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旅の準備

「砂漠の花園?」

「あぁ、一年に数週間だけ花畑が出現するのだ」

「いつも同じ頃に咲くのですか?」

「だいたいは同じだな。気候条件が揃うと一斉に咲く。見渡すかぎりの花畑はとても美しいぞ」

「なんだかロマンチックですね。いつか見れるといいなぁ」

「そうだな。今年はもうすぐだがここまで遊びに行く暇はないだろう。いつか必ず2人で見よう」


地図を広げて領地について勉強していると、ヴァルダマーナは色々な事を教えてくれる。

王族という事を隠し、身軽に各地を見て回るとそんな政治に関係のない事でも見識を深めてくれるそうだ。

迦暢が屋敷にいるせいか、最近ヴァルダマーナはほとんど日帰りできる程度の場所にしか行っていなかった。

だがいい加減、外に仕事に出なくてはいけないらしい。


「迦暢、一緒に行ってはくれないか?」

「ご一緒しても良いんですか?」

「実は迦暢に貰った水脈の剣を刺しに行きたいと思っているのだ。だが国境に近い部分なので距離は遠い。」

「分かりました。水量アップの旅ですね!バンバン刺してして行きましょう!」

「バンバン・・・?」

「ん?」

「そうか、迦暢が一緒に行くならば貰った力を使う必要はないのだな」

「別の剣は必要ですけど、差し上げたのを使うのは勿体ないですね。外交とかに使ったら良いんじゃないですか?」


ヴァルダマーナは苦笑する。

そんなにバンバン水量アップ出来るものとは思わず、今まで何ヶ月もどこに残り一つの水量アップのまじないを使うか王様と協議していて時間がかかったらしい。

最近は迦暢の熱いプレゼンの結果、王都で上下水道の整備が進んでいるので、迦暢はすっかり水脈の事を忘れかけていた。

まずは王都からとは思っていたが、上下水道が整備されるまでまだ時間はかかるし、困っている人達を巡る方が有意義というものだろう。


「馬ですよね?なんだかすっかり馬に乗る機会もなくなっちゃったので少し練習したいです」

「そうだな。長旅になるから荷物もあるし相乗りよりも一人で乗れた方が良いだろう」

「何人で行くんですか?」

「後はサルマと私の側近を1人連れて行く」

「夜は宿屋ですか?」

「そうだな、途中は宿屋か神殿になるだろう。目的地では辺境伯の屋敷になるであろうが」

「あ、お姉さまが嫁いでおられるのですよね」

「そうだ。少々喧しい姉だが大目に見てくれると助かる」


王様の3人目のお子である長女のアドラシオン様は10歳年上の次期辺境伯に一目惚れし、猛烈アタックの末、結婚まで漕ぎつけたらしい。

海が近く貿易が盛んではあるが、領地の半分以上が砂漠で、隣国からの防衛の要でもある。そこに王家が縁付くのはどちらにもそれなりに利のある結婚ではあったが、アドラシオンは王家から離れる際に旦那様至上主義を宣言していったそうだ。


「海が近いならお刺身食べられるかなぁ」

「お刺身とは?」

「お魚を生で食べるんですよ」

「漁港に住まう者達は生で食べる事もあるかもしれないが食堂などで出る事はないな」

「そうなんですか・・・残念です」

「食べられる機会があるといいな」


迦暢は手元のノートに醤油と書きつけた。

あとは旅に何が必要だろうか?

水天様の像は儀式を何度もするから場所を確認する為に持っていかなければならないが、お釈迦様の像が必要かといえばそうでもない。しかし1ヶ月近く留守にするのに手元にないというのも不安だ。

あとは着替え、水筒、手拭い、ライト、行動食、万が一の時用の食べ物。米が恋しくなるだろうから送ってもらった日本米をメスティンの中に詰められるだけ詰めて持っていこう。ということは登山用の小型ガスバーナーコンロも必要だろう。あとはコンパス?ナイフ?日焼け止め?シュラフやテントは町に泊まるから不要だろうか?しかし万が一の事を考えるとあった方がいいかもしれない。

