異世界に行ってみた1
夢を見た。
世界中が笑顔で溢れる――俺の叶えたい夢を。
だけど、夢というのは花のようなものだ。
水をやり続けないと、枯れてしまう。
……俺は、そんな夢を叶えられるのだろうか。
街灯で照らされた夜道を1人歩く。
俺の名前は銅鳥裕也。
底辺動画配信者だ。
三脚で立てたカメラに向かって口を開く。
「はいどうもー、ユウくんチャンネルのユウくんだよー。今回はここぉ! 異世界に行けるトンネルに来てみたよー。てことで、早速行ってみよー!」
俺は元気よく腕を上に上げる。
挨拶はこんなもんでいいか。
カメラの撮影ボタンを押し撮影を停止する。
俺はトンネルの方に足を進める。
夜中だからかかなり雰囲気がある。
めちゃくちゃ怖い。
でも、動画のネタになるんだから仕方ない。
ホラーは怖いけど今はこれでしかバズれないしな。
「あ、そういや明日9時からバイトじゃん。なるべく早く帰らないと」
夢だった動画投稿者になったのはいいがいつも生活がギリギリだ。
この前なんか編集の時間なさすぎて寝ずにバイト行って寝ちゃったし。
あの時はめちゃくちゃ怒鳴られたなぁ。
俺は頬をポリポリかきながらハハと笑う。
マジで俺って投稿者よりフリーターって気がする。
収益化できてない時点でフリーターだってのによ。
「あ、昨日投稿したの今どんぐらいかな」
俺はスマホを取り出し、確認する。
視聴回数は3回、登録者は1人も増えてない。
あ、でもコメントが……
(クソ)
1週間ぐらいお布団にくるまりたい。
俺はしくしくと涙を流しながら歩く。
クソって言う方がクソなんですぅ。
小学生でも分かる話だぞ、これ。
俺は涙を拭いながら拳を強く握る。
……小学生か。
俺はスマホをポケットにしまう。
小学生の時に初めて動画を見たんだよな。
それで死ぬほど笑って俺もこんな誰かを笑顔にできる動画を作りたいなって。
だから、動画配信者を目指したけど……
「俺が笑顔になれねぇんじゃ意味ねぇよな」
俺は深くため息をつく。
夢と現実、どっちを取るべきか。
俺もそろそろ大人になれってことなのかな。
俺は星1つ見えない暗い空を見上げる。
「……嫌だなぁ」
そんなことを考えていると目的のトンネルに着く。
雰囲気はあるな。
俺は動画の撮影ボタンを押し、カメラに向かって顔を向ける。
「てことで、今から入っていきまーす! 行くぞ!」
俺は懐中電灯とカメラを持ってトンネルの中を進む。
「めちゃくちゃ怖いっすねぇ。で、でもまぁ、おっ俺は全然よ、余裕だ」
俺はビビりながらそう言う。
後でテロップでツッコミ入れよう。
嘘こけよ、とかかな。
ていうか、何もないなぁ。
切り抜いてショートとかで流す用にするか。
俺が歩いていると何かが走ってくる音が聞こえた。
この辺別に運転禁止じゃないしな。
雰囲気でないなぁ。
ここはカットだ。
俺は少しイラつきながら歩く。
すると、ツルッと足が滑り車道の方に転げ落ちる。
「え?」
鉄の塊がキキキキキーと音をたてながらも俺に近づいてくる。
ドガン!
トラックはブレーキしきれずに俺と衝突し、俺は吹き飛ばされトンネルの壁に激突する。
俺の最期こんなんかよ。
感覚がなくなっていく。
視界が段々と暗くなる。
寒気が止まらない。
俺はカメラを握りしめ、まぶたを閉じた。
目が覚めると草原の上に寝そべっていた。
「あれ? 俺生きてる?トラックにひかれたはずじゃ?」
俺は自身の体を手当り次第に触る。
血が出てない、ペシャンコになってない、痛みは感覚として残ってるだけで骨は折れてない。
俺は慌てふためく。
だが、目の前の大自然を見て困惑もどこかに行ってしまった。
爽やかな風が吹き、暖かな空気が突き抜け、広大な大地の芝生をゆさゆさと揺らす。
すぅーっと息を吸うと鼻の中に草の匂いが広がる。
近くにはスライムのような物がポヨンポヨンと跳ねている。
ゆっくりと息を吐きながら俺は小さく口を開く。
「これ、動画のネタになるな」
俺はさっき死にかけたことも忘れカメラを構える。
が、俺の手にカメラなんてなかった。
うそ……え?
俺はカメラを持っていた腕を見るがない。
あれ、バイト4ヶ月分はあるんだぞ。
俺はうなだれる。
まぁいいか、とりあえずスマホ……もない。
てか、ここで動画撮っても投稿できるのか?
