俺の嫁はゲート
そう遠くもないのだが、ヴァルダマーナの温かさと歩く揺れと疲れに迦暢は眠ってしまったらしい。目を覚ますとすっかり窓の外は明るく、太陽はだいぶ高く上がっている。
視界の中に大きな手が伸びてきて迦暢の頭を撫でた。
「おはよう、迦暢」
「お、おはようございます、ヴァルダマーナ様」
ベッドの横に椅子を置き、すぐ隣で持ってきていたらしい中学2年生の理科の教科書を読んでいたようだ。
美しくて凛々しくてカッコいいのに読んでいる本が教科書というのがなんとも可笑しい。
「体は大丈夫か?辛いならもう一泊しても構わない」
「いっぱい寝たから大丈夫です。ヴァルダマーナ様こそちゃんと寝たのですか?」
「ゆっくり寝たさ、お前の隣で」
「えっ!?」
迦暢は飛び起きて、もちろん今は誰も寝ていないベッドの隣を見下ろした。ベッドは2人寝ても十分な程広い。言われてみればすこし乱れている気がしてくる。
気がつけば服装も昨夜着ていたハズの神官服を脱がされただけのキャミソール姿だ。
「まだ手は出していないから安心しなさい」
「寝込みを襲うなんてことしたら軽蔑しますよ」
「肝に銘じておこう」
迦暢はベッドから下りると急いで着替えの服を着る。
顔を洗ってきますと言って部屋を出るとサルマではなくファラムンドが立っていた。
「おはようございます、イサ殿」
「おはようございます、ファラムンド様。サルマは?」
「少し家に戻っています。すぐに戻りますよ」
「え?サルマの家はこの街にあるのですか?!」
「ご存じなかったのですね。昨夜会ったサドハンが父親ですよ」
「えぇっ!?領主の娘と言う事ですか!?」
「そうなりますね」
「今までそんな素振りなかったじゃないですか」
「サルマも縁を切るつもりで家を出たのでしょうからね。今回はヴァルダマーナ様のお言いつけで仕方なくと言ったところでしょう」
領主の娘という事はそれなりのお嬢様だったのではないだろうか。
王都の近くに領地を頂いているのだからそれなりの身分だろう。
それなのに女だてらに騎士になり、小さな町とは言え支団長にまでなったのだから不思議に思う余地はあったのかもしれない。
自分の不甲斐なさにガッカリだ。
「そこ落ち込むところですか?」
「ずっと一緒に居たのに何も知らなかったんですよ!?」
「サルマは触れられたくなかったのだと思いますよ。貴方の為に信念を曲げたのでしょうから褒めてやって下さい」
「どういう事ですか?」
「もちろん元々忠義に厚い家ではありますけど、他にも水が減ってきた重要な領地なんて沢山あります。その中から貴方の後ろ盾を得る為にワザとこの地を選んだのですよ。サルマの為でもありますけど」
サルマは政略結婚の道具となるのが嫌で家を出るために女性の少ない士官学校へ進んだらしい。士官学校は貴族の出でなければ入れないが、武芸の強い家系ではないサルマが入るのは珍しいそうだ。
貴族の娘は基本的に政略結婚の道具にしかならない。女が自分自身で地位を築こうとするなら騎士の道くらいしかこの世界ではないらしい。
家を勝手に飛び出した娘を領主は長女ではないとは言え公には許していないのは周知の事実だ。だからサルマも実家に帰る事はなかった。
この領地にもなるべく足を踏み入れない事にしていたらしい。しかしヴァルダマーナから領主に迦暢の後ろ盾となる事を説得する役目を先に打診され、領地への伴が嫌ならば護衛から外すと言われたサルマは一瞬戸惑いはしたもののすぐに受け入れたのだ。
いくら王族という後ろ盾があるとは言え、それ以外の後ろ盾を持たぬ迦暢を守る為に。
「私の後ろ盾なんて必要なんですか?」
