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二話 尋問

「連れてきました」



「ご苦労だったな、サザンカ」



 生徒会室へ三人を連行し、サザンカと呼ばれた少女は縄で締め上げられた彼女たちを乱暴に放り投げた。



「縛りプレイとはオーソドックスだねっ! これからアタシにもっとエッチなことする気でしょ!? エロ同人みたいに!」



「誰のせいでこうなったと思ってんだ。見ろよ、いわんこっちゃねぇ!」



「は、はわわわわわ……」



 生徒会長が歩み寄り、語りかける。



「生徒会長の不条院(フジョウイン)ツバキだ。単刀直入に訊くぞ、お前たちは何者だ」



「はっ、なんだそれ。意味わかんねぇ」



「言いなさい」



 サザンカは懐からバタフライナイフを取り出し、凹坂の顎に当てた。刃物の冷たい感触に、冷や汗が滲む。



「キマシタワー! これが本物の百合展開なんだね。薄い本が厚くなるぅ!」



「いいからテメェは黙ってろ!」



「凹坂ヤエだな。去年からの在校生だが、このプロフィールは偽造か?」



「意味が解らねぇっつってんだろ。なんのつもりだ、これは。説明してもらいたいのは、こっちの方だぜ」



「はぁはぁ……食い込んできた……アタシの肉棒が激エロびんびん丸……」



 涎を垂らして悶えている星美に視線を移し、不条院が訊く。



「お前はなんだ?」



「よくぞ訊いてくれました!」



 元気いっぱいに応え、シュルシュルと瞬時に縄を解いてテーブルの上に立った。手綱を引いていたサザンカが動揺し、柏手がヒィっと小さな悲鳴を漏らす。



「アタシは地上最強の男の娘! その身体は珪素基系で出来ている……っ! この宇宙を統括する情報統合思念体によって造られたキメラアント! そしてみんなが毎日食べているB・Mであり、ネットスフィアが支配するこのアウターヘブンのビッグボス! 星美ヌードちゃんなのだっ!」



 蠅が通ったように空気が静まりかえった後、しばらくして今度は巳弥に不条院が尋ねた。



「お前は?」



「し、しし新入生の巳弥ミミサキです……」



 ため息を吐き、不条院は質問を変えた。



「入学式での件だが、そこのそいつは能力者だな? 『英雄の力』と対極にある『悪の力』。ここが英雄の力を秘めた者を集めるための学園だと知っていて来たのか? 奴らの仲間か?」



「なんのことだか、さっぱり。それよりこの縄を解いてくれよ。新入生の二人もな。おれは先輩としてコイツらに学園を案内してやってただけだぜ」



「まだシラを切るつもりか」



 星美と二人の関係はまだバレていないので、誤魔化して通そうとする凹坂。不条院は別のプロフィールを選び、凹坂の眼前に掲げた。



「この生徒は今年入学する予定だった、最有力候補だ。何故、この学園に来ていないのか説明してもらおうか」



「あのよぉ、生徒会長さん、そろそろいい加減に……」



 割り込んで、そのプロフィールを覗き見た星美が、特にもったいぶる様子もなく、すんなりと答える。



「──あ、そいつなら、もう死んじゃったよ」



 生徒会全員が顔面蒼白になり、言葉を失った。



「……お嬢」



「えー、ダメだった? あらすじだと、ここでこの台詞を言わなきゃいけない決まりでしょ? 死んだっぽいよー。死んだっぽいぜ、ぽいぜ!」



 相変わらずおちゃらけてケラケラと笑う星美。サザンカが彼女たちの前に出る。



「どういうこと!? ちゃんと説明して!」



「あー、くそっ。わかったわかった。認めるからよ。おれたちは組織の人間だ。でも、信じてくれ。別にこの学園で悪さをしようって気は始めからない」



「答えになっていない!」



「出しゃばるな、サザンカ。俺が訊いている」



「……ごめんなさい、お兄ちゃん」



 不条院に叱られ、しょんぼりと俯くサザンカ。



「え、お兄ちゃん? え、実妹? 義妹? それを考えるだけで夢がひろがりんぐ! ブヒイイイイイイ!! ねぇねぇ、どう思う!? あの二人って毎日、朝フェラで起こされる仲なのかな!?」



「あああああああ!! うるっっせぇえ!! さっきから黙れっつってんだろ! 下ネタも大概にしろよ! 大体な、ギャグで言ってるつもりなんだろうが、テメェの冗談で笑ったことなんか一度もねぇんだよ!」



 それまでやたらとテンションの高かった星美が、ガーンとショックを受け、顔を手で覆い、メソメソし出した。

 巳弥が慌ててなだめようとする。



「だ、大丈夫ですか、姫さま? お、凹坂さん、酷いですよぉ……!」



「巳弥、お前そいつを甘やかしすぎだぞ? ちゃんと教育しとけって言われたんじゃないのか? ぁあん!?」



「何故、死んだ。お前たちがやったのか?」



 星美によってかき回されたこの最悪の状況に、一年も掛けて積み上げたモノを崩された凹坂は頭を抱える。不条院の問いに答える気力も湧かなかった。

 代わりに巳弥が対応する。



「そ、それに関しては詳しく言えませんけど、ししし信じてください! わ、わわたしたちは姫さまを学校に通わせてあげたいだけなんです!」



「どうしてこの場所が解った? お前たちだけには勘付かせないよう慎重に進めていたんだがな」



「……ご、ごめんなさい、どうしても言えないんですぅ……」



 縮こまる巳弥。



「埒が明かないな」



「そうだね。これ以上、長引かせてもつまんなそうだし、もうそろそろ次の話に行こうか。はい、解散っ」



 嘘泣きを止めて、星美がパチンと指を鳴らした。黒い影が生徒会室全体を包み、──そこにいる全員が消失した。




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