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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第411話 変えられる部分だった

「ここまでで、よろしいですね」


「も、勿論です」


フィリップの首には、杖の先が突き付けられていた。


杖と言えど、リベヌが持つ杖は普通の杖ではなく、杖と剣が一体化した……杖剣と呼ぶべき存在。


それによってディムナとミシェラ、イブキの三人は斬り伏せられ、吹き飛ばされ……接近されたフィリップもなんとか対応しようとしたが、十手も交わらずに急所に刃を添えられた。


「では、これまでで」


「どうだった、リベヌ」


四人に、ガルフたちにも自己紹介を終えたリベヌはほんの数秒の間に、四人との試合内容を振り返った。


「ジャレスと似た感想です。弱くはないと思っていましたが、全員予想以上の強さを有していました。連携力も悪くはなく、先程イシュド様が言った通り、全てから守る必要はないと仰っていた意味が解りました」


「そりゃ良かった」


「い、イシュド……せ、説明、求めますわ」


ポーションを飲みながら、イシュドに説明を求めるミシェラ。

その気持ちは、他三人も同じだった。

強いというのは視た時から理解していたが、その強さがあまりにも異常である。


「へいへい、分かった分かった」


先程ガルフたちに説明した通り、リベヌが一次職で僧侶に付いたにもかかわらず、二次職では狂戦士に……そして、自身の可能性を信じて研鑽を続けた結果……三次職ではハイ・ウィザードに就いたという流れを説明。


「「「「………………」」」」


当然ながら、四人は開いた口が塞がらなくなった。

あまりにも衝撃的過ぎる内容であり、フィリップも……普段なら開いた口が塞がらなくなる状態のディムナを見て爆笑しているが、その余裕がないほどに驚きが強過ぎた。


「な、なんです、の……それは」


「なんだっつわれても……なぁ」


「えぇ、そうですね。説明するのが難しいとしか言えません」


リベヌとしても、何か特別なことをし続けた、という感覚はない。


僧侶としての適性があったから、僧侶を選んだ。

ただ、守られるのが性に合わない、レグラ家の強き騎士たちに憧れを感じる部分もあり、僧侶としての仕事を積み重ねながらも必死で体を鍛え続け、狂戦士に就いた。


そして、一次職の時に選べた職業の可能性を思い出し、今度は魔力に関しての理解を深め続けた。

勿論その間、狂戦士として前線で戦い続け、時に同期たちを癒しもした。

その結果……レベル五十に至り、三次職でハイ・ウィザードに至ることが出来たというだけ。


それらを改めてミシェラたちに伝えるが、どうして「あぁ、なるほど。そういうことなんですね!!!」と、あっさりと受け入れることが出来ない。


「……もっと、こう……ないのですの?」


「んな期待されても困るっての。リベヌはうちの中でも超珍しい例だからな。何か利を付けるにしても………………敢えて理由を付けるなら、リベヌの意志の強さが尋常じゃねぇ。後、こっちの方が絶対に正しいっつって、無理矢理進む道を去勢する人間がうちにいなかった。その二つなんじゃねぇの」


「意志の強さと、環境……」


自分の得意な事が解れば、その方向に進もうとするのが一般的な思考。

何故なら、その道に進めば腕前が上がると分かるから……上に登れるのが見えているから。

だが、リベヌはそこで自分の適性云々に身を委ねず、自分の感性に……進みたいと思った道に進むことにした。


一般的な指導者であれば、そもそも適性が高いから僧侶という職に就いた者をバチバチに戦う戦闘職に進むことを許しはしない。

なにがなんでも説得して、回復職への道に進ませようとする。


実際のところ、レグラ家の者たちの中にも、リベヌが回復職から狂戦士に道に進もうとすることに関して、勿体ないと口にする者はいた。

ただ……彼らもレグラ家の人間。


狂戦士という職に憧れる気持ちは理解出来る。


だからこそ、百八十度とはいかないものの、ほぼ違う方向へ進むことを周りの大人たちは止めなかった。


(なるほど………………異常とも思える、意志の強さ、か…………ッ!!!!!!!!!)


意志の強さによって選んだ道で……必ずしも成功するとは限らない。

だが、ディムナは戦う中で気付いた。

リベヌが扱う杖剣の技術は、半年や一年……数年で身に付く技術ではないと。


イシュドが説明した、意志の強さ。


それがリベヌの異常とも言える強さの秘訣。

そう思えてしまうが、ディムナが答えを聞いて感じた感想は違った。



何故…………俺は彼女ほど、必死で生きてこなかったのか。



自分に対する後悔、情けなさ……それらからくる怒りが、ディムナの中で膨れ上がる。


「ディムナ」


「……言うな、アドレアス」


解っている。

必至で頑張ってこなかった訳ではない。


期待を寄せられていた。

そして、ディムナは答える為に必要以上の研鑽を重ね続け、結果を出し……期待に応え続けてきた。


過去は過去、今は今……どう足掻いたところで、時間を巻き戻すことは出来ない。


それでも、ディムナは知ってしまった。

イシュドだけではなく、ジャレスとリベヌも三つ違いっとはいえ、三次職に到達しており、それぞれが普通ではない進み方をしている。


その差はなんなのか……明確に自力で変えられた部分は、意志の強さや、目標に対する姿勢などであった。


(……………………学生という立場を、煩わしいと感じたのは……初めてだな)


学園に入学し、更に学び……騎士になる。


ディムナはその道に対し、これまで違和感を感じたことはなかった。

だが……激闘祭トーナメントのエキシビションマッチを観て、初めてこれまで進んできた道に……これから進む道に、違和感を感じた。


夏休みの間にレグラ家に行った際、その違和感は更に強まる。


そして、今日…………調査委らの為に雇ったレグラ家の若者騎士と魔術師の力を知り、その思いが明確になった。


「………………」


「ディムナ?」


「なんでもない」


見極めなければならない。

このままで良いのか、違う道を行くのか……己の心を正確に把握し、答えを出さなければならない。


それが、今日ディムナが得た一番の気付きであった。

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