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お釈迦様との邂逅

「お釈迦様?」


うちの本堂にいる仏像と同じお顔の方が目の前に居て、私はついそう眉を顰める。

お釈迦様は薄く笑う様に唇の端を上げた。


「いかにも」


そう言われると拝みたくなる。

つい両手を合わせて私は一礼した。


「これは夢でしょうか」

「夢であって夢ではない」

「・・・夢の中ではあるけれど、お釈迦様と会っているというのは事実、というところでしょうか?」

「いかにも」

「もしかして、私が砂漠の中に居た理由もご存知でしょうか?」

「私が使わした。お前の兄の代わりに」

「兄の代わりに!?」


意外な名前が出てきて、私はすっときょんな声を上げてしまう。

だがお釈迦様の顔はピクリとも動かない。


「この世界を救って欲しいとお前の兄に言ったのだが、長男だから寺を継がなくてならないので困ると言うのだ。代わりになる者を挙げよと言えば、其方の名を迷わず答えた。他人様に迷惑をかけるわけにはいかないが、親族の中で信頼が置けるのはお前しかおらんと」


そこは迷おうよ、お兄様!!

信頼してくれているのは有難いけど、妹を差し出すのはどうかと思うよ、お兄様!!!

だが兄は堅物なのだ。

そう言う兄が簡単に想像出来る。


「弟もおりますが・・・?」

「弟はちゃらんぽらんで浅慮だから迷惑にしかならないと言うておった」


確かに・・・。

しかも軟弱者です!

いや、待てよ?


「兄とはいつ会われたのでしょうか?兄も砂漠に?」

「否、使わす前に話をしたが拒否されたのでお前を急遽使わしたのだ。タイミングが決まっておったので、お前とは話をするのが後になってしまった」

「おぅふ・・・しかしいきなり放り出されて熱射病で死ぬところでしたが?」

「加護があるからそう簡単に死ぬ事はない」

「そうですか・・・」


お釈迦様に怒って良いのだろうか。

まぁそもそも仏教って人の一生は苦で、修行してその永遠の苦しみから抜け出す為のものだから苦行上等って事なのだろう。

だけど、あらゆる物事は原因と結果から基づいているので、人々の苦にも原因が存在するという考え方なんだが、果たして私は何をしてしまったというのだろうか?


「加護以外には何か魔法とか使える様になっていたりするんでしょうか?」

「この世には魔法などない」


はっきり言われて私はガッカリ肩を落とす。

グッバイ、私のチート生活。

魔法もなくてただの女子高生に何をしろとおっしゃるのでしょうか?


「だが、其方が望んだ天眼通は既に与えたではないか」

「天眼通、ですか?」

「お前は千里眼と言ったか。あらゆる事象を自由自在に見通すことのできる神通力のことよ」

「え?何も見えませんでしたが・・・?」

「集中力が足りなかったのであろうよ。集中して見たい物を考えてみよ」


そう促されて私は現在私が忽然と消えたハズの実家の様子を見ようと目を閉じて集中してみる。

家族が居間に集まって話しているのが見えた。


釈天(ときたか)から電話があって、迦暢(かのん)がお釈迦様に召されたって言うのよ」

「死んだということか?」

「異世界を救いに行ったんですって。本当は釈天(ときたか)が頼まれたらしいんだけど、家を継ぐからってお断りしたらしいのよ。お釈迦様のご依頼を断るなんてバチが当たらないかしら?」


