表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たりない僕ら  作者: なゆ
1/1

たりない僕ら

藤原凛太郎(28) 論理と分析。 正しいことを言うのに、角が立つタイプ。 本人は淡々としてるだけなのに、距離を置かれがち。

黒田恭助(28) 感情と直感。 場の空気を読む天才。 深く考えなくても、人が助けてくれる。

会議室前

呼び出し理由は、だいたい察しがついている。今期の数字は悪くない。むしろ良い。

廊下を歩きながら、凛太郎は頭の中で選択肢を並べていた。

新規案件か。それともテスト的なプロジェクトか。単独なら、どちらでも問題ない。

会議室のドアを開ける。

──先客がいた。

黒田恭助。

一瞬、思考が止まる。ありえない、という単語だけが浮かぶ。

(……なんで、こいつが)

一瞬、足が止まる。でも表情には出さない。出す理由がない。

黒田のほうが先に口を開いた。

「あ、藤原さんもですか?」

その言い方が、まるで“偶然一緒になりましたね”みたいで、少しだけ癇に障る。

凛太郎は椅子に向かいながら言った。

「俺は、課長に呼ばれたので」

**“は”**に、わずかに力を込める。お前とは違う、という区切り。

黒田は一瞬だけ瞬きをして、それからいつもの曖昧な笑顔を浮かべた。

「そうなんですね、」

こいつのその軽さが、やっぱり信用できない。


ドアが開き、課長が入ってきた。

「待たせたな。2人とも、座って」

凛太郎と黒田は、それぞれ無言で腰を下ろす。視線は合わない。

課長は机に資料を置き、ページをめくりながら言った。

「今度、うちの会社で力を入れる新プロジェクトを行うことになってな」

資料の表紙には、見覚えのない企画名が印字されている。

新規市場。もしくは新規顧客層。失敗すれば、責任も重い。

凛太郎は、自然と背筋を伸ばしていた。

課長は続ける。

「これまでのやり方とは少し違う。 だから、結果を出せる人間に任せたい」

一拍置いてから、課長は顔を上げた。

「ま、単刀直入に言うとだ」

その間に、凛太郎は頭の中で計算を始めていた。

──単独案件なら、問題ない。

「君たち2人には、この新規プロジェクトを任せたい」

言葉が落ちる。

凛太郎の中で、“評価”と“違和感”が、同時に立ち上がった。

(……2人?)

隣を見る気はしない。見なくても、誰がいるかはわかっている。


「2人……ですか?」

声は落ち着いている。頭の中では、即座に結論が出ている。

(ありえない)

課長は凛太郎の表情を気にする様子もなく言った。

「そうさ。 営業成績も安定してるし、顧客からのイメージもいい。 この組み合わせなら、新プロジェクトを任せられると思ってな」

正論だ。反論の余地はない。 

少し身を乗り出す凛太郎。

「でも、あの……正直言うと、 全然1人でも……」

「ま、とにかく」

課長が被せるように言った。

「もう決まったことだ。 2人とも、頼んだよ」

それだけ言って、課長は会議室を出ていく。

ドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。

(最悪だ)

黒田と、ペア。

頭の中に、忘れたふりをしていた過去が、勝手に浮かび上がる。


回想:入社したての頃

まだスーツも体に馴染んでいなかった頃。2人は同期として、大型イベントの営業チームに入っていた。

黒田は、時間をかけて資料を作っていた。

色も多くて、言葉も柔らかくて、いかにも“黒田らしい”資料。

凛太郎は、それを見て思った。

(無駄が多い)

だから、良かれと思って手を入れた。

構成を整理し、数字を前に出し、削れるところは削った。

「このやり方、非効率だと思う」

そう言って、修正した資料を渡した。

「お前のためを思って言ってる」

その言葉が、決定的だったのかもしれない。

黒田は、一瞬だけ黙ったあと、その資料を受け取って。

次の瞬間、破いた。

「いらないです」

穏やかな声だった。

「俺は、これでいきます」

そして、元の資料のまま会議に臨み、結果は──成功。

会議後、黒田は言った。

「藤原さんの改変、 別に必要なかったんで」

それきりだった。


それ以来

必要最低限しか話さない。協力もしない。でも、絶対に負けない。

同じ会社で、同じ営業で、同じ数字を追いながら。

それが、凛太郎と黒田の関係だった。


現在・会議室

凛太郎は、無意識に息を吐く。

(……1人でできる)

今も、そう思っている。

でも、課長の言葉が、頭の奥で引っかかっていた。

「この組み合わせなら」

凛太郎は、まだ知らない。この“最悪のペア”が、自分のやり方を壊していくことを。


ドアが閉まる音がして、会議室に残ったのは二人だけだった。

一瞬の沈黙。

凛太郎は資料に目を落としたまま、次に何を言われるかを待っていた。

黒田が、先に口を開く。

「ま、決まったことですので」

軽い。相変わらず。

「藤原さん、よろしくお願いしますね」

その言い方が、少しだけ引っかかる。

黒田は続ける。

「あ、じゃあ藤原さんは 予算管理とかお願いしていいですか?」

凛太郎の指が、無意識に止まる。

「僕はクライアントの方とか、 上の人とのスケジュール管理やるんで」

……決めるの、早くないか。

「ま、必要なことはメールで」

メール。顔を合わせる気は、最初からないらしい。

黒田は立ち上がりながら言った。

「僕、次の会議あるんで。 ここで失礼します」

そう言って、軽く会釈をして、ドアに向かう。

(……は?)

一瞬、言葉が出てこなかった。

決定事項みたいに、役割を振られて。了承した覚えは、ない。

(予算管理“お願いしていいですか”って)

それ、実質もう決めてるだろ。

効率で言えば、確かに妥当だ。

数字、管理、調整。自分の得意分野。

だから余計に、苛立つ。

(最初から、 俺を“そういう役”に置いてる)

ドアが閉まる。

会議室に、完全な静寂が戻る。

凛太郎は、資料を閉じた。

(勝手に進めるな)

そう思った瞬間、同時に別の考えが浮かぶ。

(……でも)

黒田の動きは早い。判断も、迷いがない。

それが、今まで自分が一番信用してこなかったやり方だ。

凛太郎は、深く息を吐いた。

(1人でもできる)


「AlphaBank専用次世代CRMシステム導入プロジェクト」

キックオフ前・準備期間

資料のタイトルを見ただけで、胃が少し重くなる。

予算2億円。期間10ヶ月。関係者40人。しかも、AlphaBank。

地方銀行の中でも保守的で、「前例がない」が最大の敵になる相手だ。

凛太郎はデスクで画面を睨みながら、工程表を引き直していた。

要件定義。ベンダー調整。社内リソース配分。

少しでも甘いと、後半で必ず歪みが出る。


一方で、受信トレイには黒田からのメールが次々届く。

AlphaBank側、デジタル化そのものに不安あるみたいです

なので最初のキックオフは技術寄りすぎない構成にしたいなと思っています。

凛太郎は、一度画面から目を離した。

(技術寄りすぎない、か)

理屈はわかる。でも、ふわっと始めて成功する規模じゃない。

返信を書く。

ーー

不安があるからこそ、全体像とリスク管理は最初に明示すべきです

特に10ヶ月という期間を考えると初期認識のズレは致命的になります

ーー

送信。

数分後、すぐに返事が来る。

了解です。

そうしたら冒頭は僕が全体像をやわらかく説明してそのあと藤原さんの資料できっちり締める感じでいきましょう!

