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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第228話 どういう差?

「珍しいね、イシュドが止めないなんて」


「そうか? ぶっちゃけいつもの喧嘩なんだし、そんな派手に殺し合ったりしないだろ」


「「「…………」」」


ミシェラは当然の様に刃引きしてない双剣を振りかざし、フィリップも仕方ないとはいえ、刃引きしてない短剣で対応している。


加えて、二人ともスキルを使用しており、なんなら魔力まで思いっきり使用している。


留学してからイシュドたちと関わるようになったフレアたちとしては、あれが派手な殺し合いでなければなんなのか? といった疑問を抱かずにはいられなかった。


「派手に殺し合い、か…………ねぇ、イシュド」


「あん? なんだ、アドレアス」


「仮に二人が万全の状態で、本気で戦えばどちらが勝つと思う」


「んなの、今年の激闘祭で結果は出ただろ」


二人は激闘祭の準決勝で激突し、見事フィリップが勝利を収めた。


「それはもう何十日も前の話じゃないか。今の二人の話だよ」


「今の二人が本気ねぇ~~~……」


激闘祭の準決勝が行われたのは、既に何か月も前の話。

あれからミシェラは更に本気で、フィリップはなんとなく成長し続けた。


「…………………………三対七で、フィリップなんじゃねぇの」


「ふむ……それは、どうしてでしょうか」


「なんでそういう結論に至ったのか、気になるわね」


イブキ、そして留学してからミシェラと仲良くなったヘレナがイシュドの出した答えに大なり小なり疑問を持った。


二人ともフィリップがガルフやミシェラ、自分たちの様に本気で上を目指している訳ではないにもかかわらず、同世代の中で頭二つ三つ抜けた戦闘力を有していることは理解している。


だが、それはそれとして、同世代の中で頭二つ三つ抜けた戦闘力を有しているのはミシェラも同じ。


四対六までならまだ理解出来たが、三対七と言われては、どうしても納得出来る要素を聞きたくなった。


「フィリップは……何だかんだ俺らが行ってる訓練に付いてきて、基礎体力、身体能力もがっつり身に付いてきた。んで、俺らと戦う中で、各種武器の……基礎扱い? 的なのを覚えた」


「……それは、ミシェラも同じではないの?」


「覚えてはいるだろうな。ただ、咄嗟の対応はフィリップの方が上手い。あいつが普段、どういう事考えながら訓練してるのかは知らねぇけどな」


当然ながら、フィリップはイシュドとタイマンの模擬戦を行うことがある。

イシュドは扱う武器をコロコロと変えるが、基本的にはお気に入りの戦斧を使うことが多い。


その戦斧を使って模擬戦を行っている時、偶にこちらの動きを見透かしているかのように先を読み、あと一歩で……と、ヒヤッとする反撃を行っていた。


「後は、フィリップの方が考え方が柔軟なんだよ。特に勝ち方には拘らない。本気で戦る、勝とうとするなら、死にはしないけど即効性の毒霧でもぶちかましそうだな」


「そ、それは……どうなのでしょうか」


「悪い悪ぃ、今のはちょっと例えが悪かったな。とにかく、勝つためなら反則じゃない範囲内で上手く戦うんだよ。それが良いか悪いかってのは……貴族って立場を考えれば良くねぇんだろうな。めんどくせぇ価値観だけど」


それは伯爵家の令息であるお前が言ってしまって良いのか? というツッコミを誰も入れなかった。


「んで、フィリップはそれが出来る。悩まずとも出来る。それがフィリップにはあって、デカパイにはねぇ強味だ」


「身体能力で大きな差があるようには思えない。それ以外の部分に差がある……だからこその、三対七ということね」


「概ねそんな感じだな。つっても、三対七ってのは俺個人の考えだ。実際どうなるかは解らん。ミシェラだってザ・貴族令嬢な雰囲気気取ってるくせに、泥臭いガッツを見せる時があるしな」


イシュドは決して差別してない。

友人とクソ口うるさいバカパイだからと、その差で三対七と答えた訳ではない。


ただ、冷静に……二人の実力を知っている戦闘者として、二人が本気で戦った時の勝率を答えた。


「……つまり、三対七という差はもしかしたら一生埋まらないかもしれない、という事だね」


「っ、アドレアス様、それはどういう「戦闘以外の部分に差があるから、ということでしょうか?」っ!? ふ、フレア様?」


一生、差が埋まらないというのはどういう事かと、アドレスに尋ねようとしたヘレナだったが、その理由をフレアが見事言い当てた。


(ほ~~ん……このプレンセスパイ、意外と解ってんなじゃねぇか)


速攻で差が埋まらないかもしれない理由を言い当てたフレアを見て、イシュドの中で若干興味ゲージが増した。


「多分ね…………だよね、イシュド」


「お前なぁ……もうちょい自分の考えに自信持てよ、クソ王子」


「いやぁ~~、やっぱりイシュドが肯定してくれた方が自信が持てるというか」


「「…………」」


クソ王子と呼ばれたことにアドレアス本人は全く気にしてないが、フレアという王女に使える騎士候補のルドラとヘレナは、イシュドに対して何とも言えない視線を向けるも、本人は気にせず埋まらない理由を語り始めた。


「ここぞというタイミングで、完璧に読み当ててカウンターをぶちかましてくる。反則じゃなけば、どういった行動も取れる。そういった部分は、デカパイがこの先どれだけ技術を磨こうが、根っこが変わらねぇと追い付けない部分だ」


「それは…………確かに難しい問題ですね」


「だろ。なまじ、別にあいつの根っこが親の権力をしゃぶってる様なクソボンボン共とは違ぇからな。変える必要がねぇっちゃねぇんだよな」


イシュドにしては、珍しくミシェラに対して棘がない評価。

ただ……ミシェラと喋るメンバーがいる前ということもあり、イシュドはもう一つ問題と言えば問題であろう部分を口にしなかった。


「あっ、そろそろ動くな」


優しさからか、めんどくささからか、結局もう一つの問題については一切触れなかった。


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