電波ないだろ。
多分異世界だし。
なんかスライム跳ねてるし。
俺はとりあえず現状を整理しようとする。
すると頭に文字が浮かんでくる。
「動画配信者?」
なんだこれ。
俺の頭の中がハテナで埋まる。
……あー、転生特典ってやつか?
一応異世界系のラノベ読み込んできたから分かるぞ。
ってか、異世界転生やらなんやらでとにかく情報量多いってのに、なんだよ転生特典って。
頭パンクすんぞ。
「とりま、先に能力について調べるか。テンプレ的には詠唱すればいいんだよな。能力発動、動画配信者」
俺がそう唱えると青い人魂のようなものが出てくる。
人魂がふわふわと俺の周りを回る。
そして、人魂が撮ってるであろう風景がスクリーンみたいに出てきて、俺が映っていた。
SFとかで見たことあるぞ。
空中に映し出されるスクリーン。
「かっこいいなぁ」
俺が能力に感心しているとぐぅーっとお腹が空く。
とりあえずなんか食べ物探すか。
この能力に関しては一旦後回しだ。
俺が1歩歩くとサクッという心地のいい音が跳ね返ってくる。
何か食べるものがあるかも。
肉食べたいけど動物を殺す度胸が俺にはないし果物でいいか。
って食べれるのか?
毒とか色々やばそうだし。
うーん……ま、なんとかなるか。
とりあえず、動画撮影開始っと。
俺は適当にその辺を歩く。
人魂は俺について来てくれるみたいだ。
これ、旅系の動画投稿者泣いて喜ぶぞ。
しかも異世界だから風景調べても見れないし。
「ガチモン異世界ネタを俺だけのものに出来るんだ」
これは大バズ間違いなしだ。
俺は太陽が明るく照らす空を見上げながらそっと微笑む。
「まだ、諦めるなってことかな」
俺は歩いていると森が見える。
森の中は平原と違って薄暗い。
さっきのトンネルよりホラーしてるかも。
心臓がバクバクと高鳴る。
「……まぁ、入るか。ただ暗いだけだろ」
俺が足を踏み入れると人魂がぶわっと光を出す。
録画に照明までこなすなんて太っ腹な人魂だ。
俺は森の中へズカズカと進んでいく。
森の中は木が影となってるからか少し肌寒い。
果物とか沢山あるな。
元の世界とかでも見たことあるやつが大半だ。
俺は適当に果実を取る。
リンゴか?
しゃくっとかじる。
苦い、酸っぱい。
洗剤よりはマシだけど食べたくない。
俺は涙目になりながらかじる。
食事だけ元の世界のを食べたい。
早速ホームシックになりかけたが、気を取り直
す。
「とりあえずはここら辺に住んもう。それで近くに人の集落とこがないかの確認だな」
すぐにでも旅したいが、文化も何も知らないで旅をしたら何かヤバい事がおきそうだ。
カルチャーショックってやつであってるとは思う。
元の世界だろうが異世界だろうがナメたら死ぬ。
「とりあえず、水だな」
今後の予定を立てながら進む。
どれだけ進もうが動画撮影してるんだし迷うわけがない。
これも貴重な異世界の風景だしノー編集で出しても再生数が高くなるだろうな。
俺のなりたい動画投稿者像と全く違うからやらんがな。
とりあえず、今回の動画タイトルは『まさかの異世界転生!? 異世界の風景森の中編』みたいな感じで行こうかな。
俺は歩いていると水が流れる音が聞こえてくる。
水発見。
俺はすぐに音がする方へ行くと太陽の光をキラキラと反射する川が見える。
綺麗な川だなぁ。
さっきまでの薄暗さが嘘みたいに明るい。
葉っぱの遮光性高すぎだろ。
バシャッ、バシャッ
水の音が跳ねる音がし、俺は見やる。
すると泥か何かで汚れた下着を洗っている女の子の姿があった。
日の光に照らされた彼女の髪は金色にキラキラと輝く。
俺は一瞬頭が固まる。
そんな俺に女の子は気づく。
女の子は頬を赤く染めながら下着を胸元でぎゅっと抱えた。
「……あんまり、じっとは見ないでくれない?」
女性用下着……あ、やべぇ。
「垢BANされちゃうぅ!」
「何言ってんの?」
初めましての方は初めまして
そうじゃない方は久しぶりです
作者のワクルスです
受験戦争も終わりを迎え、ついに戻って参りました
終戦した時はあっさりでしたが振り返れば大変な日々でした
まぁ、こんなどうでもいい受験生の話は置いといて
新作として「異世界でも動画配信者」を書かせていただいております
1話目をご覧になった方はそのままもう1話見ましょう
初日に10話一気投稿するんですぐ2話が見れます
今作は少し設定が複雑な所がございますが、ゆるーく適当に読んでいただくのが1番面白いと思います
考察する方はぜひその考察についてお聞かせください
ちょっと気になるんですよ、あとアイデアとして使えそうでもありますしね
てことで、長話はここまでにして第2話もお楽しみください




