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六話 準備

 部活動説明会に向け、星美たちは演劇の準備に取り掛かった。

 台本は思い立ったその日に出来上がり、星美以外の者は各々で演技の練習、余裕のある星美は一人で舞台セットや大道具の製作を始めた。

 夜更けの空き教室にて、好奇心の赴くまま手を休めず作業に没頭する星美。雨永たちが側に居ないのを見計らい、凹坂と巳弥が、サザンカを連れてやってきた。

 星美に仮入部届を差し出して、すぐに懐に仕舞う。



「会長も言ってたとおり、現在あなたたちに部室の貸与は許されていない。けれど説明会後に部員数が十名以上に達したら、まずは同好会として認めてあげる。来週までは特別にわたしも手伝うわ。どうしても部活が作りたいなら、この機会を逃さないようにね。解っていると思うけど……いや、全然解っていない気がするけども。また今までみたいに勝手な行動をしたら問答無用で今後一切の活動を禁じるから。いいわね?」



「イエス、マム!」



 ついでに星美を手伝うことにした。しばらくして雨永が糸井と共に、轟が欠伸をしながら入ってきた。

 いくらなんでも下準備を全て一人でやらせるのは可哀想だと、雨永が二人を説得して呼び出したのだ。

 星美がサザンカを紹介する。



「そんなわけで、なんの気紛れか、一体何を企んでいるのか、それともツンデレが発動したのかどうかは知らないけど、サザンカちゃんが新入部員として加わりましたー! はくしゅー!」



「よろしく」



「……ねぇ、やっぱり」



「大丈夫やって」



 雨永、糸井、巳弥、サザンカは衣装の縫い合わせを任され、車座になって黙々と糸を通していく。

 星美に気付かれないよう、糸井が声をひそめつつ口を開いた。



「……あの、ちょっといいですか。すでに私やホタルもクラブ発足のメンバーに数えられてたりします?」



 そう訊かれたサザンカは疑問符を頭に浮かべる。



「え? 意味がよく分からないけど……そうじゃないの? というか同学年なんだし、別に敬語使わなくてもいいわよ」



「サザンカさんがここにいるのって、星美さんを監視するためでしょ。あの子がこれからも立て続けに問題行為を起こした場合って、私たちも連帯責任とみなされたりしない? ……最悪、退学とか」



「ああ」



 ようやく合点がいったサザンカは、生徒会役員の立場として糸井の問い掛けに答えた。



「安心して。それは絶対にないから。仮に星美ヌードが主犯で退学処分になったとしても、部活自体がなくなるだけで、あなたたちにペナルティは課せられない。どうせ半ば無理矢理に付き合わされてるんでしょう?」



