動画投稿してみた
俺は森の中で昼食をとっている最中、アカウント作りをしていた。
「ユウヤ、何してるの?」
ケンケンとイスタが興味深そうに俺の画面を見る。
ミュールは今日倒したモンスターの一部をまだ食べている。
「これは動画配信サイトヨーチューブ」
「動画配信? ってなんや?」
「あ、そうか言ってなかったな」
俺は異世界から来たことを言う。
ケンケンは興味深そうに聞き、ミュールはゴブリンの肉をかじっていた。
「なるほどな。こりゃえらい珍しいな」
「お前も十分珍種だよ」
俺はアカウントを作り終わる。
後は自己紹介動画を撮ればいいか。
俺は人魂を出して皆が映らない様に画角を調整する。
「ユウヤ、私達は撮らなくていいの?」
「逆に撮りたいのか?」
「魔王討伐を手伝って貰ってるしね」
そこまで気にする程のことではないと思うけど。
まぁ手伝ってくれると言うならそれに甘えよう。
「じゃあまずは……」
イスタはぜぇーぜぇーと息をきらす。
「おい、イスタァ。まだただの挨拶だぞ。テイク200いくぞー」
「ちょ、ちょいまち」
イスタは地面に倒れる。
「ユウヤ、お前なかなかイカれてんな。ワイには何があかんのかさっぱりや」
「腕がプルプルしてたり変に頬を赤く染めたり、恥ずかしさを感じる。初めての初々しさがあるとはいえ恥ずかしさが前に出すぎだ」
「ユウヤ、私もやる」
ミュールがお腹をふくらませながら立ち上がる。
どんだけ食べてるんだ。
ミュールは俺の人魂の前にケンケンを持って来る。
「じゃあ、アクション」
「私、ミュール。こっちケンケン」
「名付けはこいつや」
「よろしく」
「はいカット。いやぁ、初めてにしてはすごいよ」
「ほんま、何が違うんや」
ケンケンは呆れたような目つきで俺を見る。
俺は1人と1本に撮った動画を見せる。
「おぉ、私が映ってる。すごい」
「ワイも映っとる。おもろい個人魔法やな」
2人は動画を何回も見返しワイワイと盛り上がる。
イスタは立ち上がって人魂の前に立つ。
「準備いいんだな」
「もちろん。魔王を倒すのに、こんな所で負けてられない」
「くっそみたいに関係ないけどな。じゃあアクション」
俺が撮影ボタンを押すと同時にイスタは見事なバク宙を決める。
そして、着地し口を開く。
「私はイスタ、魔王を倒す者。よろしく」
「カッート」
これは文句の付けようがないな。
「合格だ」
「やったぁ!」
「何がいいんかさっぱりや」
「ケンケンまだまだ」
「うっさい。ワイがおかしいんじゃなくてお前らがおかしいんや」
おかしくないぞ、ケンケン。
俺は自分の挨拶動画を撮る。
「俺はユウ君TVのユウヤ。よろしく」
俺は一発録りで終わらせる。
イスタはハテナマークを頭の上に浮かべる。
挨拶はできる限りシンプルなのがいいの。
動画にするなら俺、ミュール、イスタの順で載せるか。
でも、自己紹介だけじゃなぁ。
「ユウヤ、ほか何する?」
「魔法生物なら見た目的にも大丈夫そうだし魔法生物と戦ってる所を撮りたいな」
「えらい贅沢やな。普通のモンスターと何が違うんや」
普通のモンスターだと血が出て垢BANか年齢制限がかかるんだ。
それに動物愛護団体に何か言われかねない。
「魔法生物なら確か、ギルドにビックスライムの討伐依頼があったはず」
「よし、ならそれ受けよう。早速明日」
「じゃあ今日はもうちょっと森の中で戦って帰ろうか」
イスタの意見に全員が賛成しモンスター退治を続行する。
この世界の文化的に血が出るのは悪くないっていう風潮があるよな。
それなら、モンスター退治の風景を動画に撮ればこの世界の人達にはウケるのでは?
