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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第276話 終わらせたくない

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!!!!」


「ハァァアアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!!」


拳が、脚が、肘が、膝が、五体という名の武器が何度も何度もぶつかり合う。


「ぬぅおらりゃ!!!!!」


「せいっ!!!!!!!!」


そしてあるタイミングで……示し合わせていたかのように、両者ヘッドバットを叩き込んだ。


ステラは先程戦ったクリスティールの行動から学習し、額に岩石を纏い、イシュドの石頭に対抗した。


(っ!!!!!! なっはっはっは!!!! 最高に、痺れるじゃねぇか!!!!!!!!)


文字通り岩石頭の一撃を食らった事もあり、ステラだけではなくイシュドも同時に跳ね返された。


「まだまだイケるよなっ!!??」


「当、然、ですっ!!!!!!!」


「ぃよっしゃああああああ!!!!!!」


何度砕かれようとも、ステラは即座に手甲、脚甲に岩石を纏う。


(まだ、まだ……もっと、速く、強く、奥にッ!!!!!!)


「せやッ!!!!!!!!」


「っ!!!???」


イシュドの右ストレートをなんとか内側から弾き、左拳による追撃が届く前に、更に奥へと殴り飛ばす正拳突きがイシュドの腹に叩きこまれた。


「…………くっくっく、はっはっはッ!!!!!! 良いぞ!! 中々痛てぇじゃねぇかよッ!!!!!!」


笑って言う言葉ではない。

それでも、異常な狂戦士であるイシュドにとって、痛みは戦闘欲を刺激するスパイスでしかなかった。


「ぅおらッ!!!!!」


「ぐっ!!!!!?????」


再び超接近戦を行う中で、イシュドは絶対に両拳で対応出来ないといったタイミングで、前蹴りを放った。


「はっ、いやぁ~~~~~……まさか、バレてた感じか?」


「あなた、なら。なんとなく、やり返してくると、思っていたので」


「なっはっは!!!! 俺もまだまだガキってことだな」


イシュドなら、やり返してくる。

そう思っていたクリスティールは、両腕が何故か外側に弾かれた瞬間に、基本的には手甲、脚甲として纏う岩石を腹に纏い、纏う魔力も集中させ、更に割と割れている腹筋に力を籠め……最小限のダメージに抑えた。


(ここまで、しても……このダメージ…………膝から、崩れ落ちそうに、なりますね)


イシュドはバーサーカーソウルこそ使っていないものの、身体強化のスキルは使用しており、無属性の魔力をステラの岩石を真似、腕と脚部分にのみ纏っている。


加えて……クリスティールとの戦いっぷりを観た時から、殴り合いたいと思っていた相手との戦いということもあり、既にギア自体は完全に上がり切っていた。


(……彼女との、戦いで、学んだ、筈でしょう)


ステラは崩れそうになる膝を拳で叩いた。

二度、三度、四度ほど叩き、完全に立ち上がった。


「ふぅーーー、まだまだ、これからです」


「良いねっ!!!! 元気一杯だなッ!!!!!」


笑みを浮かべて構えるステラを見て、更にイシュドの笑みは深く……狂戦士としてのそれに近づく。


(止まっては、ダメ!!! 動いて、動いて、動き続けるッ!!!!!!!!!)


そういう戦いなのだ、自分は今……そういう戦いをしていて、楽しんでいるのだと、理解しているステラ。

故に、下手に作戦を練ることはなく、ただ……本能に、これまで自分が積み重ねた経験の蓄積に身を任せ、拳を、蹴りを、掌底を、膝を繰り出す。


それでも、どういう状況下になれば、これ以上戦えなくなるのかは、解っている。


「フッ!!!!!!」


「っ!?」


双掌を叩きつける。


直接イシュドにダメージを与えるものではなく、ただステラが後方に下がっただけであったが……その行動を、イシュドは直ぐに理解した。


「はぁ、はぁ、ふぅーーー……すぅーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」


「ッ!!!! 最高だッ!!! 最高じゃねぇか、ステラ・ファスティーウーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」


下った理由は、酸素を取り込むため。

つまり……もっと、もっと長く、イシュドと戦い続ける為である。


あなたと、もった戦いたい。戦い続けたい。


交流会というイベントを考えれば、まだまだ何度でも戦える。

今、ここで無理をする必要はない……というのが、一般的な考えである。


しかし、ステラはなんとなく、本能的に、このイシュドとの戦いを、もっともっと続けたいと思った。

この試合だからこそ、続けたいと感じた。


徐々に纏う岩石を越えてダメージが浸透し、ステラの肉に……骨にダメージが届く。

既に永続的に治癒する回復技を発動してはいるが、それよりも先に骨へ衝撃が届く。


だが……ステラはその痛みに気付いていなかった。


アドレナリンという言葉は知らない。

それでも、ステラほど強くあろうと、前に進もうとする者であれば、時折感じるその痛みを感じない瞬間というのを知っていた。


まだ……まだ、もっと、もっと長く……戦える、戦い続けられる。


「っ!?」


「っと」


だが、どれだけアドレナリンがドバドバと溢れ出していても、どれだけステラがこの一戦を続けようと闘争心を燃え上がらせていたとしても……魔力切れだけは、どうしようも出来なかった。


急に力が抜け、倒れ込んだステラに対し、イシュドは無情にも蹴りや拳を叩き込む様なことはなく、地面に崩れ落ちる前にキャッチした。


「もしかしなくても、魔力切れか?」


「そのよう、ですね……ごめんなさい」


謝った。

この様な幕切れになって申し訳ないと。

負けるにしても、どちらかの拳で、蹴りで決着を付けたかった。


「ん~~~……まっ、確かにちっと消化不良なとこはあっけど。マジで嬉しかったぜ。そんだけ、ぶっ倒れてでも俺と戦おうと思ってくれてよ」


「……あなたとの、戦いが……楽しかったから」


「なっはっは!!!! そりゃ俺もだぜ。マジで楽しかったぜ、ステラ」


「私も、心の底から楽しかったです、イシュド君……また、いつか機会があれば、今日の続きをしましょう」


「おぅよ!!!」


二人を拳を突き合わせ、子供らしい笑みを浮かべ合った。

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