冒険者になってみた2
昼食をとり俺達が次に向かったのは図書館だ。
外観は図書館というより教会みたいだが、中身はれっきとした図書館だ。
女神が描かれたステンドグラスがあるぐらい。
おばぁちゃんの家みたいな匂い。
「てか、本棚たっか。上の本取るのにハシゴいるな」
「ここは歴史長いからね。本もいっぱいあるよ」
図書館は有料制でお金がいるがさほど高くはない。
一般人達が手を取りあって本を買っているみたいだ。
本はエルフ語以外は高く一般人は手を出せないしな。
図書館の中には勉強中の魔法使いやゆっくりと本を読む老人がいる。
俺達が今からするのは薬草のお勉強だ。
薬草のお勉強と言っても覚える物は少ない。
そのため、覚えておくのは本当に必要最低限のもの達だけだ。
薬草の本を読んだ感じ語呂合わせとかで覚えれそうだ。
売れる薬草とかもついでに……あっそうだ。
俺は人魂を出し本の内容を撮影する。
「ユウヤ、何してるの?」
「ん? 思い出を保管してるって言えばいいのかな」
俺はもう1つ人魂を出しイスタを撮る。
「イスタ、何かポーズとって」
「えっちょっピース」
イスタは慌ててピースのポーズをとる。
俺は撮った映像をイスタに見せる。
「おぉ、これがユウヤの個人魔法。すごいね」
「だろぉ。ここからまだ出来ることがあるからな」
イスタは目を輝かせながら撮った動画を見る。
「そういえば、イスタって個人魔法とかないのか?」
「ないよ。言っとくけど、個人魔法使える人って本当に少ないからね」
俺すげぇ。
俺はおもむろに魔導書を探し開く。
魔法詠唱をしたいがなんて書いてるかさっぱり分からん。
SVOみたいな英語の文型ではなさそうだ。
文字の間に隙間ないし。
だとしたら日本語みたいな感じだろうか?
この町の人達のほぼ全てが日本語と同じ言語を使っている。
その場合、異世界の言葉を自動翻訳などという都合のいいものがあるのではなく実際に喋っている言葉を俺は聞いていると言った感じか。
「ユウヤ、文字分かるの?」
「さっぱりではないが分からん」
「だよねー。私達からしたらエルフ文字を読んでるようなものだろうし」
多分そんな感じだ。
「ユウヤ、とりあえず読むならこれ覚えて」
イスタは50個の文字らしきものが書かれたものを渡してくる。
50音表みたいなやつってことは日本語と同じだな。
「これがア行って言ってあいうえおの順。こっちはサ行、この3個しかないやつはワ行で……」
イスタはそう言って50音表の解説に入る。
順番違いすぎだろ。
まぁ、難しくはないか。
記号が違うだけで日本語と同じなのだから。
「で、こっちはカチカナって言ってさっきのと読み方同じだけど書き方が違うやつね」
カタカナみたいなものか。
「こっちはドワーフ語で使ってる文字なんだけど人間語にも使えそうだから使ってる」
漢字みたいなやつだ。
ていうか、まんま漢字だ。
漢字を使ってる所だけは読めるぞ。
あってるか分かんないけど。
「エルフ語の文字も一応使うことあるから」
アルファベットみたいなやつだ。
26文字あるし。
「エルフ語とかドワーフ語とかあるけどわざわざ喋れなくてもいいよ。人間語が共通語だから。獣人が話す言葉は人間語と同じだから平気」
この世界では日本語が万国共通語なのか。
便利だな。
文字の方はしばらくはイスタに頼るか。
俺達は1週間みっちり勉強と練習を繰り返した。
「丸くてキラキラした丸い身が特徴の薬草は?」
「くす玉草。用途としては怪我した部位の上に持ってきて下の茎を引き抜くとパカンと薬が出てくる」
「正解。じゃあ次、周りに青い粒子をこぼす薬草は?」
「ヒエカチ草。火傷した部位に押し付ければ痛みが軽減し治りが早くなる」
「正解」
朝と夜は薬草に関しての問題を出し。
