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ワグテイルプロジェクト ~俺達のゲーム開発は前途多難(仮)~  作者: サイノメ
第4章 大乱闘!!企画コンペティション

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第25話 不正弾劾

「これはまた広い会議室ですね……」


 思わずユウヤは驚きの声をあげた。

 受付で訪問の旨を伝えたところ通されたのが、20人は余裕で入りそうな会議室であった。

 だがそこは殺風景であり、ホワイトボードすら置かれておらず。

 横に長い部屋には長テーブルと椅子のみが置かれていた。


「あまりにも対応が早すぎたので、大量の人員で乗り込むと思われちゃったのかな?」


 普段と変わらない感じに笑顔でレイトがつぶやく。

 どうやら彼だけは動じておらず、周囲の調度品などに目を輝かせている。

 その様子を見ていると、彼がコノハと兄妹であることがよく分かる。

 レイトの行動はコノハとそっくりだったから。


「レイト君、落ち着いてくれるかね」


 一色が思わず注意をする。

 とても30代前半男性に向けての注意とは思えないモノであるが、一色の立場的には言わざるを得なかった。

 レイト自身もその言葉に素直に従い席についたのだが、もし担当者がその間に現れたらと思うと一色は胃がキリキリと痛む思いだった。


(浅川部長の言っていたことはコレか……)


 以前、浅川にレイトを戻す相談をした時に指摘されたことを思い出す。

 確かに彼を制御するのは難しい。

 今後の対応を検討したほうがいいだろう。

 そんなことを考えていると、ドアをノックする音が響く。

 レイトを除く全員が弾かれたように姿勢を正す。

 次の瞬間、ドアが開く。


「失礼いたします」


 扉をくぐってきたのは高級そうなスーツを着た男性が3人。

 体型こそバラバラだが、それぞれに貫禄がある。

 恐らく最後に入ってきた人が一番の若手(と言っても恐らく一色と同じくらいの年齢に見える)だろうか、扉をくぐると優雅な動作で回れ右をして扉を閉めた。

 それまでの間にユウヤたちは立ち上がり一礼する。

 ふとユウヤはレイトを見るが、彼もまた同じくらいの深さで礼の姿勢を保っていた。

 傍若無人だが状況をわきまえる。

 そんな彼の一面を見たような気がした。


「どうぞ席に着いてください」


 中央の男性がユウヤたちに促す。

 その言葉に応じたユウヤが顔を上げた瞬間、絶句した。

 相手側は既に着席しており、その姿勢で話しかけていたのだ。


(これは名刺交換からって訳にはいかないか……)


 困惑は隠しきれないが、相手のペースに乗せられる訳にはいかない。

 その時は自分たちに降りかかる被害は想像がつかない。

 恐らく講読館はどちらにしても、今回の件を公表しないだろう。

 だがIT、ゲームいずれも業界は人が思うよりはるかに狭い。

 不正の疑惑が有るとされれば、たちどころに広まってしまう。

 その先にワグテイルが倒産となる可能性は低いだろう。

 しかし、長く厳しい再建の道が待っているのだ。


(どのみち実の無い勝負だな、勝てば今まで通り、負ければご破算なんて……)