……締める。

言い方が軽い。でも、提案としては悪くない。

凛太郎は、ほんの一瞬だけ迷ってから、「了解しました」と返した。


キックオフ前日

会議室での最終すり合わせ。

凛太郎は資料を並べ、進行順を確認する。

「最初に全体像。 そのあと、要件定義とスケジュール」

黒田は頷きながら、メモを取っている。

「AlphaBankさん、 “難しい話になったら止めていいですか”って 事前に言ってました」

「止める、というより 質問を受ける時間を確保しましょう」

「ですね。 質問しやすい空気、作ります」

その言い方に、凛太郎は少しだけ視線を上げる。

(空気、か)

正直、そこは自分の守備範囲じゃない。

でもこの案件では、無視できない。


会議室を出る直前、黒田が言った。

「藤原さん」

「何ですか」

「このプロジェクト、 正直めちゃくちゃ大変だと思います」

珍しく、ふざけた調子じゃなかった。

「でも、 うまくいったら 会社の中でも、かなり大きいですよね」

凛太郎は、一拍置いて答えた。

「……失敗しなければ、です」

黒田は笑った。

「じゃあ、 失敗しないようにやりましょう」

軽いのに、逃げてない言い方。

凛太郎は、その笑顔を見ながら思う。

(こいつは、 最初から逃げる気がない)

それは、少しだけ意外だった。

 


キックオフミーティング当日

AlphaBank 本社 会議室

広い会議室。長机がコの字に並び、AlphaBank側の担当者がずらりと座っている。

年配が多い。表情は硬い。

(想定通りだ)

凛太郎は、資料を指で揃えながら静かに息を吸った。

黒田が前に立つ。

「本日はお時間ありがとうございます。 今回のプロジェクトでは──」

声は明るく、トーンも抑えめ。

「“デジタル化”と聞くと 難しそうに感じるかもしれませんが」

数人が、わずかに頷く。

(入りは悪くない)

凛太郎は、頭の中で次のスライドを追っていた。


最初のズレ

黒田は、想定よりも丁寧に話していた。

事例。比喩。「これまでと何が変わらないか」。

空気を和らげるのは上手い。

……ただ。

(時間、使いすぎだ)

凛太郎は、壁の時計を見た。

予定より、すでに10分押している。

黒田がこちらを見る。

「じゃあ、 ここから藤原さんに 詳しいところを説明してもらいます」

凛太郎は立ち上がった。


凛太郎の失敗

スライドを映す。

要件定義。スケジュール。リスク管理。

説明は、正確だった。準備も、万全だった。

「こちらが10ヶ月間の全体工程です」

すると、AlphaBank側の一人が手を挙げた。

「……すみません」

年配の男性。

「正直に言っていいですか」

凛太郎は頷く。

「このスケジュール、 現場がついてこれるとは思えません」

一瞬、会議室の空気が止まる。

「今まで、 こういう形で進めたことがないので」

(想定内だ)

凛太郎は、即座に答えた。

「その点は、 事前に教育期間を設けています。 リスクとしても──」

「いや」

遮られる。

「理屈はわかるんですがね」

その言葉に、凛太郎は言葉を足した。

「ですが、 この規模で進める以上、 現状のやり方を維持したままでは 成果は出ません」

──言い切った。

正論だった。間違っていない。

でも。

数人が、目を伏せた。

空気が、一段冷える。

(……まずい)


沈黙が、長すぎた。

AlphaBank側の担当者たちは、資料を閉じるでもなく、かといって続きを促すでもない。

このままなら、「一度持ち帰りましょう」で終わる。

──それは、実質の失敗だ。

凛太郎は、一瞬だけ目を閉じた。

(……詰めすぎた)

正論を重ねれば、相手が納得すると思っていた。

でもこの場で必要なのは、正しさじゃない。

安心だ。

そのとき。

「すみません」

黒田の声が、先に空気を割った。

「ちょっと、 言い方が良くなかったかもしれません」

さっきまでの軽さはない。でも、卑屈でもない。

「2億円って、 正直、簡単に出せる金額じゃないですよね」

AlphaBank側の数人が、黒田を見る。

「なので…… 今日、決めきらなくていいと思ってます」

凛太郎は、思わず黒田を見た。

(は?)

「まずは、 “失敗しないこと”を 一緒に確認させてください」

黒田は、凛太郎の方をちらっと見てから続けた。

「藤原さん」

名指しされた。

「このプロジェクト、 一番最初に潰れるとしたら、 どこですか?」

急に、自分の土俵が来た。

凛太郎は、一瞬だけ迷ってから、答えた。

「……現場の混乱です」

会議室が、少し静かになる。

「要件定義の段階で 認識がずれると、 後半で必ず破綻します」

スライドを一枚戻す。

「なので、 最初の2ヶ月は システムを“作らない”期間にしています」

AlphaBank側の男性が、眉をひそめた。

「作らない?」

「はい」

凛太郎は、いつもより声を落とした。

「触って、試して、 合わなければ捨てる。 そのための期間です」

黒田が、すぐに言葉を継ぐ。

「つまり、 最初の2ヶ月で “失敗する場所”を 全部前に出します」

「本番は、 そのあとです」


空気が変わる

AlphaBank側の一人が、小さく頷いた。

「……それなら、 現場もついてこれるかもしれませんね」

凛太郎は、黒田の言い換えに気づく。

自分は「リスクを前倒しで潰す」と言った。

黒田は「失敗する場所を先に出す」と言った。

同じ意味なのに、伝わり方が違う。

黒田は続ける。

「なので今日は、 “全部を決める日”じゃなくて」

「“一緒に失敗の仕方を決める日”に させてください」

その言葉に、会議室の緊張が、ふっと緩んだ。


凛太郎の内心

(……助けられた)

悔しいけど、事実だった。

でも同時に。

(俺も、 役に立てた)

黒田は、自分の言葉を翻訳してくれただけだ。

どちらか一人じゃ、この場は越えられなかった。


会議の終わり

「では、 まずは2ヶ月間の 検証フェーズから、 改めて詰めましょう」

AlphaBank側の責任者が言った。

キックオフは、完全な成功ではない。

でも。

失敗でもなかった。

会議室を出るとき、


黒田が小さく言った。

「……さっきの、 助かりました」

凛太郎は、一拍置いてから答えた。

「……俺もです」

それだけだった。

でもその一言で、何かが、確実に変わった気がした。

それ以上、言葉は続かない。

エレベーターを待つ間、沈黙が落ちる。

さっきまでの張り詰めた空気とは違う。気まずいけど、逃げ場はない沈黙。

黒田が、珍しく先に切り出した。

「正直、 ああなるとは思ってなかったです」

「俺は…… なると思ってました」

黒田が少し笑う。

「ですよね」


エレベーターから降りて二人はそのまま空いている小会議室に入った。

凛太郎が、資料を机に置く。

「次、どうしますか」

それは命令でも、皮肉でもなかった。

相談だった。

黒田は少し驚いた顔をしてから、椅子に腰を下ろす。

「……ちゃんと話しましょう」

その黒田の言葉に、凛太郎は内心で小さく頷いた。

(それが足りてなかった)


