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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第99話 罪悪感の味

「……こんな時間にこんな食事を食べるなんて……ふ、不健康ですわ」


「涎垂らしそうな顔しながら何言ってんだ。つ~か、こういう時間に食べるからこそ美味いんだろうが」


ミシェラたちの目の前には、少し前にイシュドが倒したBランクモンスターの肉料理が置かれていた。


「よ、涎なんて垂らしていませんわ!!」


「あっそ。まっ、どっちも良いけどよ」


イシュドはミシェラの怒りを無視し、熱々の内にかぶりついた。


「うん、美味ぇ!!!」


一口食べたら、もう止まらない。

そんなイシュドの食べっぷりを見て……まずは残りの男性陣たちが思いっきり肉料理にかぶりついた。


そしてそれを見た女性陣も……こんな時間にこんな脂っこい料理を食べるのはどうたらこうたら、と言える余裕はなく、思いっきりかぶりついた。


「どうよ、美味いだろ」


「………………」


「だっはっは!!!! 黙ってるってのは、認めてるってのと同じだぜ!!!」


「使ってる肉が美味いのは間違いねぇんだろうけど、なんつ~か……変に美味いな」


「言っただろ、フィリップ。こういう時間に食べるから美味いんだよ。普段だったら……もう寝てる時間か? 家でも既に寝てる連中がいるだろうけど、そんな時間にこんな美味い飯を食ってる……そんな罪悪感が良いスパイスになってるんだよ」


罪悪感。

その言葉だけ聞けば、本当にいけない事をしているように思える。


だが、夕食から数時間経過してから追加で脂っこい肉料理を食べるのは、全く犯罪を犯していない。


(欲を言えば焼きそばを食いたかったけど……まっ、それはまた今度だな)


夕食時ほど食べて食べて食べまくらないが、多めに作られた肉料理は……あっという間に全員で食べてしまった。


「やっべ……マジで、超幸せな感じだ」


「はっはっは!!! そうだろそうだろ。確かに夕食後に何もせず、だらだらして過ごしながら食えばデブに一直線だが。ある程度体を動かしてから食べれば、プラマイゼロだ……多分な」


断言しないところが、女性陣に若干の不安を与えるも、イシュドは全く気にせず食器を片付けると大浴場へ向かった。


「おっ、スアラじゃねぇか」


「イシュド兄さんにガルフさんたち……もしかして、夜食食べてた?」


「おぅ、まぁな。ちょっと鈍った体を叩き起こしに狩りに行ってな。その時に狩ったBランクモンスターの肉を調理して食べてたんだよ」


「…………」


「ふふ、そんな物欲しそうな顔をしたって駄目だぞ。俺が言う言葉じゃねぇけど、まだガキなんだからちゃんと夜は寝とけ」


風呂場にいたスアラに兄らしい顔を見せるイシュド。


「分かった。というかイシュド兄ちゃん、夜になってから森に入ったの?」


「ん? そうだな……だいたいそんな感じだな」


「……やっぱりイシュド兄さんって、ちょっとおかしいよね」


(((っ!!!??? やっぱりイシュドはちょっとおかしいんだ(のか)!!!!!)))


身内からもちょっとおかしいと言われるという事は、本当におかしい部類に入ると言っても間違いではない。


「はっはっは!!!! んなの、前から解ってただろ」


「それはそうなんだけどさ……あっ、今日狩ったモンスターの素材、いくつか使っても良い?」


「おぅ! 勿論良いぞ。じゃんじゃん使っちまえ!! どのモンスターの素材でも使って良いぞ」


「いや、それは遠慮しておきます。まだ僕にはCランクやBランクモンスターの素材を使える腕はないので……というか、まだDランクモンスターの素材でも、価値を全て引き出すことは出来ません」


「そりゃそうかもしれねぇけど、失敗から得られるものもあると思うぞ」


「…………かもしれません。ただ、さすがに失敗する未来が決まっていると思うので、今はまだ遠慮しておきます。というより……イシュド兄さんは、もう少し自身が手に入れた素材の価値を認識した方が良いかと」


平然とイシュドと話を続けるこの男の子は、まだ十歳にも満たない。


そんな子供の態度、言動にフィリップたちは驚きを隠せなかった。


(おいおい、レグラ家の人間は幼い頃からこんな考えられる奴ばっかなのか? このスアラって末っ子……どう考えてもうちの末っ子より大人びてるよな?)


(確か、レグラ家では珍しく錬金術に夢中になっている男子、だったか…………本当に恐ろしいな。興味がそちらに向いていたとしても、俺が知る限り……同世代の中で、この子に敵う者がどれほどいる?)


ガルフであれば、この子は貴族の子供だから、自分が知っている下の子供たちと色々と違うのかな? という疑問で済む。


だが、貴族の子供……ガキたちの態度、言動や知能……自分の過去も含めてガルフよりも深く知っているフィリップとダスティンは完全に体を洗う手が止まってしまっていた。


「……お前ら、そんな変な格好で固まってどうしたんだ?」


「い、いや…………あれだよ。やっぱお前の弟だなって思ってな」


「ん? はっはっは!!!! そうだろ! スアラは俺やアレックス兄さんたちと比べて戦う事、強くなる事にはあんまり興味はねぇけど、ぶっちゃけ同世代の中じゃトップクラス? って思えるぐらい強いんだぜ」


「……イシュド兄さん。恥ずかしいので、あまり人前で褒めないでください」


「ははっ! そう言われっとますます褒めたくなっちまうじゃねぇか」


若干頬が赤くなるのは、湯船に浸かってくるからではなく、本当に照れが顔に表れている証拠。


「それに、僕はヴァルツ兄さんやリュネ姉さん……他の家の騎士になろうと頑張ってる子供たちの様に、強くなることに対して真剣に取り組んでません。だから、あまり不用意に僕が世代トップクラスとか言わない方が良いと思います」


「…………お前って、本当に謙虚だよな。本当に十歳にもなってないのかと疑いたくなるぜ」


まだまだ生意気さが残っていてもおかしくない歳頃なのは間違いない。


(一応スアラが言いたい事は解るけど……こいつの場合、またちょっとあれはあれで異常って言うか、歳の割に本当に賢いから……真面目に同世代の中でもトップなんじゃねぇかと思うんだよな)


何故そう思うのか……という理由に関しては、これ以上フィリップたちが驚き疲れることを考慮し、口に出さなかった。

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