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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第370話 顔に現れる

「っ!!!!」


探索四日目の昼過ぎ、イシュドは何かを感じ取った。


(……来てる、な。しかも……一直線に)


街を出てから感じ取っていた勘が、ここに来て本物であったと脳に警鐘を鳴らす。


「会長パイセン」


「なんでしょうか」


「これ渡しとくな」


「っ、これは……」


イシュドから渡された物は、改良が施された通信用の水晶玉。


「俺は俺の仕事を果たす。てなわけで、そっちはそっちで頑張れよ」


「えぇ……あなたの手を借りず、やり遂げてみせます」


真っ直ぐ、覚悟を宿した表情で答えるクリスティール。

他の学生たちも同じく、既に覚悟は決まっていた。


「はは!!! 全員、良い顔してるぜ」


笑いながら地を駆け、イシュドは勘が告げる方向へ向かう。


「イシュド君」


「シドウ先生」


そして数百メートル離れたところで、影として見守っていたシドウに声を掛ける。


「……向こうにいる存在と、戦るんだね」


「うっす。どう考えても、このタイミングで……しかもこっちに真っ直ぐ向かって来てるってことは、偶々じゃないでしょうしね」


「元々決めていた事だ…………ふふ、今回の依頼が終わったら、また酒を呑もうか」


「良いっすね。浴びるほどアリンダ先生とか、クルト先生たちとも一緒に呑みましょうか」


「うむ、そうしよう」


死亡フラグ……などではない。

ただの、男と男の約束である。


そういった意図を込めて約束してきたのだと解っているからこそ、イシュドは特にツッコまず笑顔で笑顔で応えた。






「はぁ~~~」


「どうしました、アリンダ先生」


「どうもこうも、教師としてはやはりいかがな判断かと思ってね~~~」


確かに、元々約束していた内容ではある。

しかし……本当に万が一があれば、イシュドがその戦いに満足して逝ったとしても……レグラ家の者たちがその件に関して特に抗議することがなかったとしても、イシュドがいくら強くても生徒である以上、教師であるアリンダとしては悔いが残ってしまう。


「では、今から起こるであろう戦いこそが、イシュド君の任務だと思うしかないですね」


「……そう考えれば、多少は納得出来るかもですね~~」


普通ではない何かがガルフたちの方へと向かっている。

その存在には、アリンダも勘付いていた。


アリンダはイシュドの全力で戦う姿を見たことはないが……少なくとも、多少普通ではない学生が対応出来る存在ではないと断言出来る。


「大丈夫だと思いますよ」


「その自信はどこから出てくるんですか~」


「だって、彼は普通じゃない……異常な狂戦士じゃないですか」


「…………おそらく、あの子だからこそ納得出来るであろう言葉、って感じね~~」


やはり、何度でもため息は零れてしまう。

それでも……出来ることはない。

ただ、イシュドなら勝つだろうと、信じることしか。





「っ…………やっぱ、生きてやがったか」


走行中、イシュドはある存在に気付いた。


先日の様に、離れた場所から視られている訳ではない。

ただ、微かに複数のモンスターの気配を感じ取った。


(まぁ、結局どっかで戦るんだ……それに、あいつらなら大丈夫だろ)


イシュドはイシュドで、今更心配したところで自分に出来ることはないと思い……アイテムリングから、二振りの戦斧を取り出す。


「ふふ……ふっふふ…………あっはっは!!!!!!!!!!」


駆けて、駆けて、近づいて、近づいて……勘がずっと囁き続けてきた存在の大きさを理解する。


結果……まだ、見えていない。

にもかかわらず、イシュドの口から嗤い声が零れた。


それだけで、勘が告げていたモンスターの強さが窺える。


(まずは、挨拶代わりといこうかッ!!!!!!!)


イシュドは良く武器を造ってもらっている鍛冶師から購入している武器、将軍シリーズの中から、雷将という二振りの戦斧に雷を纏い……二つの雷斬波を放った。


放たれた雷の刃は前方の木々を切り裂きながら進み、標的の元へと辿り着く。


「へっ! まぁ、そうなるだろうよ!!!!」


しかし、二つの雷斬波は天高く斬り上げられた。


「ふ~~~~ん……なるほどね。良いじゃん良いじゃん。俺好みのモンスターじゃねぇの」


「………………」


イシュドの勘が告げていたモンスターの正体は、一つ目の巨鬼、ギガンテス。


オーガ以上の巨体を持ち、その絶大なパワーで騎士や冒険者たちの攻撃を粉砕し、力尽くで命を奪ってきた巨人。


(こいつ……通常種じゃねぇな)


優に千を越えるモンスターと戦ってきたイシュドは、以前夏休みの際に遭遇した剣鬼などのモンスターの様に、人の言葉を喋ることが出来る個体と何度か遭遇したことがある。


その経験から、イシュドは人の言葉を喋る個体は、他の個体と比べて表情……特に眼に違いがある事に気付いていた。


「………………」


「ははッ!!!!!!」


お返しとばかり、今度はギガンテスが手に持つロングソードから斬撃波を放った。


「良いねぇ~~~、割と痺れたぜ」


「…………」


無言のままイシュドを見据えるギガンテス。

そんな強敵に対し、イシュドはある種の気味悪さを感じていた。


(今のは、闇属性の斬撃波……で、良いんだよな?)


禍々しいほどの黒さを持つ斬撃波をイシュドは片腕だけで弾き飛ばしたものの、右腕にやや痺れが残った。


(ギガンテスが元々持ってた属性魔法もあるかもしれねぇが、メインの動力は……あの剣だろうな)


冷静にギガンテスを観察するイシュドだが、更に闇の斬撃波が迫る。


「早速、暴れてぇ感じかッ!!!!!」


複数の闇刃が放たれても、イシュドは一切顔色を変えることなく雷将を力強く振り回し、弾き飛ばす。


(身体能力が、前に戦ったギガンテスより、強ぇな!!! ってことは、やっぱ希少種ってところか……んで、あの剣は………………闇剣、じゃねぇな)


聖剣と反対の存在、闇剣。


レグラ家に暗黒騎士の職に就いている者たちがいるため、イシュドは今まで何度もそれらを見てきたことがあるが……そんなイシュドでも、現在ギガンテス希少種が持つ剣の様な得は見たことがなかった。


「それ、邪剣って、ところか?」


「っ……」


「はっはっは!!!!! 無表情でも無口でも、揺れは隠せねぇみてぇだなッ!!!!!!」


疑問が解消された。


詳しい出所などは解らずとも、イシュドにとってはそれさえ分かればどうでもよく、舌なめずりをし……ギアを上げ始めた。

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