表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/413

第83話 勘繰られたくない

ちょっと青い……からどんどん真っ青に変わっていくミシェラの表情に……ガルフは心配、フィリップは爆笑と、いつもと変わらない反応。


「………………も、申し訳、ありません、ですわ」


イブキの気持ちが解らねぇ、無責任なことはしたくない。


まだまだ遊びたいからという理由はともかく、そういった部分は……至極真っ当な答えであり、寧ろ紳士的な対応とすら言えた。


「いや、まぁ別に良いだけど…………ぶふっ、ごめん。やっぱりちょっと面白過ぎる」


今、ミシェラは真剣に頭を下げ、謝った。

それはイシュドも解っている、解っているが……真っ赤なトマトが急に真反対の青色に変化する様子は……あまりにも面白過ぎた。


「なっ、っ…………本当に、申し訳なかったですわ」


真剣な謝罪を小バカにされたことに憤慨しかけるも、先程の対応はどう考えても自分が悪い。

加えて、イシュドが変にまともに……普通に謝罪を受け取らなかったからこそ、多少なりとも場が和んだ感があり、やはり感謝しかなかった。


「ふっふっふ、既に親友と呼べる友人がいるのは兄としても嬉しい限りだ。まっ、まだそういうのを決めるのは早いかもしれないか。すまないね、急に変な事を訊いて」


「いや、全然そんなことないっすよ。真面目に有難いつーか、光栄な提案ではあったんで」


まだまだ遊びたい気持ちがあるから断った。

それは紛れもない本心ではあるものの、イブキほど大和撫子という言葉が似合うであろう女性を婚約者にどうかと言われて、嬉しくないわけがない。


(マジで驚き嬉しい提案だったけど、さすがに本人の意思を無視すんのはなぁ……うん、ちょっとねぇかな)


貴族ってそういうところがあるよな~、というのはこの世界に転生した者として、ある程度理解はしている。


ただ、自分は自分という考えが揺らぐことはなかった。



「なぁ、ガルフ。お前、夏休みうちに来るか?」


「??? えっと……それは、良いの?」


後日、昼休み……イシュドはガルフにこれから始まる長期休みの間、自分の実家に来ないかと提案した。


「? 良いに決まってるだろ。ダチをうちに呼ぶだけだぞ?」


「そ、そっか……」


「いつも使ってる絨毯に乗ってけば、お前の実家にも速攻で帰れるし、どうだ?」


「…………っ、うん! お願いしようかな」


「うっし、決まりだな」


「なぁイシュド。それ、俺も行って良いか?」


「ん? おぅ。勿論だぜ、フィリップ。けど、お前の場合まず実家に帰るのが先になるんじゃねぇのか?」


フィリップも誘おうとは考えていたが、イシュドは友人が公爵家の令息だということは忘れていなかった。


「やだやだやだよ。実家になんて帰ったらぜってぇにめんどくせぇ事になる」


「フィリップ、あなたもう子供ではないのですから、素直に帰ったらどうですの」


「絶対に嫌だね。イシュドと絡んでるから鍛えたりしてっけど、別に立派な騎士になりてぇわけじゃねぇ。兄さん達に変に勘繰られるのも面倒だしな」


基本的にイシュドたちの国、バトレア王国では貴族同士が真っ向から激しくぶつかり合うことはない。


ただ……貴族の家の中でのいざこざは日常茶飯事とまではいかないが、そこまで珍しくない出来事ではある。


今までフィリップは才能はあるくせにサボり魔の不良令息といったイメージを家族内からも持たれていたが……たった数か月の間に、高等部の一年のトップに立った。


本人の宣言通り、フィリップが立派な騎士……ましてや当主を目指すつもりなど毛頭ないことは友人であるイシュドたちも解っている。

しかし、立場的にはライバルになるかもしれない人物たちからすれば、どう思うかはまた別である。


「おっけ~。けど、手紙ぐらい送っといたらどうだ?」


「……それもそうだな。勝手にイシュドの実家に行って、それを変に勘繰られてもまた面倒だし」


これでガルフとフィリップがイシュドの実家に行くことが決定。


「…………っ、イシュド。私もイシュドの実家に行ってもよろしいでしょうか」


「良いぞ。けど、一応シドウ先生に許可取っとかないとな。つか、イブキはイブキで実家に帰ったりとかは良いのか?」


「問題ありません。距離が距離なので、実家に帰れば行って帰ってだけで大半が潰れてしまいますから」


家族からはできれば顔を見せてほしいと言われているが……イブキにとっては、少しでもイシュドの強さの秘密、秘訣が知りたいという気持ちの方が勝っていた。


これまで何度も訓練内でイシュドと模擬戦を行ってきたイブキだが、今まで一度も勝てたことがない。

模擬戦ではなく、生死を懸けた死合いであれば……と仮定したところで意味はない。

そう思えるほどの強さを感じ取れた。


(イシュドは刀技では私に敵わないと言いますが……)


刀技の技術力では自分よりもイブキの方が上だと口にしているイシュド。

実際に就いている職業を考えれば、当然と言えば当然なのだが、それでもイブキは決して小さくな焦りを感じていた。


「あぁ……確かに、大和まで行くってなると、船旅もあるからそうなるかぁ」


「…………」


ガルフ、フィリップ、イブキの三人がイシュドの実家、レグラ家に行くのが決定。


そんな中……ミシェラは一人、真剣に悩んでいた。


(普通に考えて…………いや、普通? しかし、この機会を逃せば…………)


当然ながら、ミシェラは夏の長期休暇は例年通り実家に帰省する予定があった。

今年もそのつもりだったが……いつも絡んでいる友人? たちが全員、いずれぶった斬る目標の実家へと向かうと宣言した。


つまり……夏の長期休暇という、三年間という期間で見ればそこまで長くない期間であっても、また更に一回り大きく成長するかもしれない。


(……ッ!!!!! ダメですわ!!! ここで下手に言い訳しては、差が開くだけ!!!!!)


激闘祭を経て確実に強くなったガルフ、元々持っていた才がイシュドと出会ったことで徐々に磨かれつつあるフィリップ。


そして……同じ女性として敬意を持つ者の、戦闘者としては負けたくないライバル、イブキ。


特にこの三人に負けられないという思いが強いミシェラは、意を決した表情で口を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