「今は万が一の保険でしかありません。貴方の能力やバックボーンがバレたら誰もがその力を欲するか、権力の均等が崩れる事を恐れて貴方を消そうとする者も現れるでしょう。その際に貴方を護る有力な貴族が必要なのです」
「私なんかの為にサルマの今までの信念を曲げさせる必要はないのに!」
「先程も言いましたが、これはサルマ自身の為でもあるのですよ」
「どこらへんが?」
「サドハンはサルマを公式に赦す事は難しかったのですよ。しかしサルマがヴァルダマーナ様の配下になりこの町の水量を増やす様働きかけた事になるのですからその功績にサドハン様はサルマを赦す事が容易になったのです。これで実家への帰省が可能になったという事ですね」
「家族と会える様になったのは喜ばしい事ですけど、そもそもサルマと家族は仲が悪くて家を出たのではないのですか?」
「対外的にはそういう事になってますが、本当はサルマを逃す為に助力したのはサドハン様の様ですよ」
領主としては断れない縁談があったが、父親としては受け入れ難い縁談だったようだ。サルマが勝手に家を出て士官学校に入ってしまった事とし、領主はサルマを勘当した。これで縁談は回避できた。しかし勘当を解く機会が今までないままだったらしい。
「じゃあ、なんでサルマは憂いているのですか?」
「それは自分の都合にイサ様を巻き込んでしまったからでしょう」
「巻き込んでます?むしろ逆じゃないですか?」
「イサ様の価値を知れば後ろ盾になりたいもっと有力な貴族など他にもいますからね。これがベストだと思えなかったのでしょう」
その後ろ暗い思いがより迦暢に対する厚い忠義となる事を狙っての事だとファラムンドは敢えて言わない。
むしろそれを負担に思うのが迦暢もだった事がファラムンドには意外だった。
なんと素直で純粋な姫さまだろうか。
起きて来た時よりも少し落ち込んでしまった迦暢にファラムンドは心配になった。
今までヴァルダマーナの周りには居なかったタイプだ。
ヴァルダマーナは合理的で我慢強く頭の回転が良い人間を好む。今までの恋人達も割り切った関係のサッパリした性格の女ばかりだった。ヴァルダマーナもまた恋人に甘いところなど一度も見せた事がない。それなのに迦暢に対するヴァルダマーナの対応が合理性のカケラもなく、ただただ慈しむ姿にファラムンドは顎が外れそうになったくらいだ。
確かに迦暢の価値は高いとは思う。
普段は合理的で頭も良い。
だけど真っ直ぐすぎて優しすぎるのだ。
それがいつかヴァルダマーナの枷となるのではないかとファラムンドは懸念している。
「顔色が悪いな。まだ疲れているのではないか?」
「大丈夫ですよ」
部屋に戻ると鋭いヴァルダマーナが迦暢の顔を見て、そっと頬を撫でる。
迦暢はへらっと笑ってみせるが、ヴァルダマーナはジロリと後ろに立つファラムンドに目を向けた。
「何があった?」
「何もないですよ、ほんと」
「ファラムンド」
「サルマの話を少し」
「お前は本当に余計な事ばかり」
「違いますよ。ほんと、サルマもファラムンド様も関係ないですから」
「迦暢、サルマのことは」
「サルマの事はサルマから聞きます!ヴァルダマーナ様とは王都に帰ってからお話しする約束ですし!それよりっご飯食べたいです!」
起きなかった迦暢以外のメンバーは朝ご飯は食べたが、昼ももう近い。
午後の予定は迦暢の体調次第としていたので、サルマが戻り次第街に出て市場を冷やかす事にする。
荷造りをして待っているとサルマは程なく戻って来た。
やはりサルマも迦暢の顔を見てすぐに心配そうな顔になる。
