世界の終わりへの一歩(第二十一話)
夜。
敗北の翌日。
ニュース速報。
市内各地で同時多発暴動
原因不明の人体変異
街のあちこちで赤い紋様。
普通の人間だったはずの人々が、
突然ジドバへと変貌する。
悲鳴。
炎。
混乱。
アルファがビルの上で笑う。
「広がった」
ベータが解析する。
「感情振動臨界点突破」
ガンマが静かに言う。
「ギガドの消滅が引き金」
藤原の死。
そのエネルギーが、
因子保持者たちを刺激した。
街に潜んでいた下級ジドバが
一斉に覚醒。
朝倉家。
テレビがつきっぱなし。
美月が震える。
「こんなの……」
こういちは顔を上げられない。
「俺が……」
玲が立ち上がる。
だが体が重い。
胸の奥がざわつく。
赤い紋様が、うっすら浮かぶ。
「……?」
自分の腕を見る。
消える。
だが鼓動が速い。
外から悲鳴。
玲はプサイガジェットを握る。
「変身」
光。
だが安定しない。
装甲の奥で、
黒い影が揺れる。
上級因子が反応している。
街へ飛び出す。
交差点。
十数体の下級ジドバ。
暴走。
理性なし。
玲が着地。
「止める」
踏み込む。
圧倒的な力で次々と倒す。
だが。
一体を掴んだ瞬間、
頭に流れ込む感情。
恐怖。
怒り。
絶望。
市民だった頃の記憶。
「やめ……」
一瞬、動きが止まる。
同調。
上級である玲は、
彼らの感情を拾ってしまう。
ベータが遠くから観察。
「上級共鳴確認」
アルファが笑う。
「君も仲間だよ」
玲の視界が揺れる。
赤が濃くなる。
「俺は……違う」
だが体が震える。
下級ジドバの叫びが、
自分の中に響く。
守る側か。
同じ側か。
境界が曖昧になる。
こういちは街に出る。
炎。
倒れた人。
子ども。
「……俺は」
逃げたい。
戦えない。
でも。
目の前で泣いている子ども。
足が動く。
無意識に抱き上げる。
「大丈夫だ」
声が震えている。
ヒーローじゃない。
でも人間だ。
玲が遠くで膝をつく。
装甲が不安定。
赤と黒が混ざる。
「……抑えろ」
アルファの声が響く。
「堕ちたら面白いよ?」
街は地獄。
ヒーローは壊れかけ。
下級ジドバは無限。
そして。
玲の内側で、
何かが目を開ける。




