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第377話 今出来る事を

SIDE ガルフ


(感じろ……感じろ……眼で、追い過ぎるな!!!!)


現在、ミシェラと二人でブランネスウルフというBランクモンスターと対峙しているガルフ。


当たり前の事ではあるが、Bランクモンスターというのは非常に強い。

学園を卒業して騎士になった新米騎士であっても基本的に一人で勝てるような相手ではなく、複数人で挑んだとしても負ける時は負ける。


イシュドの実家で過ごした経験や、学園に届いた討伐依頼を受けた経験などからも、十分過ぎるほど身に染みている。


「ッ!!!」


「ハッ!!!!!」


迫る爪撃に対し、見事ロングソードに闘気を纏い、ジャストパリィを決めるガルフ。


「シッ!!!!!」


そして攻撃が弾かれた直後の硬直を狙い、ミシェラの斬撃が迫るも……寸でのところで離脱に成功。


「チッ……」


体裁や気品など全てを捨てたかのように、己のミスに苛立ち、舌打ちをする。


「ミシェラさん、どうやら当たっていたようですよ」


「……それなら、良かったですわ」


相手が死ぬまで、ひたすら攻めて攻めて攻めまくる。

それが現在のミシェラの戦闘スタイルではあるが……現在はそれを封印し、確実に攻められる時に全力で攻めるスタイルで戦っていた。


(私に……もっと速さがあればっ!!!)


四足歩行、ウルフ系モンスターのBランクということもあり、ブランネスウルフの脚力は並ではない。追いかけっこで上手は取れず……無駄に体力を消耗する可能性が高い。


「っ、ガルフ!!」


「解ってます!!!!」


加えて、ブランネスウルフは木々の影に入ると、姿が見え辛くなる。

闇に紛れる……と言うには、現在が昼頃で、曇り空ではなく快晴ということもあって、上手くはいかないが……まだ戦闘者として若輩である二人にとっては、一瞬でも姿が見え辛くなるだけでも大きなプレッシャーが掛かる。


(不味いッ!!!!!)


ガルフは命の危機が迫るのを感じ、今度はロングソードに護身剛気を纏い、ブランネスウルフの爪撃に対応。


「っ!!!!! ぁあああッ!!!!」


「疾ッ!!!!!」


なんとか受け流すことに成功し、今度は前回よりも更に深く旋風を纏うミシェラの双剣がブランネスウルフを捉えた。


「ッ……」


ほんの少し苦い顔をしながらも、ブランネスウルフは再び二人から距離を取る。


「ガルフ、腕は……大丈夫ですの」


「はい、大丈夫ですよ」


心配させないように笑みを浮かべながら応えるガルフだが、ミシェラは直ぐにそれが無理をしている時の笑みだと気付いた。


先程ブランネスウルフが放った爪撃はただの攻撃ではなく、爪技スキルの技、ブレイククロウ。

振りが大きく、躱される可能性がそれなりに高いものの、ブランネスウルフのスピードと合わされば今のガルフたちには十分脅威。


通常の爪撃と違い、攻撃対象に衝撃を深く与えるため、ガードした武器が破壊されることもしばしば起こりうる。

ガルフのロングソードはイシュドが用意した特別な強化効果などはないが、頑丈さは半端ではないこともあり、破壊されずに済んでいた。


しかし、衝撃はロングソードだけに留まらず、ガルフにまで届いていた。


(このままでは、ガルフの腕が先に限界を迎えるかもしれませんわね)


出来ることなら、ミシェラは自分から攻めたい。


それでも、現状……ミシェラのスピードでは、ブランネスウルフのスピードに付いて行くことが非常に難しい。


(……ッ、本当に……情けないですわ)


ガルフは防御で、ミシェラは攻撃。

一見、役割がハッキリと別れている様で問題無いと思えるが……ミシェラとしては、現状に不満だらけであった。


ミシェラは、攻撃しか出来ない。

対して、ガルフには闘気という力で防御と攻撃、どちらも行える。


アサルトワイバーンを殴り飛ばした功績から、闘気を……護身剛気を纏った攻撃であればBランクモンスターが相手でも有効打を与えられる。

ですが、ミシェラは防御という手段を持っていない為、ガルフはブランネスウルフに確実にダメージを与えるためにも防御役に徹する必要がある。


一応回避という選択肢もあるものの、爪撃による衝撃、余波などを考慮した場合、カウンターを上手く決められるかが非常に怪しい。


「っ!? そっちに、切り替えてきたか!!!!」


考えが纏まったのか、ブランネスウルフは再度爪撃を叩き込もうとするのではなく、闇属性の爪撃波を放ち始めた。


ブレイククロウと比べれば、威力は低い。

射程は長いが、距離的に二人とも躱すことが出来る。


だが……一歩間違えれば、今もゴブリンライダーたちと戦っているヨセフたちの元へ爪撃波が直撃してしまう。


来ると解っていれば対処出来ないこともないが、ゴブリンライダーの討伐に集中している状況であれば……一気に戦況が悪化してしまう。

そのため、ガルフとミシェラは背後がどうなっているかを気にしながらブランネスウルフの爪撃波を対処しなければならない。


(現、状……自分たちの、方が!! 有利だと思ってる、から……あまり攻めてこない、のかな!!!)


ガルフとミシェラを仕留めるというよりは、二人を留めておくような戦い方を続けるブランネスウルフ。


とはいえ、温い攻撃はしてこないため、その隙を突いて!!! と、上手くはいかない。


(……フィリップや、イブキさんが来るのを待つ……それは、悪い手段では、ありませんわ……でも…………)


Bランクモンスターを討伐する。

それ自体が良い経験、乗り越えれば確実に経験値になることに変わりはない。


だが……ミシェラは、それが最良の経験とは思えなかった。


「ガル、フ……一瞬だけ、斬撃波の、管理を……任せても、良いかしら?」


「っ!!! 勿論、任せて」


何か策がある、もしくは……覚悟がある。

ミシェラの言葉からそれらを感じ取り、ガルフはノータイムで任せてくれて、頼もしい表情を浮かべながら答えた。


「……ッ…………ッ!!!!!!!!!!」


ブランネスウルフが爪撃波を放つタイミングを見計らい、旋風を脚に纏い、全力で地を蹴った。


「ヤッ!!!!!!!」


そしてアドレアスを真似るが如く、双剣の片方から全力の風刺を放つ。


だが、ブランネスウルフは軽々と躱し、やや宙に浮いているミシェラに狙いを定めた。


(この、隙間ッ!!!!!)


多少のダメージは覚悟の上で、放たれる四つの闇刃の間を通る様に、宙で片足に残しておいて旋風を解き放ち……空を蹴った。


「ッ!!!! セェエエエヤアアアアアアッ!!!!!!」


着地の事など知ったことかと、ミシェラは今自分に出来る渾身の風刺をぶちかました。

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