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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第406話 守り、思い浮かべる

賛成したとはいえ、無茶な方に同意してしまった自覚がある。

それは、ミシェラだけではなかった。


「フッ!! ッ!! 破ァアアアアアアアアアアアッ!!!!」


「ッッッッッッッッッ!!!!!」


夕方頃、今日も特別訓練場にはダスティンとディムナも参加していた。

そして現在、ガルフはダスティンと模擬戦を行う……のではなく、二つの丸盾を持ち、ダスティンが放つ槍の猛撃をなんとか対応していた。


「はいはい、二人ともそれまで~~。五分経ったぞ」


「はぁ、はぁ……はぁ、はぁ…………ダスティン、先輩。ありがとう、ございます」


「訓練とは、互いに高め合うものだ。いちいち礼を言う必要はない。ただ、一つ気になることがある」


「なん、でしょうか」


「どうして急に丸盾を、しかも二つ装備した状態で防御の訓練を行おうと思ったんだ」


ガルフの一応のメイン武器はロングソード。

ゆっくりとではるが、着実にその技量は成長しており、闘剣士らしく、ロングソード以外の得物も……一流には遠いが、急増武器としては扱えるようになっていた。


「……僕は、紅鱗の地で調査依頼を受けるか否かとイシュドに問われた際、受けると答えました」


「そうか」


「今更、その気持ちが揺らぐことはありません。ただ…………今思うと、もっと自分が世界を知らない事を考慮して、悩むべきだったと思いまして」


今の自分には、特筆すべき点がない……といった悩みではない。

ただ、友人の強さに頼り過ぎてはいないかと、思うところがあった。


「ガルフ、悩んだとしても、お前はあの依頼を受けるって選択を取っただろ」


「うん。そうかもしれないけど、じゃあ本当に今の自分の力でおおよその事はなんとか出来るかって言えば……多分、そうじゃないよね」


その通りである。

だからこそ、受ける人数も四人や五人ではなく、イシュドも入れて八人である。


「全て何とかすることは出来ない。けど、それじゃあ自分が出来ることを、これからの調査で最大限生かすなら、どうするべきかって考えたんだ」


「それが、この二つの丸盾ってことか?」


「うん」


ガルフは、特別大きな体を持っている訳ではない。

現時点でイシュドの方が体格は大きく、筋肉の付き方まだ甘い……甘いが、それでも毎日三食、食べたいだけ食べれて、毎日のように訓練を行い続けている。


その結果、絶対にヒョロガリとは呼べない肉体を手に入れていた。


そして、ガルフには闘気という絶対的な切り札がある。


「……解らなくはねぇけど、自分で倒してぇとは思わないのか?」


「…………正直、思うところは、あるよ。無理をし過ぎず倒せる相手なら、自分の力で倒そうとは思ってる。でも、無理を……無茶をしないといけない場面が来たら、僕は絶対にそっちに回るべきだ」


現時点で、調査に向かう面子の中にはタンクはいない。

体格的にはダスティンが務められそうではあるが、槍という武器の性質上、大剣や大斧の様に攻撃するだけではなく受けに使うのは難しい。


「ただ、しっかりとした盾を正しく扱える技術は、僕にはない」


「覚える時間もないから、殴ったりすることも出来る丸盾を使うに至ったってことか」


「うん、そうだよ」


「なるほどな。納得がいった。そして理解も出来る」


自分を攻めてほしいと頼んで際、ガルフは木製の武器ではなく、刃引きされてない武器を使ってほしいとダスティンに頼んだ。


ダスティンはレグラ家に訪れた際ガルフの実力を、闘気の力を身に染みて理解しているため、特に嘗められているとは感じなかったが、あまりガルフらしくないと感じた。

だが、その違いに納得出来た。


「……イレギュラーが起きたとしても、フィリップやイブキさんは守りたいですし」


フィリップは反対。

イブキは中立だが、反対より。


そんな二人を、結局は多数決で巻き込んでしまった。

だが、どんなイレギュラーが起きようとも、二人だけは絶対に守り、助けると決めていた。


「…………ふふ。んじゃあ、頼りたい時は頼っちゃうからな」


「任せてよ。カラティール神聖国の時は、フィリップに頼りすぎたしね」


ドンと胸を叩いて任せてくれと口にするガルフ。

そんな友人を見て……フィリップは、ある事を決めた。





「ッ……参ったよ」


「ふん…………」


ガルフたちから少し離れたところでは、アドレアスとディムナが模擬戦を行っており、結果は……心臓部に剣先が添えられ、ディムナが勝利を収めた。


「剣に、迷いがあった」


「…………君には、バレるか」


「でなければ、あっさりと決着が着くことはない」


ディムナが強く興味を示している人物がガルフだが、次の激闘祭トーナメントでライバルとなりえる他の強者たちを嘗めているわけではない。


「……以前、イシュド君にお前には可能性があるな、って言われたことがあるんだ」


「可能性……それは、一体どのような可能性なのだ?」


「尋ねたことがあるんだけど、明確な答えは教えてくれなかったんだ」


尋ねても、はぐらかされてしまった。

答えない方が良いのか、それとも意地悪なのか……解らないが、前者だと思えば多少はもやもやが収まる。


「なるほど。それについて、考えてしまっていたという事か」


「そうなるね……申し訳ない」


「ふん…………あの男のことだ。その可能性は、お前が行き着く先にあるかもしれない……強さの形なのではないか」


「強さの形、か」


「もしくは、ガルフの闘気の様な……常人には会得出来ない何か、もしくはスキルを体得できる可能性かもしれないな」


当時、イシュドが浮かべていた笑みの意味を考えれば、ディムナの言う通りかもしれないと感じる。


だが……そうなると、アドレアスの中でいつ、その何かを体得できるのか、領域に至れるのかが気になってしまう。


「……焦って、いるのか」


「正直なところ、その通りだね。焦ったところでというのは解ってるけど」


「……………………お前は、先を見過ぎているのかもしれないな」


「…………」


「今のお前は、何をどうしたいんだ」


今の自分は何をしたいのか。


その単純な質問を投げかけられ……アドレアスは、ディムナが何を自分に伝えたいのか理解した。


「ふふ、ありがとう、ディムナ。それにしても、昔と比べて随分とおしゃべりになったね」


「……放っておけ」


ほんの少しからかいながらも、強き競争相手が送ってくれた言葉を再度胸に刻み、今の自分が求めるものを思い浮かべた。

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