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ワグテイルプロジェクト ~俺達のゲーム開発は前途多難(仮)~  作者: サイノメ
第2章 出向先は前途多難

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第9話 The Right Stuff ~右手にいる同僚たち~

「会議室の椅子、ここまで持ってきてどうするんだよ」


 結局、会議室から自分のデスク前まで椅子で運ばれてきたユウヤは、コノハに食って掛かった。

 いきなりこんな騒ぎを起こして周囲からどんな目で見られるかと思うと、顔から火が出そうだ。


「すぐにあそこ使うから、その時に戻せば問題ないわよ。それまで誰も使わないし」


 満面の笑顔をユウヤへ向けつつコノハが言う。

 双方の認識に相違があり過ぎて説明するのも面倒だと思ったユウヤは小さなため息をつきつつ、自分の本来の椅子へと座り直す。

 それを見ていたコノハもユウヤの右隣へと腰をおろした。


「なんだ、オレの隣の席だったのか」


 何の気なしにコノハの方を向く。

 さっきは部長との顔合わせだったので気がつかなかったが、コノハは袖のないジャンプスーツの中に長袖のTシャツ。

 足元はスニーカーと言う出で立ちであり、改めてスリーピーススーツ姿の自分とは大きな差が有る。


「何よ、ジロジロと見て?」


 視線に気がついたコノハが意地悪い笑みを浮かべて聞いてくる。

 それに対しユウヤは平然と答える。


「いや、やっぱり変わった服着てるなと思ってな」

「もっと他に言うこと無いんかい!」


 思わずコノハが声をあげ立ち上がる。

 それと同時にオフィス内の人々の視線がコノハに集まる。

 それに気がついたコノハはコソコソと座る。

 傍若無人に思われるコノハだが、それなりに人の目は気にしている。

 学生時代はそうでもなかったのだが、職場では仕事以外のことで目立っても面白いことは起きないと悟ってからは気をつけるようにしていた。

 しかし、ユウヤの一言で思わず素の自分が出てしまったのだ。


「……人に恥ずかしい思いさせて、あんた本当はドSなんじゃないの?」


 席に座ったコノハが気まずそうに言う。

 それに対して「そんな事は無いぞ」と言いながらユウヤは自分のデスクに業務用PCを設置していた。

 席にはモニターとキーボード、マウスがすでに置かれていたので、それらはアダプターを介してノートPCへ接続する。

 USBポートから電流と信号を受信したモニターがスリープモードから起動し画面を表示する。

 マウスを軽く動かし、拡張モードのモニターがノートPCのモニターと連動しているか確認する。

 次にメモ帳を起動すると簡単な文言を手早く入力していく。

 これはキータッチの反応が正常か確認するのと、新しいキーボードの癖を見るためだ。

 ユウヤはひと通り準備を済ませると、メールソフトを起動させる。

 その段になってようやくユウヤは自分に向けられた視線に気がついた。

 慌てて見回すと、隣に座るコノハの奥に座る人物たちがこちらを見ていた。


「やっっっと、気がついたわね」


 ため息混じりにコノハが再び話しかけてきた。

 それにあわせて奥に座る女性もクスリと笑う。


「オレ、何かしたか?」

「ハイハイ、定番のボケはいらないから」


 素で聞くユウヤだが、コノハは寒いネタと捉えたらしくぞんざいに受け流す。

 なんのことかさっぱりわからないユウヤは、頭に疑問符が浮かびそうなくらい不思議そうな顔をした。


「まあ良いわ、うちのプロジェクトメンバーを紹介しておくわね」


 軽く咳払いをしつつ、コノハはユウヤに視線を向けていたことの本題へと入ることにした。

 席を立ち上がり、席の右手を見る。

 同じく、先ほど笑っていた女性とそのさらに右隣に座る男性が立ち上がる。

 手前の女性は髪を明るい色に染めており、色付きの眼鏡をかけている。

 反対に奥の男性は長い黒髪を無造作に束ね、仏頂面をこちらに向けている。


「え~、手前の人が黄島さん、データ周りの担当で、奥が黒瀬さん」


 コノハが手早く説明をする。

 早すぎてユウヤは挨拶をするタイミングを逃してしまう。


