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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第303話 言語化

「…………」


「話はそんだけか?」


「あ、うん」


「んじゃ、そろそろ戻ろうぜ」


ところどころでステラの声量が大きくなったものの、幸いにも周囲に他の生徒が現れることはなく、会話を誰に聞かれてしまうこともなかった。


だが、学生や教師があまり訪れない場所というだけで、絶対に訪れないという訳ではなく、イシュド達は速足で訓練場へと戻って行った。


「おっ、二人とも戻って来たね。それじゃあ、そろそろ始めようか」


午前訓練、午後訓練。そして……夕食後の夜訓練。


フィリップあたりはそろそろ勘弁してくれ~~と思っているが、他の面子はまだまだやれると……明日の筋肉痛など知ったことかと、やる気に満ち溢れていた。


「シドウ先生。俺とステラはちょっと個別で訓練を行うんで」


「そうか、分かった」


夜訓練は基本的に模擬戦がメインではなく、今日一日を振り返り、互いに反省点などについて話し合い、そこを直していくための時間。


その為、個人的な訓練を行っても問題無いのだが……二人だけで個別訓練となれば、当然ヨセフたちは気になってしまう。


そうなるだろうなと予想していたイシュドだが、フル無視してステラとの訓練を開始した。


「んじゃあ……そう、だな~~~~~~。何から教えていくか」


素手対素手の際に活躍する対人戦技術を教える。

それは既に決まっているが、イシュドが前世の記憶をもとに得た対人戦技術は元となる格闘技が複数存在する。


「私は両腕を良く使うので、まずは拳を使った戦い方を知れたらと」


「……それもそうだな。つっても、ジャブに関しては上手く出来てた気がするからな」


「そう? 私から見て、イシュドの方がよっぽど美しいと感じたけど」


「そりゃどうも……とりま、左のジャブに関しちゃあ、俺は牽制として扱ってる。ただ、牽制は言い換えれば攻撃の起点になる。だからこそ、漫然繰り出すんじゃなくて、何処に叩きこむか、どういった理由でそこに置くのかを考えた方が良いな」


素手と素手の戦いに関しては、イシュドがなんとなく仲の良い騎士や騎士候補と始めた結果、ガチの喧嘩になりかけた際に丁度良いという理由で何度も行われており、訓練の休憩時間に三分だけ行う者たちもいる。


それもあって、彼らもボクシングやムエタイ、総合格闘技などの概念は知らないが、活発的に意見交換をし続けており……徐々にそういった細かい考え方が生まれている。




「……ガルフ。本当にあの男は、狂戦士なのか?」


「はい。一応狂戦士ですよ」


軽くイシュドのステラに対する説明を聞いていたヨセフ。


その内容は、非常に言葉による説明が上手くなされていた。

グッと溜めてバッと放って、ひょいっと避けて……といった抽象的過ぎる内容などではなく、確かな理屈によって伝えられていた。


「あの男は、異常な狂戦士。そう納得するしかありませんわよ」


「そういうもの、なのか」


固定概念が崩れる。

そう関していたのはヨセフだけではなく、ローザやパオロ、エリヴェラも少なからず改めて衝撃を受けていた。


「元々……理屈? で動くタイプ、だったのかな」


「……どう思います、ガルフ」


「えっ? いや、僕に振られても」


「私たちの中で、イシュドと一番付き合いが長いのはあなたでしょう」


ミシェラの言う通りではあるが、あまり大差はない。


「ん~~~~……どっちも、なんじゃないかな。どちらかと言えば感覚寄りかもしれないけど、その感覚をげ……言語化? することが出来る思考力を持っている、って感じかな」


「おそらく、ガルフ君の言う通りだろうね」


シドウから見ても、イシュドのそういった部分はかなり異質であった。


稀に、多くの若手たちを指導してきた指導者が、感覚派と理論派、どちらのタイプの生徒にも対応して指導できる者がいる。


だが、年齢的に考えて、経験に基づいてそこまで到達するには、どう考えても今のイシュドでは足りない。


「感覚を言葉に出来る。それがイシュド君の強さの一つと言えるかもしれない」


「強さの一つ、ですか?」


「攻撃に関しては感覚で行っていたとしても、その言語化が行えるからこそ、読みの力が増すこともある」


「……それは、羨ましいというか……でも、それって元が感覚派じゃないとダメってことですか?」


ガルフの質問に、教師陣三人はどう答えれば良いか頭を悩ませる。


「…………かもしれないわね~~~。でも、理論的に動きを調整するタイプは、元から相手の行動を読もうとするタイプでもあるから、結局はトントンってところじゃないかしら」


理論が大事に思える魔法の世界にも、感覚肌の天才というのは存在する。


だが、その天才を越える理論派も存在するため、アリンダは誤魔化すために適当な事を言った訳ではなかった。


「イシュド君の場合は、その性格的な部分もあるでしょう」


「性格的な部分、ですか? クリスティールお姉様」


「えぇ。彼は粗野に見えて、非常に仲間思い。だからこそ、自分が伝えたい事を、上手く相手に伝えたい。だからあそこまで上手く言語化出来る……と、私は思うの」


それはさすがに褒め過ぎ美化し過ぎでは? と、尊敬するクリスティールが相手ということもあり、ミシェラはツッコめなかった。


「ふふ……そうだな。確かに、イシュド君にはそういうところもあるだろう」


隠れてこっそり行動していたため、何故そう思うのかについては語れない。


(友達が心配だからって、ぽんと大金を使うからね~~~。いやぁ~~、本当にあの

時は驚いたよ)


学園の上層部からの命で、ガルフとイブキ、フィリップとアドレアスの四人でBランクモンスターのミノタウロスを討伐する依頼を受けると知ったイシュドは、惜しむことなく大金をシドウに渡し、これを使って上手くガルフたちを守ってやってほしいと頼み込んだ。


勿論、それを知っているのは相変わらず一部の人間だけであり、ガルフたち学生は知らない。


「さっ、あまり関係無いことに意識を向けないように」


交流会の時間は限られている。

シドウの言葉にヨセフたちは直ぐに反応し、改善点などの話し合いや動作確認に没頭し始めた。

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