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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第71話 従者まで脳筋ではない

「い、イシュドさんのご家族は……その、戦闘以外にも興味を持たれるのですね」


一人の令嬢が、恐る恐る意外に思ったことを言葉にした。


まず紅茶の味をそれなりに知っていることに驚き、その後の会話で……イシュドがハンカチなどの裁縫をメインに活動している職人の名前、その職人が好んで使うデザインなどについても知識があることに驚きを隠せなかった。


「いや、どうだろうな……さっき言ったオーガを素手で殴り殺せるダンテ兄さんと、下の弟の一人が、兄弟の中では珍しい部類に入ると思うけど…………ぶっちゃけた話、うちの実家に仕えてる人間まで全員脳筋とか、戦うことにしか興味がないってわけじゃないからな」


「あっ……そ、それもそうですよね」


レグラ家に仕える人間の多くは、騎士や兵士でなくとも優れた戦闘力、戦闘技術を持っている者が多い。

引退した騎士が執事として活動することもあるため、他の家の執事やメイドたちが見たら、あいつらは本当に自分と同じ職業に就いているのかという疑問を持ってしまってもおかしくない。


「メイドとか、プライベートではそういう流行に詳しい奴もいるし、俺は全然従者たちと話すタイプだから、自然とそういう情報も入ってくるんだよ」


「……イシュドってあれだよな~。本当に狂戦士なのかって疑いたくなる時あるよな」


「そりゃあ、褒め言葉として受け取っても良いのか? フィリップ」


「おぅおぅ、もちもち。超褒め言葉だぜ」


「なら素直に受け取っとく。でも、俺が狂戦士なのは間違ってねぇよ」


「…………イシュドさんは、幼い頃から戦場に参加していたと、お聞きしましたが」


彼女たちは、クリスティールやミシェラほどの向上心は持っていない。


それでも、他の令嬢たちとは違い、実戦を何度も経験しており、実戦の恐ろしさが解る側である。

だからこそ……イシュドがモンスターとの戦いに関して、何を思っているのか、少し気になった。


「そうだな。マジで幼い頃からモンスターとバチバチ戦ってたよ。初めて戦ったときの年齢とか聞いたら……ちょっと引くかもな」


「そ、そんなに幼い頃から」


「つっても、俺はレグラ家らしく、そういうのに強い興味を持ってたから、特に虐待だ~~~なんて思わなかったけどな……あの光景だけはちょいちょい苦しめられたけど」


「「「「「あぁ~~~……」」」」」


全員、イシュドが言うあの光景が、どの光景なのか直ぐに把握し、納得。


「でも、長男のアレックス兄さんは気にせず次の戦いに挑んだらしいんだよな……まっ、あの人ちょっとぶっ飛んでるところあるからな」


(い、イシュドさんがぶっ飛んると評価するなんて……ど、どんな人なのかしら)


彼女たちは激闘祭には参加出来なかったが、同じ学園から出場する者たちは観客席から応援しており……当然、各学年の優勝者であるスティームたち三人対イシュドとい変則的な試合を観ていた。


初っ端からリングの結界を破壊し、三対一という状況でありながら殆どダメージを受けずに試合を進めていき……ダスティンの攻撃がメインとなった、強烈な遠距離攻撃を右拳のパンチ一発で破壊。


その接触で右拳は破壊されたが、それでも……その状態でもまだまだ嬉々として戦う姿勢を貫く。


そんなイシュドがぶっ飛んでいると評する人間など……ある意味気になってしまう。


「そのアレックスお兄さんで、そんなにヤバい人なの?」


「ヤバい人って言うかな……人間ってさ、生きてれば後ろを振り返るタイミング、みたいなもんがあるだろ」


「反省?」


「みたいなものか? それがアレックス兄さんの場合…………ないとは言えないんだけど、基本的に前に突き進むことしか考えない人なんだよ」


「斬撃に強い耐性を持つモンスターと遭遇したら、どうやって斬撃で倒せるかひたすら挑んじゃうタイプってことか?」


「まさにそんな感じだ、フィリップ。つか、実際にそれをやっちゃってるしな」


兄であるアレックス、ダンテ、ミハイルと共にモンスター戦った経験は何度もある。


そんな中で、いわゆる相性が悪いモンスターと遭遇することもあり、イシュドが兄たちよりもレベルは低いが、サポートしようかと声を掛けると……アレックスは元気な声で「大丈夫だ!!!! こいつは俺が倒すから、イシュドは周囲の警戒を頼む!!!!!!」と、嬉々として宣言。


そして斬撃耐性が高いモンスターを、本当に大剣の斬撃だけで倒してしまった。


「パワフルな方なのですね」


「はっはっは!!! 良い言い方をすればそうだな。けど……その背中は、無意識に頼りたくなる強さはあるな」


「へぇ~~~~。イシュドがそこまで言うとはねぇ。冒険者で言えば、既にAランクの中でもトップクラスか?」


「そうなんじゃねぇの? 既にソロでBランク以上のドラゴンをぶっ殺したりしてるかな」


ドラゴンスレイヤー。


それはBランク以上のドラゴンをソロで討伐した者に送られる称号。


男子であれば……いや、女子であっても戦闘者を目指す者であればいずれはと、夢に掲げる目標。


「…………なんつ~か、あれだな。レグラ家は既に将来安泰、なんだな」


「爺ちゃんと曾爺ちゃんがまだ現役だからな~~」


「っ!!?? ひ、曾お爺様が……まだ、現役なのですか?」


「あぁ。まだ元気で暴れ回ってるぜ」


騎士の家系出身の者であれば、騎士という立場から引退しても、息子に譲った領地を守る為に戦う老騎士はそこまで珍しくはない。


だが、どれだけ強い肉体を持っている元騎士であっても、やはり年齢に勝てないところはある。

そのため……どんな騎士であっても、ひ孫が生まれる頃には現役を引退している。


「イシュドとしては、もう歳なんだから落ち着いて欲しい、とは思わないんだよね」


「そりゃあなぁ……もうひょろひょろの爺さんだったら、いつ死んでもおかしくねぇんだから、もう屋敷の中でゆっくりしててくれとは思うけど……爺ちゃんと曾爺ちゃんもどっちも元気だからな。全く死にそうに思えねぇんだよ」


校内で起こった試合、激闘祭の特別試合で行われた試合。

それらの戦闘内容から、イシュドの実力は嫌という程解っていた。


ただ、本人の口から語られたレグラ家の中身を聞き……本当に自分たちのレグラ家に対する認識が甘かったのだと、思い知らされた。

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