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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第383話 未来を考えて

天眼……というスキルが存在する。


視力を強化する鷹の眼というスキルが存在するが、それのほぼ上位互換と言えるスキル。

戦況を真上から見下ろし、戦場全体を把握することが出来る感知スキル。


戦場を真上から見下ろしているため、一定の距離の死角から放たれる不意打ちはほぼ無意味と言っても過言ではない。


(この、感覚……やっぱり、マルス先生と同じく……天眼を、持ってるのか!!!)


ゴブリンキングは、王の中でも戦王と呼べる部類のキングである。

ただ、同族を纏める王らしく、後方から指示を出しながら部下を動かすことが最近は増えていた。


その過程で、ゴブリンキングは鷹の眼のスキルを手に入れていた。


そしてエリヴェラとクリスティールのタッグとの戦いで、全くもって自分の思い通りに戦いが進められず、逆に相手の思い通りに進められている事に苛立ちが溜まりつつあったが……それを自身で察して無理矢理怒りを発散した。


結果、非常に頭の中がクリアになり、新たなスキル……天眼を会得した。


(これ、は…………不味い、ですね)


クリスティールもエリヴェラと同じく、今の状況は不味いと思いながらも、氷刃を振るっていた。


早く、仕留めなければならない。

他の戦場に合流させるわけにはいかないと、焦りが零れる。


だが、当たらない……どれだけフェイントを駆使しても当たらない。

岩斧や丸盾に当てられたとしても、上手い事いなされてしまう。


聖剣、聖光という存在に慣れたからか、忌避感は表情から完全に消えていた。


(今、この状況だかけかも、しれないけど、本当に、不味いね)


フェイントまで見破られているということは、ただ天眼を発動しているから見破られている訳ではない。

戦場全体を見渡すことによって、死角からの攻撃は一切通じない状態となっているが、フェイントと見破ることに関しては本人の経験値や優れた視野がなければ不可能。


だが……今のゴブリンキングは、全てを見透かすように二人のフェイントを見破り、本当に自身に迫る攻撃だけを対処していた。


(どうにかして、動きを、止めなければ!!!!)


クリスティールは双剣に氷を纏わせ、双剣技……乱れ裂きを発動。

多数の氷刃が一瞬にしてゴブリンキングに迫るも、戦王は丸盾に分厚い岩石を纏い……振り払う。


全ての氷刃は対応出来ず、ほんの少し切傷が刻まれるも、戦況を動かすダメージにはなりえない。


(くっ!!!! このままでは……いえ、それならば、当初の予定、通りに!!!!)


即座にベストアンサーで対応されてしまった事に驚きは隠せないものの、クリスティールはゴブリンキングが乱れ裂きをわざわざ魔力を纏った丸盾で弾くのではなく、岩石を纏わせて振り払うという行動を見逃さなかった。


身体強化、戦斧や丸盾、体の一部に纏う岩石、天眼等々……今もゴブリンキングは魔力を消費しながら二人と戦っている……それは間違いない。


そして、魔力が切れれば、モンスターも人間と同じ様に倦怠感に襲われる。

ぶっ倒れることはないにしても、それはそれで大きな隙に繋がる。


最後はエリヴェラに任せると決め、クリスティールは双剣技の中でも広範囲技である乱れ裂きを再び使用し、少しでもゴブリンキングに魔力を消費させる。

刺閃や鋭咬牙では躱される可能性が高く、ゴブリンキングの魔力を少しでも多く削るために、クリスティールも無駄に魔力を消費する訳にはいかない。


「乱れ、裂きッ!!!!!!!」


「っ!!!!!!」


ゴブリンキングは再びクリスティールの乱れ裂きを弾き飛ばす為に、丸盾に岩石を纏って弾き飛ばす。


一度纏う事で、数回は耐えられれば良いのだが、氷の魔力を使い、氷刃と化して放たれる乱れ裂きはそんなにやわではなく、一度弾けば丸盾を纏う岩石を半壊させてしまう。


そして二度、三度……四度繰り返されると、ゴブリンキングもさすがにに怪しんだ。

自分が殆ど弾き飛ばしているにもかかわらず、強き雌の人間は同じ技ばかりを繰り返していると。


詳細は解らない。

だが、何かを考えて行動していると勘付き、先に強き雌から殺そうと岩斧を振り抜こうとするが……そうはさせんと聖剣が振り抜かれ、邪魔をする。


「ハァアアアアッ!!!!」


「っ!!!」


聖剣、聖光に対する忌避感嫌悪感は確かに消えた。

ただ、依然として聖騎士の聖剣による聖なる斬撃がゴブリンキングにとって脅威であることに変わりはない。


おそらく、クリスティールはどこかで自分がゴブリンキングが仕留められるように動いてくれている……自分に、託してくれた。

だからこそ、エリヴェラはあまり魔力を消費し過ぎないように……しかし、温い攻撃はせずに攻め続ける。


「…………………………」


冷静に、冷静に……ゴブリンキングは溜まりそうになる苛立ちを散らし、冷静な心を保ち続ける。


出来ることなら、ゴブリンキングは自分の力で目の前の強い人間の雄と雌を倒したい。

それが、戦士としての望み。


だが……彼は戦士であると同時に、ゴブリンたちの長……キングでもある。


今、自分が過去最高に上手く戦えているという自覚はある。

戦闘中であるため、どういった力を手に入れたのか詳細までは解っていないが……以前までよりも強くなった自覚はある。


だからこそ、新たに得た力を無駄にするわけにはいかない。


相棒であるブランネスウルフか、自分と同じく種族のトップであるクイーンと合流するか。

そうすれば、対処しなければならない数は増えれど、ブランネスウルフやクイーンとの連携でなんとか出来るという自信がある。


冷静に自身の欲を抑え、まだ光ある道の先の事を考えて行動しなければならない。

そう判断したゴブリンキングは冷静にタイミングを見極め、どちらかの戦場へ動こうとした……その瞬間、翠色の閃光が戦場を走った。


「……………………っ!!!!!!!!!!??????????」


クリスティールに触れず、エリヴェラに触れず……ただ、ゴブリンキングの体に触れるだけの極細の一閃が戦場を走り、戦況を動かした。

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