弟が送ってきた登山一式をベースにしようと決めて必要なものを足す事にした。


数日後、ヴァルダマーナは見知らぬ男を連れて昼間の内に屋敷に戻ってきた。

概ね日本語の本を辞書を引きながら読めるようになったヴァルダマーナとアーロンとの勉強会もだいぶ頻度が下がってきている。

なんなら知識量で言えば日本人である迦暢よりも2人の方が今となっては上かもしれないレベルだ。


「一緒に旅に出る側近の1人だ」

「ファラムンドでございます。以後お見知り置きを」

「宜しくお願い致します、迦暢です」


人懐っこい笑顔でファラムンドは迦暢に膝を折る。相手は恭順を示してみせたが、あえて迦暢も同じように膝を折って挨拶を返した。

ヴァルダマーナの側近だからと言って、ただの恋人という立場である迦暢の方が上だとは到底思えないからだ。

むしろこれからお世話になるのに恋人の威厳を振りかざす面倒な奴だと思われるのは困る。


「噂通りの可愛らしい方ですね」

「噂、ですか?」

「私の父は王の側近のウーゴです。カルリトス殿の騒動の際の話を聞いて、是非一度お会いしたいと思っていたのです」

「ファラムンド、余計な事を言うな」

「随分余裕がないのですね、我が主人は・・・迦暢様、旅の前に一度遠乗りに行きませんか」

「遠乗りですか?」

「乗馬の練習も兼ねてな」

「行きます行きます!いつですか?今?」

「例の儀式も一回やってみせて欲しいのだが出来るか?」

「夜で良ければ」

「では泊まりで行くしかないな。出発は明後日の午後にしよう」


迦暢は既に水天様から水脈バンバンの件のお許しを得ている。祈りを捧げるならばいくらやっても構わないとお墨付きをもらっているので、今更箇所が増えた所では問題ない。

むしろ近場でリハーサルをさせてもらえるのは迦暢にとっても有難い事だ。

せっかく詰め終わった長旅用の45Lザックを解くのは忍びない。

母親が送ってくれた学校用のザックに別で荷物を詰め込むことにしよう。


「迦暢様は何か武器はお持ちですか?」

「武器、ですか?」

「治安がいい所ばかりじゃありませんから、多少何か持っておいた方が良いでしょう」

「うーん、あまりそういう場面が想像出来ないんですけど」

「ベルベロ村で斬られたじゃないか」

「そう言われるとそうだけど、アレはたまたま悪事に居合わせちゃっただけだからあんまり実感がない」

「もう少し危機感を持ってくれ。先日も王族に楯突いたばかりじゃないか」

「でもあれはサルマが盾になってくれてたじゃない」


サルマが迦暢の危機感のなさに険しい顔をする。その横でヴァルダマーナも眉間に皺を寄せ、ファラムンドは事情は分からないものの少し呆れているようだ。

ベルベロ村で襲われた時は小さなナイフは持っていたけど、ナイフを出すという発想すらなかった。後ろから斬りつけられたので、直接剣が振り上げられたのを見ていない。加護の力もあってあまり大事に至っていないのでもう記憶も薄くなっている。

カルリトスに剣を向けられはしたがサルマの後ろに居たし、結局脅しにしか使われていないのでまだ怖さがイマイチ分かっていないのだ。


「じゃあ剣と弓を試そうかな」

「承知しました。ご用意しますので、明日少し練習致しましょう」


一応中学までは剣道を習っていたし、高校では弓道部だった。兄の文武両道の方針が役に立ちそうな時が来たのかもしれない。

ただどちらも人にその矛先を向けるのはどうにも想像する事が出来ない。日本では他人を傷つける事をヨシとしないのは言わずもがなだ。

弟からのチートボックスにはスタンガンやら催涙スプレー、クロスボウなんかが入っていたのでそこらへんを活用するのもいいかもしれない。


「ところで迦暢、ベルベロ村で襲われた話を私は聞いていないが?」

「ベルベロ村の者達がヴァローナの水源を狙って襲撃しようとして作戦を練っている所に遭遇してしまったんですよね。それで斬られたんです」

「ヴァローナが襲撃された事は聞いていたが、その前に襲われた話は報告が上がっていない」

「まぁそれで対策立てて迎え討ったのでヴァローナには被害がなかったし問題ないのでは?」

「サルマ」

「その時点では迦暢の存在を公にしていなかった為、省略させて頂いておりました。申し訳ございません」


ギロリとヴァルダマーナに睨まれて、サルマは経緯を全て吐かされた。迦暢が一人でいた事や、剣に毒が塗られており熱を出している中無理をして神託を得た事などを伝えるとヴァルダマーナの眉間に皺が深くなる。その横でファラムンドが残念な者を見る様に苦笑していた。


