仲間集めてみた
俺達は思った。
魔王って4人ぐらいのパーティで倒すもんじゃね? と。
「勇者パーティも4人ぐらいだからね」
朝食を食べながらイスタが話す。
「4人ぐらいってなんだよ。勇者のパーティメンバーの人数ぐらい断言しろよ」
「だって、資料とかだと人数が本当に4人? ってなる時あるんだもん」
そんなことはさておきだ。
この前、俺が冷静をさを欠いてイスタを危険な目に合わせた。
相手がゴブリンだったから良かったものの俺はまだ未熟だ。
イスタもそれでは中々先に進めないだろう。
「そういえば、魔王が何かしたとかって聞いた事ないんだけどなんかやったのか?」
「魔王……は関係ないけど、魔族の蛮族が私の故郷を襲ったりかな。撃退出来たけど」
魔王自身何も悪くねぇな。
まぁ、動画のネタになるしいいんだけどさ。
「とりあえず、パーティメンバーを募ろう」
「無理だと思うけどね」
イスタは半ば諦めの顔のまま俺についてくる。
俺は近くの冒険者に話しかける。
「俺達魔王倒そうとしてんだけど一緒に来ないか?」
「魔王? なんであんな引きこもり野郎を倒そうとすんだよ、馬鹿らしい」
「本当にな。女連れてるからって調子に乗んなよー」
冒険者達はギャハハと笑い声をあげる。
次だ。
「え? 魔王? 別に私は何かされたって訳ではないですし」
次。
「神に浄化されたこの大地にいる限り魔王や魔族など恐るるに足りません。それなのにわざわざ倒そうとすることなどございましょうか。無駄な殺生は辞めて和平の道を――」
なんで、こんなヤツらしかいないんだ。
大体の人に共通するのは魔王? なにそれ美味しいの? だ。
俺も魔王の怖さはあんまり知らないけどさ。
ここまで来るとなんでイスタは魔王にこだわるのかが気になる。
「皆、魔族を舐めてるんだよ」
イスタは冒険者達の反応を見て少し落ち込む。
「何かあったのか?」
「魔王はね、多分、何かを企んでる。魔王軍として攻めてくるのは基本弱い魔族だけ。本気で人族をどうこうしようというのは見えてこない」
ならいいんじゃ?
「だけど年々、女神の影響がなくなる土地が増えてきてて、魔族の本領を発揮出来る土地が大きくなってる」
とりあえず、早めになんとかしないといけないのは伝わった。
少なくとも、魔王のとこに突撃する必要はあるな。
何かを企んでるなら止めないとだしただのイタズラなら懲らしめないとはいけないし。
「ちょっと、お手洗行ってくる」
イスタはそう言ってトイレへと向かう。
俺がうーんと悩んでいると1人の猫耳で装飾が豪華な剣を背負った少女が机に突っ伏してお腹をグルグル鳴らしている。
剣からは異様な力が伝わってくる。
あ、前に剣に話しかけてたやつだ。
……これ、助けた方がいいよな。
俺はご飯をその子の前に持って行く。
「君、お腹すいてるんだろ? 食べなよ」
「え……いいの?」
「うん」
お腹空くの辛いよな。
俺も家を出たばかりの頃バイト代がなくてその辺の草食べて飢えをしのいでたから分かる。
空腹は地獄。
猫耳の少女はガツガツとご飯を食べあっという間に平らげる。
「おかわり!」
おかわりできる子か。
可愛いヤツめ。
俺はおかわりを持ってくる。
「おいしかった」
少女は満足そうな顔でお腹をさする。
財布の中空っぽだ。
泣きそう。
「お兄さん、ありがとう。お礼になんでもする」
「なんでもかぁ」
女の子が男の人にそんなこと言っちゃダメなんだよなぁ。
世の中怖いからな。
「そうだなぁ。じゃあ、うちのパーティ来る?」
「え? いいの?」
少女は目をキラキラと輝かせながらしっぽを振る。
猫耳のくせに喜びの表現犬じゃん。
イスタはどこの宗教にも属してないって言ってたし獣人差別問題は大丈夫だな。
「一応、パーティメンバーの人に確認とるけど多分大丈夫。一緒に来てくれない?」
「行く! 絶対行く!」
よし、仲間確保完了。
魔王討伐まで言いくるめて付き合わそう。
「あ、でも私のせいでちょっと大変なことになるかも」
「どうして?」
少女は改まって口を開く。
「私、魔王倒そうとしてるから」
「大歓迎です」
あっさりいいやつ見つけちゃった。
神様って本当にいるんだなぁ。
俺がガッツポーズを取っているとイスタが帰ってくる。
「あれ? そこの子は?」
「あ、いない間に進めててごめん。この子、魔王討伐志望の――」
「なんや、騒がしいなぁ」
少女の背中の剣から突如として声が聞こえる。
すると、イスタは慌てて少女を連れ出して町の外へと出る。
俺もそれに続き町の外にでた。
「イスタ、どうしたんだ?」
俺の声に反応せずに少女に詰め寄る。
「ねぇ、えぇっと……」
「ミュール」
「ミュールちゃん。その剣どこで見つけたの?」
イスタは鼻息を荒くしながらミュールの肩を掴む。
「落ち着けイスタ。死んだフリ、死んだフリ」
「落ち着けないよ!」
イスタはミュールを見つめるとミュールは首を傾げながら答える。
「森の中」
「具体的にはここから北の方の獣人の集落があるとこや」
え?