「……あ、いえ、雨永さんたちはわたしが誘ったみたいなモノで……」



「そういえば、巳弥さんはどうしてこの学園に来たの?」



「へぇ!?」



「ほら、事情は詳しくは知らないけど、ここって孤児を集めてるらしいじゃない。それとも、誰かの付き添い?」



「あ、あ、ああああの……え、ええっと……」



 星美はともかく、巳弥とは仲良くしてもいいと考えているので、親睦を深めようと少し無遠慮に踏み込む糸井。

 雨永たちは、まだ巳弥や凹坂が星美の目付役だと知らない。急な質問にあたふたと巳弥は狼狽。

 話したくないのなら、無理はしなくていいと糸井が気遣う前に、サザンカが庇って応えた。



「そ。巳弥はわたしと一緒に来たの。そうよね?」



「え、ええ!? ……あ、はい。そ、そうです……」



「本当? そんな素振り今まで少しも見せなかったけど……でも、なんか星美さんとも仲良いわよね」



「そ、それは……」



「こう見えて巳弥は面倒見がいい子なのよ。星美ヌードみたいに浮いてる人は放っておけない性格なの」



「そう……ホタルと同じね」



 人に訊いておいて、自分が話さないのは失礼だと思い、現在に至るまでの過去を糸井が赤裸々に語り出す。

 糸井は十年ほど前の戦争で肉親を亡くし、自治団体が運営する児童施設に引き取られた。そこの人たちは本当に親切な人ばかりで、その中の一人が雨永だった。

 自分と同い歳で、同じ境遇のはずなのに、人一倍明るく、誰にでも優しい。彼女のおかげで塞ぎがちな糸井も徐々に心を開いていった。

 ある年、海外から渡ってきた疫病が町中に蔓延し、各団体は彼女たちの住む地域を強制的に隔離。医療機関も碌に機能せず、児童施設などほとんど見捨てられた状態。

 そんな中、二度と家族を失いたくないという強い想いから、糸井は囓った程度の生半可な知識のみで施設の病人達に治療を行った。

 青カビを用いて抗生剤を自製し、服用後は根気よく看病を続けて治るのをただ祈るのみだったが、雨永の励ましで糸井は勇気付けられ、なんとかめげずに頑張れた。

 そして奇跡的に回復した患者から抗体を得て、施設の病人を全員救うことができたのだ。

 その噂を耳にした近隣の住人たちの口コミで彼女たちのことが知れ渡り、糸井と雨永はナイチンゲールさながら各地の病床を回った。

 見事、町から疫病を追い払い、糸井は褒め称えられたが、彼女としては雨永が側に居てくれたおかげだと認識していた。

 それ以降、医者を志した糸井は独学に励み、この学園からの推薦をもらった。どのみち十五歳になれば独り立ちして施設から離れなくてはいけない。

 共に苦難を乗り越えた親友であり、心の支えである雨永とは、別れたくなかった。勇気を振り絞って、一緒に来てほしいとダメ元で頼むと、二つ返事で快諾してくれた。



「……私がこうして生きていられるのも、全部ホタルのおかげなの」



「ちゃうちゃう。キヌエちゃんが頑張った甲斐やないの。ウチ、なーんもしとらんよ。大げさすぎや」



「二人で一緒の生活ができるのは、ここで最後かもしれない。だから、この三年間は大切にしたい」



 頑としてそう宣う真っ直ぐな糸井の視線から、思わずサザンカは目を背けた。

 十年前の戦争なら、自分も参加している。齢九つ以下からなる子供のみを編成した軍隊、九九児部隊として。

 幼いが故に、厳しい啓発訓練も要らず、簡単な洗脳だけで純粋なキラーインスティンクトが出来上がる。

 何食わぬ顔で小綺麗な私服を纏い、世界各国に散らばった彼らは銃を携行せずにナイフ一本で標的を次々に暗殺していった。

 前線では能力者二人が無慈悲に敵をなぎ払って活躍し、その水面下では無能力者の子供たちが隠密任務を担うという戦法。

 あの史上最大の世界大戦が起きた理由は、発展途上国の人口削減など多々あるが、ただ単に「悪の力」が戦闘能力としてどこまで有効なのかを推し量るためであり、次期の能力者候補を選別する目的でもあった。

 あれは星美らの所属している組織が意図的に勃発させた戦争なのだ。強制的とはいえ、あの頃のサザンカもそれに荷担していたことになる。

 その被災者となった生徒達に負い目を感じるのは無理もなかった。



「トロピカルヤッホー! 諸君、調子はどう!? 順調順調!?」



 星美が空気を読まずに割り込んできた。サザンカは彼の手を引いて廊下に出た。



「なになにー?」



「もう一つ言っておきたいことがあるわ。あなた、自分の行動がどれだけ他人を不安にさせているのか解っているの?」



「誰を?」



「凹坂ヤエと巳弥ミミサキよ」



「ああ、天龍と電ちゃんね」



「二人とも、あなたのためを思ってこの学園まで連れて来てくれたんでしょ。ちょっとくらい彼女たちに報いたいと思わないわけ? せめて少しは自重しなさい」



「えー、アタシ、これでも落ち着いてる方だよ。本能の赴くままに全力出したら、余裕で十八禁になるけど」



「あと他の三人に対しても配慮を覚えなさい。凹坂ヤエや巳弥ミミサキはともかく、あの子達はあなたについてまだよく知らないのよ。……人との関わりが皆無な生活を送ってきたから仕方ないとは思うけど、なんとなくは解るでしょ?」



