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ワグテイルプロジェクト ~俺達のゲーム開発は前途多難(仮)~  作者: サイノメ
第6章 君のやりたいこと

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第40話 ホントと真実

「あの、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 ユウヤの質問に一同が吹き出しそうになる。


「な、な、な、なに、聞いてんのよ!」


 最初に言葉を返したのはコノハだった。

 しかし、その声は上ずっている。


「真顔でその質問って冗談きついよ?」


 黄島も愛想笑いのような笑みを浮かべて追従するが、額から頬にかけて一筋の汗が流れる。


「まぁ、噂が気になるのは確かだがな?」


 五嶋が天井を見上げながら脱力した姿勢で呟く。

 その瞬間、コノハ、黄島、そして黒瀬の鋭い視線が五嶋に一気に向けられる。


 一同のその様を見て、ユウヤはそのあからさまな態度に不信感にも似た物を感じる。

 新規開拓の営業で担当者と話した時、先方に隠したい事がある場合の態度に似ている。

 政治家や弁護士など四六時中、誰かと会話する仕事ならいざ知らず、多くの人にとって腹芸なんてもの、なかなか出来るものではない。

 むしろ想定外の質問を投げられた時の態度など、まるで創作の中の登場人物よろしく、露骨な反応を返すのがほとんどだ。

 その時と彼らの反応はまさに一致している。


「……結局のところ、どうなんです?」


 静かに再度問いかける。

 ユウヤ自身もこれまでのほろ酔い気分が消し飛んだように感じていた。

 つまり、完全な仕事モードでの問いかけ。

 相手の反応を冷静に見極めようとしていた。


「無い。あるわけ無い」


 そのユウヤの視線から逃れるように、黒瀬は顔を下に向けボソリと返した。

 面倒事は「知らない」で通す。

 自分に責任がある事ならいざ知らず、一般論の話ならそう返すのも処世術の1つと言えた。


「だめだな《《嘘》》は」


 唐突に声が響く。

 一同はその声の方向、つまり店の入り口側へ一斉に顔を向ける。


「お、お兄ちゃん!?」

「やあ、コノハ。それにみんな」


 最初に声をあげたのはコノハだった。

 その声にレイトがいつもと変わらない笑顔で左手を軽く上げて答える。

 見れば右腕の脇に何やら封筒を抱えている。


「どうして五竜軒(ここ)に?」

「IT部から、五嶋さん宛の書類を頼まれてね」


 そう言いながら脇に抱えていた封筒を掲げる。


「オフィスのデスクに置いても、五嶋さんが会社にいつ来るかわからないからね」


 そう言うレイトに対して、五嶋とスズナ以外のメンバーは大きく頷いた。

 やはり「五嶋は会社にいない」というのは二課の共通認識と言っていいだろう。


「そこで、届けに来たんだけど何やら議論が白熱していたので、少し待っていたってわけ」


 そこまで言うと、レイトは誰に進められた訳でもないが黒瀬の隣の席に腰を下ろす。

 そして、肘をテーブルに付けると両手を口の前で組んだ。


「さてと……」


 そう言うとレイトはテーブルを囲む面々を見回すと最後に黒瀬の顔を見つつ告げた。


()()()()、聴こうか?」


 付き合いの長い黒瀬にとって、レイトの笑みは下手な叱責より遥かに威圧感がある。

 この笑顔の時のレイトは、有無を言わさない。

 ただ、正確に理解していることだけを問いただす時の視線だ。


「『課金額に応じた排出確率操作は無い』。そう言ってしまう君の誠実さは称賛に値するけど、真実は語っていない。今は誠実さより真実を話すときじゃないかな?」


 ただその言葉はあくまで優しいままだ。


「……分かりましたよ」


 それでもなんとか逃げ道を考えていた黒瀬だが、ついに折れた。

 ただ、それでもそのことに触れるのは忌々しげな口調ではあった。


「確かに『排出確率操作は無い』というのは正しくない」


 黒瀬は静かに語りだす。

 それに対しユウヤは真剣な面持ちで聞き入り、スズナは興味深げに黒瀬の顔を覗き込む。

 そしてレイトは笑みを絶やさない。


「ユーザーの課金額は都度データ()ベース()に記録されている、だから各ユーザーの総課金額も簡単に算出できる。インターネット通販なんかと同じで、売上計算などに必要だからな」

