かれ、ベッドは私の家の自分のよりも二倍は大きいサイズだし、天蓋付きだった。ソファも五人掛けはできそうなものが、ローテーブルを挟むようにして二つ置かれていた。


 黒崎はそのうちの一つにどっかりと座るとこちらを見た。


「お前も座れよ」


 そう言われたので、私も向かい側のソファに座った。うおお、体がソファに沈み込む。これはかなり気持ちがいい。


 目の前に座っている黒崎はこっちをじっと見てから、口の端を上げた。


「一緒にここに飛ばされたのがお前みたいなヤツで良かったぜ」


「ええと、それは一体どういう意味なの黒崎君」


「ギャーギャー泣きわめくような女子じゃなくて良かったってことだ」


 なるほど、確かにそんな女子と一緒だったら黒崎はイライラして殴りそうだな。


「それを言うなら私だって黒崎君で良かったと思うよ」


 私がそう言うと、彼は一瞬呆気にとられたような顔をした後、笑いをこらえるような変な顔になった。


「俺で良かった?そりゃまたなんでそんな馬鹿なこと思うんだよ」


「救世主って言葉に浮かれてホイホイあの王様に乗せられるような男子じゃなくて良かったってことだよ」


 それに強そうだから心強いし。


 そう言うと、黒崎は爆笑した。腹を抱えてひいひい言っている。生意気なことを言ってしまったかなと思ったが、黒崎の様子に安心した。結構笑い上戸なのかもしれない。こんなに笑うやつだとは思わなかった。


「お前、俺と同じクラスのヤツだろ?俺に対してもっとビビるかと思ってたのに、まさかこんなヤツとはな!」


 うん、自分の身体能力が上がったことで大胆になっているのかもしれない。今までだったら心の中で思うだけで、実際に口に出すことはなかった。


 笑いがある程度落ち着くと黒崎はこちらを見るとニヤリと笑った。


「それじゃあ改めて、黒崎だ。君付けなんてされなくても気にしねえよ。同じ救世主ってやつなんだ、めんどくせえからお互い気楽にいこうぜ」


 それは助かる。同じ世界から来た人とくらい、私も気を遣わずに接したい。


「それではお言葉に甘えて、よろしく黒崎。私は紺野だよ」


「紺野か。ところでお前、本当に戦えんのか?戦場に出て人を殺すってことだぜ?」


 黒崎はさっきまで浮かべていた笑みを消すとそう尋ねてきた。これが本題なのだろうか。向こうが真剣な顔をしているので、私も正直に答えることにした。


「人を殺したことなんてないからなんとも言えないけど、さっき剣を振り回してた時、すごくテンション上がったんだよ。剣を握っただけでもドキドキしたし、相手の剣を受け止めた時なんかもう最高だった!衝撃が手に伝わってゾクゾクしたし、」


「紺野」


 あ、ヤバい。しゃべっているうちにあの時のことを思い出して熱が入りすぎてしまった。


 召喚の影響でこんな風に戦うことに興奮するようになったのかとも少し考えたが、もともと自分にはこんな面もあったのだと思うことにした。だって確かに楽しいと感じたのだ。あの高揚感を忘れることはできない。あの感覚が全部自分の心に関係なく湧き上がったものとは思えなかった。


 名前を呼ばれたことでハッとして黒崎の方を見ると、そこには先ほどよりも真剣にこちらを見つめている黒崎がいた。そんな鋭い目つきで見られると緊張する。黒崎はゆっくりと口を開いた。




「お前とは本当に上手くやっていけそうな気がする」


 マジで?


「わざわざ質問なんてしなくても良かったな。お前、結構イイ性格してるぜ。だから俺とお前が召喚されたのかもな」


 釈然としない部分もあるが、明らかにさっきまでより気を許してくれた感じがするので気にしないことにした。なにより、黒崎が自分も剣を握ったときに興奮したと話し出したので、そちらの方に意識を持っていかれたのである。



 それから私達二人はあの時どれだけ興奮したかを語り合った。私が剣を打ち合わせた時の感覚を熱く語ると、黒崎は自分も相手の剣を受け止めたかったと本気で悔しがっていた。王様に剣を突き付けた時の話でも盛り上がったし、今後の戦闘訓練に対する期待をお互い語ったりもした。そしていつの間にか二人で同じベッドの上でごろごろしながらしゃべっているという状態に気づいた時には流石にお互いこの距離感に驚いた。気楽にいこうという話にはなったが、自分も相手も一気にくつろぎすぎだろう。


 寝そべっていた身を起こしてベッドの上に胡座をかく。黒崎ものそりと体を動かして同じように胡座をかいて向かい合った。


 黒崎を見ると眉間に皺を寄せて何かを考え込んでいる。私もおそらくそんな顔をしているのだろう。とりあえず思ったことを言ってみた。


「寝転がってしゃべったりするのってなんか友達同士みたいだね。いや、私そこまで仲良い友達いたことないからよくわかんないけど」


「ああそうか、そんなもんなのか。俺もそんなヤツいたことねえからよくわからんが」


 黒崎はなるほど、という顔をした。


「お前とは上手くやっていけそうな気がするって思ったしな。つまりそういうことだろ」


「うん、私も黒崎とは上手くやっていけそうな気がする。そういうことか」


 そして私達二人はまたごろんと横になると、今度はどんな武器を使ってみたいかという話をしだした。





 私達はきっと、この国が望んだような救世主にはなれないだろうなと思った。




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