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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第396話 ないとは言えない

「……イシュド君の立場を考えると、安易にレグラ家が治める土地から出れば良いじゃないか、とは言えませんものね」


「そうなんっすよね~~~~」


イシュドとクリスティール、二人はレグラ家から送られて来た問題に対して悩む中、フィリップは先程までの疲れが消えたのか、爆笑し続けていた。


そんなフィリップに……クリスティールは先輩らしく釘を刺す。


「フィリップ。随分と楽しそうに笑っていましたが、レグラ家の女性たちが良いと思っている男性の中に、あなたがいてもおかしくないのですよ」


「はっはっはっは……は?」


クリスティールの言葉が耳に入り、ようやく笑い声がストップ。


ちょっと待てと……それは聞いてないと、フィリップの顔に冷や汗が流れる。


「いや、何言ってんすかクリスティールパイセン。ほら……俺はほら、あれっすよ」


本当に予想していなかったのか、珍しく語彙力が消えてしまったフィリップ。


「自分なんかに惹かれる訳がない……あなたはそう思っているかもしれませんが、実際にそうとは限りませんよ」


「つっても、俺はガルフみたいに闘気とか使えねぇし、アドレアスやディムナみてぇに華がねぇ。ダスティンパイセンみたいにムキムキマッチョじゃねぇんすよ」


だからレグラ家の女たちに好かれる訳がない。

そう言いたいフィリップの考えは……本来なら正しいと思われてもおかしくない。


ただ、フィリップには既に実績がある。


「惹かれるところは、そういった部分だけではないでしょう。実際に、あなたはステラさんやレオナさんといった強い女性からも評価を受けてるでしょう」


「それは……そう、だったすね」


鳥頭ではないため、しっかりと二人の強者女性から称賛されたことは覚えていた。


「……けどなぁ~~~。なぁ、イシュド。レグラ家の女性が求める好みに、俺は割と当て嵌まらねぇんじゃねぇのか?」


「さぁ、どうだろうな。俺もあいつらの好みを全部把握してるわけじゃねぇからな。確かに大多数の好みには当て嵌まらねぇかもしれねぇけど……こう、本能的にフィリップの事を気に入ってる奴がいてもおかしくねぇしな」


レグラ家の女性たちの傾向として、確かに良い筋肉を持っていたり、前衛でバチバチに戦り合う男と好む傾向はある。


ただ、全員が全員そうではないというのも、イシュドは知っている。


本人は接近戦タイプだが、旦那にした人物は後衛の魔法職といった例もあるため、フィリップという男が絶対にレグラ家の女性の好みに当て嵌まらないとは断言出来ない。


「…………それじゃあ、俺も攫われるのか?」


「ふっふっふ、さぁ……どうだろうな。まっ、あれだ。お前を気に入った相手に勝てば、とりあえずその場ではフィリップの意見を押し通せるだろうから、強くなればなんとか出来るって話だな」


「あぁ~~~……あぁ~~~~~~~、やっぱそういう話になんのかよ~~~……それ以外に、やり方はなさそうだなぁ」


予想していない展開ではあるが、イシュドとしては願ったり叶ったりな流れになりそうである。


ただ、クリスティールはイシュドの提案に不安点を感じていた。


(確かに一時的には引いてくれるかもしれませんが……勝ってしまったらそれはそれで、自身を打ち負かした存在として認識され……余計に気に入られてしまうのではないでしょうか?)


クリスティールはそこまでレグラ家の女性に関して詳しくはないが、自分よりも強く気に入った雄を伴侶にしようとする傾向が強い種族、アマゾネスに似ていると感じた。


「イシュド君。それでは、次の夏もご実家にガルフ君たちを連れて帰るのですか?」


「いやいや、そんな明らかに面倒事が待ってる実家になんて帰らないっすよ」


ガルフやフィリップが身内になるかもしれない。

それはそれで面白そうではあるものの、無理矢理同意させるのは友人としてNG。


そうなれば、楽しいバトルではなく命懸けの大乱闘スマッシュバーサーカーズになってしまうため、それは……あまりにも理由がしょうもないため、逆にイシュド的には萎えてしまう。


「二年の夏はイブキとシドウ先生の故郷の大和に行こうと思ってるっす」


「大和に、ですか」


「元々次の夏はそっちに行こうかって話してたんで、俺の中では決定してたんすよ」


「良いですね……私も、長めの休暇を取ることが出来れば、是非とも行きたいですね」


クリスティールは……現在、三年生。

卒業すれば、以前からスカウトされていた騎士団に入団する。


学生から騎士に……社会人になるため、そう簡単に長い休暇を取ることが出来ない。


「ならあれじゃないっすか。短期間の間にぱぱっと良い感じのモンスターとか盗賊団をぶっ潰して、頑張って功績を打ち立てたんだから眺めの休暇をくれって、上司に頼めば良いんじゃないっすか?」


「……ふっ、ふふふ。えぇ、そうですね。そうすれば、多少の我儘を叶えてくれそうですね」


元より、クリスティールは騎士として生温い生活を送るつもりはない。

生徒会長としての経験を考えれば、将来的には多数の同僚を率いて戦う立場が合うのだが……今のクリスティールにはそういったルートを進もうとする気はサラサラない。


短期間の間に半端ではない功績を幾つも打ち立て、長めの休暇を貰う……良い目標が出来たと思い、クリスティールは薄っすらと口端を吊り上げた。


「大和ねぇ……そりゃ楽しみだけどよぉ、イシュド。レグラ家の女性陣からの要望はどうすんだよ」


「んなの、放っておくに決まってんだろ」


「…………変に対処しなくても良いってのはありがてぇけど、それはそれで怖くねぇか」


対処するにせよ、爆弾処理を行うことになるため、フィリップとしてはそれはそれで有難いものの、どうしても不安が残る。


「あいつらもガキじゃねぇんだし、俺も仲介屋じゃねぇんだ。てめぇも女なら、気に入った雄一人ぐらい、頑張っててめぇの力で捕まえてみろって話だ」


なんともレグラ家らしい考えではあるが……フィリップとクリスティールとしては、どうしても焼き焦げた匂いが消えなかった。

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