第十二話:ダンジョン探索? いや、ピクニックだろこれ
「転生したら時間を持て余せるようになった件」
第12話「ダンジョン探索? いや、ピクニックだろこれ」
朝。
いつもどおり、鳥のさえずりとフィオナの「焦げたぁぁぁ!」という悲鳴で一日が始まった。
「……なんで毎朝叫び声が聞こえるんだろうな、俺たちの拠点」
修也がぼそりと呟くと、セレスティアが肩をすくめる。
「まあ、日常ってことでしょ?」
ノアは静かにパンにジャムを塗っていたが、なぜかフィオナの料理を見ないようにしている。
最近、朝の調理当番が交代制になったものの、フィオナがやる日はなぜか胃薬の消費が増える。
そんな朝食を終えたころ、ギルドから使いの者がやってきた。
「ダンジョン探索の依頼……か」
修也は依頼書を手にしながら、ふむと顎に手を当てる。
リオンはまだ彼らに完全に馴染んではいなかったが、後ろの方でこっそり話を聞いている。
「……ダンジョンって、危なくないの?」
「まあ、初級ランクのやつだ。けどな、今日は――バーベキューでもしながら行くか」
「はあ!?」
セレスティアが思わず聞き返した。
「だってせっかく外出るんだぞ? 食材持って行けば、飯が美味いじゃん?」
修也の理屈が謎理論すぎて、全員が一瞬黙った。
「……あの、それって本当に探索になるんでしょうか……」
フィオナが心配そうに言うが、ノアはなぜかノリノリだった。
「いいんじゃない? たまには外でのんびりも」
***
そして当日。
ダンジョンの入り口前に集まった一行は、なぜか荷物がキャンプセット満載だった。
「これ、絶対ピクニックだよな……」
セレスティアがぼやいたが、修也は焚き火の準備に忙しそうだった。
「この火打ち石は魔法なしでも火を起こせる優れモノだぞ? な、リオン」
「うん……。すごいね、ほんとに魔法なしで火がついた……」
リオンは驚いた顔で火を見つめていた。
魔法に頼らない技術。
それは彼にとって、少しずつ世界が広がる瞬間でもあった。
しばらく焚き火で肉を焼き、皆で串に刺して頬張る。
「うっま……!」
フィオナが感動したように叫ぶ。
「これはダンジョン探索じゃないな……食材の消費遠足だ」
修也が肉を食べながらぽつりと呟くと、ノアも「んー」と頷きながら口に肉を放り込んだ。
「……食べながら戦うのは新鮮だわね」
「モンスター見たら叫ぶんじゃないぞ、セレスティア」
「う、うるさい!」
そんな和やかな空気の中で、ゆっくりとダンジョンを探索していく。
低ランクの魔物を退けながら、ほとんどが食べてしゃべって笑う旅だった。
が――
「……なにあれ?」
ダンジョンの奥で、彼らは奇妙なものに出会った。
「え、建物?」
セレスティアの言葉どおり、そこには石でできたアーチ状の構造物が立っていた。
だが、ただの石ではない。
「……金属? いや、これ……電線か?」
修也の目が鋭くなる。
「これ、明らかに魔法じゃないぞ。文明……だな」
「こんな遺跡がダンジョン内に……?」
フィオナが驚きの声を上げた。
「ちょっと、これってとんでもない発見じゃない?」
ノアが目を輝かせて言った。
「まあ、とりあえず今日は探索ここまでだな。腹もいっぱいだし、疲れたし、眠いし」
修也がのんびりした声でそう言うと、全員がずっこけた。
「ほんと、君って緊張感ゼロだよね……」
「いや、腹が満たされたら戦えんよ?」
「いや、ちょっとは危機感持とう?」
でも――不思議と誰も怒らなかった。
そのゆるやかな空気の中で、未知の遺跡だけが静かに彼らを見つめていた。
***
その夜。
ダンジョンを出た一行は、焚き火を囲みながらゆったりとした時間を過ごしていた。
「……ねぇ、ノア」
フィオナがぼそっと話しかけた。
「ん?」
「私、料理対決では負けちゃうかもしれないけど……」
「うん」
ノアは無言でコップを口元に運び、一口。
「ちょっとずつ歩みを寄せたいかも」
「……へえ」
「えっ、それだけ!?」
「ふふ。じゃあ、戦いね」
「……恋の?」
ノアは少しだけ顔を赤くし、ぽつりとつぶやいた。
「でも……本気にされたら、俺恐らくIQ2になるから」
「えっ」
「……自信ない、ってことだ」
フィオナは目を丸くしてから、ぷっと笑った。
「そっか。じゃあ、お互い全力で頑張ろ?」
「うん」
そうして夜空の下、二人の少女の想いが静かに重なっていった。
その様子を遠巻きに見ていたセレスティアがぼそっと呟く。
「ほんと、このパーティ……まともなやついないね」
それを聞いた修也は、ニッと笑いながら言った。
「最高の褒め言葉だな」
【続く】
TEPEN作
引用は許可取らなくてもタイトルと著者名を出してくれたら大丈夫です。
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