「今日のミス、 俺の説明が強すぎました」

凛太郎は、意外なほど素直に言った。

「いえ、 僕も軽くしすぎました」

黒田も、言い訳をしない。

「たぶん、 どっちかに寄せると また同じことになります」

黒田は、机の上にペンを置いた。

「なので、 決めませんか」

「何を」

「話す順番と、止めるタイミング」

凛太郎は、一瞬考えてから言う。

「……止める合図、 作りますか」

「いいですね」

黒田は少し楽しそうに言った。

「じゃあ、 僕が喋りすぎたら藤原さんが止める。 藤原さんが詰めすぎたら、僕が言い換える」

その役割分担が、妙にしっくり来る。

凛太郎は、自分でも驚くほどすんなり頷いていた。

「……それでいきましょう」


凛太郎は、その瞬間に気づく。

話すだけで、こんなにズレが減るのか。

今まで、「わかってるだろう」で済ませてきた。

でも黒田は、わかってないわけじゃない。

違う言語を使っているだけだった。


少し離れた場所で、課長が二人の様子を見ていた。

会議室に一緒に入って、資料を広げて、ちゃんと話している。

課長は、何も言わずに視線を外す。

(……始まったな)

他の社員も、なんとなく気づいている。

あの二人が、「ちゃんと話している」ことに。

誰も茶々を入れない。誰も近づかない。

そっと、見守っている。


計画立案フェーズへ

その日の夕方。

凛太郎の画面には、新しい工程表が映っている。

横には、黒田のメモ。

・現場ヒアリングの日程・AlphaBank側キーパーソン・説明は“変えない点”から入る

「ここ、 順番変えた方がいいかもです」

黒田が指さす。

「……確かに」

即答できた自分に、凛太郎は少し驚く。

否定じゃない。調整だ。

「じゃあ、 ここは僕が説明します」

「助かります」

その言葉が、さっきより自然に出た。


凛太郎の内心

(ぎこちないけど)

(……悪くない)

まだ、肩がぶつかる距離じゃない。

でも、同じ方向を見ている感覚はある。

凛太郎は、画面を見つめながら思った。

(話すって、 こんなに重要だったのか)


AlphaBank 現場ヒアリング後

銀行を出た瞬間、肩に乗っていた重さが、少しだけ軽くなった。

「思ったより、 話してくれましたね」

黒田が言う。

「……はい」

本音だった。

あの場で、あれだけの情報が出てくるとは思っていなかった。

沈黙が続く。

帰社するには、まだ少し早い時間。

黒田が、何でもない調子で言った。

「このあと、 少し時間あります?」

凛太郎は一瞬考える。

「……あります」

「じゃあ」

黒田は、スマホをしまいながら続けた。

「いい店あるんで、行きません?」


派手じゃない。駅から少し外れた、看板も控えめな居酒屋。

「ここ、 AlphaBankの人も たまに来るんですよ」

(……なるほど)

中は騒がしすぎず、話すにはちょうどいい。

カウンターに並んで座る。

黒田は、勝手がわかっている様子で注文した。

「とりあえず、 これとこれと…… あと、これ美味しいです」

凛太郎は、「じゃあそれで」特に反論せず頷く。


料理が来るまでの間。

黒田が言った。

「さっきのヒアリング、 正直どうでした?」

凛太郎は、グラスを見つめたまま答える。

「……想定より、 不安が具体的でした」

「ですよね」

「ただ」

言葉を選ぶ。

「それを ちゃんと引き出せたのは……」

一瞬、間が空く。

凛太郎は、自分でも驚くほど素直に言った。

「…… 黒田の聞き方があったからです」

言ってから、少しだけ後悔する。

(言い過ぎたか)

黒田は、一拍置いてから笑った。

「……それ、 めちゃくちゃ嬉しいです」

声が、いつもより落ち着いていた。


「藤原さんのまとめがなかったら、 あれ、散らかったままでしたよ」

「え?」

「不安は出たけど、 形になったのは 藤原さんが言葉にしたからです」

凛太郎は、黙ってグラスを持ち上げる。

(……互い様、か)

悪くない。


料理が来る。

他愛ない話は、ほとんどしない。

でも、仕事の話が途切れない。

「次のヒアリング、 現場担当者だけ集めますか」

「はい。 人数は絞った方がいい」

「じゃあ、 最初は雑談多めで」

「…… そのあと、 俺が整理します」

自然だった。

決めなくても、役割が噛み合う。


凛太郎の内心

(……悪くない)

むしろ、少し楽だ。

説明しなくていい。補足される前提で話せる。

凛太郎は、ふと気づく。

(これ、 “話す”っていうより)

(一緒に考えてるんだ)


店を出るとき、黒田が言った。

「また、 来ましょう」

凛太郎は、ほんの一瞬だけ考えてから答えた。

「…… プロジェクトが落ち着いたら」

黒田は笑った。

「了解です」

その笑顔を見て、凛太郎は思う。

(……少しずつだな)


件名を見た瞬間、嫌な予感はしていた。

【ご相談】システム導入範囲について

凛太郎は、ゆっくりメールを開く。

内容は、想像通りだった。

* 一部部署は旧システムを継続したい

* 新旧併用で進められないか

* 現場の反発が想定以上に強い

(……来たな)

それは“今ならまだ戻れる”提案だった。

でも同時に、10ヶ月後の地獄も、はっきり見える。

凛太郎は、そのまま黒田の席まで歩いた。


小会議室

黒田は、メールを読み終えて、しばらく黙っていた。

「……やれなくは、ないですね」

その言い方に、凛太郎はすぐ反応する。

「でも、 やったら破綻します」

即答だった。

黒田は、小さく息を吐く。

「ですよね。 現場、楽になる代わりに 後半が地獄」

凛太郎は、ホワイトボードに線を引く。

「新旧併用は、 データ整合性で必ず詰まります」

「障害対応も倍」

「責任の所在も曖昧になる」

書きながら、凛太郎は思う。

(……言える)