「迦暢、傷は?まだ痛むのか?」

「傷なんてもうないですよ」

「嘘をつくな。跡は残っておろう」

「ないですってば。綺麗に治りました」

「見せてみよ」

「えっ!?や、いやですよ!皆の前で脱げっていうんですか!?」


キョロキョロと3人を見回して迦暢は後ずさる。しかしヴァルダマーナに腕を掴まれ、問答無用で担ぎ上げられて隣の部屋に連れ込まれた。

ベッドに腰を掛けると、自分の膝に乗せた迦暢の衿をぐいとひっぱる。首が締まって迦暢は慌てて胸元を掴んだ。


「ヴァルダマーナ様っ!苦しい!見せる!見せますから!」


ヴァルダマーナの手が緩み、迦暢は急いで詰襟のシャツのボタンを外した。この国の庶民の服装は詰襟のシャツにV字のベストワンピースを着て、腰にエプロンを巻き、その上に半幅帯より細いチロリアンテープの様な帯を巻く。お金持ちになる程色や刺繍が豪華になるのだ。貴族となればスカートの丈や袖口が広く長くなるらしく、先日王様に会った際にはほぼドレスみたいな服装を着させられた。普段着用にも似た様な服が用意されていたが、動きにくいので迦暢は庶民に近い格好をさせて貰っている。ただしヴァローナ時代の生成りではなく薄手で涼しい割に全部色が付いているし、刺繍やチロリアンのパイピングが可愛い。