 そしてその未来を握るのは()()()()()()()()()()()()()()()()彼らなのだから。

 心の中で彼らを鋭く睨みつけながらユウヤは、あくまで平静を装った。

 その間に一応、彼らは自己紹介をし、一色がメンバーを紹介し返した。


「始めに御社が弊社と結んだ契約について、確認させてください」


 端に座る若手が口を開く。


「IT事業部は、御社のネットワーク改修と保守に関する業務委託になります」


 倉科が立ち上がり契約について答える。

 その後に「細かい契約内容についてもお話しますか?」と付け加えるが返事はない。

 恐らく手元のPCには契約書のファイルが映されているのであろう。

 それでいて敢えて聞いて不審な点が無いか確認する方法だ。

 矛盾点を追求する方法ではあるが、回答者の間違いや勘違いで精度が落ちる方法でもある。

 その点から見れば、担当者は真偽の確認ではなく吊し上げていく魂胆であることが見え透いている。

 そしてもう一つ。

 それを確認するためにもネタを仕込む必要がある。

 ユウヤはそのタイミングを見計らっていた。


「続きまして、ゲーム開発事業部としての契約ですが……」


 倉科からこれ以上の説明は不要と判断した一色は、ワグプロ側の契約について話を始めようとする。


「ああ、契約内容は分かっています。弊社の漫画を使用権とゲーム開発運用に関する業務代行ですね」


 例の若手が話を遮る。

 それをユウヤは奇妙に思った。

 そしてレイトは若手の反応を楽しそうに見ている。

 ユウヤと同ようにレイトも何か手を考えているようだった。


「では弊社より事実確認をさせて頂きます」


 若手はそう言うと中央の男に視線を送る。

 すると中央にいた初老の男が禿げ上がった頭を前に倒す。

 ユウヤは挨拶をしたのかと思ったが、よく見れば立ち上がるために前かがみになっただけだった。


「ここからは責任者である私から確認させて頂きます」


 立ち上がった男はユウヤたちを舐め回すように見た後に話を続ける。


「倉科さん、でしたね。今回御社が提示されたネットワーク更新に関する見積もりですが、御社がパッケージとして販売しているサービスよりかなり金額が低いようですが」


 その言葉にユウヤは心の中で驚いた。

 どうやら事前にワグテイルの公式サイトでサービスの価格をチェックしているらしい。

 当然と言えば当然なのだが、それをチェックしない担当者などいくらでもいる中で、確認を取っていたことは素直に驚くべきことだった。


「それにつきましては、御社担当の井上様とお打ち合わせさせて頂いた上でこの金額に設定いたしました」


 倉科は自信ありげに回答する。

 実際に講読館の担当、井上とは数ヶ月にわたる打ち合わせを繰り返していた。

 その結果、導入する機能を絞ることと、使用するツールのライセンスのまとめ買いによる割引ボリュームディスカウントの結果、達成した価格であった。

 その説明をするため倉科がPCを開いたが、担当者たちから指摘は無かった。

 通常このような場ではPCを起動させない。

 それは通信によって外部から指示を与えさせないなどのためであるが、それを気にしている風ではなかった。

 それを見逃さなかったユウヤも何食わない顔でPCを開く。

 そして社内Wi-Fiを捕まえて接続する。

 問題なく講読館の社内ネットワークへアクセスに成功した。

 そんなユウヤの行動を気にする様子もなく中央の男から質問が続く。

 恐らく壁に描かれているゲスト向けの回線に接続したとでも思っているのだろう。


「しかし、細かい条件面を確認いたしましたが、この手のツールにしては端末(クライアント)1つあたりの価格がかなり安いみたいだが」

「これはそのツールの強みの1つです。導入や管理にかかる手間が少ないため導入と年間ライセンスが安い訳です」


 そういう倉科は今が実質的な査問であることを忘れたかのように普段のセールストークのような説明をする。


「1ついいですかな」


 それを聞いていた一番奥手に座っていた男が倉科の説明に割って入る。

 年齢的には中央の男と対して変わらない感じであるが、物腰は柔らかそうであった。


「根本的なお話ですが、御社はなぜ同じタイミングで異なる提案を弊社へしていただけたのですか?」


 その言葉に倉科と一色は回答に困った。

 そもそもIT事業部とゲーム開発事業部は同じ会社に属しているとは言え、業務内容が異なりすぎている。

 そのため社内の経営会議などでの報告が有っても双方であまり内容を気にしていなかった。

 それに企画の持ち込みや営業をかけた理由については別々の理由があるのだが。


「もしかして、ダンピングを疑われているのでしょうか」


 これまで黙っていたユウヤが口を開いた。

 そのあからさまにストレートな質問に担当者たちは鼻白む。

 一見すれば新人社員にも見える青年が不遜な聞き方をしてきたのだ。

 彼らからしたら面白いわけがない。


「そろそろ、腹を割って話をしたほうがいいかと思いまして」


 そんな担当者の気持ちを汲む必要は無いとばかりにユウヤは話を続ける。


「少なくとも弊社側としましては、規定より安い価格で提供しているつもりはございません」


 あくまで冷静に言葉を選ぶ。

 要は相手と同じことを仕掛けるのだ。

 相手のペースを崩しこちらのペースへと持ち込む。


「もし不当廉売だと言われるのでしたら、証拠をご提示いただけませんでしょうか」


 その言葉に対して、中央の男が勢いよく立ち上がる。

 その顔は怒っていると言わんばかりに赤く染まっている。


(これで、よく法務部なんて務まっているなぁ。)


