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ワグテイルプロジェクト ~俺達のゲーム開発は前途多難(仮)~  作者: サイノメ
第4章 大乱闘!!企画コンペティション

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第17話 コノハの創りたいもの

 デスクに散らばっていた紙の資料が手早く片付けられていく。

 オフィスに戻ったユウヤは、散乱していた資料をまとめて会議の準備をしていた。


「本当に全部会議室に持っていくのか?」


 隣の席でPC内のファイルを整理していたコノハに聞く。


「大半は必要ないと思うけど念の為、今と資料を作った時で考え方が変わっているかもしれないから」

「了解」


 テキパキとした言葉でユウヤに返すと、彼も手短に返事をする。

 まるで午前中の騒ぎなどなかったかのように2人は手分けして作業を進めていった。


「あんだけ騒いだら関係こじれそうな気がするけどな」


 2人の作業を横目で見ていた黒瀬がつぶやく。

 目ざとく、その声を聞き漏らさなかった黃島が黒瀬をニヤニヤと見る。


「な、なんだ?」

「い〜や、先輩まだまだ人間関係が分かってないっすね〜」


 そう言う黄島の言葉が冗談半分のからかいであることは理解していた。


「人間関係はシンプルな方が楽だ」


 しかし彼の口から出た言葉は素っ気ないものだった。

 それを聞いて「はぁぁぁ〜」と盛大なため息をつく黃島。


「先輩はそんなんだから、コノハと違う意味でボッチなんすよ?」


 ややキツい詰問口調で黄島は言うが、黒瀬からの反応はなかった。


(悪い人じゃないんだけどな〜。)