再びぐっと衿を引かれるがよく見えないらしいのか強く引かれて残りのボタンが弾け飛びそうだ。


「見えぬ」

「ヴァルダマーナ様、見えないんじゃなくてないんですよ」

「そんな訳あるまい。毒まで塗られてサルマは死をも覚悟した程であったと言っていたではないか」

「私は御加護を頂いてますし、お薬の神様に薬を頂いたので本当に綺麗に治ったんですよ」


疑り深いヴァルダマーナの為にボタンを全て開け、帯から引き抜いてシャツを脱ぐ。

母親が送ってくれたタンクトップを着ていたので、下着姿という事でもないから良いだろう。男兄弟というのもあってあまり羞恥心のないのかもしれない。

涼しさ重視の割と背中の開いたタンクトップだったので、傷がない事は証明出来たはずだ。

ヴァルダマーナがそっと迦暢の素肌に触れた。


「今後も傷をつける事は許さない」

「注意はしますけど、お約束は難しいですね」

「お前は本当に実直で困る。こういう時は嘘でもハイと言うものだ」

「嘘は出来れば吐きたくないじゃないですか」

「そうだな」


背後でふと笑った雰囲気がして、その息が首筋にかかる。

結構恥ずかしい事をしたのでは?と迦暢が気づくのより早く、ヴァルダマーナの唇が迦暢の背中に触れた。

その感触にビクリと迦暢は身体を震わせる。


「ヴァルダマーナさま!」

「不思議な下着を付けておるな」

「もうお終い!もう傷ないの分かりましたよね!?服着ますから!」

「続きをするのはまだ嫌か?」

「嫌なんて一度も言ってないですよね?嫌じゃないけど今ではないと思います。ファラムンド様お待たせしてますし!」

「嫌ではないのだな?」

「嫌じゃないです。した事がないので手加減して欲しいですけど」

「考慮しよう」


そう言ってヴァルダマーナは再び背中に唇を寄せると一箇所をキツく吸う。迦暢が触れるのを許した最深の場所を更新する様に印を付けているのかもしれない。

首筋の次が肩甲骨の間あたり。次はいったい何処に付けられる事になるのだろうか。

迦暢は顔が赤くなるのを感じながら急いでヴァルダマーナの膝から降りると、脱いだ服を着て身なりを整えた。

着替え終えてヴァルダマーナを見ると立ち上がったヴァルダマーナが満足そうに迦暢の腰を抱く。見つめあった瞳が吸い込まれる様に近づいて口づけをした。


「仕方ない。今は戻るとしよう」

「仕方ないのはヴァルダマーナ様ですよ、まったく」

「愛する者を目の前にした男など皆この様なものだ」


部屋に戻るとファラムンドが安心した様に顔を緩めた。サルマも同じ様な顔をしている所を見ると、このまま戻ってこない場合の対処を心配されていたらしい。

だがファラムンドはすぐに何事もなかった様に今後の話をするとヴァルダマーナと連れ立って王宮へ帰って行った。


「迦暢、剣を選びに行こう」

「街に?」

「この屋敷の中に決まっているだろうが」


迦暢とヴァルダマーナが席を外している間にファラムンドから準備についての指示をサルマは受けているらしい。

ウンベルトに声を掛けるとすぐに2人を武器庫に案内してくれた。

サルマが選んでくれたのはサルマも使っているのと同じ様な剣だ。竹刀に比べてかなり重いのに短い事に違和感がある。

長さで言うとレイピアの方がしっくりきたが、突く事に特化した剣では迦暢には扱うのが難しいだろう。

なるべく軽い普通の剣を選んでもらい振ってみるが、やはり重くてすぐには慣れるのは無理そうだ。

弓は和弓と同じくらいの長弓とボウガンみたいなクロスボウがあったが、長弓だと馬での移動に邪魔になりそうだ。流鏑馬は少し日本でやってはいたがいざという時出来るとも思えず、クロスボウであれば弟が送ってきてくれたものの方が軽くて使いやすいだろうと予想がつく。


「子供用の剣があるか後で聞いてみるが今はとりあえずあるもので試してみよう」

「子供用・・・」

「ないよりはマシだ。迦暢は私が守るから心配しすぎる事はない」

「1番は自分の安全を確保してよ?」

「何を言ってるんだ。迦暢を守るのが私の仕事だぞ」

「それはそうなんだろうけど」


2人は武器庫を出て裏庭に出る。

中庭と違って赤茶けた土が剥き出しで、塀の脇に木が植わっている程度だ。

塀の向こう側には水路が走っていて、その奥は木々が生えた山に繋がっている。

サルマは持ってきた武器を壁に立て掛け、そのうちの一本を迦暢に持たせた。

構えろと言われて迦暢は剣道の時の様に剣を握り構える。握り手が短くてほぼ片手がはみ出して重ねる様に握るしかない。


「それは片手で持つんだ」

「これをずっと片手で振り続けるのは厳しいよ」

「片手が空かなければ盾が持てぬではないか」

「どうせ旅の際は盾なんて持って歩かないよね?」

「それはそうだが両手剣など聞いた事がない」


実家に日本刀を送ってくれと言いたい所だが、そんな物騒な所なのかと心配させるのも忍びない。殺生なんて許すはずもないし。

弟に頼もうにも某大手通販サイトで本物が買えるはずもないだろう。

サルマに言われるままに握って何度かサルマを相手に打ち込んだが、数分で腕が疲れてしまった。

長弓は弓道に似ているので用意された的を大きく外す事はない。

クロスボウもコツを掴めばなんとかいけそうだ。ただどれもこれも大きくて重い。


「弓の方が見込みがあるな」

「でも背負って旅をする訳にもいかないよね」

「あぁ。殿下と一緒とは言え身分を隠して行かれるだろうから長弓を持ち歩くのも警戒されるだけだ。近距離の戦闘には向かないしな」

「でも持てたところで他人を斬るってのが出来るとは思えないんだけど」

「ファラムンド様ともう一度相談してみよう」


武器の選定は一旦保留にし、今度は馬小屋に行く。ヴァローナで借りられる馬と違って大きくどこか美しい。馬の世話をしていた男にサルマが話を通すと、1番綺麗な馬の隣にいた馬に鞍を着けて貸してくれた。

