第385話 剛力粉砕
「はっはっは!!! こりゃ結構、ヤバいね!! ステラ!!!」
「そう、ね!! 確かに、ヤバい状況、ってやつね!!!」
まだまだ戦意は削がれておらず、戦る気満々のレオナとステラ。
現在二人が戦っている相手は、ゴブリンクイーンとゴブリンライダーの中でも精鋭の三体……近衛ゴブリンライダー。
たかがゴブリンと侮れないことは、クイーンやキングたちとぶつかる前に把握していた。
だからこそ、油断や慢心はない。
それでも、二人は今自分たちの現状に対し、少なからず驚きを感じていた。
(既に……数分は、経過した、かな)
(こいつら、ほ~~~んとに厄介だな!!!)
近衛ゴブリンライダーたちは、主にヒット&アウェイで二人に攻撃を仕掛ける。
並みの攻撃では二人に傷を負わせることは出来ないが、近衛ゴブリンライダーのゴブリンたちは全て上位種であり、近衛ゴブリンを乗せるウルフ系モンスターもCランク。
ステラやレオナの防御力でも、貫かれる時は貫かれ、斬られてしまう時は斬られてしまう。
「ギゲゲゲゲっ!!!!」
「ステラっ!!」
「解ってる!!!!!」
加えて、本当にここぞという場面で強力な攻撃魔法を放ってくるゴブリンクイーン。
一丁前に殺した冒険者から奪った杖やマジックアイテムの指輪などを装備しており、少なからず魔法の威力や強度が上がっている。
今のところ、ステラの岩石を纏った蹴撃や、レオナの渾身の斬撃でなんとか対処出来ているが……その隙を近衛ゴブリンライダーに狙われると、冷や汗が流れる。
(あぁ、もう!!! あいつら、チビチビ飲みやがって!!!)
中々良い攻撃を当てられない、自分たちの流れをつくれないことにもイラついているが、レオナが一番イラついている要因は……近衛ゴブリンライダーやゴブリンクイーンが、ところどころでポーションを飲んで魔力や傷を回復していること。
二対四と、数的に圧倒的に不利である二人には、そのタイミングが中々ない。
(このままでは、じり貧に、なってしまいますね)
持続性のある回復魔法を自身に、レオナにも使用しているため、傷に関してはある程度問題無いものの……このまま魔力が削られ続ければ、間違いなく追い込まれる。
(となると……やはり、リスクを背負ってでも、ね)
これまで戦ってきたライダーたちと比べて、非常に優秀だからこそ、使っていない手があったステラ。
しかし、あれこれ言っていても戦況が良くなるわけではない。
加えて……時間が経てば加勢がくるかもしれないが、自分たちだけで目の前のライダーたちとクイーンを討伐したい。
その思いはレオナも同じであるからこそ、戦況が良くないからといって、助けは求めない。
であれば、やはりリスクを背負って攻めなければならないと、覚悟を決める。
「レオナ、警戒を、お願いっ!!!」
「っ!! あいよ!!! 思いっきり、やっちゃいなッ!!!!」
これからステラが何を行うのか即座に把握し、親友の覚悟を理解して全力でサポートする。
(ッ、ここっ!!!!」
「っ、ギギャッ!!!!」
近衛ゴブリンライダーが攻撃してくる瞬間、なんとか回避してウルフの足を掴む。
そこから叩きつけるなり、ゴブリンクイーン目掛けてぶん投げるという行為に繋げられるも……ステラは、一度それに失敗していた。
理由は、近衛ゴブリンライダーとウルフがそれを想定した動きを行い、対処を行う。
ウルフであれば脚に纏う魔力を増やして無理やり振り払う、もしくは後ろ足から小さくはあれど斬撃波を放つか……そのまま脚を掴んでくる腕に咬みつく。
近衛ゴブリンであれば、的確に手に持つ剣や槍、双剣で振り回そうとする人間を狙う。
ゴブリンにしてはあまりにも冷静に対応してくるため、一度は断念したものの……突破口はそこしかないと思い、ステラは再び近衛ゴブリンを乗せるブラックウルフの前足を掴んだ。
近衛ゴブリンは即座にロングソードから斬撃波を放ち、ステラが手を離すように動こうとするが……ロングソードを振りかぶった瞬間、視界が想定以上に高速移動。
「ぃよい、しょッ!!!!!!!!!!!」
ステラはブラックウルフの前足を掴むと同時に、回転しながらジャンプ。
可能な限り体を回転させながら近衛ゴブリンライダーをぶん回し、視界を揺らしてから思いっ切り叩きつけた。
Cランクのウルフ系モンスターたちもそれなりに高い知能を持っているが、あくまで主導権を握っているのは跨っている近衛ゴブリン。
近衛ゴブリンが対処すると言えば、普通に任せてしまう。
「「ッ!!!!!!!???????」」
結果、そのまま近衛ゴブリンが一番下になり、そのままブラックウルフの胴体まで衝撃が届き…内臓が破裂。
心臓も一発でアウトになり、撃沈。
「ぃよ、ほッ!!!! ははッ!!! さっすが、ステラ!!!!」
親友の頼み通り、全神経を警戒に当てて他の近衛ゴブリンライダーや、クイーンからの嫌がらせ攻撃を対処した。
(もう、一体ッ!!!!!)
仲間がどうやられたのか理解出来ないが、それでも攻めなければならないと確信した近衛ゴブリンライダーが迫る。
グリーンウルフが旋風を纏った前足で爪撃をぶちかまそうとするも、クリスティールはなんとか髪の一部を割かれるも、岩石を纏った腕で無理矢理前足をキャッチ。
「ギギャッ!!!!」
直後、近衛ゴブリンは槍技、薙ぎ払いを発動してクリスティールの後頭部を叩こうとするも、これまた寸でのところで避けられ……グリーンウルフの真下に入られた。
「フンッ!!!!!!!!!」
「「っ!!!!!?????」」
グリーンウルフの腹下に入ったステラは残っている腕に岩石を纏い、後ろ足もキャッチ。
そして……頭に円錐の岩石を纏い、思いっきりグリーンウルフの足を下に引っ張った。
まさかの攻撃方法に近衛ゴブリンとグリーンウルフは対処する前に腹を……そしてケツ穴を貫かれ、これまた同時に倒されてしまった。
(ぃ、よし!!! 後は、任せた、よッ!!!!!)
レオナは最後の近衛ゴブリンライダーからの攻撃を思いっきりクイーンと立ち位置が被らない場所に弾き飛ばし……残りの一体も親友に任せ、狙いを定め……獣の如く駆け出した。




