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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第389話 だよな

「さて、これが問題の物だな~~~」


ギガンテス希少種の死体をアイテムバッグの中に回収し、目の前に残ったのは……先程まで使用されていた邪剣であった。


(……こいつ、俺が触れても大丈夫なんだよな?)


割と考えてる様で考えずに突っ走るところもあるイシュドだが、邪剣という存在を初めて知ったということもあり、それなりに警戒していた。


(普通に考えて、ダンジョンの宝箱に入ってたやつじゃなくて、どっかのバカが造った特殊な得物だよな…………まっ、大丈夫か)


ギガンテス希少種も、途中までは邪剣に意識を乗っ取られずに戦っていた。

であれば、自分が触っても大丈夫だろう……そう判断し、イシュドは邪剣へと手を伸ばした。


「だよなッ!!!!!!!!!!!!!」


次の瞬間、イシュドは瞬時にオフにした筈のバーサーカーソウルや強化スキルを発動し……拳に鋼鉄を纏い、ある方向をぶん殴った。


すると……イシュドが拳に纏った筈の鋼鉄が粉砕。

拳は無事であれど、右拳には間違いなく痺れが残った。


(鉄魔法の使い手か。珍しい、なッ!!!!!!!)


おそらく、もう逃げているか移動しているであろう。

そうと思いつつも、イシュドは瞬時に邪剣をアイテムバッグに入れ、使い捨ての短槍を取り出し……全力でぶん投げた。


今回の投擲は、ただ強化系のスキルを発動しただけではなく、狂戦士の切り札であるバーサーカーソウルまで発動させた一撃。


前回、ゴブリンに視られた際に放った投擲とは、訳が違う。


文字通り……射手が狙ってきたであろう場所を粉砕した。


「………………………………逃げた、か………………チッ!!! 止めとくか」


イシュトとしては……やはり、そのまま探し出して潰したい。


しかし、射手があの一人だけとも限らない。

複数人待ち構えているとなると、本気で山を更地にしなければ戦り辛い。

加えて……途中で転移系のマジックアイテムを使用されて逃げられてしまえば、破壊し損になってしまう。


(鉄魔法……と、風魔法を使えるってだけでも、多少の情報にはなるか)


既に痺れは消えていた。

それでも、咄嗟の右拳に纏った鋼鉄を粉砕した一撃を思い出す。


(……わざわざ特大の攻撃魔法を放つんじゃなくて、殺す為だけの小せぇ……んで、貫通力がバカ高い射撃を行ってきた辺り、色々解ってる凄腕の暗殺者ってところか)


イシュドは断言出来る。

事前に邪剣に触れる際、何かしらの人物が狙ってくるであろうと予想出来ていなければ、体のどこから貫かれていたと。


(最後の最後に、デケぇ爆弾を置いて行きやがって……クソったれが)


何はともあれ、邪剣を回収することが出来た。

そして、途中までではあるが、ギガンテス希少種との戦いを楽しめていた。


イシュドにとって、全てが悪い結果ではなかった。







「よぅ、たで~ま」


「「「「「イシュド!!!」」」」


イシュドがガルフたちの元に到着すると、多くのメンバーが重い腰などを無視して駆け寄った。


「無事だったんだね、イシュド!!!」


「おぅよ。無事に決まってんだろ、ガルフ。お前らも……ちゃ~~んと無事だったみてぇだな」


誰一人欠けている者はおらず、四肢の欠損など重傷を負っている者もいない。

それを見て、イシュドは珍しく微笑ましい笑みを零した。


本当に珍しい笑みだったこともあり、ミシェラたちがどう反応すれば良いか戸惑っている中、ガルフたちがゴブリンキングたちの討伐を終えた際に直ぐ現れたフランガルたちが声を掛けた。


「君が無事でなによりだ、イシュド君。さて、君は君で激闘を終えたばかりだと思うが、そちらの戦いについて話を聞きたいが、良いだろうか」


「勿論良っすよ。割とふざけんなってのがあってんで」


ギガンテスの希少種と遭遇し、その希少種が邪剣と呼ぶべき得物を持っていた。

そしてその後、邪剣が意識をギガンテス希少種の意識を乗っ取って戦い、討伐後に邪剣を回収しようとした際に狙撃された。


「…………よく、無事だった」


イシュドからザっとした説明を聞き終えると、フランガルは申し訳なさそうな表情を浮かべながら抱擁を交わした。


「自ら挑んだことなので、自分でなんとかしますよ」


「それでも、よく無事だった」


その後、一度エリヴェラたちの視界に入らない場所に移動し、アイテムバッグから取り出された邪剣を拝見。


それを見た瞬間、フランガルたちの表情が直ぐに変わった。


「なるほど……邪剣、という名に相応しい得物だな」


「すげぇ~~嫌な雰囲気を零してやがるぜ」


「おそらく…………いえ、確実に人の手によって造られた物でしょう」


「ふむ。この雰囲気………………以前、見たことがあるのう」


「っ!!!! それは本当ですか、ドーバッグさん!」


ドーバッグと呼ばれた五十過ぎのムキムキ爺さんタンクの聖騎士は、邪剣に触れぬよう顔だけ近付け、改めてじっくりと観察し……首を縦に振った。


「うむ、間違いないのう。以前……もう十年ほど前の話じゃが、その時に戦った邪教徒が使っていた戦斧と同じ雰囲気を纏っておる」


当時、その戦斧を奪い取る、もしくは完全に破壊することは敵わなかったものの、ひび割れによって欠片だけを入手することに成功。


そのため、ドーバッグは目の前の邪剣とその欠片が同質の物であると断言出来た。


「しっかしお前さん、よくこれを持った相手と一人で戦り合えたのう」


「俺は俺で良い武器を使ってやってたんで。似た様な体格とかパワー、技術を持ってるモンスターはぼちぼち戦り合ってるし……それに、邪剣に意識を乗っ取られてからは、身体能力こそ上がったけど技術面や思考の方が残念になったんで、寧ろ戦り易かったっつーか、つまらなくなったっつーか」


「ぬはっはっは!!!! そうかそうか、普通はそうはならんじゃろうが……お前さんにとってはそうなんじゃろうな……して、この邪剣…………どう対処すべきか、悩みどころじゃのう」


何をどう悩むのか。

何故悩む必要があるのか……といった青く若い質問を零す者は、この場には誰もいなかった。

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