一応撮っておくか。
翌日、俺達は朝早く森に出かける。
依頼書にはビックスライムはこの辺にいると書かれているな。
俺達が進み続けると小さな一軒家ほどのスライムが自身の体に丸い何かを浮かべている。
多分あれが核だな。
ていうか、思ったよりビックだな。
スライムが通ったであろう後には草がなく草を主食としているのだろう。
「戦闘はそれぞれが活躍してる風に取りたいから俺が魔法打ったら2人が突撃して、どっちかが真正面で戦って隙にもう1人が後ろから倒すって感じかな。俺的にはミュールが真正面係になって欲しいかも」
「分かった。ケンケン頑張ろう」
「ワイ、そこまで活躍したことないんやけどな」
俺の作戦に疑問を持ったのかイスタが挙手する。
「魔法生物って2パターン倒し方あるけど今回はどっちの倒し方?」
2パターン?
あ、そっか。
魔法生物は核を壊して倒すやり方と再生できなくなるまで攻撃して相手の魔力を無くして倒すやり方がある。
「今回は核を壊す方だ。いけるか?」
「ビックスライムだと核が中の方にあるから攻撃が届かないんだよね」
「そこは私がなんとかする。イスタはそのタイミングだけ逃さないで」
「ミュールは頼りになるね。分かった」
作戦も決まり俺は撮影を開始する。
俺は詠唱し電気魔法を撃つ。
ビリビリと流れる電気はスライムに直撃しスライムの体が少し光る。
その間動きが止まり2人が行動し始める。
イスタは素早く後ろに行き、ミュールは前に出てスライムの一部を切る。
スライムも痺れが収まったのかミュールに向かって攻撃を仕掛ける。
スライムの体から触手のようなものがたくさん出てミュールを襲う。
ダン。
ミュールを襲った触手は地面に落ち砂埃を舞わせる。
ミュールの剣さばきにやられていた。
ミュールはさらにたたみかけスライムの一部を切り続ける。
すっすっすっ。
ミュールのおかげで核が露出しかけたが核がスライムの中を移動しスライムの後ろ上部ギリギリまで行く。
その瞬間、金色の輝きがあったかと思うとイスタがどこからともなく現れ、高く飛び核を切りつける。
核は見事壊れスライムの体は溶け始める。
スライムは溶けて地面に水分を吸収される。
「いい絵が撮れた。撮れ高ばっちり」
「私の活躍一瞬だけだったけど良かったのかな?」
「その一瞬だけってのも魅力なんだよ」
「お前のその感性はよお分からんわ」
まぁこればっかりは慣れだろうな。
お前らとは経験が違うんだ。
俺達は今日はそのまま帰り食堂で作業する。
2人は編集作業を途中までは見ていたが飽きて話し始める。
ケンケンは字幕を見て国の言語に興味を持っていた。
そして、動画が出来上がる。
「できたァ」
「おつかれー。長かったね」
「字幕付けるとアホみたいに時間かかるんだよ。でも、まぁいい感じに出来たし大丈夫だな」
俺はスクリーンを2人に見せながら再生ボタンを押す。
[俺はユウ君TVのユウヤだ。よろしく]
[私、ミュール。こっちはケンケン]
[名付けはこいつや]
[よろしく]
[私はイスタ、魔王を倒す者。よろしく]
そして、スライムを倒す映像に移る。
スライムを倒し終わり、最後のシーンに。
[これからも異世界でしか出来ないことをばんばん投稿するんで皆、チャンネル登録よろしく]
俺の言葉で動画は終わる。
「なんかよく分かんないけどいい感じだね」
「戦ってる時、変なのなかった? あんなビリビリとか風がビュンビュンするやつ」
「それが編集やで」
「俺のを見てただけの剣が何言ってんだ」
俺は呆れながら動画のアップロード作業に移る。
その時に元の世界の時間も書かれている。
元の世界とこちらの世界ではほとんど時間のズレはないみたいだ。
だとしたら。
「ユウヤ、投稿した?」
「いや、夕方まで待つ」
「え?」
今日は元の世界では金曜日だ。
華金の18時に投稿するのが1番人の視線を集めれる。
ここは投稿したい欲を抑えて我慢だ。
「ほんま、よお分からんなぁ」