以前なら、一人で押し切っていた。

でも今は。

黒田が、ボードの前に立つ。

「AlphaBank側、 “不安だから戻したい” だけなんですよね」

「はい」

「なら、 逃げ道を用意すればいい」

凛太郎が、顔を上げる。

「逃げ道?」

黒田は、静かに言った。

「戻らないって決めた上で、 失敗してもいい場所を作る」


2人の決断

しばらく、無言で考える。

そして、凛太郎が口を開いた。

「……新旧併用は、 やらない」

言い切った。

黒田は、一瞬だけ驚いてから、頷く。

「はい。 僕もそう思います」

「ただし」

凛太郎は、続ける。

「一部部署を “検証フェーズ専用”として残す」

「本番稼働は、 必ず一本化」

黒田の目が、少しだけ輝く。

「それ、 めちゃくちゃ説明しやすいです」

「……前に出ますか」

凛太郎は、自分でも意外な言葉を口にしていた。

黒田は、すぐに答える。

「一緒に」

その一言で、決まった。


AlphaBank との再打ち合わせ

会議室の空気は、前回より張り詰めていた。

黒田が、最初に口を開く。

「結論からお伝えします」

一瞬、視線が集まる。

「新旧併用は、 お受けできません」

ざわっとする。

凛太郎が、すぐに続ける。

「ただし、 現場の不安を無視する という意味ではありません」

資料を映す。

「最初の2ヶ月間、 一部部署を検証専用として残します」

「その間、 “失敗する場所”を すべて洗い出します」


黒田が、言葉を選ぶように一拍置いてから続けた。

「本番では、 失敗できません」

空気が、きゅっと締まる。

凛太郎が、すぐに言葉を重ねる。

「だから、 失敗は“今”します」

「検証フェーズで、 想定されるトラブルを すべて表に出す」

黒田が、静かに頷く。

「AlphaBankさんに、 取り返しのつかない失敗は させません」

責任者が、ゆっくりと息を吐いた。

「…… なるほど」

「覚悟が、 伝わってきます」


AlphaBank 本社 会議室

前回の打ち合わせから、一週間。

凛太郎は、再び同じ会議室に座っていた。

資料は、前回より薄い。

でも、中身は重い。

AlphaBank側の責任者が、ゆっくり口を開く。

「正直に言います」

全員の視線が集まる。

「あなた方の提案は、 正直、怖い」

凛太郎は、否定しない。

「はい」

「でも」

責任者は、凛太郎と黒田を交互に見る。

「逃げない人間に、 任せたいと思いました」

黒田が、ほんの少しだけ背筋を伸ばす。

「なので」

「御社の提案で、 進めさせてください」

一瞬、空気が止まる。

凛太郎は、ゆっくり息を吐いた。

「ありがとうございます」

その声は、思っていたより落ち着いていた。


会議後・エレベーターホール

ドアが閉まった瞬間。

黒田が、小さく言った。

「……来ましたね」

「はい」

黒田が拳を前に出してきてる

黒田「グータッチ」

凛太郎は、自分の手のひらを見る。

コツン

軽くあてる2人


黒田が、少し照れたように笑う。

「…… なんか、 チームっぽいですね」

凛太郎は、拳を下ろしながら答える。

「……そうだな。チームだもんね俺たち」


黒田は、その一言に目を細めた。


その様子を見た課長はやはり2人が揃うと最強だと確信しそっと見守る(静かにガッツポーズ)


黒田は、「じゃ、明日も早いんで」と言って、軽く手を振り、フロアを出ていった。

足音が、エレベーターの方へ遠ざかる。

凛太郎は、そのまま席に戻る。

椅子に座り、モニターを落とす。

フロアには、空調の音だけが残った。

凛太郎は、無意識に手を開く。

さっき、黒田と触れた方の手。

拳を作ったまま、ゆっくりほどく。

……何も変わっていない。

赤くもなっていないし、痛みもない。

それなのに。

凛太郎は、しばらくその手を見つめていた。

(……不思議だな

そうか。嬉しかったのか。)

あの一瞬で、何かが決まった気がした。

言葉にしなくても、約束みたいなものが交わされた気がして。


声には出さない。

ただ、一人で頷く。

凛太郎は、拳を作らず、自然に手を下ろした。

そして、小さく息を吸って、背筋を伸ばす。

(よし)

(……頑張るか)

デスクライトを消す。

夜のオフィスを後にしながら、凛太郎はもう一度だけ思う。

(明日も、 ちゃんと並んで立とう)


課長が、さらっと言った。

「AlphaBankの地方支店、 現場確認したい。 藤原と黒田、行ってきてくれ」

資料をめくりながら、続ける。

「泊まりになる。 一泊二日だな」

凛太郎は、一瞬だけ黒田を見る。

黒田は、いつも通りの顔で頷いた。

「了解です」

それだけ。

でも、凛太郎の中では小さく波紋が広がる。

(……泊まり、か)


移動中 新幹線

窓側に凛太郎。通路側に黒田。

資料は広げているけど、会話は少なめ。

でも、沈黙が重くない。

黒田が、コーヒーを買って戻ってくる。

「藤原は、 ブラックでいい?」

「……あ、はい」

当たり前のように差し出されるカップ。

凛太郎は、小さく礼を言う。

(こういうところ、 自然なんだよな)


地方支店 現場確認

仕事は淡々と進む。

黒田が、現場の職員に話を振る。

凛太郎は、その横でメモを取る。

「藤原、 ここどう思う?」

「…… 運用、想定より複雑だな」

「だよな」

短いやり取り。

でも、ズレがない。

支店長が言った。

「お二人、 息が合ってますね」

黒田が笑って答える。

「最近、 やっとです」

凛太郎は、何も言わない。

でも、否定もしなかった。


夜・ビジネスホテル


チェックイン時

フロント「ふじわらさまでお間違えないでしょうか。」

凛太郎「はい。大人2人でシングルふた部屋とっているのですが。」

フロント「確認いたしますね。…申し訳ございません。お客様とホテル側の手違いでツイン一部屋の予約となっておりました。」

凛太郎は小さく眉をひそめた。

「……?」


凛太郎は、一瞬だけ固まる。

(……やらかしたな,俺。)

「すみません、その、」

フロントに言いかけて、一拍置く。

空き状況は、もう聞かなくても分かる。

繁忙期。地方都市。夜。

黒田は、特に慌てる様子もなく言った。

「ツイン、 別にいいけど?」

凛太郎が、少し早口になる。

「いや、 俺が確認ミスで…… 気になるなら部屋変えてもらうか」

「藤原」

黒田は、あっさり言った。

「寝るだけだから大丈夫だって。同じ部屋で確認もできるしいいじゃん。」

凛太郎は、言葉に詰まる。

(……そうなんだが)


部屋に入ってから

ドアが閉まる。

思ったより、普通のビジネスホテル。

でもベッドが…

凛太郎は、無意味にカバンを置く。

「…… 本当に悪い」

黒田は、ネクタイを外しながら答える。

「気にしてない」

一拍。

「それに」

凛太郎を見る。

「今さら、 一部屋くらいで 何も変わらないだろ?」

その言葉に、凛太郎は返せなくなる。

(……確かに)

黒田は、何事もなかったように自分のベッドに腰を下ろした。

「あ,俺こっち側でもいい?、 それと先シャワー使うな」

「お、?ああ。おん。」


凛太郎の内心

(……俺だけか)

(こんなに気にしてるの)

凛太郎は、少しだけ息を吐く。

(落ち着け)

(……寝るだけだ)


黒田の寝息は、規則正しい。

凛太郎は、天井を見ていた。

(……眠れない)

別に、何かあったわけじゃない。

なのに、意識が冴えている。

静かだ。

(黒田は、 もう寝てるんだろうな)

それを思うだけで、少し落ち着く。

理由は、自分でもよくわからない。

結局、浅い眠りのまま朝を迎えた。


目覚ましより先に、黒田が起きた。

「ん、おはよう」

「ああ……」

いつも通りの声。いつも通りの距離。

何事も、ない。

顔を洗って、スーツに着替えて。

並んでエレベーターに乗る。

(昨日と、同じだ)

それなのに、凛太郎の胸の奥だけ、少しだけざわついている。


支店長との打ち合わせ

打ち合わせは、驚くほどスムーズだった。

黒田が場を整え、凛太郎が要点を押さえる。

支店長が頷く。

「この進め方なら、 現場も納得しそうです」

黒田が笑う。

「よかったです」

凛太郎は、内心で息を吐く。

(……ちゃんと、うまくいってる)


駅構内の土産物屋。

黒田が、棚を眺めながら言う。

「課長、 甘いの好きでしたよね」

「……確かに」

「じゃあ、 これにしましょう」

当たり前のように、二人分まとめて買う。

レジに並びながら、凛太郎はふと思う。

(こういうの、 自然に決まるようになったな)

新幹線に乗り、並んで座る。

窓の外が、後ろに流れていく。

黒田は、少し眠そうだ。

その横顔を見て、凛太郎は視線を逸らす。

(……なんだこれ)


会社に戻ってからも。

黒田が席を立つ。それだけで、視線が動く。

声が聞こえる。それだけで、反応している自分に気づく凛太郎。

(……おかしい)

仕事は、できている。

集中も、切れていない。

なのに。

(黒田のこと、 気にしてる)

理由が、わからない。

尊敬?信頼?同期だから?