「うーん」



「万が一あなたが組織の人間だってバレたら、顰蹙を買うこと必至。そんなのイヤよね? 彼らとも仲良く過ごしていたいなら、相応の慎みを持たなきゃ。これからは変態的な行動も、もちろん能力も御法度よ」



 考え込むように唸った後、応じたのか星美はポンと手を叩いた。



「うん、分かったよ!」



「そう。それでいいのよ」



「でも、あと一回だけやってみたいことがあるんだ。それが終わってからでいい?」



 何が一回だけなのだろう。能力を使うことなのか、猥褻行為なのか、それともその両方なのか。

 ここは断固として止めておくべき。



「……一回だけ?」



「うん」



「本当に、本当に一回だけね?」



「うんうん!」



「いいわ……でも許すのは今回だけよ。肝に銘じておくことね」



 それでもここは星美を信じて、判断を任せることにした。執拗に束縛しても仕方が無い。

 誰かに何かを言われたからではなく、自分自身で分別を弁えるようになるのがベスト。過保護に守られている子供のままでは生徒達とも対等な関係は築けないだろう。

 雨永たちといると動揺を隠しきれる自信がないので、そのまま星美の作業を手伝った。サザンカが角材の端をしっかり押さえて、星美がノコギリで切断していく。



「サザンカちゃん」



「なによ」



「好きな人いるー?」



「いないわよ。急になんなの。脈絡のない話を挟むのも珠に傷よね」



「えー、恋バナって普通に世俗的にオーソドックスな雑談の話題でしょ」



「大体同じ意味じゃない」



「てか、お兄ちゃんが好きなんでしょ」



「……ち、ちちち違うわよ! バカじゃないの!?」



「アタシもねー、兄者がいるよー。会ったことないけど」



 巻き尺で誤差がないことを確認し、組み合わせて釘を打つ。二人で手際よく進め、すぐに大道具の一つが完成した。

 台本上では、二戸建ての家が舞台になるわけだが、これはただの階段に見える。残っている材料からしてまだまだ仕上がりにはほど遠い気がする。まさかショールーム並のセットに仕上げるつもりなのだろうか。