なみ足で裏庭を一周してから少し速めて速足で更に2周する。とても頭の良い子らしく迦暢の思った通りに歩いてくれた。見守っていたサルマも安心した様に頷く。


「馬は問題なさそうだな」

「この子凄く頭が良いみたい」

「殿下の飼っている馬なのだから名馬揃いだろう」

「隣の馬は凄く綺麗な子だったね」

「あれは殿下が普段乗っておられる馬だ。間違いなく名馬だな」

「そう言えばヴァローナで助けてもらった時の子かもしれない」


急に速度が上がった迦暢の馬にすっと並走してくれた時の事を思い出す。

あの時はそれどころではなく馬なんて殆ど見ていなかったけど、迦暢の馬と違ってヴァルダマーナの馬は大きな音にも暴れる事はなかったと言う事だ。ヴァルダマーナの扱いが上手かったのもあるだろうが並走してくれてお陰で迦暢の馬も落ち着きを取り戻した部分は大きい。あの時の馬ならば馬にも感謝感謝だ。


部屋に戻ると迦暢は家族に手紙を書く。

旅に出る予定なのでその際は大きな物は送らないで欲しいこと、弓道を見せたいので道具一式を送って欲しいこと、旅の間治安が悪い所を通るので何か暴漢対策になる様なもなはないかと素直に書いた。日本刀についても書くか悩んだがとりあえず保留だ。剣道をやっていたとは言え、送ってもらえたところで扱える自信がない。



「これは?」

「私があちらで使っていた弓です。ただ長弓は旅に向かないと思うので参考に送ってもらっただけです。こっちは弟が送ってきてくれたボウガンですけど、使った事がないので練習が必要です」

「迦暢様の国に武器はないと伺っていたのですが、弓を使われるのですね。それは心強い」

「残念ながら私の国では武器として使用はしないんですよ。狩りでもなくて、運動の為に使ってました。だから的に当てるくらいしか出来ないので実用性があるわけじゃないんです。的以外に向かって射ってはいけないルールなので人に向かって射つ度胸は正直ないです」

「迦暢様の国は本当に随分と平和なのですね」


ヴァルダマーナが子供の頃に使っていた軽い剣を借りてファラムンドと打ち合ったが、剣道のクセで振りかぶりすぎだと注意をされた。

子供用なのもあって剣が短く、同じ感覚で打ち合うと自分でもすぐにやられそうなのは分かる。

送ってもらったボウガンはピストル型になっていたので引き金を引くだけで発射できるのがお手軽だ。思いの外威力はあるのだが、追加の矢はこちらで作りましょうと言うのでお任せした。自分も確かめたいと少し触ったファラムンドの方が命中率が高いのが悲しい。

ピストル型に大変興味を持たれたので解体用にもう一個買ってもらえたらあげる約束をする。


「調子はどうだ?」

「剣筋は悪くありません。弓の方がお得意な様ですが、長弓は旅に不向きでしょう。クロスボウの方も練習すれば問題ないでしょうが、やはり重すぎる様なので姫様がご自分で用意されたボウガンを使用されのが良いと思います。ただ姫様が優しすぎるのが一番の問題ですね」

「そうであろうな。迦暢、討つ事を考えずに自分を守る事なら出来そうか?」

「そう考えれば幾分出来そうな気がします。ただ剣の持ち手を長く出来ますか?両手で持てる様に。それで長さは114cmで」

「随分と細かい指定があるなら紙に書いてくれ。それで作らせる」

「後で部屋から持ってきます」

「実物があるのか?」

「運動用の竹でできた物なので実用性はないですよ」


暴漢対策と書いたので中学時代に使っていた竹刀が送られてきていたのだ。

すぐに見たいと言うので部屋に取りに行き差し出すと、3人とも興味深そうに握ったり振ったりして感触を確かめた。

衝撃を確かめたいから打ってみてくれと言われたが防具もなく打ち込むのは嫌だと断る。

痛そうではあるが剣相手ではすぐに折られて使い物にならなくなるだろうと言う事で竹刀に似た剣を作ってもらう事になった。問題は鉄で如何に軽く出来るかだろう。

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