第十五話:王都でのんびり商売開始!
「ねぇ修也、この“ペダル式風呂かきまぜ棒”って……本当に売れるの?」
王都の市場通り、仮設テントの下で、フィオナが足元の奇妙な装置を見下ろしながら疑問を呈した。
「いや、これはな、入浴中にペダルを踏めば水が循環する。結果、温度ムラがなくなるって代物だ」
「で、それを誰が買うの?」
「……うーん、風呂好きな金持ちとか?」
「弱っ! 説得力弱っ!」
セレスティアが横から突っ込んできた。
修也たちは現在、王都の市場の一角にて、科学製品の初出店を試みていた。
その名も――クロノス商会(仮)。
名義上はまだ個人出品扱いだが、実質はすでに商会の体裁をなしていた。
売っているのは、魔法を一切使わない便利グッズたち。
・手回し発電ランプ
・空気式ふいご
・簡易水ろ過キット
・火打ち石セット(木製グリップ付き)
・ペダル式風呂かきまぜ棒(命名:修也)
品物は地味だが、どれも実用的ではある。
「まあ、最初は目立たなくて当然よ」
ノアが通行人を目で追いながら、静かに言う。
「だけど、必要とする人はきっといる」
「……そうだな。オレは売るっていうより、"届ける"感じでいい」
修也は笑って、屋台の前で寝転がった。
「また寝るのか!」
「これが営業スタイルだからな」
「はぁ……」
フィオナがため息をついた。
***
数時間後。
相変わらず売れない。
王都の人々は、「魔法があれば十分でしょ?」という顔で通り過ぎていく。
「やっぱり魔法が主流の世界だもんね……」
フィオナが弱音を漏らしたそのとき、リオンが小さく手を挙げた。
「あの……あのおじいさん、足が悪そう」
見ると、車椅子に乗った老人が、魔法杖を使えず困っていた。
「よし、出番だな」
修也が手早く屋台から“手動式杖スタンド”を取り出す。
「おじいさん、これ使ってみてください。杖を支えて、バネで押し戻すんです」
老人が試しに使うと、見事に安定して杖が自立した。
「おお……これは……すごい!」
「お代は結構です。感想だけください」
「……わしのような者でも、まだ生きてていいんじゃな、と思えた」
その言葉に、一瞬空気が変わった。
「……伝わったね」
ノアがぼそっと呟いた。
***
その日の夜。
遺跡に戻った一行は、初めての出店を振り返っていた。
「……ま、売れなかったけど」
「でも、ひとつ救えた」
ノアが静かに言った。
「それが一番大事なんだよ」
修也がコーヒーを片手に笑う。
すると突然、セレスティアが顔を上げた。
「ねぇ、それなら……商会、作っちゃえば?」
「商会?」
「王都の認可を取れば、市場に正式に出られるし、信用も上がる」
「面倒だな……」
「なら俺が」
ノアがさらっと言い放った。
「えっ」
「事務作業も管理も得意だし、嫌いじゃない」
「ノアが社長って……地味に似合いすぎる……」
フィオナが感心したように言う。
(……かっこいい)
心の中で、フィオナはまたひとつ、ノアへの想いを深めた。
「じゃあ、クロノス商会設立、ノアが社長で決定だな」
「勝手に決めないで!」
セレスティアが叫ぶが、もはや勢いは止まらなかった。
「んじゃ、俺は……技術顧問ってことで」
「ただの発明バカじゃん」
「言い得て妙だな」
「うるせぇ!」
笑い声が遺跡の広間に響いた。
こうして、魔法もスキルも使わない、科学と人情で動く小さな商会が、静かに産声を上げた。
そしてその未来は――想像以上に、大きな波を起こすことになるのだった。
TEPEN作
引用は許可取らなくてもタイトルと著者名を出してくれたら大丈夫です。
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