「迦暢、まだ疲れているのではないか?顔色があまり優れない様だが」
「お腹すいたんだよ。サルマが戻ってくるのを待ってたんだから」
「あぁ、それはすまなかった。美味いオススメの店を聞いて来たからいっぱい食べるといいさ」
心なしかいつもより明るいサルマに迦暢も心の支えが取れたのか笑顔になった。
荷物を神殿に置いたまま、4人は市場へ向かう。
町は昼間だからか、昨夜の水天様の奇跡を見に人が集まっているのか昨日着いた時よりも人がだいぶ多い。
肌に草の汁を塗って浅黒く装ってはいるが、ヴァルダマーナは迦暢に深くフードを被らせてその手を引く。
サルマのお薦めの店でヴィグエタというホットサンドやクロケッタを買い込んだ。
木陰に座ってそれらを頬張りながら町の人達の会話に耳をすませば、誰もが昨夜の内に増えた水量の話ばかりしている事は知れる。
危機を覚えるほど水量が減り始めていた市民にとってそれはそれは嬉しい奇跡だったに違いない。
「覚如くん?!」
「迦暢!?」
「ファラムンド!」
急に立ち上がって駆け出した迦暢についサルマは本当の名を呼んでしまう。
ヴァルダマーナの声よりも早く駆け出していたファラムンドが迦暢を追い越して辺りをキョロキョロと見回している少年を捕まえた。
「覚如くん!!」
「迦暢ちゃん??・・・って迦暢ちゃんだよな??」
「あってる」
「この人誰?」
一瞬肌の色の違う迦暢にたじろいだが、迦暢だと知れると安心した様に息を吐く。それから自分の腕を掴んだままのファラムンドを指差して迦暢に視線で助けを求める。
「ファラムンド様、離してあげて下さい」
「イサ様、この方はどなたですか?」
「許嫁だよ」
迦暢が答えるより早くそう少年が胸を張る。
追いついて囲むように立っていたヴァルダマーナとサルマがピクリと反応した。
ヴァルダマーナが迦暢の腕を引き、自分のマントの中に入れる。
「幼馴染です、ただの!」
「幼馴染だと?」
「覚如君いつこっちの世界に?」
「今さっき」
「お釈迦様に呼ばれて?」
「いや?遊びにきただけだけど」
「遊びに??」
「迦暢ちゃん、こっちのお金持ってる?せっかくだから俺も何か食べたいんだけど。お土産も買いたいし」
「お土産って、覚如君は帰る方法知ってるの?」
「帰りたいって思えば帰れるよ、俺はね」
あっけらかんと話す覚如に迦暢は混乱する。
帰りたいと思って帰れるならとっくに迦暢だって帰れているはずだ。
そもそもお釈迦様もまずは世界を救わなければ帰ることは出来ないような事を言っていた。救ったとしても帰れるかどうかは分からないとも言っていたと思う。
「私は帰れないってこと?」
「迦暢ちゃんはゲートみたいなもんだからなぁ。帰れる方法があるかは知らない」
「覚如君はどうやってきたの?」
「うちの大日如来様にお願いした。迦暢ちゃんの異世界転移の話聞いてさ」
「覚如君、もうちょっと詳しく」
「飯とお土産買ってくれたらね。俺2時間しかこっち居られないし」
迦暢は困ってヴァルダマーナを振り向いた。
ヴァルダマーナはその顔に諦めた様にファラムンドに顎をしゃくる。
ファラムンドは自分の肩に付けていたマントを外して覚如に差し出した。
「こちらのマントをお召しください。その格好では目立ちます」
「これはご丁寧にどうも」
覚如はマントを受け取って広げ肩にかける。
無地のシャツにチノパンは確かにこちらにしては厚着だし、生地が上等すぎて浮いているのは確かだ。
失礼します、と言ってファラムンドは覚如が羽織ったマントの紐を引き服装が隠れる様に前の紐を結ぶ。
肌の色はどうしようもないが、フードを被ればそう目立つことはないだろう。
