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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第41話 何故、今出れる!?

「もう大丈夫とは思うけど、あんまり緊張し過ぎんなよ」


「まぐれと言わせないようにしなさい」


初戦の時と同じく友人たちから応援の言葉を貰い、胸を張って試合会場へと向かうガルフ。


(確かに、初戦はまぐれと言われても仕方ないかもしれない。今度は……絶対に僕の強さを証明する!!!!)


適度な緊張と、十分な気合。

今のガルフはまさにベストコンディション。


リングの上に上がっても……初戦の時の様に、大勢の者たちから視線、声を向けられることに対して強い緊張感は感じない。

寧ろ適度な緊張として、良い意味で気が引き締まる。


「平民が二回戦に来るなんてねぇ~~~……まっ、そういう事もあるんだろうけど、二回戦からはそういうの通じない世界だから」


「…………」


この時、ガルフは言葉にこそ出さなかったが、心の中で呟いてしまった。


(貴族って……平民をバカにしてないと生きられない人種、なのかな?)


ガルフとしてはこの第二回戦で、自分は運が良いだけではなく、ちゃんと実力で校内戦を勝ち抜き、激闘祭に参加するようなエリート、実力者たちを倒せる力が自分にはあるのだと証明したかった。


しかし、どうやら二回戦目の相手も自分の事を上から見下ろして嘗め腐っている。


イシュド風に言うのであれば、戦う前から負けた時の予防をするとかクソダサ、である。


「ガルフぅうううううううううう!!!!! 一回戦目と同じだあああああ!!! んな一丁前に武道家ぶってるクソガキなんざ、軽くぶった斬っちまええええええええええええええええっ!!!!!」


本当に良く耳に入り、心を鼓舞してくれるが……やはり物騒が過ぎる。


(…………関係無い、か。もし嘗めてるなら、それはそれで利用して倒す。運だなんだと言われようとも、この戦いに勝てば僕が二回戦目を突破したという事実は変わらない)


一回戦目に戦ったフェルノと同様、油断出来ない実力者であることが窺える。


ガルフの二回戦目の相手はライザード学園の女子生徒、メイセル・ファスト。

女子生徒ではあるが、偏見をぶち壊す彼女の職業は一次職が武道家、二次職が拳士とゴリゴリのインファイター。


手甲と脚甲を纏った一撃を食らえば……朝食吐出しコースが確定しそうである。


「そうですか、それでも全力で戦います」


「吠えるだけならいくらでも出来るわよ」


あくまでも、こちらを……平民を見下すというスタンスは変わらない。


もう相手にするだけ疲れる。

そう判断したガルフは対戦前の口戦を早々に切り上げ、冷静に構えた。


「それでは二人共、冷静な判断を心掛けて……それでは、始めっ!!!!!!!!!!」


「「っ!!!」」


試合開始と同時に、両者とも一直線に飛び出した。


ロングソード対手甲&脚甲。

言うまでもなく、リーチの差はガルフが上回っている。

ただ、素手をメインに戦う格闘家たちは、皆見た目だけで恐ろしい、斬れると解る刃物や食らったら爆ぜる、燃える、貫かれると解る魔法を掻い潜り、鍛え上げた己の肉体を叩き込む。


「っ、シッ!!!」


「ちっ!! やるじゃん、よっ!!!」


ファーストアタックは自分になると思っていたメイセル。

確かにガルフの斬撃を躱しながらボディに一発決められる流れではあったが、左脚を高く上げられ、右のボディーブローはガードされた。


「それは、どう、も!!!」


「ッ!!!!!」


素手ではなく、手甲を装備しているため、ガルフの斬撃刃一応防御できる。


ただ……試合が始まってから、まだ剣と拳を交えた回数は十も越えていない。


(なんか、嫌な感じ、ねっ!!!!!)


どこか記憶にある苦手意識が、急にメイセルに襲い掛かる。

当然の話だが、メイセルは鑑定のスキルを持っていないため、ガルフの職業が解らない。

ロングソードを使っているため、ある程度予想は立てられる。


「考え事、ですか!!!!!!」


「ぐっ!!!??? 調子に、乗るんじゃないよ!!!!!」


鋭い斬撃を二つの手甲で受け止め、前蹴りで返す。


しかし、それを読んでいたのか、前蹴りが腹に命中する前にガルフは後方に下がっていた。


(くっ!!! 超近距離タイプじゃないくせにちょこまかと!!!)


素手や短剣……針や糸、そういったリーチが短い、もしくは特殊な武器を扱う者たちは職業の補正によって素早さが伸びやすく、動体視力も他の職業に就いている者と比べれば高い。


良く見える。


他の者よりも戦場でその感覚が継続するのは、間違いなく拳士や暗殺者たちの利点。


その筈なのに……一向に攻撃がクリーンヒットしない。

お互いに魔力を纏い、強化系のスキルも使用している。


メイセルにとっては最悪な事に、強化系のスキル性能に関しては……二人に大きな差はない。


寧ろ腕力、攻撃力に関してはガルフの方が上回っている。


「ッ!! ……ふぅ~~~。ちょっと嘗めてたよ。ちゃんと戦えるみたいね」


「鍛錬は積んできましたので」


速攻で終わらせられるのであればそれで良かった。


しかし、メイセルはフェルノと同じく上から目線な態度は変わらないが、それでも初っ端……全くの強化なしで襲い掛かってくるほど愚かではなく、試合が始まって直ぐに運だけで校内戦を勝ち上がり、激闘祭の初戦を突破したという考えをかき消した。


(こいつ……平民にしちゃあ、おかしいんじゃないの?)


まず激闘祭に参加出来る年齢がおかしい。

平民が学園に高等部から入学した年など、一番差が開いている時期である。


そこから周囲の嫌がらせなどに負けず、得られる環境をフルに使いこなし、三年生時の激闘祭に参加するのであれば……解かる。

であれば、メイセルも納得出来なくはない。


だが、今現在……ガルフは一年生の時点で、間違いなくエリートと呼べるメイセル・ファストと渡り合っていた。


「もしかして、蛮族の加護でも受けたのかな」


「イシュドは神ではないですけど、ただ見た目や態度の反して教えるのが上手いんですよ」


ガルフの言う通り、イシュドはあぁ見えて自分の伝えたいことを上手く伝えることが出来る。


狂戦士だらけのレグラ家の中でも、更に異端な存在。

そんな話のタネになりそうな内容を……イシュドが全く社交界に出ないこともあって、外部に伝わることはまずなかった。


「では、今度は僕から攻めさせてもらいます」


「ッ!!!!」


今でも思う……イシュドという人間は、本当に狂戦士という職に就いているのかと。


この一戦、結果としてガルフは勝利を得た。

それでも勝利を得た後、相変わらず全力で称賛を送ってくれる友に対し、心の中で感謝の言葉を送った。

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