 説明会までちゃんと間に合わせられるのかサザンカは不安になった。

 星美が鼻を啜って、零れそうな涙を拭った。



「な、なんで泣くのよ!?」



「ウハッ……アタシね、楽しいと涙が出ちゃうんだ」



 普段あっけらかんとしている奴の思いにもよらぬ不意の反応に、サザンカは何とも言えない気持ちになって戸惑った。

 パネルに墨を擦りつけながら、轟は破顔して嬉しそうに笑う。隣の凹坂は眠たそうに虚ろな目で渋々とヨゴシを加えていく。



「いいもんだな、こういうの」



「なにが……ただただメンドくせぇ、付き合ってらんね」



「じゃあ、なんで姉ちゃんあの時手挙げたんだよ?」



 そういえば、そうだったなと矛盾を突かれ、何故かと弁解するのも億劫なので凹坂はまた押し黙る姿勢を続けた。



「オイラはなー、学校の行事とか参加したことないから、いますっげぇ楽しいぜ」



 轟エレキマルは乳飲み子の時に山へ捨てられ、動物たちに育てられた根っからの野生児である。

 その人生は常に逆境との闘いであった。

 五歳の頃に戦火の飛び火で山火事が起き、住処が全焼。血の繋がりがない死んだ親兄弟を思い、轟は三日三晩、悲しみの遠吠えを続けた。

 人里に降り、獣として生きてきた彼は忌み嫌われ、村人たちから糾弾される。何処かへ行く当てもなく、麓を彷徨くようになった。

 数年ほど妖怪みたいな扱いを受けていた、そんなある日、村をゲリラ兵が占拠した。戦後、組織によって世界全土が統治されてから、各地には多くの無法者が蔓延っていたのだ。

 山岳に囲まれた盆地の村は、彼らにとって絶好の隠れ蓑になるとして狙われる。村人全員が囚われ、異変に気付いた轟は果敢に立ち向かった。

 人間離れした身体能力に為す術もなく、ゲリラたちは一人残らず追い払われ、助けられた恩で村人たちは死にかけの轟を介抱し、それからは里の一員に加えた。

 人並みの生活を与えられ、言葉も習い、男八人分は働く。ついに自分の居場所を手にしたかと思われた矢先、畑の作物が実らなくなった。

 極めて局地的な飢饉であったが、周辺の自治体はどこも素知らぬ顔。轟は足二本で助けを求め、駆け回ったが、村の最期は口にするのも憚られるほど凄惨な有り様だった。

 村を後にした轟はまた途方に暮れ、どこかの人里を目指して旅に出る。そして絶望の果てに辿り着いた街の河川敷で乞食と化し、唯一の財産である丈夫な身体を持ってして、日々恩を売り歩く神出鬼没のお助け少年、電光石火のエレキマルと名を馳せた。いつか町の住民として、みんなに受け入れられる日を信じて。