「後はなにかトラブルが有った時の返金対応に必要な金額算出にも使うから、販売アイテムとの紐づけもね」


 黒瀬の説明に、黄島がそっと付け加える。

 それは本筋から外れているのだが、売買の話である以上、明確にしておいたほうが良いという黄島の判断からだ。

 それに対し黒瀬は「まあそうだな」と軽く相槌を打つのを見てユウヤは質問を投げる。


「つまり売上のデータを使えば、個々の課金データを反映させることができるってことですか?」

「ああ、そうだな。っていうかその辺りはDBの基礎だから、IT事業部の君も知っているんじゃないか?」


 その黒瀬の問い返しにユウヤは少し考える。


「ええ、売上のデータが存在していることは想定しています。ただそれが別のDBで管理してゲーム環境には反映させないとかも考えていました」


 ユウヤはそう言ったが、彼自身この方法を信じてはいない。

 何故なら複数のDBを使って簡単な数値の管理することにメリットを感じなかったからだ。


「じゃあ、なんで聞いたんだよってなるが、多分、君が聞きたいのは()()()だろ?」


 そう言うと黒瀬は足元に置いたカバンを持ち上げ中からノートPCを取り出す。

 そしてそれを開き、電源を入れる。

 起動したPCを軽く操作した黒瀬は、おもむろにそのモニターをユウヤの方へ向けた。

 そこには何かの模式図が描かれていた。


「これは俺が新人研修用に用意している一般的なアプリゲームのイメージ図だ」


 そう言いながらキーを叩くと図上に各部所の名称が表示される。


「まず端末のアプリ(クライアント)の情報はサーバーに送られ、それは数値ごとDBに記録される、ここまでは良いな?」


 その問いにユウヤだけでなくスズナも頷く。

 彼女もまた、ユウヤと同じように黒瀬の説明に聞き入っていたのだ。

 分からないなりに理解しようとするその姿に、ユウヤは自然と笑みがこぼれるが、すぐに表情を引き締める。

 ユウヤもまた理解するべき側の人間なのだからだ。


「ガチャが行われる時には、アプリの実行指示をサーバーが受け取り、排出キャラクターとその排出割合を元に乱数計算が行われ、排出キャラクターが決まる」


 そう言いながら、再びキーを叩く。

 画面内の図に矢印が表示される。

 その矢印は今の説明をなぞるように動いていく。


「これが一般的なガチャの流れだ。これだけならキャラクター確定までは必要最低限の情報を参照するだけなんで、付加情報が入る余地はないし入れる必要もない。つまり『無い』となる訳だ」