一行は覚如の望むまま再び市場を見て回り、食糧や土産になりそうな雑貨を買わされて神殿に戻った。
「覚如くん、ちゃんと説明して。2週間くらい前に王都にもいたよね?」
「えー気づいてたなら声かけてよ。なんも買えないし、ジロジロ見られるからすぐ帰る羽目になったんだぞ」
「声掛けたけど覚如くん走って行っちゃってすぐ見えなくなったから幻かと思ったんだよ。異世界にいるわけないと思ったし」
迦暢の話は一部では知られた話になってきているらしい。
家族が学校の先生に素直に話した事で警察や役所に内密にではあるが話がいき、一応省庁にまで話が上がっているらしい。
いくら内密に動いているとは言え、他人事であれば面白すぎる異世界転移を人に話したくなるのは仕方のない事だろう。
誰が投稿したのかテレビ局も取材させて欲しいと来たそうだが、役所や警察が動いてる事もありとりあえずお引き取り願ったそうだ。
総本山に修行に出ている兄もお釈迦様に呼ばれ話をしたとあっては信仰する総本山的も動かざるをえず、同様の事案がないか調べたりと色々動いているらしい。
覚如は迦暢とは違う学校だが、父親同士が近所の住職同士というのもあり仲が良いので知ったらしい。それに加えて迦南が装備の事で自衛隊好きの覚如に色々相談をしたのだそうだ。
覚如は祈れば物が送られると聞いて、自分の家の大日如来様で試してみることにしたらしい。覚如が祈ると目の前に大日如来様が姿を現して下さったので色々質問をした、と。
大日如来様曰く、異世界転移は初めての試みであり特に前例はなく、画文帯四仏四獣鏡を持つ寺の子だから可能となった部分が大きい。画文帯四仏四獣鏡を宿す迦暢という存在がある為、日本との疎通が可能である。こうして神々を通じて異世界と疎通が出来るのはゲートである迦暢と関係が深く、迦暢の現在の姿を思い浮かべる事が出来、神々に仕えている者であること。
つまり迦暢の家族はもちろんのこと、迦暢と許嫁の話が出た事もあり、近所なのもあって最近の迦暢の姿もよく知っていて、寺の跡継ぎである為に既に色々手伝いをさせられている覚如、更に覚如の父親なんかも可能だそうだ。
「来る時は迦暢ちゃんから半径100m以内にランダム転移するから前回は迦暢ちゃんを見つけられなかったんだよ」
「帰りは?帰りはどうやって帰るの?」
「俺は2時間経ったらか、命に危険がある時、お経を唱えた際は帰れる様にお願いしてある」
「覚如くんは何しに来たの?」
「迦暢ちゃん俺の嫁じゃん?だから連れて行かれると困るって大日如来様に訴えたんだけど、こっちの世界救わないとダメなんでしょ?だからとりあえず手伝おうと思って来たんだけど、俺には無理そうだから諦めた」
覚如は釈天とは違う変わり者である。
子供の頃はうちの大日如来様カッケーんだぜ、と戦隊モノと同列に語り周りの子供たちをポカンとさせていた。
そのノリについていけた、というか特に気にせず受け入れたのが迦暢の家族だけだったのもあって覚如は唯一の同年代女子である迦暢を嫁だとそれこそ学校に上がる前から公言している。覚如の親も寺の子供同士という願ってもない家柄の迦暢を是非嫁にと許嫁にしてはどうかと言ってきていた程だ。ただ迦暢の母がまだ他にもご縁があるかもしれませんからと断ってくれたらしい。
そんな訳で嫁と言われるのに慣れすぎてもはやツッコむのも忘れてスルーした迦暢の横で、ヴァルダマーナの表情が微かに曇った。
だが隣に座る迦暢は覚如の話に夢中でそれに気づく事もない。
「覚如君が来れるってことは、うちの家族も来れるってことだよね?」
「まぁそうなるね。来たいと思えばだけどさ」
