人間として(第十六話)
屋上。
張り詰めた空気。
美月の手には強化アダプタ。
玲と藤原が向かい合う。
沈黙。
その均衡を破ったのは――
「ちょっと待ったぁ!!」
場違いな声。
三人が振り向く。
こういち。
息を切らし、手を振っている。
「……なんでここに」
玲が呆然とする。
こういちはニヤッと笑う。
「これ、探すの大変だったんだぞ」
ポケットから取り出す。
赤い装置。
プサイガジェット。
玲の目が見開かれる。
「あれは……質屋に」
「取り返した」
親指で弾く。
「やっぱりこれがないと駄目でしょ、玲は」
その一言。
玲の胸に熱が灯る。
藤原の目が冷える。
「無駄だ」
低く言う。
「上級はそれがなくても戦える」
「違う」
こういちは即答。
「それは力の話だろ」
一歩前に出る。
「これは“選ぶ力”だ」
玲を見る。
「怪物としてじゃなく」
装置を投げる。
玲が受け取る。
重み。
懐かしい感覚。
こういちが笑う。
「人間として戦うためのやつだろ?」
沈黙。
玲の瞳の赤が揺れる。
藤原が冷たく言う。
「くだらない」
カイを構える。
「感情論で世界は救えない」
こういちが睨み返す。
「じゃあ証明してやれよ」
玲へ。
「お前がどっちか」
風が吹く。
玲は深呼吸。
プサイガジェットを腰に。
久々の感触。
「……変身」
赤い光。
だが今度は違う。
上級の黒い装甲の上に、
プサイの赤いラインが走る。
融合。
“人間として選んだ上級”。
新形態。
圧が変わる。
藤原が一瞬たじろぐ。
「そんな……」
美月が息を呑む。
こういちがガッツポーズ。
「よっしゃ!」
玲は静かに言う。
「俺はジドバだ」
藤原が構える。
「認めたな」
「でも」
視線が強くなる。
「俺は、人間として戦う」
踏み込む。
速度が段違い。
藤原の一撃を受け止め、
弾き返す。
黒いヒビがさらに広がる。
「力を選んだのはお前だ」
玲の拳が光る。
「俺は意志を選ぶ」
衝撃。
藤原が吹き飛ぶ。
屋上の壁が砕ける。
美月が叫ぶ。
「光!」
藤原は立ち上がる。
呼吸が荒い。
怒りと焦り。
そして、初めての恐怖。
「……選ばれたのは、そいつか」
視線が美月へ。
美月は首を振る。
「違う……」
小さく言う。
「私じゃない」
こういちを見る。
「こういちが選んだ」
その事実。
藤原の顔が歪む。
「くだらない」
だが声が震える。
玲が構える。
「終わらせよう」
決意。
だがその瞬間――
強化アダプタが突然発光。
美月の手の中で暴走。
天城の声が通信で響く。
「実験は成功だ」
全員が凍る。
「君たちは、揃った」
空が歪む。
新たな巨大ジドバ反応。
過去最大。
戦いは次の段階へ。