どれも、違う気がする。


夜・一人居酒屋

店は、平日の割にそこそこ混んでいた。

カウンターの端。

凛太郎は、グラスを持ったまま、もう三口目を飲まずに止めている。

(……なんなんだ)

仕事は、順調だ。プロジェクトも、問題ない。

黒田とも、うまくいっている。

それなのに。

胸の奥に、小さな引っかかりがある。

言葉にできない。だから、飲んでいる。

凛太郎は、ため息をつくようにグラスを傾けた。


「……悩み事?」

不意に、隣から声がした。

反射的に顔を上げる。

年上?同い年か少し上くらい。

柔らかい雰囲気で、スーツだけど、少し力が抜けている。

「いや……」

否定しかけて、凛太郎は言葉を止めた。

(……なんでだ)

その人は、軽く笑って言った。

「ごめん。 でも、 飲み方が悩んでる人のそれだったから」

凛太郎は、少し間を置いて答える。

「……そう、見えました?」

「うん。 考え事してるときの顔」

変に踏み込んでこない。距離も詰めない。

それが、逆に楽だった。


少しだけ、話す

「仕事?」

その人が、自然に聞いてきた。

「……まあ」

「うまくいってない?」

「……いえ」

凛太郎は、正直に言う。

「むしろ、 うまくいってます」

「それは厄介だ」

即答だった。

凛太郎は、思わずそちらを見る。

「うまくいってるのに悩むって、 自分でも理由がわからないでしょ」

……その通りだった。

凛太郎は、少しだけ苦笑する。

「同期がいて」

それだけ、口を滑らせた。

「前は、 気が合わなかったんです」

「でも、 今は……」

言葉が、止まる。

「うん」

凛太郎は、グラスを見る。

「……変な話、 してもいいですか」

凛太郎は、自分でも驚くくらい素直に言った。

「もちろん」

少し、間。

「…… 最近、自分の行動が よくわからなくて」

「ほう」

「ある人を、 目で追ってしまうんです」

言った瞬間、胸がぎゅっとする。

「別に、その人のこと 好きとかじゃない」

「ただ…… 気づくと、 見てる」

凛太郎は、自嘲気味に笑う。

「…… こんな俺、 変ですよねストーカー気質で」

一拍。

「正直、 気持ち悪いなって」

言い切ってから、グラスを掴む。


その人は、すぐには答えなかった。

少し考えてから、穏やかに言う。

「俺はね。変、ではないと思う」

「気持ち悪くもない」

凛太郎が、怪訝そうに見ると、続ける。

「ただ、その相手に “意識が向いてる”だけだと思うよ」

「理由がわからないから、 怖くなってるんだと思う」

凛太郎は、黙る。

「それさ」

少しだけ、声を落として。

「今すぐ 名前つけなくちゃいけないやつ?」

凛太郎の指が、グラスを握り直す。

「…… 放っておいても、 いいんですか」

「いいんじゃない?」

即答だった。

「気づいたら、 ちゃんと考えればいい」

「今は、 “自分がおかしくなってないか” 確かめたかっただけでしょ」

……図星だった。


「…… ありがとうございます」

凛太郎が言うと、その人は軽く手を振った。

「どういたしまして」

一拍。

「ちなみに、 俺はゲイだけど」

「だからって、 今日の話が 特別な意味を持つわけじゃないよ」

凛太郎は、少し驚いたが、拒否はしなかった。

「……なるほど」


居酒屋・会計前

グラスが空になる

凛太郎は、席を立つ準備をしながら言った。

「…… さっきの話」

「はい」

「助かりました」

それだけ。

名前も、肩書きも、聞いていない。

それなのに、ちゃんと受け取った感じがあった。

その人は、少し考えてから言った。

「じゃあさ」

凛太郎を見る。

「また、 モヤっとしたら」

スマホを、軽く持ち上げる。

「いつでも連絡しておいで。」

凛太郎は、一瞬だけ迷う。

(……別に、 何かするわけじゃない)

(ただ、 話を聞いてもらっただけだ)

「…… お願いします」

自分でも驚くくらい、自然に言えた。


連絡先交換

画面を見せ合う。

名前は、Eだけ

余計なスタンプも、その場のメッセージもない。

「ありがとう」

その人は笑う。

「どういたしまして」

一拍。

「答え、 急がなくていいからね」

凛太郎は、小さく頷いた。


店を出たあと

夜風に当たりながら、スマホを見る。

連絡先が、一件増えている。

それだけ。

でも、不思議と胸が軽い。

(……逃げ場、 できたな)

今すぐ使うつもりはない。

ただ、“話していい相手がいる”という事実だけで、十分だった。

凛太郎は、ポケットにスマホをしまう。

(よし)

(今は、 これでいい)


夜・自宅

スマホが、もう何度目かわからないくらい光る。

〈今日はどうでした?〉〈この前の話、少し考えてて〉〈変じゃないって言ってもらえたの、助かりました〉

送信してから、毎回ほんの少し後悔する。

(……送りすぎかな)

でも、既読はすぐつく。

〈大丈夫だよ〉〈藤原くんは考えすぎるタイプだね〉

短いけど、否定されない。

それが、今の凛太郎にはちょうどいい。


誘い

〈今日、時間ある?〉

一瞬、凛太郎の指が止まる。

〈あります〉

ほぼ反射だった。

〈じゃあ飲もう〉〈いい店、連れてく〉

「いい店」という言い方に、深い意味はなさそうだった。


店の前

繁華街の一角。

凛太郎は、立ち止まる。

ネオンの小さな看板。その下に、さりげなく書かれた文字。

GEY BAR……あ

一瞬で、理解した。

ここは、自分が普段選ばない場所だ。

胸の奥が、少しだけざわつく。

逃げようと思えば、今ならできる。でも。

(……別に、何かするわけじゃない)

そう、自分に言い聞かせる。

「大丈夫?」

隣で、お兄さんが笑う。

「無理なら、別のとこ行く?」

凛太郎は、首を振った。

「……いえ」

一歩、中に入る。


ゲイバーの中

思ったより、静かだった。

騒がしくも、挑発的でもない。

普通に、笑ってる人たち。

話して、飲んで。

(……同じだ)

凛太郎は、不思議な気持ちになる。

特別な世界だと思っていたのに。

ただ、人がいるだけだった。


カウンターで

「どう?」

お兄さんが聞く。

凛太郎は、少し考えてから答える。

「……思ってたのと、違います」

「だいたい、みんなそう言う」

グラスを傾けながら、続ける。

「ここにいる人たちも、仕事して、悩んで、飲んでるだけ」

凛太郎は、周りを見渡す。

自然体な空気。

(……世界、狭かったな)


