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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第322話 目標を追いかけていれば

「僕は…………ん~~~~~……やっぱり、イブキになるのかな」


「それは……やっぱりあれか。あまり貴族って感じがしないからか?」


「そうだね」


ガルフは平民である。

学生の中では、既にそこら辺の貴族令息、令嬢よりも強い戦闘力を有している。

それでも……平民という、貴族よりも下の立場であることには変わりない。


だからこそ、彼女たちと友人にはなれたとしても、恋人……夫婦といった関係になれるとは、到底思えない。

平民という立場を自覚しているからこそ、尚更その認識を強く持ってしまう。


そんな中でも、イブキは大和基準であれば貴族に位置する存在ではあるものの、別の大陸の者ということもあり、初対面の時から平民とは違う威圧感や態度を感じなかったこともあり、商況法ではあるが……イブキならばと思えた。


(ふっふっふ、理由はちょっとあれだけど、これで妹を選んだ男子が三人……兄として誇らしい限りだね)


ガルフの答えを聞いて、理由に関しては消去法で恋バナからはズレた内容ではあるものの、それでもまた妹が選ばれたことに、兄のイブキはなんとか得意気な顔になるのを抑えていた。


「……ガルフなら、将来的に爵位を得たりしそうだけどな」


「そうだな」


「えっと……それは騎士の爵位をってこと?」


「いや、男爵とか子爵とか、そこら辺の爵位だよ」


将来的に、爵位を得る可能性がある。

そんな友人二人の言葉を聞いて、カチコチに固まるガルフ。


ゆっくり視線を、この場で一番立場が高い第五王子のアドレアスに向ける。


すると、アドレアスはほんの少しの間、真剣に考えて答えを出す。


「そうだね。二人の言う通り、将来的に男爵や子爵の爵位を得る可能性はあると思うよ」


「っ!!!???」


ついに、完全に固まってしまったガルフ。


だが、話を聞いていたヨセフたちは、イシュドたちが話を盛り過ぎだとは思っていなかった。

理由としては、まず初日の戦いで試合という戦いではあれど、あのレオナを相手に互角に渡り合っていた。


そして……実際に普段は使わない武器を使っての模擬戦では、特にヨセフとパオロは勝率が負けている。

彼等は、その事実が認められないほど器は小さくなかった。


「ガルフ、まずお前は闘気を持ってるだろ」


「う、うん」


「うちの実家には強ぇ連中が何人もいるけど、その中でも闘気を持ってるのは限られた奴らだけだ。それはレグラ家の血筋の人間も例外じゃねぇ」


まだ十代半ばであり、可能性としては一応ゼロではないものの……これまでイシュドが経験してきた戦闘内容を振り返れば、どこかしらで体得していてもおかしくない。


そして、二次職で聖騎士の職に就いたエリヴェラであっても、闘気を体得できる可能性はほぼない。


「んで、お前はもう闘気の応用技、護身剛気を扱えるようになった。それだけで、将来性抜群ってもんだ」


「それは…………そう、なのかな」


目標にはまだまだ手が届かないものの、それでも自分は強くなったと……同世代の中では強いのだと理解はしている。


そこでまだ謙虚な姿勢を貫き、嫌味と転じることはなかった。


「で、でも、だからって爵位を手に入れるなんて……簡単な事じゃないよね?」


平民であるガルフは、貴族の世界についてあまり詳しくない。

だが、それでも平民という立場の者が、爵位という権力の象徴とも言えるものを手に入れることが容易ではないことだけは解る。


「そりゃ簡単じゃねぇだろうな。けど、ガルフならやれんじゃねぇの」


「フィリップ……多分、褒められてるとは思うんだけど、その自信? はどこから来てるの?」


「そりゃお前、ガルフの目標を考えれば、いけるかもしれねぇって思えるだろ。なぁ、アドレアス」


「うん……そうだね」


自分の目標があるから、と言われてガルフはチラッと親友であるイシュドの方に視線を向けた。


一応貴族ではあるが、言動や思考などは一切貴族らしくない。

権力に対する興味など一切ない友人……その彼が目標だからこそ、何故爵位という権力に近づけるのか解らない。


「ガルフ、イシュドに追い付こうとするなら、これからもっともっと多くのモンスターと……強いモンスターと戦うことになる筈だよ」


「…………あっ、えっ……そういう事、なの?」


なんとなく理解出来た様子のガルフ。

とはいえ、そんなとんとん拍子に話が進むのかという疑問も残る。


「そういう事だよ。国としても、ガルフの様な優秀な存在を逃したくないだろうからね」


「だな。ぶっちゃけ、闘気っていうのがどういう理屈で手に入れられるのかはよく解ってねぇみたいけど、とりあえずその人物の血があればって考える奴はいるだろ」


「まぁ、そういう打算的な考えもあるだろうね」


第五王子、公爵家の令息たちは本気で将来的にそうなる可能性があるだろうと思っていた。


だが、当の本人は……その可能性に関して、あまり好意的ではなかった。


「…………」


「あんまり興味ねぇって感じの顔だな、ガルフ」


「……貴族になったり、爵位を貰ったりしたら……困ってる人を助けたい、守りたいって行動が出来なくなるんじゃないかと思って」


何かに縛られ、思うように動けなくなるのかもしれない。


そんなガルフの気持ちは解らなくはない貴族令息や王子たち。

だが、実際のところ……爵位を授与されたからといって、絶対に拘束されるとは限らないことを、彼らは知っていた。


「ガルフ、別に男爵と子爵になったからって、領地の管理を任されたりすることはねぇぞ」


「? そ、そうなの?」


「フィリップの言う通りだよ。この先ガルフが爵位を授与されても、これまで通り目標を追いかけ、誰かを守ることは出来るよ」


「そう、なんだ…………」


公爵家の令息と王子が、特にお前を縛ることはないと教えてくれた。


教えてくれたが……それでも、可能性の話ではあるものの、爵位を手にすることへの抵抗感を感じる。


「イシュドはどう思うんだい。ガルフが爵位を手にすることに関して」


「………………ありっちゃありなんじゃねぇの」


「え?」


イシュドの口から出た考えは、ガルフの予想とは反対のものだった。

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