「そのポカポカを出して」
「どうやって?」
昼は魔法の練習。
とりあえず、詠唱してみるか。
「神よ、目の前の敵を焼きゅ……噛んだ」
「焼きゅ」
イスタはニヤニヤとしながら俺を見る。
「神よ、目の前の敵ものを焼く力を」
俺の腕から小さく燃え上がる炎が出てくる。
「おぉ。いけてるね。これあれば魔力試験は満点いけるよ」
満点チョロ。
夕方は死んだふりの練習だ。
ドォン。
イスタは剣を地面に振り下ろす。
怖い……
試験当日になる。
他の冒険者志望の人たちもゾロゾロと試験会場にやってくる。
1週間頑張ったし、大丈夫。
これは高校受験とは違い受からせる試験。
言わば、免許の試験だ。
俺が気合いを入れ直していると試験官の人達がやってくる。
「では、始めます」
薬草の問題に関しては、目の前で絵を見せられ赤と緑のコインで答えるマルバツ問題。
わざわざこんな試験を用意する必要があるのかどうかすら疑問に思うぐらいに簡単だった。
死んだふりは殺気を放ったドワーフが斧を振り回しながら歩き回る中で死んだふりを続ける。
これほんと、なんの意味がある――
「ん?」
ドワーフは殺気を込めた目で俺を見てくる。
そして、ドシドシと足音を立てて俺に向かってくる。
心臓を落ち着かせろ。
大丈夫、いける。
ドワーフは斧を思いっきり振り上げる。
俺の名前はユウヤ、しがない動画配信者。
今日、重大発表ということでね発表することは俺の死が確定したということですね。
はい、ほんと楽しい人生でしたけどここいらで幕を下ろすことになりま――
ドォォン
凄まじい風圧が引き起こる。
斧が俺のほんの1ミリ真横に振り下ろされる。
俺の切られたであろう髪がゆらゆらと空から落ちてくる。
俺の心臓の鼓動はバクンバクンとなりそうだったけど気合いで落ち着かせる。
怖い……
冷や汗が頬を伝って地面にスっと染み込んだ。
そして、魔力試験。
簡単な魔法なら打てるようになったことが幸いし満点を取れた。
そして、冒険者になった。
「おめでとうございます。こちらが冒険者証になります」
職員の方は俺に冒険者証を渡す。
俺はニッコリ笑いながらそれを受け取る。
試験に落ちた人はガーンと落ち込みゆらゆらとギルドを後にする。
死んだふり、むずかったもんな。
俺は冒険者証を受け取るとイスタに見せびらかしながら近づく。
「ドヤァ」
「はいはいすごいすごい。じゃあ今日から冒険に行けるね」
イスタは簡単に俺を流し冒険の支度を始める。
「ありがとうな、イスタ。面倒みてくれて」
「魔王倒すのに着いてきてくれる人なんていないからね。貴重な人を逃がすほど私は甘くないよ」
「スパルタだもんな」
「あれはユウヤのためを思った行動だからね」
死んだふりに関しては特にスパルタだった。
とりあえず、明日からついに冒険だ。
「で、明日はどこ行くんだ?」
「森だね。ユウヤのおかげで薬草の見分け簡単になるだろうし、薬草も採っておきたい」
俺の能力……じゃない、個人魔法を早速使うなんてイスタは頭がいいな。
「明日からもよろしくな」
「うん。絶対いつか魔王倒そうね」
「もちろん」
これからの旅路はまだまだ長いことだろう。
でも、俺は確かに旅路の始点に立ったんだ。
動画投稿し始めた時を思い出すな。
あの時と同様、とりあえず頑張るっきゃない。
失敗するかもしれないなんかじゃ止まってられないんだ。
「やるぞー!」
俺は大きな声で叫んだ。
「冒険者になりたての人には多いんですよ」
「あの人、突っ走って死にそうね」
周りはごしょごしょと俺の陰口を話し始める。
イスタは少し気まずそうに俺から目線を外す。
俺は人魂を取り出して撮影を始める。
「陰口言われてみたー!」
俺は涙目になりながらピースをする。
「怖いよ!」