凛太郎の中の変化

「俺」

凛太郎は、ぽつりと言う。

「こういう場所、来ると思ってなかったです」

「まあね、人生、だいたいそう」

軽い言い方。

でも、胸に残る。

凛太郎は、ゆっくり息を吐いた。

(知らない世界が、まだある)

(……それだけで、少し楽だ)


ゲイバー・カウンター奥

「ねえママ」

お兄さんが、カウンターの向こうに声をかける。

グラスを拭いていたママが、ちらっとこちらを見る。

「なに?」

「この子、ちょっと悩んでるの」

「ちょっとどころじゃないでしょ」

「お兄さんは何悩んでるの?」


凛太郎は、思わず姿勢を正す。

「……俺、ですか」

「そう。顔に書いてある「僕は困ってますー」って」

ママは、凛太郎を上から下まで見て、ふっと笑った。

「で? 仕事?人間関係?それとも自分?」

凛太郎は、一瞬迷ってから言う。

「……自分、ですかね……」


ママが、グラスを一つ差し出す。

「まあ、飲みなさい。話はそれから」

凛太郎は、言われるままに一口。少し甘い。

「で」

ママが肘をつく。

「何に悩んでるの」

凛太郎は、言葉を選ぶ。

「…… 自分が、 よくわからなくて」

「はいはい」

もう一人のママが、会話に入ってくる。

「それ、この店で一番多い相談」

凛太郎は、苦笑する。

「ある人を、目で追ってしまうんです」

「ほう」

「別に、たぶん。好きとかじゃないし…」

「はいはい(二回目)」

遮られた。


「ねえ、」

最初のママが言う。

「“好きじゃない”って、どうして決めつけてるの?」

凛太郎は、言葉に詰まる。

「……」


「いい?」

グラスを置く。

「世の中にはね、“好き”の前に“慣れる”とか “安心する”とか“気づいたら見てる”があるの」

「順番、過程は、人それぞれ」

凛太郎は、じっと聞く。


「それにさ」

もう一人のママが、肩をすくめる。

「相手が男でも女でも、 誰かを目で追っちゃうのなんて 珍しくもなんともない」

「それを “変だ”って決めてるの、あんた自身よ」

凛太郎の胸が、少しだけ痛む。

「……」

「悩んでるってことは」

最初のママが、やさしく言う。

「ちゃんと、 自分を大事にしてるってこと」


凛太郎、少し笑う

「……ここ、すごいですね」

思わず出た言葉。

ママたちは、同時に笑った。

「でしょう」

「人生相談所だから」

凛太郎は、グラスを見つめる。

(世の中には、こんな方たちもいる)

(こんな考え方も、ある)

胸の奥で、何かがほどける。


「答え、急がなくていいのよ」

ママは、はっきり言った。

「ただし」

一拍。

「自分を気持ち悪い扱いするのは、今日で終わり」

凛太郎は、小さく頷く。

「……はい」

「それで十分」


帰り際

店を出る前、凛太郎は一度振り返る。

ママたちは、もう次の客と話していた。

でも、確かにここに居場所があった。



店を出て、お兄さんと並んで歩く。

繁華街を抜けると、急に静かになる。

「駅、こっちで合ってます?」

「合ってる」

短いやりとり。

でも、気まずさはない。

凛太郎は、ポケットの中のスマホを思い出す。

お兄さんのライン表示されているのは、Eだけ

(…そういえば)

凛太郎は、歩きながら言った。

「……あの」

「ん?」

「お名前、聞いてなかったなって」

言ってから、少しだけ照れる。

お兄さんは、一瞬だけ目を丸くして、すぐ笑った。

「あ、ほんとだね、」

「古澤瑛太」

凛太郎は、頭の中で一度だけなぞる。

(古澤……瑛太)

「……あ、藤原凛太郎です」

「知ってるLINEフルネームだもん」


改札が見えてくる。

「今日は、ありがとうございました」

凛太郎が言うと、瑛太は軽く頷いた。

「こちらこそ」

一拍。

「無理しなくていい」

「答え、急がなくていいから」

「またおいでね。」

凛太郎は、小さく息を吸って頷く。

「……はい」


別れたあと

改札を抜けてから、凛太郎はスマホを見る。

連絡先。

E → 古澤 瑛太になおす。

それだけで、少しだけ現実味が増す。

(……不思議な夜だった)

でも。

(悪くなかった)

凛太郎は、スマホをポケットにしまって、ホームへ向かう。




打ち上げ・小さな居酒屋

大きな会議は無事に終わった。

大きな拍手も、派手な成功談もない。

でも、確かに「やり切った」と言える夜。

向かいには、黒田がいる。

「お疲れ」

「お疲れ」

グラスが軽く触れる。それだけ。


会話は、仕事の延長みたいなもの。

「支店長、あの反応なら大丈夫そうだな」

「うん。想定より前向きだった」

淡々としたやりとり。

でも、凛太郎は気づいている。

黒田が、いつもよりよく笑うこと。

自分が、それを目で追っていること。

(……やめろ)

そう思うほど、意識してしまう。


沈黙。

凛太郎は、グラスを見つめたまま言った。

「……なあ」

「ん?」

「俺さ」

一瞬、喉が詰まる。

ここで言わなければ、たぶんもう言えない。

「…… お前のこと、 気になってる」

黒田の動きが、止まる。

凛太郎は、続けてしまう。

「好き、とか…… 正直、 よくわかんないけど」

「でも……」

言葉が、震える。

「一緒にいると、 落ち着くし」

「目、 追ってるし」

「……多分、 好きだ」


はっとする凛太郎

言った瞬間。

(……あ)

凛太郎の中で、一気に酔いが引く。

(なに言ってる)

(最悪だ)

(せっかく、 ここまで来たのに)

黒田は、何も言わない。

沈黙が、重い。

凛太郎の心臓が、嫌な音を立てる。

「……ごめ」

言いかけて、止める。

(キモがられた)

(終わった)

(もう、 一緒に仕事も……)


黒田が、口を開く

「……俺さ」

低い声。

凛太郎は、顔を上げられない。

「それ、 俺だけだと思ってた」

一瞬、意味がわからない。

「……え?」

凛太郎が顔を上げる。

黒田は、視線を逸らしたまま言った。

「藤原のこと、 気になってるの」

一拍。

「……俺だけだと 思ってた」


一気に、顔が熱くなる。

「……そんなばかな、」

思わず、目を逸らす。

「そんな顔で 言うなよ」

黒田は、笑いを噛み殺している。

「なに」

「だって、 嬉しいんだから仕方ないだろ」

凛太郎は、グラスを持つ手が落ち着かない。

(……なんだこれ)

(心臓、 もたない)


さっきまでの緊張が、嘘みたいに消える。

まだ、どうするかは決めていない。

でも。

「……俺さ」

凛太郎が、小さく言う。

「勢いで言ったから」

「うん」

「今すぐ、 どうこうって話じゃ……」

「わかってる」

黒田は、即答する。

「それでいい」

一拍。

「ただ」

凛太郎を見る。

「俺も、 同じ気持ちだってことだけ 伝えたかった」


余韻

二人の間に、静かな空気が落ちる。

気まずさは、ない。

むしろ。

(……近い)