剣が喋ってる?
「こっちも紹介する」
ミュールが背中の剣を握り、スルスルと剣を抜く。
「ケンケン」
ミュールは剣を俺達に見せる。
ケンケン?
名前ダサ。
「なんか勝手に名付けられて困っとる。助けてくれ」
「いや……うん。ごめん、理解が追いつかない」
情報量が多すぎる。
同じく情報量でやられてたイスタは俺に近づいてくる。
「ユウヤは分からないと思うから解説するね。この喋る剣はインテリジェンスウェポンって言って知能を持った武器なの」
なるほど。
「魔法を自動的に打ってくれる優れものなんだよ。普通はここまで喋ったりはしないんだけど」
「よお言われるわ」
ていうか、なんで関西弁?
「ユウヤ、この子どこから連れてきたの?」
「え? ご飯あげてパーティメンバーに誘っただけでどこからとかそんなのは……」
「お兄さん、ユウヤって言うの?」
「あ、自己紹介がまだだった。俺はユウヤ」
「私はイスタ」
俺達は自分達自身を落ち着け合う。
「私達は魔王討伐目指してるけどいいの?」
「一緒」
「あ、そうなんだ。じゃあ、話は早いね」
「うん」
「魔王倒そー」
「おー!」
イスタは腕を上げる。
ミュールも続いて腕を上げる。
とりあえず、新たな仲間ゲットだぜ。
ミュールの実力試しに森の中へ。
「あ、あれはパライオンだ」
ライオンにキノコが生えたような見た目をしてるモンスターだ。
キノコがおいしいらしく高く売れるらしい。
俺はモンスター辞典の撮影データを見るのをやめて念の為、魔導書のデータに変える。
「じゃあ見てて」
ミュールはそう言ってケンケンを出す。
そして構える。
ドオン。
ミュールは地面がえぐれるほど強く蹴り、パライオンに向かって飛んで行く。
剣を振ったかと思うとパライオンの後ろに立っていた。
パライオンは首を切り落とされ血しぶきを出しながらバッタリと倒れる。
「インテリジェンスウェポン関係ねぇ」
「流石、獣人。魔力で体強化するの上手だね」
「獣人って言ってくれたの久しぶり。嬉しい」
そうか、獣人は普段、亜人や異種姦野郎と差別用語で言われることがあるからな。
異世界も元の世界も大して変わんねぇな。
それはそうと、実力はすごそうだしイスタの安全は確保できるな。
ミスしてもカバーし合える関係を築いてくれ。
俺はまだ未熟だからミスしまくる。
「ていうか、そんな強いのになんでお腹空かしてたんだ?」
「モンスター皆おいしいから売りたくなかった」
俺はミュールに若干引きながらとある画面を開く。
ミュールはパライオンを解体する。
ケンケンがまきに火をつけパライオンの串焼きをする。
この世界に来て2週間程度。
そろそろ、アカウントを作ってもいい頃だな。
異世界で動画配信、本格始動だ。
「あんまりおいしくない」
「パライオンはキノコに栄養吸われてるからね」
「だからキノコの方がええんちゃうん? ってワイ言ったのに」




