新戦士:カイ(第三話)
新宿の夜は騒がしい。
人混みの中で、ヒロインがふと立ち止まる。
「ねぇ、あの人かっこよくない?」
視線の先。
人に囲まれている青年がいた。
爽やかな笑顔。
スポーツバッグを肩にかけ、
子供にサインを書いている。
「藤原光さん! 今度の大会も応援してます!」
「ああ、ありがとう」
柔らかい声。
背が高く、姿勢がいい。
いかにも“できる男”。
主人公は無言で見ている。
ヒロインが小声で言う。
「確かあの人、大学の陸上エース。しかも情報工学科で成績トップらしいよ?」
「……興味ない」
だが主人公は視線を逸らさない。
違和感。
ほんのわずかだが。
藤原の目が一瞬だけ、
周囲を“観察”する目に変わった。
獲物を探すような。
数分後。
人混みが散ったころ。
藤原が近づいてくる。
「君たち、さっきの店にいたよね?」
ヒロインが驚く。
「え、見てたんですか!?」
「うん、少し目立ってたから」
微笑む。
完璧な好青年。
彼は主人公に視線を向ける。
「君、どこかで会った?」
「知らないな」
短い返答。
空気が少しだけ張る。
藤原は笑みを崩さない。
だがその瞳の奥に、
冷たい光が宿る。
そのとき。
ビルの屋上から悲鳴。
空気が歪む。
黒い亀裂。
ジドバ出現。
群衆がパニックになる。
主人公の鼓動がわずかに上がる。
藤原は一歩前へ出る。
「ここは危険だ。君は彼女を連れて離れて」
完璧な判断。
ヒロインは頷く。
だが主人公は動かない。
ジドバが藤原を見下ろす。
「人間……」
藤原は静かに息を吐く。
ポケットから取り出す装置。
銀色のフレーム。
カイ。
「お前らのせいで」
声の温度が下がる。
「どれだけの人間が死んだと思ってる」
ジドバが跳ぶ。
藤原は装置を構える。
その目は、もう好青年ではない。
怒り。
憎悪。
抑え込んだ何か。
「変身」
白い閃光。
衝撃波。
装甲が身体を包む。
戦士――カイ。
無駄のない動き。
一瞬で間合いに入り、
拳を叩き込む。
骨が砕ける音。
二撃目。
三撃目。
ジドバは粉砕された。
圧倒的。
主人公は息を呑む。
強い。
そして――
戦い方が、どこか似ている。
変身解除。
藤原は息を整える。
すぐに表情を戻す。
「怪我はない?」
さっきまでの殺気が嘘のよう。
ヒロインは呆然。
「すご……」
藤原は主人公を見る。
「君、さっき動かなかったね」
「様子を見てただけだ」
視線が交差する。
一瞬。
藤原の口元がわずかに歪む。
「……そうか」
その目は言っている。
“分かっている”
藤原は去り際に呟く。
小さく。
「ジドバは、必ず根絶やしにする」
主人公の胸がざわつく。
怒りを感じると、
身体の奥が熱を持つ。
声が響く。
感情を持つな
戻るぞ
彼は拳を握りしめる。
ヒロインが気づく。
「どうしたの?」
「……なんでもない」
遠くで藤原が振り返る。
その笑顔は爽やかだ。
だが視線は鋭い。
獲物を見つけた狩人のように。