凛太郎は、そう思って、また目を逸らした。


翌日・オフィス

「お、おはようございます」

……声、硬っ。歩き方ヘンテコ

黒田が振り向く。

「おはよ」

いつも通りのトーン。

なのに。

凛太郎は、一瞬目を合わせて、即逸らす。

(見るな)(見るな)(昨日の笑顔思い出すな)


デスク横ですれ違う

「資料、後で――」

「あ、はい」

被せ気味。

黒田が一瞬だけ間を置く。

「……早いな」笑う黒田。

「……すみません」と謝る凛太郎。

謝る必要、ゼロなのに。


会議中

黒田が発言するたびに、無意識に頷いてしまう凛太郎。

(同意しすぎだろ)

自分でツッコミ入れて、また顔を伏せる。

恭助はめちゃくちゃ楽しそう。

凛太郎が目を逸らすたびに、口角が上がるのを必死に抑えてる。


凛太郎の内心

(昨日、 あんなこと言って)

(今日、 どう接すればいいんだ)

(普通だ、 普通でいけ)

んんん。やっぱ……無理。


社内・空き会議室

ドアが閉まる。

「……」

黒田が、腕を組んで凛太郎を見る。

「挙動不審」

「……」

凛太郎は、一拍遅れて言う。

「だ、どうしたんだ黒田」

「どうしたも何も」

黒田は笑う。

「今日はずっと」

「目合うと逸らすし」

「話かけるとオドオドしてるし」

「歩き方変だし」

「……そんなに?」

凛太郎が、本気で驚く。

「まじか、俺」

黒田は、堪えきれず笑った。


「気にしすぎ」

黒田が笑いながら言う。

「そんな肩に力入れなくていいよ」

凛太郎は、少しだけ眉を寄せる。

「……力、 抜けたら苦労せん」

「だろうな」

黒田は即答する。

それから、少し考えて言い直す。

「“普通”とかさ」

凛太郎を見る。

「そういう基準、 もう使わなくていい」

凛太郎が、小さく瞬きをする。


「昨日のあとで、 前と同じなわけないし」

「変わったの、 悪いことじゃないだろ」

一拍。

「藤原が今、 ぎこちないのも」

少し笑って。

「ちゃんと向き合ってる 証拠だと思うから。ありがとうね」


凛太郎は、一瞬だけ言葉を失う。

それから、小さく息を吐いた。

「……そう言われると、嬉しい。」

黒田が笑う。

凛太郎の声は柔らかい。

ドアに手をかけて、黒田が言う。

「さ、 戻ろ」

凛太郎は、一拍遅れて頷く。

「……ああ」


ドアが開く。

廊下の空気が、いつもと同じ顔で流れ込んでくる。

仕事も、プロジェクトも、何も変わっていない。

でも。

凛太郎は、一歩踏み出しながら思う。

(変わったままで、 進めばいい)

黒田の背中を見て、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。



想定外の修正依頼がやってきた。支店に急いで向かう2人。だけど担当者不在。電話、折り返し、待ち。

「……今日中に戻れますかねこれ。」

「むりだね」

凛太郎の声が、少しだけ硬い。

戻れなかった

終電も終わってる。


旅館前

「……一部屋、ですか?」

凛太郎、完全にフリーズ。

「うん」

黒田は即決。

「しかもここ、結構いい旅館じゃん」

「経費で泊まれるならラッキーでしょ」

「いや、そういう問題じゃ……」

言いかけた凛太郎を置いて、黒田はフロントに向かう。

(相変わらず真面目すぎ)

そう思いながら、ちょっとだけ嬉しい。


部屋

広い。無駄に広い。

しかも。

料理、ハート型。

盛り付け、完全にカップル向け。

凛太郎、目が泳ぎっぱなし。

「……これ、 俺たち向けじゃなくない?」

「気にしたら負け」

黒田は平然と座る。


食事中

酒が進むにつれて、凛太郎のガードが緩む。

「黒田さ」

「ん?」

「ほんと、すごいよな」

急に始まる。

「相手の懐入るの上手いし」

「今日も、あの支店長」

「俺なら絶対ああはならんもん」

止まらない。

「正直」

少し間を置いて。

「……おれさ。すっっっっごーーく助けられてるありがとう(満面の笑み)」

黒田はグラスを置く。

黒田の肩に頭を乗せる凛太郎

「……飲み過ぎ」

黒田の声が、低くなる。

「そんなこと言われたらさ」

「俺……」

「止められなくなるんだけど」


凛太郎の返事がない。

黒田は凛太郎の顔を見る。

……寝てる。めちゃくちゃ無防備。

黒田、小さく笑う。

「……かわいい」

自分でも驚くくらい、自然に出た言葉。


布団まで運びながら【回想】

本当はずっと後悔してた。

(あの時自分の気持ち,ちゃんと話せばよかった)

会議室に入ってきた凛太郎を見た時。

(……え)

心臓が跳ねた。

同じチームと聞いた時すごく嬉しかった。

でも拒否されても、距離を取られても。

(仕方ない)

そう思ってた。


変わった瞬間

一緒にミスを乗り越えた日。

凛太郎が言った。

「黒田の聞き方があったからです」

その一言で、全部ひっくり返った。ほんとに嬉しかった。

(ああ)

(俺、ずっとこの人に見て欲しかったんだ。)


それからというものどうしても何をしてても凛太郎のことが脳内から消えない。何をしていても目で追ってしまう自分に嫌気がさしていた。

「…多分好きだ」

こう凛太郎から言われた時心臓が止まったかと思った。夢でも見てるのかと思った。

自分だけだと思っていたのにまさか向こうも思ってくれていたなんて。考えもしなかった。


現在・旅館

凛太郎を布団に寝かせて、そっと手を離す。

凛太郎は、何も知らずに眠ってる。

黒田は、少しだけ距離を取って座る。

「……ずるいよ」

小さく呟く。

「そんな顔で」

「俺を信頼して無防備で」

「襲われたらどうするんだよ。俺だからよかったけどさ」

灯りを落とす。

「でも。おれは急がない。」

凛太郎の寝顔を、一度だけ見て。

「一緒に進めばいい」

そう決めて、目を閉じた。


灯りを落として、黒田は布団に横になる。

距離は、ちゃんと取ってる。

……つもり、だった。

凛太郎が、寝返りを打つ。

無意識のうちに

探すみたいに、手が伸びて。

次の瞬間。

ぐっと、抱きついてくる。

「……っ」

恭助の息が止まる。

凛太郎の額が、胸元に当たる。

腕が、しっかり服を掴んでる。

(……ちょ、聞いてないて。)

黒田は、一瞬だけ迷って。

ゆっくり、腕を外そうとした

でも。

凛太郎は、離れない。

寝息はすごく穏やか。

黒田は、小さく息を吐いて。

「……かわいすぎるよ。反則だわ。」

そう呟いて、そっと腕を回す。

守るように抱きしめる、

「起きたら絶対、 パニックだろうな」

「ぜったいかわいい」

そう思いながら、そのまま目を閉じる。


光。

障子越しの、柔らかい朝。

凛太郎の意識がゆっくり浮上する。

(……あったかい)

(布団、 こんな……?)

