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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第73話 勝率の変化

「あなた達、お茶会をしたらしいですわね」


休日の訓練時、耳に入った噂を確かめようとしたミシェラ。


「茶会って、この前のやつか。そうだな、俺とガルフは初めての茶会だったな」


「っ!!!??? ……本当に、行いましたのね」


「おぅ、そうだぞ。向こうから誘て来たんだし、何事も経験だ? 的な感じでな。まっ、声を掛けてきた令嬢のメインはガルフだったけど」


ギョッとした顔を浮かべるミシェラに対し、イシュドは特にイラつくことなく冷静にその時の内容を伝えた。


「……あなたがお茶会に参加してる様子が、全くイメージ出来ませんわ」


「ミシェラ~~~、お前ちょっとイシュドをバカにし過ぎなんじゃねぇの? お茶会の菓子を用意したのはイシュドだし、話の話題もそこそこ提供してたんだぜ」


フラベルド学園の殆どの生徒は国に仕える騎士、もしくは魔法使いになる為に入学してきた令息や令嬢。


基本的に戦闘という共通の話題があった。


加えて……戦闘関連以外の話題に関しても、イシュドの知識は決して深くはないが、浅く広いこともあって、常時会話に困ることはなかった。


「…………全く想像出来ませんわ」


「ぶはっはっは!! また面白い顔になってんぞ。つっても、こうして毎日毎日ボコボコにされてりゃあ、イメージ出来ないのも仕方ねぇか」


「ッ!! 今はまだ一本取れませんが、いずれ絶対に斬り潰しますわ!!!!」


「はいはい、楽しみに待ってるぜ~~~~」


ミシェラの意気込みを軽く受け流すイシュド。


適当に相手している様にも思えるが……イシュドは一応将来の楽しみの一つとしてカウントしていた。


「けど、ミシェラはこっから先、ガルフとの勝率を以前の状態に戻すのが先じゃねぇの? あんまり先ばかり見過ぎて、目の前の壁を疎かにするのは良くねぇと思うぜぇ~~~」


「っ……それぐらい解っていますわ」


自分がミシェラを小バカにする材料に使われているとも知らず、ガルフは普段通り……真剣な表情でロングソードを振るっていた。


激闘祭が終わってから既に十日が過ぎている。

激闘祭が終わった日こそのんびりと過ごしたが、その日以降は毎日訓練を欠かさず……休日には遠出してモンスターを相手に実戦を行っていた。


「なんつ~~か……こういう言葉で表現するのはあんまりよろしくないのかもしれねぇけど、覚醒した? って感じだよなぁ~」


「そこまで勝率が変わってないあなたが言いますか」


「んな怒るなって~~。ぶっちゃけ……俺も前より勝つのは苦労してんだからよ」


ガルフは最初こそ、闘気を使わない状態と使った状態の際に起こる身体能力の上昇に戸惑っていた。


同レベルの者が相手だと、どうしてもその差が致命的な一瞬となってしまう。

しかしそこは生真面目なガルフ……この十日間の間にその戸惑いを完全に消し、うっかり躓いてしまうこともなくなった。


(クソ生意気面の令息と戦ってた時は、やっぱりゾーンに入ってたんだろうな。闘気を纏うことによる身体能力の上昇に全く振り回されていなかった。訓練を始めたばっかりの時は……うん、ちょっと面白い光景が何度も見れたけど、それでもガルフだよな~~~って感じであっさり修正した…………ただ、あれはまだ未完、か)


兎にも角にも、改めて面白い友人だと認識するイシュド。


「闘気は完全無欠の力じゃねぇ。持続時間も、今はまだそう長くはない。デカパイ、お前も対応出来ない訳じゃないだろ」


「……風を纏っていれば、対応出来ますわ」


それでも、ここ最近の勝率はガルフの方が上回っている。

単純な身体能力の高さは、それだけで脅威となる。


ガルフとしては、そこで闘気を纏うことで上がる身体能力に頼った勝ち方に不満を持っているが……技術力で負ければ、それこそミシェラがガルフより勝れる者が無くなってしまう。


「普通ではないと思っていましたが…………このままいけば、いずれ伯爵家などから打診が来るかもしれませんんわね」


「婚約のか?」


「そうですわ。現時点であの強さ、そして最終的な目標は私と似ている……そうなれば、まず止まることがない」


「……言いたい事は何となく解かるかもな。けど、あんまりそういうの、本人に言ってやるなよ。緊張でぶっ倒れる」


「実際に話が来たら、心臓が止まってしまいそうですわね」


自分の価値、強さなどは友人たちから伝えられた言葉のお陰で納得は出来たものの……異性とのあれこれに関しては、まだ色々と自信不足。


イシュドやフィリップからすれば、それはそれでガルフらしいのだが……いざという時に堂々と出来なければ、狙った鯛を逃してしまうかもしれない。


「そういえば、アドレアスの奴もガルフに興味持ってるっぽいんだよなぁ」


「アドレアスっつーと、あの第五王子様か…………え、なに。もしかして自分の妹を婚約者に推薦しようとか考えてんのか?」


「それはさすがにないのでは? しかし、そうなれば冗談ではなく本当にガルフの心臓が止まってしまいそうですわね」


第五王子のアドレアスの妹となれば……すなわち王女。


ガルフからすれば「え、なんですかその人は」と、存在としては知っているが、まず出会うことは絶対にないというのが常識な存在。


(デカパイの言う通り心臓が止まるかは解らねぇけど……そうなれば、まず間違いなく失神はするだろうな)


気の毒だとは思いつつも、その光景を思い浮かべるだけで、笑いが零れてしまう。



「? なんか、今日は皆そわそわしてるね」


「そうだな……激闘祭はもう終わってるんだし、何か他にイベントってあったか?」


休日を終え、また授業がある平日が戻って来た。


二人が教室に入ると、いつも通りほんの一瞬だけ視線は集まるものの、直ぐにそわそわする理由についての話に戻る。


(そもそもイベントにあんま興味がねぇから、全く予想つかねぇな。もしかして、学園の卒業生で、今現役で超活躍してる騎士が臨時教師として来るとか? それなら解らなくもねぇけど)


「静かにしろ」


担任のバイロンが入ってくると、発せられた言葉通り、一瞬で静かになる生徒たち。


「今日からこのクラスに留学生が来る」


(あぁ~~~~、なるほどね。そりゃ皆そわそわする訳だ)


そわそわ理由に納得しながらも、そんな理由でそわそわしていた同級生達に微笑ましい視線を向けるイシュド。


そんなイシュドに対し、お前はいったい幾つなのだと言いたげな視線を向けるバイロンだった。

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