迦暢が帰る方法は分からないが、家族が来れる可能性があると知り迦暢は希望を見出す。
会うことが出来るなら、あとは迦暢がヴァルダマーナに相応しくなれる様に努力すれば良いだけだ。
昨夜、月の女神が言った通りになった。
「あ、そろそろ2時間だ」
そう言って覚如が迦暢に買わせた土産物を手に持つ。じゃ、またねーと呑気な感じで荷物が送られる時と同じように覚如がふっと消えた。
「ヴァルダマーナ様、お時間取らせてすみませんでした」
「いや・・・良かったな、同郷の者と会えて情報も得られたのだから」
優しくヴァルダマーナは迦暢の頭を撫でる。
少し前まで落ち込みぎみだった迦暢はすっかり元気を取り戻した。
「迦暢、今日中に王都に戻ろうと思うが大丈夫そうか?」
「大丈夫です」
「帰りは私の馬に乗りなさい」
「私の馬はどうするんです?」
「後で届けさせるから問題ない」
「一人で大丈夫ですよ?」
いいから、とどこか神妙なヴァルダマーナに念を押される。
迦暢がサルマに視線をやると、サルマだけでなく、ファラムンドも同じ様な顔で合意しろと頷いた。
そんなに顔色が悪いだろうか。
心配されていることは分かって迦暢は了承する。
その同意に3人は慌ただしく帰り準備を始め、神殿長に挨拶をすると早々に街を後にした。
念のために肌の色を変えたままなのに、フードを深く被らされて後ろからぎゅっとヴァルダマーナに片腕に抱えられたまま帰路を駆ける。
2人乗りしているのに馬は大丈夫なのだろうかと思う程速い。
行きは相当速度を落としてくれていたのだと迦暢は理解する。
「このまま同じ感じで王都まで戻るが大丈夫そうか?」
「私は大丈夫です。自分で乗るより全然楽ですし。それよりもヴィーラ様は私を抱えていて疲れませんか?」
「いや、むしろ安心できる」
「そんなに私の乗馬は危なっかしいですか?急いでいたなら私を置いて先に帰れば良かったのに」
「急いでいるわけではない。離れると何をしでかすか心配でならぬから抱えて走った方が良いという話だが?」
途中の町での休憩中も迦暢の腰を抱いて離さないヴァルダマーナがそうどこか真面目な顔をする。
見上げた先で同じ様にジュースを飲んでいたファラムンドが肩をすくめてみせた。サルマもどこか困った子を見るような目だ。
そんな3人に迦暢はむぅっと顔を膨らませる。そんな心配させる様な事はしていないはずだ。行きはちゃんと事故もなく一人で駆けたし、水天様の儀式も無事にやり遂げた。それ以外に・・・と思い返して、泣いたり儀式の後は先に寝落ちしたのに昼まで寝てたり、一人になるなと何度も言われていたのに街中で急に駆け出したのを思い出す。
あるね。
心配になることてんこ盛りだ。
「そう言えば、この街の水量は増やさなくていいのですか?」
「あぁ、この街は王都に近いのもあってまだまだ豊富な様だから大丈夫だ。両隣の水量が増えた恩恵をだいぶ受けたらしい」
「それは良かったですね!」
前回街に着くなり男2人が消えたのは街の水場に行き情報を集めたり、神殿に確認に行ったからだったらしい。
帰路、ヴァルダマーナは迦暢から離れなかったが、ファラムンドを再び確認に出して隣町の影響を確認していた。
ファラムンドも水分を取り終え、再び迦暢はヴァルダマーナに抱えられて王都を目指す。
最初の内は緊張していたが、慣れると背中の温もりと、一定のリズムになんだか眠くなってくる。自分で馬を操らなくて良いのも更に気が抜けて良くない。
腕の中で舟を漕ぎ始めた迦暢にヴァルダマーナが一度馬を止め、紐で自分と括り付けたのも迦暢は気づかぬまま離宮に戻ったのだった。