 ユウヤはまた心の中でつぶやく。

 とは言え相手がペースを乱しているのは間違いない。


「いい加減にしろ、私は()()()()()()()()()()()()()()()!!」


 その言葉に会議室にいる全員が驚きの顔をする。

 その中で男は自慢げに自分のPCを背後の大型モニターにつなげ、画像を表示した。

 ユウヤはそのモニターを凝視する。

 そこには倉科と、ユウヤは知らない人物が映っていた。


「これは、我が社の5階給湯室付近に設置された防犯カメラの映像だ」


 音声のない動画の中で倉科はなにかの包を受け取っているのが映し出された。


「会議室ではなく、こんな廊下で影に隠れるように物品の受け渡しが行われているのが何よりも証拠だ」


 鼻息を荒くしてまくし立てる男は勝利を確信した笑みを浮かべる。


「いや、これは御社の週刊少年キープを渡されただけですよ」


 生真面目に答える倉科だったが、どこか気の抜けたような脱力感が漂う。

 それはワグテイル側全員が同じ思いだった。

 いくらなんでもこの動画だけで利益供与だと言うのは無理筋すぎる。


「ところでこのキープ、なんであなたに渡されているんでしょうか」


 奥手の男がやんわりと倉科に聞く。


「は、はぁ。ゲーム開発事業部へ資料として渡してほしいと頼まれたものでして」


 それを聞いた男は少し目を細める。


「それはよろしくありませんね」


 男が静かに言う。


「発売前の雑誌は極めて機密性の高い物です。それを許可のない人へ渡すのはコンプライアンス違反と考えられます」

「い、いや、それは……」


 倉科は男に真正面から見つめられ、返す言葉に詰まる。

 男の言う通り、無関係な人間に機密情報を渡している姿は漏えいを疑われても仕方が無いところである。

 もちろん、それが『漏えいが行われた』という決定的な証拠であるとは言えない。

 しかし、漏えいを疑われる事態であることは間違いなかった。

 そして彼らの仕事として、漏えいを未然に防ぐことである。

 その観点から見れば、これは正当な考え方であろう。

 講読館の規模から考えれば、中堅クラスの商社や開発会社(デベロッパー)がどうなろうと大きな問題にはならない。

 仮に進んでいた計画が頓挫しても、彼らから受注したい業者など数多いるのだから。


「弁明がいただけないのでしたら、本件はこのまま進めてしまいますがよろしいでしょうか」


 若手が慇懃に確認をしてくる。

 既にワグテイル側が何を言おうが進める構えであることは明白だった。


「仮にですが、本件がこのまま進むことになりましたら、これまでの契約についてはいかがなさいますか?」


 右手を上げながらユウヤが再び口を挟む。


「あくまで現状は仮決定なので、正式に決定するまで既存の契約を履行していただいて構いませんよ」


 若手が答えるが、その表情は「履行しても違反による契約破棄になるので無駄なこと」と言外に伝えていた。

 しかし、ユウヤは「承知いたしました」とだけ答えPCへと視線を移した。


「さてでは本会議は以上として、お引き取り願いますかな?」


 中央の男がニヤリと笑いつつ退席を促そうとする。

 だがその時だった。


「彼、倉科が関係者ではないと断言するのは尚早ではないかな?」


 それまで黙っていたレイトが声をあげた。

 既に勝ちを確信していた男が訝しげな視線をレイトに向ける。


「赤根さん……、あなたは高名なゲームデザイナーとして伺っておりますが、無理筋を言われてもこまりますね。ゲームデザイナーなら勝負勘が大事ではないでしょうか?」


 男は苛立たしげに返すが、レイトにはどこ吹く風だった。


「そういう言い方なら、()()()()()()()だよ」


