第359話 理解している
「キシャアアアアアアアアッ!!!!!」
イシュドたちを狙って現れたモンスターの名は、アサルトワイバーン、
亜竜と呼ばれるワイバーンのランクはCだが、アサルトワイバーンは上位種であり、ランクはB。
通常のワイバーンと比べて気性があらく、狙いを定めれば相手が格上の存在であろうと容赦なく襲い掛かる。
「ふっ!!!」
「はっ!!!!」
アサルトワイバーンは現れて直ぐに複数の爪撃波を放つが、クリスティールが斬撃波を、アドレアスが刺突を放ち、なんとか相殺することに成功。
(ふぅ~~~、どうやらギリギリだったようだね。万が一の襲撃に備えて魔力を温存したいけど……それは無理そうだね)
アドレアスは先程放たれたアサルトワイバーンの爪撃波を相殺出来たことを、必然とは思っていなかった。
「攻めますわッ!!!!」
予想外の襲撃者に対し、ミシェラは一切臆することなく双剣を抜剣し、勇猛果敢に攻め始めた。
Bランクモンスターであるアサルトワイバーンに対し、それは無謀が過ぎるのでは……と思えるほどの勇猛果敢な攻め。
強者の余裕を持つモンスターであれば「なんだこのバカは」と思うかもしれないが、狂暴性が高いアサルトワイバーンはすぐさま交戦。
しかし、アサルトワイバーンの敵はミシェラだけではない。
「あんまり前に出過ぎるなよ~~」
フィリップは元から前に出ないと決めているが、それでもしっかり仕事は行う。
短剣に雷を纏わせ、アサルトワイバーンの動きを先読みし、顔に向かって刺突を放つ。
「フッ!!!!!」
「っ!!!」
「……やはり、そう簡単には当たってくれませんか」
イブキも同じく、今回のアサルトワイバーン戦では後方から攻めると決め、居合斬りを放ち、翼を切断しようと試みる。
放たれた斬撃波を見事躱したアサルトワイバーンではあったが、イブキの攻撃に対して決して小さくない危機感を感じた。
「ガァアアアアアアッ!!!!」
潰すなら、まずはあの人間だと……アサルトワイバーンは口から豪火球を放つ。
爪撃や尾撃、咬みつきだけではなく、上位種の亜竜として火を使った攻撃も並ではない。
(ブレスじゃなく、口から火球を放つのか……ってことは、あのアサルトワイバーン……纏えるな)
後方から完全に戦闘には参加せず、戦闘を眺めているイシュド。
戦闘中、あまり考え事をしないイシュドではあるが、過去の経験から今回の襲撃者であるアサルトワイバーンは、決して狂暴性だけが取り柄の個体ではないことを把握。
「ふんっ!!!!!!!」
しかし、フラベルト学園のメンバーもただの優等生たちだけではない。
全身に闘気を纏ったガルフはロングソードを抜かず、右拳を強く握りしめ、豪火球の下に潜り込んだ。
そして……渾身のアッパーを叩き込んだ。
森の中で火災が発生すれば、それだけで面倒事になり、他のメンバーの意識がそちらに引き寄せられる可能性もある。
だからこそ、ガルフはロングソードで豪火球を切断するのではなく、渾身のアッパーを叩きつけ、上空に打ち上げた。
(良い判断なんじゃねぇの、ラガス。ダメージも……そんなにねぇみたいだな)
アッパーを当てる瞬間、右拳に纏う闘気の量を更に増やすことで、豪火球の熱にやられることを回避。
殴り上げられた豪火球は空中で砕け散り、花火となって消えた。
「風穴を、空けようか」
アドレアスはイブキの様に両翼を切断するのではなく、風穴を空けようと、風突を連続で繰り出す。
「逃がさないよ」
「っ!!!!」
翼という、比較的もろい部分を狙われれば、適切に対処しなければアサルトワイバーンといえど貫かれる可能性が高い。
「地上も、忘れてもらっては困るな!!!!!!」
遠距離攻撃だけを気にすれば、今度は地上からレブトの炎槍が迫る。
「乱れ裂き」
「っ!!!」
冷気を纏った双剣技、乱れ裂きがアサルトワイバーンを襲う。
炎槍に気を取られた瞬間に死角から叩き込まれた攻撃に、思わず表情を歪めるアサルトワイバーン。
(あっ、あぁ~~~~、どうなるだろうな)
戦闘が始まってからガルフたちにプレッシャーを与えてはいるが、目立ったダメージは与えられていない。
対して、ミシェラたちは全ての攻撃がアサルトワイバーンの鱗を斬り裂き、突き刺してはいないが、それでもダメージは与えられていた。
その戦況に苛立ちを感じ、飛来する攻撃全て無視し、アサルトワイバーンは飛翔。
フィリップたちの遠距離攻撃の威力が軽減されてしまう位置まで高度を上げると、両翼に炎を纏った。
(わぉ…………クソ今更だが、どうせなら俺もちょこっと味見してみたかったな)
当然、アサルトワイバーン以外のワイバーンや属性を持つ正真正銘のドラゴンとも戦闘経験があるイシュド。
そんな過去のドラゴンたちと比べて、現在ガルフたちに襲いかかろうとしているアサルトワイバーンは己の武器を理解しており、更に強化する術まで理解していた。
両翼に炎を纏うだけではなく、前方に炎のブレスを放ち……自ら突っ込み、全身に纏う。
(ブレスをフェイントに使ったか。ただ……ちょっと時間を掛け過ぎたな)
「破ッ!!!!!!」
「疾ッ!!!!!!!」
上空から何かしらの攻撃を仕掛けてくる、そこまでは読めていたイブキとアドレアス。
イブキは刀技、居合・三日月を放ち……アドレアスは細剣技、螺旋突きを放った。
アドレアスの螺旋突きは旋風が纏われており、更に貫通力が強化された状態。
そして、居合・三日月は標的の質によって刃が変化するため……対ミノタウロスの時ほどの完成度ではないが、今回放たれた斬撃は炎を斬り裂く一刀へと変化していた。
「流石は、ドラゴンですね」
しかし、炎の竜星となったアサルトワイバーンは二人の攻撃を避けず、そのまま激突し……見事打ち破った。
「ヌゥゥウウウアアアアアリャアアアアアアアアッ!!!!!!!!」
「ッ!!!!!?????」
だが、螺旋突きを、居合・三日月と衝突したことで減速を余儀なくされた。
そのタイミングを見逃さず、サイドから大跳躍し、闘気を纏ったイシュドの拳骨が炸裂した。