母親は困った子よねぇと頬に手を当てて首を傾げている。

父親は母親の話に腕組みをしてうーんとひとつ唸った。


迦暢(かのん)は帰ってくるのか?」

「さぁ?どうなのかしら。でも釈天(ときたか)が跡取りだってお断りしたって事は帰って来られないんじゃないかしら?」

「そうか・・・釈天(ときたか)の尻拭いを他の家にして頂くわけにもいかないからなぁ」

「そうなのよ。お釈迦様には迦南(かなん)はどうかって言われたらしいんだけど、荷が重いってお断りしたんですって」

「まぁ迦南(かなん)じゃ無理だろう・・・」


弟じゃ無理なのは家族全員の共通見解らしい。しかし本人もそれをアッサリ認める訳にもいかず、頬を膨らませる。


「父さんも母さんも知らないの?異世界召喚されると魔法使い放題とかチート能力が付くのがお約束なの!」


現在中学2年で、絶賛厨二病の弟はよく異世界転生の類のラノベやマンガを読んでいるので詳しい。私はたまに借りて読んでいた程度だ。

しかし父親は溜息をついてみせた。


「お前は本当に浅はかだな。仏教では魔法を外法と言うのだ。お釈迦様が魔法を認めておられないのに魔法を与える訳がない」

「ねーちゃん詰んだ。まじ可哀想」

「お釈迦様に召されたのであれば仕方あるまい。迦暢(かのん)がお役に立てる事を願うばかりだ」


なんて物分かりの良い親なのだろうか。

どうやら騒ぎ立てる事もなく、普通の家庭ならば妄言とされるだろう兄の言葉をすんなり受け入れる事にしたらしい。

私はガックリと膝をつき、床に手をついた。まさにorz


「お前の家族は物分かりが良くて良い。信心深い良い家族だ」

「私、帰れないんでしょうか?」

「それは分からぬ。まずはこの世界を救ってからだ」

「ちなみに世界を救うって何をすれば良いのでしょう?」

「それも分からぬ。お前の出来によるであろうよ」


出来って何を指すんだろうか?

何がハッピーエンドで何がバッドエンドなのかが分からなければ救いようもない。


「あ、天眼通で救う方法を見れば良いのでは?!」

「お前に見えるのはせいぜい2、3ヶ月の未来までよ。世界は広い。あまり全てを見ようとすれば・・・まぁやれる事やれない事は自分で試してみるが良い」


途中で言うのを止めた言葉がとても気になる。しかし自分で確認出来る事より、今は聞いておきたい事を聞いておいた方が良いだろう。


「頂けるのは天眼通だけでしょうか?」

「6種の神通力は大体使えるようにしておこう。だが、他の5つはお前の望んだ天眼通ほどの力はない」

「使い過ぎると死ぬとか制限はありますか?」

「死にはせぬがそれなりに精神力を使うのだから疲れるであろう」


だったら最初に神足通を願うべきだったか?

神足通は飛んだり、水の上歩いたり、壁をすり抜けたりする力だ。それがあれば砂漠なんてひとっ飛びだったかもしれない。だけど世界を救うなら予知は出来た方が良いだろう。

と言う事は千里眼願って正解?単に視力アップを願っただけだった気がするが、いやもう正解と思おう。少しくらいポジティブに生きたい。


「では頂けるのは神通力のみという事でしょうか?」

「のみとは聞き捨てならないが、加護もあると先程言ったであろう」

「加護とは死ににくいという事ですか?」

「否、お前が望む仏達が、お前が望む力を持っていれば助ける、という意味だ」

「例えば、薬師如来様にお願いすれば薬を頂ける、という事でしょうか?」

「その通りだ。先程神力を使ったのと同じ様に願えば良い」


私は目を閉じて、薬師如来様に心の中でお願いをしてみる。

とりあえず熱射病の体を万全にする薬を下さい、と。

すると心の中の薬師如来様が微笑んで小さな壺を手渡してくれる。

ありがとうございます、と心の中でお礼を言って目を開けると、先程受け取った壺を手にしていた。壺を開けると小さな黒い丸薬が入っていたので、えぇいままよ!と飲み込んだ。なんだかググッと力が湧いてくる。


「あ、これ夢の中だから意味ない??」

「どこで飲もうが効いておる」


お釈迦様のお姿が少し薄くなった気がして、この会談の終わりを感じ取る。

他に聞いておくべきことあったっけ?


「あ、鏡は持って歩かないと不都合ありますか?」

「あった方が願いは届き易い」

「・・・あの鏡、もう少し小さくなったりしませんよね?」

「出来ぬ事もないが・・・体内に取り込める様にしておこう」

「体内、ですか?」

「戻った後に触れてみよ」

「分かりました。あとはえーと、こうしてお釈迦様とお話出来る機会は今だけでしょうか?」

「たまに様子を見に来る。その際に話を聞こう」



そうして迦暢(かのん)は目を覚ました。

薬師如来様の薬のせいか、しんどかった体はスッキリ爽快で恩人さんを驚かせたのは言うまでもない。

鏡は触れた瞬間に消えて一瞬焦ったが、出ろ出ろと念じたらまた手の内に出てきたので安心してまた体の中に取り込んだ。

これで無くす心配もなくなって一安心である。

仏教は真面目に調べてないので間違っていたらごめんなさい。

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