違和感。

息を吸うと

人の匂い。

一気に目が覚める。

視界いっぱいに、黒田の部屋着。

腕の中。

……俺。

抱きついてる。

「――――――っ!?」

声にならない声。

動こうとして、腕が絡まってることに気づく。

(え、待て)

(どういう状況)

(俺が?)

(黒田に?)

(え、それとも黒田が?!?昨日の夜そういう感じのことしてたの!?)

ゆっくり顔を上げると、黒田はまだ寝てる。

穏やかな顔。

近い。

近すぎる。

(……無理かっこよすぎる)

(心臓苦しい)


「……おはよ」

低い声。

凛太郎、

「っ……!」

黒田は、状況を見て。

一瞬だけ、困ったように笑う。

「昨日」

「藤原が抱きついて来た」

「俺、逃げ損ねた」

凛太郎の頭を撫でながらいう恭助。

凛太郎は顔が真っ赤。

「ま、 待って」

「違う」

「俺、 記憶なくて……」

「大丈夫」

黒田は、さらっと言う。

「何もしてない」

「ただ、くっついて来てくれて嬉しかった」

(近い)

(落ち着け)

(深呼吸)

(……でも)

「さ,起きよう。」

黒田の手が、名残惜しそうに離れる。


それを見て、余計にドキドキが止まらない凛太郎。

「かわいい。」

そんな凛太郎を微笑ましく見てる黒田


ー3ヶ月後ー

プロジェクトは無事に終わった。

そして今は会社チームのメンバーの皆さんとの打ち上げをしている。

会社のメンバーでの打ち上げが無事終わったので二人はその後、恭助の提案で、恭助宅で二次会を兼ねてプロジェクトを振り返ることに。テーブルに並ぶ書類や資料、写真を見ながら、二人だけで静かに話す。


凛太郎は、小さく息をつく。

「……無事、うまく行ったな」

笑みがこぼれる。

「本当に、よかった」

大変だったことを思い出し、自然と二人の話で盛り上がる。

「でも、黒田とだから、乗り越えられたんだと思う、俺」と自然にいう凛太郎


恭助は、少し照れながら堪える。

「人が喜ぶことを、簡単に言うよね。凛太郎は」

凛太郎、首をかしげる。

「え?そう?」

黒田「俺もたくさん助けてもらったよ。ありがとう」


凛太郎、照れながら顔を上げると、恭助がまっすぐ見つめている。

そのまま、恭助が自然に唇を重ねる。

凛太郎、顔が真っ赤になって、思わず小さく動揺。

「こ、その……おれ。…初めて…キスした」

恭助、微笑む。

「初めてもらえたんだ、俺。嬉しい」

そっとハグしながら、深く、丁寧にキスを重ねる。

そのまま、ベットに連れていく恭助

深いキスのあと、黒田の顔が近い。


「……黒田?」


凛太郎の名前を呼ぶ声が、もう前と違う。すごく甘く柔らかい声。


「名前で呼んでよ」

「…き、恭助」

恭助は、凛太郎の頬に手を伸ばして、親指でそっと触れる。

「大丈夫?」

逃げ道を残す問い。

凛太郎は、一瞬だけ迷ってから。

小さく、でもはっきり頷く。

「……うん」

その答えで、恭助の目が揺れる。



「じゃあ」

恭助は、低い声で言う。

「今日は、 ちゃんと一緒にいよう」

抱きしめ方が、さっきより深くなる。

凛太郎は、恭助の服を掴んで、離れない。

「……怖くは、 ない。恭助とだから。」

「俺もだよ」

額を合わせてくる恭助

「優しくするから」



キスは、ゆっくり。

確かめるみたいに、何度も。

触れるたびに、凛太郎の呼吸が乱れる。


灯りは落とされて、言葉は少なくなる。

触れる手も、動きも。

全部、丁寧で。

凛太郎は、途中で恭助の肩に顔を埋める。

「……思ってたより」

声が、震える。

「優しいね」

恭助は、何も言わずに抱きしめて。

そのまま、朝まで離さなかった。


夜明け前

静かな寝息。

凛太郎は、恭助の腕の中。

(……一線越えたな)

そう思うのけど不安はない。

ただ、落ち着く。

恭助は、凛太郎の寝顔を見て、小さく笑う。


朝・恭助宅

柔らかい朝日。凛太郎は、恭助の腕に包まれたまま目を覚ます。

(……なんだこれ)(幸せすぎる)

心臓が早くて、少しドキドキする。でも、これってどういう関係?初めての感覚に、困り顔になってる凛太郎

恭助はそんな凛太郎を見て、にっこり微笑む。

「おはよう、寝心地はどう?」

「え、あ、うん… ……最高……かも(//∇//)」恥ずかしそうに目を伏せる凛太郎。

「よかった」といい凛太郎を抱きしめる恭助


今日は休日。恭助の車で二人だけのドライブに行く。恭助のおすすめの夜景を見にきた。

「なあ、凛太郎」

「な、なに?」

「俺たちさ。 付き合おう」

凛太郎、思わず息を止める。「え……」目を大きく見開く。

「……え、今……」頭の中が一瞬パニックになる。

恭助は少し笑って、凛太郎の手をそっと握る。

「俺から言葉で伝えたくて」「これからも、凛太郎とずっと一緒にいたいから」


(……付き合う?)(でも、嬉しい)(初めて、こんなに安心する)

凛太郎の頬が熱くなる。視線を合わせると、恭助の優しい目が待っている。

「……あ、ああ、もちろん。俺も…一緒にいたい」

恭助、満面の笑み。「やった」そっとハグする。

凛太郎は驚きつつも、自然と体を寄せる。



凛太郎の頬が熱くなる。恭助はためらわずに唇を重ねる。深すぎず、でも確かに伝わる甘さ。

「……ん、黒田…」凛太郎の小さな声に、恭助は微笑む。

「かわいい。ねえ、恭助ってよんでよ笑」

「…恥ずかしいんだよ…」と照れる凛太郎

照れてる凛太郎を微笑ましく見ている恭助

「恭助…」

「なにっ?」

「す、…すー。すき。」

「おれもだよ」再び唇を重ね、自然にハグ。

凛太郎は体を恭助に預け、顔を埋める。夜景の光が、二人だけの世界を優しく照らす。


車に戻り、助手席でそのまま寄り添う二人。手を握ったまま、言葉は少なくても十分。

凛太郎の心の声

(初めての恋人って、こういう感覚なんだ。……幸せすぎる。)(ずっと、このままでもいいかも)

恭助は、凛太郎の頭をそっと撫でて、安堵の微笑。「そんな緊張しないで安心していいんだよ」

凛太郎、目を閉じて少し微笑む。


帰宅後

家に着くと、まだ少し手をつないだまま玄関を入る。恭助は凛太郎のコートを脱がせ、ソファーへ誘導。

「さ、座って」ソファーに座った二人は、自然に肩を寄せ合う。

夜景での余韻がまだ残る中、凛太郎は小さく笑う。「……なんだか、信じられないけど幸せ」

恭助も笑みを返す。「俺も。これからもっと幸せにするね」

ソファーで寄り添う二人、外の街の光も、部屋の明かりも、二人を温かく包む。

タイトル名は未定です。おすすめの案ありましたら教えてくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
初めてBL小説読みました キュンキュンエピソードが沢山で、どんどん読み進められました 次の作品も楽しみにしています✨✨
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