 黒瀬を見ながらそう思っている黄島の後ろを、PCを小脇に抱えたコノハは資料の束を持ったユウヤが会議室へと歩いていった。


***


「さてと、改めて聞くことになるが、コノハの企画について聞かせてくれ」


 ユウヤは椅子に座るとコノハに確認した。

 すでに会議室のテーブルの上には種別ごとに分けた資料を置いてある。

 そこには元からあった資料と、ユウヤが区分分けの際に作った資料が足されている。


「原案に有るとおり、ゲームとしてはプレーヤー間対戦(P v P)を主軸にしたアクションRPGね」


 コノハがPCを操作し原案資料をモニターに映し出す。


「もちろん、それだけだと新しさも何も無い。あくまでシステム面の話しなんで物語ナラティブはしっかり創りこむ」


 そこまで言ったタイミングでユウヤが右手を上げる。

 2人きりの打ち合わせなので手を上げる必要は無いのだが、話の腰を折る感じがしたので念の為上げたのだ。


「|ワグテイルプロジェクト《うち》には、既存でアクションRPGが有るのか?」


 その問いにコノハは首を横に振る。


「アクションとRPGは経験有るけど、モーションとか考えると端末側ソフトウェア(クライアント)は一から作らないとダメね」


 そこがコノハにとって一番の悩みの種だった。

 社内製の既存システムが流用できれば開発期間を削ることができるのだが、一から作るとなるとそれだけで年単位の時間が必要になる。


「オープンソースを借りるとか?」


 ネットに無料公開されているプログラムにも制度が高いものが有る。

 その使用許諾をとれば短縮できないかと言う提案だった。


「う〜ん、単純に機能追加とかなら行けるかもだけど、基盤はしっかり作らないとダメね」


 悩みつつも否定するコノハ。

 本人としても葛藤がある様だ。

 開発コストと期間を可能なら圧縮しないといけないディレクター的使命と、良い物を創りたいクリエイター感覚、どちらに比重を置くかは常に頭を悩ませる。


「まあ、そこは最終的に開発課の意見も聞く必要が有るから、後でもいいんじゃないか?」


 思考のスパイラルにはまりそうなコノハに、ユウヤは先送りを提案する。

 優先順位を考えれば、開発期間も決まってない現状ではまだ問題ない案件だ。

 もちろん想定しておくのは良いが、その為に他を遅らせる訳にもいかない。


「……そうする」


 沈んだ表情でコノハが答える。

 彼女も考えは同じだが、懸案事項を残すのも気が引けるのだろう。


「それじゃ、もっと根本的なトコに話しを移しますか〜」


 ユウヤは両手を広げて、あえておどけた風に装う。


「なにそれ?」


 コノハの反応は言葉の上でこそ冷たい感じだが、口元が緩んでいるのが見えた。


「コノハの『《《創りたいもの》》』についてだよ」


 その言葉の意味が分からず、コノハは目を瞬かせ小首をかしげる。

 まるで頭の上にハテナマークが浮かんでいそうな感じだ。


「これって、わたし達主導の企画よね?」


 なんで今更と言った感じで聞き返す。

 それに対してユウヤは「ああっ」とうなずく。


「《《コノハの企画》》だからこそだよ。コノハが何を創りたいのか、簡単に言えば『テーマ』だな。」


 その言葉にコノハは腕を組んで少し考える。


「う〜ん……、今まで直感的にやっていたからテーマとか考えたことなかったなぁ」


 そう言いながら、腕を後頭部の後ろで組み直すと伸びをするように胸をそらし天井を見つめた。

 言葉自体は軽いが、天井を見る表情は真剣そのものだった。


「別に企画書に記載したり、他のメンバーに語ってみせる必要は無いが、オレには聞かせてくれ」


 静かに言うユウヤだが、その目はコノハ同ように真剣そのものだった。


「な、なんでユウヤにだけ聞かせないといけないのよ?」


 チラッとユウヤの方を見たコノハは、慌てた感じで返す。


「正確にはオレにだって聞かせなくていい。だけど自分のテーマをちゃんと言葉にしておくのは大切だぞ」


 そう言うユウヤの言葉は、まるで自分に言い聞かせているようだった。

 そこにコノハは少し興味がわき質問を返す。


「それって経験則?」


 その質問にユウヤはすかさず返す。


「いや、先輩の受け売り」

「自分のことじゃないんかいっ!」


 サラッと返ってきたユウヤの言葉に思わずコノハはズッコケた。


「企画書作成の時、先輩に散々言われてきたのにオレが実践しなかったことだ」


 ポツリとユウヤは答える。


「その結果、オレはいつもプレゼンに失敗して、成績は上がらず、人員整理対象の筆頭だったって訳だ」


 どこか自虐的に首をすくめる。

 それを見たコノハは、また考える。


「そうね……、昔、兄と見たアニメがあったの」


 どこか懐かしそうに話しを始める。


「犯罪が蔓延する巨大都市だけど、ヒーローがいる。そんな世界でヒーロー達を追うリアリティショー風の話だったの」


 ユウヤもなんとなく聞いたことがある話だった。

 確か小学生の頃に大人の間で流行ったアニメだったはず。

 当時、朝のニュースか何かで取り上げられているのを見て、興味を持って見てみたのだが、内容は理解できなかった。


「それって本放送後に配信で見たってことか?」


 念の為、確認をしてみる。

 自分より年下のコノハが内容を当時から理解できているとは信じがたかったからだ。


「見たのは小学校入って間もない頃だったかな、CMが入っていたのでTVの録画だと思う」


 それを聞いてユウヤは愕然とした。

 見ていたのは、ほぼ同じ頃だろう。

 なのに自分が理解できなかったアニメを幼いコノハが理解し、その経験を元にゲームを作ろうとしているのだ。


「すごいなぁ……」

「えっ、なにが?」


 思わずもれたユウヤの声にコノハは疑問を感じた。

 ユウヤにとって驚くべきことでも、彼女にとっては普通のことなのだ。


「ま、まあ、人それぞれだ」


 そう言葉を濁しつつユウヤは、本来の話へと戻すべく話題を切り替える。


「それで、そのアニメをどのように企画へ落とし込むんだ?」


 まだ先ほどの疑問が気にかかるのか、少し眉間にシワを寄せたコノハだが、すぐに気持ちを切り替えたようだった。


「アニメの中で行われるリアリティショーはポイント制でね、もちろん犯罪を食い止めれば大量ポイントを得られるんだけど、それまでの行動でポイントが増減するの」


 そう言えば、犯人は逮捕できなかったけど、途中で人助けしたヒーローが最終的にポイント数で逆転した話しが作中に有った気がする。


「そんな感じでね、バトルの勝利数以外にもポイントが得られるランキングバトルやりたいなって思うの」


 そこまで聞いてユウヤもピンと来るものが有った。


「シナリオ中に人助けとかポイントアップする分岐を用意するやつをいれるんだな!」


 その答えにコノハは嬉しそうに手を叩き、椅子の上で跳ねる。


「そうそう、早くクリアした方がポイント高いけど、そっちは早い順でポイントが上下する。だけどこっちは比率的には少ないけど確実にポイント得られるとかにすると、プレイヤーに葛藤が生まれるじゃない?」


 それを聞いたユウヤは手元のメモ用紙に手早く書き込んでいく。

 その姿をコノハは先ほどの興奮が治まったように、マジマジと見つめていた。


「改めて思うんだけど、手書きしてからPCに再入力していくって面倒じゃない?」


 非難する風でもなく聞くコノハ。


「オレは文系アナクロ人間だからな。こうやって手書きしたほうが覚えられるんだ」


 ユウヤも特に感慨もなく答える。

 そのまま腕時計を確認すると、書き込みを入れた横に時刻を記入していく。


「……だけどいつもそうしてるって訳じゃないぞ」


 そう言うと、チラリとコノハのPCに目をやる。

 その視線の意味が分からず首をかしげるコノハ。


「PCしか持っていかないプロジェクトリーダーさんがいたから、資料以外持ってこれなかった」


 そう言い少しだけ非難する様な視線をコノハに向ける。


「あっ!」


 この時になってそれに気が付いたコノハは、思わず声を上げていた。


「気がついていたなら早く言ってよ!これじゃまるでわたしが気の利かない上司みたいじゃない!!」


 顔を赤くし思わず声をあげるコノハをユウヤは笑いながら見ていた。


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