 そこまで説明すると黒瀬は一息入れるとばかりに手元のビールを口にする。

 ついでから時間に経っているビールはやや炭酸が抜け少し温くなっていたが、軽く休憩するにはそのほうが良かった。


「『だけど』だね?」


 ビールを口につけているとレイトが横から口を挟む。

 そこで、口の中の液体を飲み込むと黒瀬は話を続ける。


「実行指示を受けた時に、当然ユーザーの情報を参照するんだが、その時に総課金情報なども入れればユウヤの言った課金額に応じたガチャ確率を指定できる」


 その言葉を聞いてスズナは口元を手で覆い目を見開いた。


「でも、黒瀬さんはそれでも出来ないと言うんですよね?」


 一方のユウヤは確認を投げる。

 それに対し黒瀬は神妙な面持ちのまま「ああっ」と頷く。そして。


「今さら法律の問題とは言わない」

「技術でも、法律でもない問題……?」


 静かにそう言う黒瀬はどこか覚悟を決めたようだったが、ユウヤはてっきり法的問題を持ち出すと踏んでいたのでその言葉に驚いた。


「まあ、最終結論はちゃんと話すから。順番だてて」


 ユウヤを制止した黒瀬は話を続ける。


「まず、本当に課金別優遇を仕掛けるとなると、先ほどの話のように実行時のユーザーデータの参照箇所を増やす必要がある」


 そう言いながら、図上の「DB」と書かれた場所を指で軽く叩く。


「この場合、総課金額だとあからさまなんで、まぁ直近一ヶ月のとして……、そのデータを参照するように設定する」


 黒瀬がPCを自分の方に向け直すと何やら入力を始める。


「それでその課金額ごとに設定した排出確率のテーブルを参照して抽選を行う……っと」


 ターン!


 勢いよくキーを軽く叩くと、再びPCをユウヤ達に向ける。

 モニターにはメモ帳が開かれており、そこには以下のように書かれていた。


 —----------------------------------------


 10000円以上 グループA


 9999円以下 グループB


 —----------------------------------------


 グループA テーブルA1参照


 グループB テーブルB1参照


 —----------------------------------------



「単純にすると、こんな感じだな」


 そう言いながらユウヤたちを見る。

 ユウヤは顎に人差し指を当てメモを見ている。

 横のコノハは見慣れたものとばかりに興味なさそうにしており、スズナは首を傾げて考え込んでいるようだ。

 決して難しくない内容ではあるが、慣れないスズナには1から頭の中で構築しながら理解が必要なのだろう。


「テーブルっていうのはこの場合、キャラクターの提供割合、つまりどのキャラクターが何%で出るかを示した表のことだよ」


 そんなスズナを見て、レイトが軽く説明をする。

 その間に考えをまとめていたユウヤは口を開く。


「これ処理自体は簡単ですよね」

 

 黒瀬は少し頷き、続きを促す。


「だけど、実際はグループをもっと細かくしなくてはいけないし、そのグループ分だけ参照する提供割合のテーブルを作らないといけないので非常に手間がかかる。だから非効率的なので出来ないとしている」


 そう言うとユウヤは証明終了とばかりにテーブルに両手を乗せる。

 ユウヤの行動に対し、回答を待つ一同の視線が黒瀬に向けられる。

 見れば黒瀬は両手を組んで俯いていた。

 何かを考えているような仕草だったが不意に顔を上げる。


「ん~、70点ってところか。たしかに新しいガチャを1つ設定するたびに用意するテーブルはグループの数だけ用意しないといけないから大変だけどな!」


 そう言う彼の顔は笑顔に満ち溢れていた。

 ユウヤが見事に引っかかったと言わんばかりである。

 見れば五嶋、黄島、コノハが必死に笑いをこらえようとしている。

 レイトはいつもの微笑を浮かべていたが終始ユウヤの方を見ている。

 ただスズナだけが状況が分からず首を捻っていた。


「……70点なら、残りの30点分教えて下さいよ!」


 たまらずユウヤが叫ぶ。

 その姿が可笑しかったのか少し笑いながら黒瀬は「分かった」と大きく頷く。

 当然、ユウヤは面白くないので自然と表情が険しくなる。


「そんなに睨むなよ、教えるから」


 まだ少し笑いの余韻を残しながらも、黒瀬は片手を顔の前で垂直にあげ謝る仕草をする。


「別に怒っていませんよ」


 明らかに不機嫌そうな口調でユウヤが返す。

 それを見て黒瀬はからかい過ぎたかと思いつつも話を再開した。


「蒼馬の認識はだいたい正しかったよ、だから70点だ、では残り30点はというと《《見積もりの甘さ》》だな」

「見積もりの甘さ?」


 先ほどまでの態度も忘れてユウヤは思わず素で聞き返すと、黒瀬は大きく頷く。


「ああ。蒼馬はさっき『処理自体は簡単』と言ったよな。それは正解だが、それがお前の判断を狂わせたってところだ」


 その言葉にユウヤは頭に「?」を浮かべながら考え込む。

 思い当たることがまるで無いからだ。


「ならそうだな、蒼馬はお気に入りのキャラがピックアップされたらガチャを回すか?」

「そりゃあ、当然回しますし、()()()()()()()()()()