「あなたが噂のコノハちゃんの同期君?」


 そう言いながら顔中を笑顔にしながら黄島がユウヤに話しかけた。


「はい、IT事業部の蒼馬です。これからよろしくお願いします」


 自己紹介をしながらユウヤは頭を下げる。


ゲーム開発事業部(うち)はそこまで固くないから気楽に行きなよ!」


 ケラケラと笑いながら黄島が答える。

 軽い感じはするが、変に堅苦しいよりはマシかなとユウヤは思った。


「どう明るい人でしょう?」

「一応は昔ギャルやってたからねー」


 コノハの言葉に黄島はあわせてくる。

 どうやら根っからの明るい人物らしい。


「俺もいいか?」


 コノハと黄島がワキャワキャしていると、その後ろから声が聞こえた。

 それは先ほど紹介された黒瀬だった。


「ほいほい。センパイもちゃんと挨拶しなよ?」

「いい加減、センパイは止めてくれないか?」


 1歩後ろに下がりながら黄島が黒瀬に言うが、本人はどこか嫌そうだった。


「俺は黒瀬。黄島共々今後、君たちのプロジェクトへ参加する可能性が高い。その時はよろしく頼む」


 改めて挨拶をする黒瀬にユウヤも挨拶を返すが、引っかかるものがあった。


「今後ということは、まだプロジェクトには参画されていないんですか?」

「ああ、今はまだ別の案件の業務委託を受け持っている」


 黒瀬がつまらなそうに返す。

 ユウヤが気に入らないのではなく、恐らく案件に不満があるのだろう。


業務委託アウトソーシングですか……、連携とか難しそうですね?」


 質問をしつつ何気なくユウヤは黒瀬のデスクを見る。

 何かのアニメのイラストが入ったファイルが置かれていた。

 アレは確か最近人気のマンガ原作アニメの物だったか。

 それなりにアニメやマンガも見ているユウヤだったが、その作品は趣味が合わなそうなので見ていない。


「この作品、知っているのか?」


 視線に気が付いた黒瀬がファイルを持ち上げながら言う。


「いえ、興味がわかなかったもので……」


 恐縮するユウヤを見て、黒瀬が少し笑ったように見えた。


「食わず嫌いは良くないな、これからは流行り物には敏感でないと」


 そう言われてユウヤは「はあ……」と覇気のない返事を返す。

 もしこれがIT事業部なら仕事と割り切れるのだが、趣味と仕事の境界があいまいな状況ではなんとも乗り切れない話だった。


「とりあえず、こちらが片付いた時に君と合流できることを祈るよ」


 そう言いながら黒瀬は席に戻りキーボードを叩き始めた。

 それを聞いたユウヤの中で(祈る?)と疑問符が浮かぶ。

 黒瀬はどこか別のセクションからも引き合いが有るのだろうか。

 そんな事を考えるユウヤの思考を見透かしたかのように黄島が笑う。


「アハハハハ、それはね。まだ君たちのプロジェクトのGOサインが出てないからよ」

「ど、どういう事です?」


 あっけらかんと話す黄島の言葉にユウヤは絶句する。

 新規プロジェクトに参加するために出向したはずなのにまだプロジェクトが立ち上がっていないとは前代未聞もいいところだ。


「ま、詳しいことはコノハから聞きなよ!」


 勢いよくそう言うと、黄島もまた自席に向かった。

 その姿を呆然と見ていたユウヤに、黄島が再度振り向く。


「うちらの手があくまで1ヶ月程度時間が有るから、それまでに上手くまとめておいてね~」


 そう言いながらニヤニヤと笑うと作業へと戻っていった。

 取り残されたユウヤがようやく錆びた歯車で動くようなぎこちない動作で首を横に向ける。

 そこにはどこかバツの悪そうなコノハ。

 なおも凝視するユウヤの視線に耐えられなくなったのか、コノハが叫んだ。


「諸々説明してあげるから5分後に【第1会議の間】へ来なさい!!」


 そう言うと顔を赤くしユウヤを指さした後、自分の席の上に散らばる紙の資料をかき集め始める。

 その姿を見つめるユウヤは苦笑いするしかなかった。

 5分後と言われても、その間は何をしてれば良いんだ。

 そんな事を考えているユウヤに、コノハはさらに付け加えた。


「戻る時に、会議室の椅子も戻しておくこと!」


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