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紅の夕月  作者: 秋原 悠
2/2

二回目

「好き!!」

高等学校の屋上に響き渡る声。

夕日が辺りを照らし、あられ雲が朱色に染まった見渡す限りの空が頭上に広がっていた。

既に下校時間も過ぎているという事もあってか僕ら以外、屋上には誰も居ない。

この空間だけが他の場所と隔離されたかのように静まり返っている。

僕の視界には顔をこれ以上ないくらいに紅潮させ、長い髪を風に流されるように靡かせている少女が一人、目の前に立っていた。

彼女は中学時代からの親友の栗沢美枝くりざわみえ

時に笑いあい。

時に些細な事でも喧嘩をした。

しかし、全てを分かち合ってきた。

そんな仲だ。

そんな彼女を親友と呼ぶには相応しいと思う。

でも今、その間柄がより親密になろうとしている。

なんと、彼女から告白されたのだ。

好きだ、と。

正直どう応えたらいいのか分からなかった。

何しろ、こんな状況は初めてで生まれてこの方、恋愛経験など全く無い。

故にこの状況に対応できずに、おろおろとしている。

そんな僕を見兼ねてか、美枝が質問をしてくる。

「啓ちゃんは私の事嫌い?」

「…嫌いじゃないけど…」

本当の事だ。

確かに美枝の事は嫌いではない。

寧ろ好意を持っているくらいだ。

だが、それが恋愛となると違うような気がする。

言ってみれば彼女は僕にとっては空気のような存在で、その場に居て当然という感じがある。

だからだろう。

今、僕は美枝にOKとは言えない。

今が幸せであってこの関係が崩れてしまいそうな錯覚に捕われる。

今の僕には考えられなかった。だから…。

「もう少し考えさせてくれないか?」

その言葉を聞き残念そうな顔をするが、すぐに笑顔になり。

「うん。分かった。でも、なるべく早めにね?」

そう言って美枝は屋上から出ていくべく、走って出口に向かい、重い鉄の扉を開いて出ていこうとする。が、直前に振り返り。

「私の初恋なんだからね」

そう言って顔を紅潮させて扉の向こうに消えていった。

翌日。いつも通りに起きて、朝食を済ませて、学校に向かう。何気ない一日が始まったと思うと気が重い。体を引きずるように歩く僕は昨日の事を考えていた。今だに美枝に告白された事が信じられないでいる。昨晩は真剣に考えるどころか僕は少し混乱していて、それどころではなかった。そんな事を考えているとハァ、と溜め息が漏れる。どんな答えを出したら良いのか分からない。だが今日には答えを出そうと思っている。最低でも明日の放課後には美枝に旨を伝えるつもりだ。そんな事を考えているうちに学校に着いていた。放課後。俺は美枝の様子を見に隣のクラスまで足を運んだ。休み時間に行けばよかったかもしれないが、様子を見るだけに行く気もしなかった。まぁ、正直に言えば昨日の為、会うのが少し恥ずかしかったからだ。下校と部活の為にドアから出てくる適当な生徒を引き止める。

「すいません。美枝さん居ますか?」

男子生徒を引き止めて聞いてみた。

「今日は欠席したみたいだけど…」

そう言うと急いでいるらしく、言い終わるとその男子生徒は軽く会釈をして走っていってしまった。

それにしても珍しい事があるものだ。

生まれ付き、元気が取り柄の美枝が今日は欠席しているらしい。

仕方なく今日は帰る事にした。

朝とは違い夕日の影響で朱色に彩られた街を一人で歩く。


帰りに書店にでも寄ろうと考え、朝には通らない歩道橋を渡る。


夕日の陽光が直接顔に掛かって眩しさのあまりに手の平で太陽を遮る。


歩道橋を渡っているのは僕しか居ない。


そんな、寂しさもあってか町並みも淋しく見えてくる。


そんな中、僕の視線は何気なく上を向いた。


大小様々なビル群と朱に染まった雲が見える。

それと同時にそれ程高くない一つのビルの屋上に目を奪われた。

人がフェンスを乗り越えて立っている。

長い髪が風に任されて揺れ、夕日の光を受けて幻想的その場に立っている。

長い髪からして女性と判断した。

それともう一つ。

判断できるものがあった。

服装だ。判断できたのはその服が僕の通う学校の女生徒の制服だったからだ。感覚的に飛び降りるかもしれないという感覚に捕われた。居ても立っても居られなくなり走った。目指すのはビルの屋上。難なくビルに着き、エレベーターが無いので、階段を一気に駆け上がった。人が死ぬところは見たくなかった。飛び降りないでくれ、という気持ちだけを持って屋上に着いた。そこには歩道橋で見た時と同じようにその場に少女がたたずんでいる。僕が扉を開いた音に気付いたのか、少女が振り返った。僕は一瞬その顔を見て我が目を疑った。なんとその場に居たのは、栗沢美枝だったのだ。

「…啓ちゃん?!」

彼女も驚いたのか、僕の顔を見つめている。

「お前、何やってんだよ!!」

思った以上に声が出た。

そのせいで喉がピリピリ、と痛くなる。しかし、僕の言葉に怯まずに美枝は口を開いた。

「啓ちゃんの為だから…。私が居ると啓ちゃんが不幸になるから…。だから、だから死ぬの!!」

意味が分からなかった。

昨日は僕に告白しといて今日死ぬと言いだす彼女の意志が分からなかった。だから声を張り上げた。

「意味分かんねぇよ!!説明しろ!」

力一杯の声に喉の痛みも増してくる。

しかし、説明が出来ないのか俯いたままで何も喋らなくなってしまう。

僕は美枝を思い止まらせようと、昨日の答えを打ち明ける。

昨日と今日、考えた結果、本心から、そう思った。

美枝が居なくなったら、という事も考えた。

そうしたら何だか泣きそうになった。

これだけじゃ足りないかもしれないけど、想いに嘘はないと断言できる。

「昨日の事だけと……。俺は美枝の事…」

自分でも飾り気が無くて、単刀直入に言っていると思う。

だが、嘘ではなく本心からそう思っている。

「……好きだ」

その言葉をいざ、言ってみると恥ずかしくて仕方がない。

耳まで熱くなり、顔が紅潮しているのはよく分かる。

汗が噴き出してきそうだ。

心の重りが無くなったような爽快感がいきなり出てきて、一息だけ深呼吸する。

そんな僕の気持ちとは裏腹に、彼女が発した言葉が僕を分からなくさせた。

「全部、遅かったんだよ…」

「おい?!」

美枝が頬笑み掛けてきた。

だが、それが全てが終わる合図でもあった。

彼女の上体が向こう側に投げ出された。

何も出来なかった。

声が出るどころか一歩も歩み寄れなかった。

美枝は飛び降りてしまった。

高さは有に十五メートル以上あり、下はアスファルトで普通に考えれば助からない。

グシャ、という聞き慣れない音が下から聞こえる。絶望のあまり、その場に膝を着いた。

「うわぁぁー!!」

僕はそれから二ヵ月後、美枝を追うように高層ビルから飛び降り自殺をした。

自信が無い文章になりました…。

感想とか待っています。

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