 当然とばかりに答えるユウヤに黒瀬はニヤリとする。


「それが()()()()()()()()だよ」

「えっ!?」


 勝ち誇るように言う黒瀬の言葉にユウヤは驚く。

 そして、自分の言葉を反芻する。


 -ピックアップガチャは回す

 -必要なら課金もする


 -ガチャを実行するたびにデータを参照する

 -参照データに課金額を入れる


「あっ!!」


 突然、雷光が襲うようにユウヤの脳内に閃きが走った。


「そうか、そう言うことか!」


 納得した顔で頷くユウヤ。

 ユウヤが答えにたどり着いていることを確信している黒瀬も大きく頷いた。


「ね、ねえお兄ちゃん、答え教えてくれる?」


 そんな中、一人取り残されたかのように感じたスズナが、恥ずかしそうにユウヤにたずねる。

 元々スズナはゲームをやっていても、内部構造については素人である。

 IT関連事業に携わっていたユウヤと比べれば、当然専門知識など皆無だ。

 それでも仕事としてたずさわる以上、少しでも彼らに近づきたいと思うのがスズナの思いだった。

 それを感じたユウヤはスズナの方を見ると少し微笑む。

 仕事場オフィスでは見せないその笑顔にスズナは笑顔で答え、それを見ていたコノハは少しドキリとした。


「さっき、オレがガチャ実行するたびに課金情報を参照すればいい的な事を言っただろ?」


 あくまでやさしく教えるように語りかけるユウヤ。

 それに対しスズナは静かに頷く。


「でもピックアップされているとはいえ、1回のガチャでキャラクターが出るとは限らないよな。スズナならどうする?」

「えっ!? い、石やお金があるなら、もう1回続けてやるかな?」


 突然話を振られたことで驚きつつもスズナは回答する。


「ああ、人によりけりだけど出るまで連続で実行するなんて珍しいことでもないよな。そうすると何度もDBにアクセスし情報を取りにいかないといけない。でもそれを何十何百あるいは何千という人が一斉に行うからサーバーに負担がかかるんだ」


 ユウヤの言葉にスズナは、一軒家の入口に何人も人が押し寄せる。そんなイメージが浮かんだ。

 それにより内容をなんとなく掴めた。

 だが同時に疑問も浮かんだ。


「でも同じデータを読み込むんだからアクセスする人が多い以外、負担になるところは無いんじゃないかな?」


 思いついた疑問を口にする。

 それはユウヤの想定どおりの質問だった。


「ああ、同じデータならそうだけど、必ずしも()()()()()()()()()()()()()()んだ」


 その言葉にスズナは首を傾げる。

 連続で同じガチャを行っているのであれば、所持している石が減る以外は同じでじゃないのか?

 石の量であれば、そもそも足りなければガチャを実行できない訳だし……。

 スズナは困り顔で考えているのでユウヤは答えを出すことにした。


「要は毎回課金額をチェックしている仕様なんだが、課金額は変わる可能性があるんだよ」

「課金額が変わる? ……あっ!!」


 そう言われてスズナもようやく気がついた。

 推しキャラが出ない時にやる行動は……。


「そっか、石が足りなくなったから補充するために課金することが有る訳か! だから毎回課金額を参照する必要があるんだね?」


 パンと胸の前で両手を叩いて納得するスズナ。

 それを見てコノハは、スズナは自分が想定しているより頭の回転が早い事をしって微笑んだ。


「そう言うこと。つまり毎回課金額のデータを参照してのグループ分けが同時に何百何千と行われるのでサーバーを圧迫してしまうって訳だ」


 ユウヤも得意そうにそう言って頷いたのを見て黒瀬は話を継ぐ。


「ついでに言えば、課金額ごとに別のテーブルを実装なんてやったって所詮は確率の修正。外れる時は外れるんだからユーザーが納得する結果になるとは限らない。ならそんなことをサイレントで実施するだけ意味は無いんだよ」