 その努力が実を結んだのか、彼には様々な人脈ができ、老若男女の友達が毎日訪ねて施しを貰う生活を過ごした。

 そして学校どころか幼稚園すら出たこともないのに、何故かこの学園の推薦を得て、仲間たちにでっかくなって帰ってくると約束し、現在に至る。



「……てなわけよ」



「いや、別に訊いてねぇし。無駄になげぇから」



「だから姉ちゃんもよ、そんなしょげた顔ばっかしてねぇで楽しもうぜ!」



「痛っ!! 気安くケツ叩いてんじゃねぇよ、セクハラかこの野郎!」



「へへへっ」



 凹坂は舌打ちをして、楽しそうにヘラヘラ笑っている轟の脚立を蹴り倒した。盛大に転がり落ちた轟は首を痛めたのか、頭を抱えて怒った。



「なにすんだ、危ないだろ!」



 大きな物音に皆が凹坂たちに注目する。彼らにも聞こえるほどのボリュームで凹坂が轟を見下して言った。



「なぁ、もしおれがテメェの身内を殺した連中の仲間だったらどうする?」



「え?」



「お前が散々苦労してきたのは、あの組織のせいだ。そいつらに仕返してやりたいとか思わねぇか。ほら、目の前にいるこのおれが育て親共の敵だ。許しちゃおけねぇよな?」



「それ……マジか」



「ああ。星美と巳弥もそうだ。なんなら、あいつらにも訊いてこいよ」



「……」



 思った以上に真に受けてくれたみたいで、さらに猜疑心を駆り立てようと訴える。

 彼らは少々お人好しのきらいがある。それがどこまで許容できるのか試したくなった。かき回していざこざを起こし、星美が時間遡行をせざるを得ない状況にできれば吉。

 さあ、どうする。と、脅すように轟へ繰り返し尋ねる。頭を掻きむしり、彼はブンブン首を振った。



「……いや、オイラに力が足りなかったせいだ」



「はあ?」



 復讐心に駆られて牙をむくどころか、シュンと落ち込んで、己の不甲斐なさを嘆く。想定外の反応に凹坂は呆気にとられ、口をポカンと開いた。



「よえーからよ、オイラは。みんなを守れるくらい強くなりてぇな。だから今のは聞かなかったことにする!」



「だからってなんだよ……」



「わりぃ、今日は手伝うのここまでにしておくわ。いい加減ねみぃし。でも、明日からもいつも通りのオイラだからな! 顔洗って出直してくるわ! じゃあな、姉ちゃん!」



「ちょっ!?」



 凹坂が引き留める前に、轟は雑念を振り払うため獣がごとく吼えながら寄宿寮へ戻っていった。サザンカが汚れた膝を叩き、立ち上がる。



「私たちもお暇しましょう。徹夜が明日に響いたら意味無いものね」



「えー、まだやりたい~」



「ウチもええで」



「私は眠い……轟くん、うるさかったけど大丈夫なの?」



「ほら、あんたが頑張りすぎると周りを無理させるのよ。気を使いなさいって言ったでしょ」



「ブー。わかったよぅ」



 どうせ零時を越えれば就寝時間になる。発表の前に休みも二つ挟むので、一応の猶予はあった。

 廊下に人気は無いが、この時間帯でも照明が点いてて明るい。肝試しには向かんなーと雨永が笑った。

 後方を歩く凹坂の背中を突っつき、サザンカが呼び止めた。



「あのね、私はあなたたちがここに居てもいいと思ってるから」



「……はぁ?」



 轟に続いてサザンカにまで肩すかしを食らう。彼女自身、手を組むことに合意したとはいえ、凹坂が何かを企んでいるのではないかと一抹の疑念を抱いていた。

 しかし、今となってはもう余計な詮索をする気にもなれない。組織のスパイではなく、本当に平和な学園生活を送るために生徒としてやってきたのだろう。星美の涙を見て、心からそう思えたのだ。



「本当は色々と秘密を引き出そうと考えていたけど、もうこの際それもいい」



「おい、ちょっと待って」



「会長には私から頼んでみるから、対立関係とか、卒業までそんな事情は抜きにしましょ。協定も今日限り。明日からはあなたも普通のお友達ってことで、いいでしょ?」



 一方的にそう告げると、サザンカは談笑しながら前を歩く四人の輪に加わった。

 ぎりっと歯噛みし、凹坂は胸の内で嘆息する。



「やりずれぇんだよ……どいつもこいつも……」



 憎めない奴ばかりで、煮え切らない思いだった。

 この学園は「英雄の力」を持つ可能性を秘めた者、その名の通りの英雄候補を集めた教育機関。

 過去の履歴から、ちょっとやそっとでへこたれない連中なのだ。おそらくサザンカも、九九児部隊の訓練を経てなお、ねじ曲がらない心の持ちようからその範疇なのだろう。

 このまま何事もなかったかのように、しれっと三年間を過ごす。できることなら、そうしたい。

 だが、星美の能力は誰にも知られてはいけない組織の最重要機密なのだ。情報が漏洩したら凹坂も巳弥も、星美でさえ処分される。その覚悟でやってきた。

 たとえサザンカたちの良心を踏みにじる結果になろうとも、それだけは絶対に避けなくてはならない。



「……というわけで、やっぱり夜の作業は禁止」



「えぇええぇええええええー!?」



「あんたね、何をどこまで作ろうとしているのかは知らないけど、身体を壊したら元も子もないでしょ。最低でも夕方までが限度よ」



「ま、しゃーないな。毎晩騒いでたらサザンカちゃんも生徒会長さんに怒られるやろうし」



「ひ、ひめ……せ、星美さん、ここはみなさんの言うことに従いましょう」



「ちぇー。一週間完徹で行ける自信あったのになぁ。へのつっぱりはいらんですよ」



「なによ、それ」



 噴き出して全員が笑う。珍しく冗談がウケてご機嫌の星美は、手を後ろに回して身を屈めた。



「ねぇねぇ、本番前の夜もまたあそこにおいでよ。みんなに見せたいモノがあるんだ~!」



「見せたいモノって……ああ、さっき言ってたのはもしかしてそのこと?」



「なんやなんや。ウチらに秘密?」



「それは来週のお楽しみ!」



「んっんっん。じゃあ、楽しみにとっとくわ」



 子の刻。打ちっ放しコンクリートの校舎内には少女たちの足音と、星美の鼻歌だけがしっとりと響いていた。




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