 レイトはそう言うとニッコリと笑う。

 この状況下でも満面の笑顔を浮かべることに男たちは不審がる。


「つ、強がりを申されても、事態は変わりませんよ」


 怒りのためか反論ができない中央の男に代わり、奥の男が話を続ける。


「いや、あなた達は何も知らされていないんだなと思ってね」


 あくまで笑顔で話すレイト。

 その真意を理解できない男はハンカチを取り出し額を拭う。

 まったくいつの間に汗をかき始めたのだろう。

 喉も渇き始めた。

 これなら総務に水を用意させたほうが良かった。

 男たちはそんな事を考えていた。

 それは目の前のゲームデザイナーを名乗る若造の真意が分からないための焦りからであることを、彼らはまだ理解していなかった。


 ピリリリ


 唐突に電子音が鳴り響く。

 男たちは何事かと周囲を見回した。


「すみません、急な連絡なようで」


 そう言うとレイトは腰からスマートフォンを取り出し、相手の回答を待たずに応答ボタンをタップしていた。


「はい。ええ。ええ。了解。ゴーサインという事だね」


 笑顔でうなずきながら連絡を取るレイト。

 あくまで相手の話しに相槌を打つだけであり、内容は他の誰にも分からない。

 そうこうしているうちに「じゃあ後で」と言うと通話を終了した。


「……さすがに失礼ではありませんかね?」


 そう言うと若手がレイトを睨みつける。

 今にも怒鳴りたそうな顔であるが、レイトは笑顔で受け流す。


「ここにいる全員に関連する連絡だったので、応対したんだ」


 あくまで表情を崩さずに答えるレイト。

 その上で「僕も無関係な連絡に出るほど、非常識ではないよ」と付け加える。


「あなたって人は!!」


 レイトの言葉に若手がテーブルを叩き立ち上がり怒号をあげる。

 それでもなおレイトは平然としている。

 その時だった、狙ったように全員のPCへメールを受信したとの通知がくる。

 PC内に表示されたポップアップ画面にはメールの件名。


「どうやら、正式な連絡が来たみたいだね」


 勝ち誇るように言うレイトの言葉に、男たちはメールを確認する。

 メールソフトを起動して新着メールの項目を見る。

 その最上段には今まさに来たメールが表示されている。

 件名は『【重要】アニメ制作委員会の座組について』。

 急ぎそのメールを開き内容を確認する男たちの顔が次第に青くなる。


「あなた達が仮決定と悠長な事をしているうちに、僕たちは話を進めておいたんだ」


 そういうレイトの顔はいつもどおり涼しい笑顔だが、どこか勝ち誇っているようにも見えた。


「僕たち株式会社ワグテイルは新作アニメ『フィッシャーキング』の製作委員会に正式に加入した。もっとも出資比率は全体の5%程度だから大した影響力は無いけど」


 レイトはメールの内容をかい摘んで説明した。

 それは「どういう意味か分かるな」という言い含めでも有った。


「し、しかし!!」


 だがそれでも中央の男はまだ何か反論しようとする。


「制作委員会に参加したことで僕たちの『フィッシャーキング』の扱い方に関する権限は大幅に大きくなる。講読館と直接やり取りのある社員については特にね」


 レイトはそう言い放つが、それでもなお、男は何か言い返そうとしている。

 さすがのレイトもその執念が何から来るのかと困惑しつつも、キッチリとトドメを刺すことにした。


「制作委員会に参加した事による権限拡大は参加打診をした3ヶ月前までさかのぼるよ。そうしないと参加に向けての準備に必要な情報を受け取るのも情報漏えいになるかもって()()()()()()()()()()()()、知らなかったかな?」


