プロローグ
「転生したら時間を持て余せるようになった件」
──その瞬間、俺の人生は終わった。
ブラック企業での終わりのない労働。
朝から晩までパソコンに向かい、理不尽な上司に怒鳴られる日々。
仕事が終わる頃には終電もなく、家に着いた頃には空が白み始めている。
「九条、またミスしてるぞ」
「お前がいなくなった方が、チームの効率上がるんじゃないか?」
耳にこびりつく皮肉。
"生きてる"って、こんな感じだっけ。
──ある夜、いつものように深夜残業を終え、ふらつきながら帰路についた時だった。
信号が青に変わり、足を踏み出した瞬間――
「……え?」
眩しい光。
視界が真っ白になる。
……次に目を覚ました時、俺は"知らない空間"にいた。
「おめでとうございます! 九条修也さん、あなたは選ばれました!」
「……え?」
目の前に立っていたのは、ふわふわの金髪に透き通った青い瞳を持つ、美しい少女。
純白のローブをまとい、慈愛に満ちた笑みを浮かべている。
「あなたを、異世界に転生させます♪」
「……転生?」
「はい♪ あなたはこの世界では"死んで"しまいましたからね。」
「……マジかよ。」
全然実感が湧かない。
だけど、彼女の言葉にはどこか"説得力"があった。
……というか、死んだって? 俺が?
「えっと……もしかして、"転生ボーナス"とかあるのか?」
「もちろんです♪ あなたには特別な"力"を授けます!」
女神がそう言った瞬間、俺の体が光に包まれる。
【スキル獲得:時空操作】
頭に直接流れ込んでくる"何か"――
時間を感じる。
時間の流れを止められる……加速できる……巻き戻せる……?
「これは……」
「すごいスキルですよ♪ あなたが望んだ"力"ですから。」
「……俺、そんなもの望んだ覚えはないんだけど?」
「いえ、あなたの"心"が求めたのです。」
──気がつくと、目の前の女神が少し微笑んでいた。
「では……行ってらっしゃい!」
「おい! ちょっと待――」
次の瞬間、俺の体は光に包まれ、強制的に吸い込まれる。
──そして、俺は"異世界"に落とされた。
* * *
「……ここは……?」
目を開けると、そこは見渡す限りの広大な草原だった。
遠くに見える城壁と、空に浮かぶ鳥。
まるでファンタジー小説の中に入り込んだような光景。
「……マジで、異世界かよ。」
ふと足元を見ると、古びた看板が揺れている。
──【冒険者ギルドはこちら】
「冒険者ギルド……?」
──これは、もしかしてゲームとかでよくある"異世界モノ"のパターンじゃないか?
「いやいや、いきなり冒険者登録とか……そんなわけ……」
「新入りか? ギルドに入るならこっちだ。」
「っ!?」
振り向くと、筋骨隆々の男が俺をじろりと睨んでいた。
見るからに"ベテラン冒険者"って感じのいかつい見た目。
「俺は……九条修也です。」
「ふん……登録すれば、すぐに訓練が始まるぞ。」
「訓練?」
「"魔法"と"スキル"の基礎訓練だ。できなきゃパーティにも入れねぇぞ。」
──魔法。
さっき"スキル"を授かったと言われたけど、俺にはその"使い方"がまったくわからない。
「……やってみるか。」
ギルドの門をくぐると、にぎやかな声が耳に届く。
「いらっしゃい! 新入りさんかな?」
カウンターに立っていたのは、茶髪のポニーテールの受付嬢。
「ギルド登録ね? スキル名は?」
「……時空操作。」
「……え?」
受付嬢の手が止まる。
「スキルレベルは?」
「……わからない。」
「では、測定しますね。」
受付嬢が水晶玉を取り出して、俺の手を上にかざした瞬間――
「――スキルレベルⅩ」
「……は?」
「れ、レベルⅩ……?!」
周囲が一斉にざわつく。
「待て……レベルⅩって、"神級"じゃないか……!?」
「マジかよ……新人でそんなスキル……?」
「……ちょっと待ってくれ。」
俺自身が一番驚いていた。
「え? 俺……そんなにすごいスキル持ってるのか?」
「ふふ……面白い人ね。」
背後から、涼やかな声が聞こえる。
振り向くと、長い銀髪を持った美しい少女が立っていた。
透き通るような碧眼。
それなのに、まるで俺を"試す"かのような視線。
「あなた、"時空操作"を持ってるのよね?」
「……ああ。」
「だったら……試してみたくならない?」
少女が近づいてくる。
「私はセレスティア・ルクレシア。この王国の第一王女。」
「……王女……?」
「あなたの力……私に見せて?」
「……それは構わないけど……」
「ふふっ……なら、決まりね。」
セレスティアは俺の手を取った。
「待て! なんでこうなる?!」
「さあ、行きましょう。」
「おい!!」
俺の異世界生活は、"何かがおかしい"状態で始まった。
これは、俺が"最強"の力を得て、世界を救う物語――
そして、新しい未来を創る物語だ。
TEPEN作
引用は許可取らなくてもタイトルと著者名を出してくれたら大丈夫です。
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