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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第364話 殺される?

「ふーーーー…………」


夕食を終え、大半の者が就寝した夜……イシュドは一人、テントの外に出て黄昏ていた。


「こんな時間に、何をしてるのですか」


「……そりゃこっちのセリフっすよ、会長パイセン」


イシュドの気配に気付いて……という訳ではなく、なんとなく目が覚めてしまったクリスティールはミシェラたちを起こさないようにひっそりとテントから出てきた。


「それもそうですか……ところで、イシュド君もそういった物をやるのですね」


「ん? 煙管のことか」


「えぇ」


「普段は使わなぇけど、まぁ…………あれだ。ここ最近、ちと色々と面倒だな~って感じて、ちょっとイライラが溜まったりして、久しぶりに使ったんだよ」


そう言いながら、ふわ~~~っと口から煙を吹き出すイシュド。


(……煙草の様な匂いはしませんね)


クリスティールにとって、煙草はあまり良い印象を持たない物なのだが……煙管をふかすイシュドや、口から零れる煙に対しては不思議と嫌悪感を感じなかった。


「それに、こいつはマジックアイテムの煙管だから、特に体に悪影響はないんだ」


「そうなのですね………………」


「ん? なんだ、会長パイセンも気になるか」


「えっ」


「気になるなら、貸すぞ」


そう言いながら、イシュドは先程まで使用していた煙管をクリスティールに渡した。


クリスティールは特に何も考えられていなかったこともあり、無意識に受け取ってしまい……受け取ってから心の中であたふたし始めた。


(ど、どうしましょうか)


気になりはした。

だが、何に気になったのか……本人もいまいち理解出来ていなかった。


「こ、ここから吸えば、良いのですね」


「そうっすよ」


「……すぅーーー…………ふぅーーーーーー…………」


「ふふ、どうっすか。初めての煙管は」


「…………なんだか、不思議な感覚ですね」


珍しく、生徒会長や三年生、リーダーや姉といった笑顔ではなく、子供らしい笑みを

零すクリスティール。


意外と気に入ったのか、直ぐには返さず、もう少し煙管を楽しむ。


(………………もっと、恰好が恰好で、場所が場所なら……傾国の花魁ってところか……いや、あれか。さすがに公爵家の令嬢に向かって花魁は失礼ってもんか)


常識知らずのイシュドではあるが、さすがにその例え方は不味いと思い、少し反省した。


「少し、心が落ち着く感じがしますね」


「それをくれた兄曰く、ただ煙が出るだけではなく、そういった効果も含まれてるらしいっすからね。まっ、普通の煙草とかにもそういうのを感じる人もいるらしいっすけど」


「なるほど…………決して、悪いことばかりではないのですね」


そう言いながら、もう少しだけと思いながら、ふかすクリスティール。


(…………パイセンのファンが見たら、生徒会長がそんな物を吸ったりしたらダメですよ! って注意する前に、普段とのギャップに殺されるだろうな)


優等生が煙管を扱う姿は、まさにギャップしかない。


(周りの面子だと……ガルフは、ちと無理してる感が強いな。フィリップの奴は……逆に似合ってっから、ギャップとかはねぇな。デカパイは…………縦ロールのせいか、ガルフと同じく無理してる感が強いな。イブキも……フィリップとは違う方向で似合ってるから、ギャップはねぇな)


ヨセフなら、ローザならと考えてみるも、どれも無理してる感が強いか、似合っているかのどちらかしか感じない。


「ふぅーーーーー…………ありがとうございました。お返ししますね」


「おぅ」


クリスティールから返されると、イシュドは何事もないようにふかし始めた。


(……先輩なのですから、いちいち駄目なのでしょうが……経験がないと、難しいものですね)


思いっきり間接キスなのではないかと、クリスティールは貴族の世界で生きてきた百戦錬磨のメンタルで表情にこそ出さなかったが、心臓はそこそこバクバクと高鳴っていた。


対して、煙管を貸したイシュドは、先程と変わらず普段通りの表情でふかしていた。


「……ところで、イシュドから見てガルフ君たちは良い感じに成長していますか?」


「ちゃんと成長はしてるんじゃないっすかね。アサルトワイバーン戦とか、誰が誰に指示を飛ばすとかなく、自主的にそれじゃあ自分はこの役割を担当しようって、あっさり決まった上手く戦ってんでね。まぁ…………今のところ、成長が目立つのはフィリップじゃねぇかなって思うっすけど」


「あら、奇遇ですね。私も今回の交流会で一番伸びているのはフィリップだと思っていました」


手の掛かる弟が褒められていると、姉としてそももそれで嬉しい。


「おっ、会長パイセンも同じだったか。戦闘に関しちゃぁ、相変わらず色んな意味で上手ぇな~~とは思うんすけど、普段はめんどくさがり屋なくせに、今回は割と自分から意見を口にしたり、話を進めようとしてんなって思って」


「そうなんですよね。今までのフィリップからは考えられない成長です」


偶々偶然……と、クリスティールは思っておらず、なんとなく理由は察していた。


(おそらく、基本的にゴブリンとウルフ系モンスターとの戦闘にイシュド君が参加しないからこそ、イレギュラーが起きてもなんとか対応しようと自然と考えるようになったのでしょう…………自分の為ではないというのが、またフィリップらしいですね)


元々フィリップがどういった人間なのか知っているからこそ、クリスティールはその変化が心の底から嬉しかった。


「こっちの面子だと……デカパイも、思ったより私が私がって前に出ねぇところを見ると、精神的な部分は成長したと言えそうかな」


「ふふ、そうですね…………ガルフ君も、私は成長していると思います。ただ、個人的には仲間を守りたい気持ちと、自己犠牲が強く結びつかないでほしいと感じました」


「あぁ~~~~~……な~~~るほどぉ~~~~~………………それは、一理あるっすね~~~~~」


自己犠牲精神が悪いとは、イシュドは思っていない。


ただ、クリスティールと同じく、それが行き過ぎてしまうとよろしくない結果に至ると思っている。


(こりゃまた、難しい課題だね~~~~)


天に向かって零した煙を眺めるも……答えが浮かぶことはなかった。


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