 いかにも楽しそうに笑いながらそういった。

 つまり、委員会参加が決定した今、倉科たちの行動は適切ではなかったかもしれないが問題になるほどではないことが確定したのだ。

 その言葉に中央の男はうなだれるように座り込む。


「……仔細、承知いたしました。本件は問題なしとして報告をまとめさせて頂きます」


 奥に座る男もそう言うが、先ほどまでの精彩を欠いていた。

 勝ちを確信しての弾劾に臨んだのにも関わらず、自分たちが蚊帳の外だったことを知らされたからだった。

 とは言えこうなっては既に彼らもワグテイルの面々に興味を失ったようで、退出を求めてきた。


「……待ってください」


 お開きにしようとする流れを止めたのはユウヤだった。

 これに関してはレイトを除くワグテイル側が驚きの顔をする。


「この場が不正を弾劾する場となるなら、まだ終わっていませんよ」


 静かにPCの画面から目を離したユウヤの表情は怒りに燃えていた。


「今、御社の総務部宛てに定期チェックに引っかかった問題についての報告を送りましたのでご確認ください。それを見てどう判断されるかは御社で判断してください」


 そう言うと、ユウヤはPCをカバンにしまい一色たちを促し部屋を退出していった。

 報告内容に目を白黒させていた男たちは見送りをすることすら忘れていた。


「……一体、何が有ったんだ?」


 一色はエレベーターの中でユウヤに尋ねる。


「さすがにセキュリティ案件は守秘義務がありますから、詳しいことは言えませんけど」


 ユウヤはそう前置きをして手短に話をした。

 それは、とあるPCの不正使用に関する報告であった。

 IT事業部で設置したセキュリティツールによるチェックによって、ある共有フォルダが検出された。

 そのフォルダは2つ。

 1つは無制限共有の設定されたフォルダ。

 そしてもう一つは『社外機密情報』と書かれていた。

 どちらも同じPCから検出されていた。

 それは中央に座っていた男のPCだった。


「しかし、そんな運良くあの人のPCをチェックしていたな」


 一色は驚き半分で言った。


「いや、決め打ちですよ」


 それに対しユウヤは真面目な顔で答えた。


「あの人、オレたちの前でPCを開いたことで、モニターの裏側に貼られたPC名が見えたんです。そこで社内ネットワーク経由でツールを呼び出してそのPCだけ徹底的に洗わせました」


 それを聞いて倉科は「ああ」と納得した。

 導入したツールなら可能なことだと理解していたからだ。


「でも、お前は今後どうするんだ? せっかく講読館のルート営業を任せようと思ったんだが……」


 倉科が言う。

 情報漏えいなどについて、漏えいをした本人が罰せられるのは当然なのだが、発見者も何らかのペナルティを与えられる事例がままある。

 発見者が社外の人間ならなおさらである。


「以前はそれで担当外されましたが、今回もそうなるかはこの会社次第ですかね」


 ユウヤはそう言うと、わずかに眉をひそめた。

 過去の他責による失注を思い出したからだ。

 できれば今回はそうならないことを祈りたい。


「でもあの人の態度から何かを隠しているのは予想つきましたが、驚きましたね」


 まもなく1階へと到着しそうなエレベーターの中でユウヤはつぶやいた。


「まさか会社支給のPCで、法務部の人がエロ画像を大量に保存していたんですから」


 その言葉に一同は一瞬だけ真顔で静まり返った後、爆笑した。


 ワグテイルへの帰社した時には、既に20時をまわっておりオフィス内で仕事をしているものはまばらだった。

 既にコノハも退出したらしくユウヤの席の周りには誰もいなかった。

 ユウヤもデスクの上を整理したら帰ろうと、カバンからPCを取り出し、サイドロッカーへとしまう。


「今日はお疲れだったね」


 不意に声をかけられた。

 そちらを見ればレイトがこれまで同ように笑顔で立っていた。


「レイトさんもお疲れ様でした、タイミングバッチリでしたね」


 ユウヤも笑顔で返答した。


「あんなものは演出にすぎないよ。法務部なのに社内情報に疎く、保身だけに走ろうとする奴らが間抜けなだけで」


 そう言い切ったレイトの表情を見ているとやはりコノハと似ている。

 まとっている雰囲気はまるで違うがやはり似たもの兄妹なのだろう。


「さて、問題も片付いたし、次はプレゼンだね」


 レイトが右手を差し出す。


「そうですね。オレたちも負ける気はありません」


 その右手を握り、ユウヤは力強く答える。


「そうして欲しい、だけどコノハは僕には絶対に勝てない」


 そう言いながら握り返すレイトの力は想像以上に強かった。

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