 話は終わりと黒瀬は再びビールをあおり、ユウヤもそれに倣った。


「ところで、お兄ちゃん。五嶋さんへの用事ってなに?」


 話が一区切りしたところでコノハはレイトに話しかけた。

 と言うよりコノハはレイトが小脇に抱えている封筒が気になって仕方なかったのだ。


「うん? そうそう、これの内容を確認してほしくてね」


 そう言うとA4サイズの紙が入る程のサイズの封筒を五嶋に渡した。


「こんなものデスクに置いておけばいいものを……」


 封筒を受け取りつつ五嶋がぼやく。

 心底、面倒くさそうである。

 そんな五嶋にレイトは笑顔で答える。


「デスクにおいておいたら、基本在宅業務の五嶋さんはいつ確認するんです?」

「え~と……」


 至極当然なレイトのツッコミに対する答えに窮した五嶋は誤魔化すように封筒を開く。

 中から数枚の紙を取り出し、その内容を確認し始める。


「それでIT事業部(むこう)の所感は?」

「『才能は申し分ないが、対人、コミュニケーションにやや難あり』だそうです」


 五嶋の質問にレイトはテキパキと答えるが、どこかあきれたように肩を竦める。


ゲーム開発部(うち)は真っ当な部署であって奇人変人の集まりじゃないんだがな……」


 その言葉にユウヤは思わず周囲を見回す。

 そしてスズナとレイト以外も同じようにしている。

 それぞれが『自分は常識人で変わり者は周りだ』と言わんばかりの行動に辟易しつつも、五嶋の手にある資料が気になる。

 それを知ってか知らずか、五嶋は紙を振りながらコノハの方を見る。


「プログラマの求人に応募があったそうだから、履歴書確認して感想を管理部と俺にくれ」


 そう言うとコノハに紙の資料を渡す。


「今どき紙の履歴書ですか?」


 コノハは珍しそうにそう言うと紙を受け取る。

 それを見ていたレイトは小声で「プリントアウトだよ」と言うがコノハに届いたかは分からない。


「これなんて読むんだろ……ミドリ……?」


 スズナの声がユウヤの耳に届く。

 思わず身を乗り出して履歴書を覗こうとしたが、コノハはすぐに身体の向きを変えてしまったので内容を見ることができない。


「上に読み仮名書いてあるだろ……『リョクヤ』だ」


 その言葉を聞いた瞬間、ユウヤは嫌な予感に襲われた。

 プログラマで『リョクヤ』、IT事業部に確認が飛ぶということは取引関係先の人間……。

 そこまで考えると、思い当たる人物が一人いるのだ。

 だが、ユウヤ自身は二度と関わりたくないと思う人物である。


「元はどこにいた人です?」


 五嶋に向けて放った言葉。

 それは、その人物ではないと一縷の望みを掛けてのものだった。


「元二階堂興産のシステムエンジニア部にいた緑谷(りょくや)ヒサシって人だよ、蒼馬は彼のこと知っているだろ?」


 緑谷ヒサシ。

 二階堂興産にて辣腕をふるった若きプログラマー。

 かつてユウヤがIT営業で挫折した理由の1つに、彼の存在があった。

 そして、その名前を聞いた瞬間、ユウヤの酔いは完全にさめ、かつての記憶が走馬灯のように襲いかかってきたのだった。


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