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私が好きって言ったら、あなたは困るのでしょう?

作者: いも助

『ねぇーなんで先に行っちゃうの?!今日から同じ学校なんだし一緒に行こうよ。


ねーちゃん』



親の再婚で、私が小学2年生のときに突然できた弟。


『いーや。

高校生にもなって姉弟で登校するなんて恥ずかしいの』



『えーせっかく同じ高校に入れたのに』



ぶつくさうるさい弟を無視して駅に向かう。どんなに無視しても同じ方向のため道は同じ。

歩くペースを早めても、弟の足のほうが長いため意味がなかった。


早歩きも弟からしたら普段のペースらしい。

隣に並ばれてさりげなく道路側に立つでかい壁を見上げる。

昔はあんな小ちゃかったくせにいつの間にこんなにでっかくなって。


『昔は可愛かったのに…』

『えー俺は今も可愛い弟っしょー?!』




昔、パパに会って欲しい人がいると連れられて行ったレストランに知らない女の人と自分より小さい男の子がいた。



パパがなんか話をしている間、男の子はカレーライスで口の周りを汚して話なんか聞いてなくて1人で美味しそうに一生懸命スプーンを動かしてた。

私は美味しくも不味くもないオムライスを食べながら話を聞いてた。


パパと知らない女の人の話はよく分からなかった。結婚はパパがするから私は関係ないよね?て。分からないけど話を聞いてたらお腹が痛くなった。

話は終わらなくてどんどん痛くなって、そしたら『だいじょーぶ?』て洋服までカレーのついた男の子が聞いてきた。


知らない女の人が『お腹痛い?』て隣に来て優しく聞いてくれて、顔が熱くなったけど私は『大丈夫』しか言えなかった。

なのに女の人はごめんねって。


パパは困った顔してていつものパパだった。


パパはママがいなくなって大変だったんだと思う。仕事と育児でいっぱいいっぱいで、食事とか保育園とかいっぱいやることあって。

だからなのか、育児が大変でおかしな話だけど子どもの私自身のことは後回しだった。


パパは私に『大丈夫!』て言うけど『大丈夫?』とは言わなかった。


あの日久しぶりに私に『だいじょーぶ?』て聞いてきた男の子が弟になった。



家族のなり方なんて誰も知らないから、どうやって過ごしたら家族になるのか手探りで無理やり同じ家に住んで暮らした。

喧嘩したり仲直りしたり困らせたり怒られたり。

そうやって何年も過ごして、普通って分かんないけど多分普通の家族になった。



家族になったら、楽しいかなって思ったけどなりたかった形じゃないことに気づいた。


でも気づく前に家族になってた。私が望んだわけじゃないのに。


パパもお母さんも好き。弟も好き。




『あーはいはい。

あなたは私の可愛い弟ですよー!可愛い可愛いすきすきー』


言いながら、朝からワックスとかドライヤーで念入りに整えた髪型を崩してわしゃわしゃっと撫でてやる。


わーって慌ててる弟は髪型がぐしゃぐしゃになったのに『ひでー笑』て言うだけで許してくれる。

可哀想なのでぐしゃぐしゃにした髪をさっと直してあげる。



『はい。まぁこれで大丈夫!


彼女ちゃん待ってるよ。行ってきな』


駅の改札に立っているのは、私と同じ制服着た可愛らしい女の子。


『あざ!

じゃまたあとでー』






私は家族に手を振った。

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