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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第227話 どっちが不利?

「そっちはそっちで、おっかねぇ相手と戦ってきたって訳か」


「……お互い様でしょう」


普段のミシェラであれば、実際にアラクネが強敵だったこともあって「当然ですわ!!!」と勝ち誇った表情を浮かべるところだが、やけにあっさりとお互い様であると口にした。


(私たちの方が討伐に苦労したと思っていましたけれど、ほんの少しの間とはいえ、この四人が動けない圧を放つ個体…………とても勝ち誇れませんわ)


初めてアラクネというモンスターと対峙した際、ルドラたちも含めてその不気味な姿に妙な圧を感じたものの、戦闘が始まってからも動けなくなるということはなかった。


だが、ガルフたちは怒号によって動きを止められたという、実質的な敗北宣告をされた状態から見事逆転を果たした。


「? ミシェラ……」


「なんですの」


「変なもんで食ったのか? やけに殊勝な態度じゃねぇか」


「……良いですわ。その喧嘩、勝ってあげますわ」


「っ!? ぅおい!! 待て待て待て、んなつもりねぇっての!!!!」


(んーーー……眼がマジだな)


ここで自分が小バカにしてある意味落ち着かせようとしても無意味だと判断し、イシュドはガルフたちに一旦下がろうとジェスチャーを送る。


結果、いきなりミシェラとフィリップの模擬戦がスタートした。



(おいおい! イシュドもガルフも止めてくれねぇのかよ!!!!!?????)


本当にミシェラとの模擬戦がスタートしてしまい、ひとまずフィリップは短剣を取り出し、ミシェラからの攻撃に対応するしかなかった。


「シッ!!! フッ、刃ッ!!!!!!」


「ッ! ん、の、危ねぇじゃ、ねぇか!!!」


「試合なのだから、当然でしょう!!!!」


「試合なのかよ!!!!????」


いきなり始まったということもあり、木製の短剣を持っていなかったため、仕方なく刃引きされてない普通の短剣を取り出したフィリップだったが、せいぜい模擬戦の域を出るような戦いはしないだろうと思っていた。


だが、仕掛けてきた本人が試合と言えば試合。

当然の様にミシェラも刃引きされていない、ガチの双剣を使っているため、当たれば普通に流血。


(さっきまでイシュドに三人纏めてボコボコにされてたからか、ストレス溜まってんのか?)


自分の「変なもん食ったのか?」だけで怒りが爆発したとは思いたくないフィリップ。


とにかく、勝負は勝負……試合は試合。

他のメンバーほど強さに貪欲ではないフィリップだが、負けるのはそれはそれでと思ってしまう。


なにより……面倒だからという理由で適当に終わらせようとすれば、その意図を見抜かれたミシェラに胸倉を掴まれて怒鳴られる未来が目に見えている。


(そういえば、こいつ……さっきまで、ルドラとヘレナの三人でとはいえ、イシュドと戦ってたんだよなぁ…………)


冷静に双剣から繰り出される乱撃刃を弾き、いなし躱しながら、冷静に現在のミシェラのコンディションを見極める。


「試合中に考え事、とは! 随分、余裕ですわね!!」


(ついでに、ストレスが爆発したせいか、ちょっと剣筋が、荒いか?)


元々イシュドとの戦闘終わりによって体力、魔力を大きく消費していた。

依頼から戻って来た四人の話を聞いていた時間で回復する体力は微々たるものであり、そこに加えて怒りで剣筋がやや粗くなっているとなれば、戦況は自身に傾いていると判断。


(ん? そういえば………………クソが!! 俺も帰って来たばっかりじゃねぇか!!!!)


戦闘を終えたばかりではないとはいえ、フィリップはガルフたちと共に走って王都へと戻って来た。

そしてそのまま休憩せずに学園へ向かい、バイロンに報告。


体力を消費しているのはミシェラだけではなく、フィリップも同じだった。

寧ろ、体を動かしていたとはいえ、戦闘を行っていなかったフィリップよりも、先程まで三人でイシュドに挑んでいたミシェラの方が体は動く。


(中々に、クソったれな、状況だな!!)


自分が明確に勝っている部分は、魔力量の差だと判断。


(堅く、堅くいかせてもらうぜ)


フィリップは下手に動き回ることを止め、ミシェラの攻撃を捌いて捌いて捌きまくることに専念。


「ッ!! ふっ!!!」


(チっ!! この野郎、ストレスが爆発して、頭の中怒り一色じゃ、なかったのかよ!!)


フィリップが守りに専念しようとしたことを察知し、ミシェラは直ぐに魔力による斬撃刃を織り交ぜながら攻め始めた。


試合開始時の魔力量がマックスではないことを考えれば、逆に魔力切れを早める選択となる。

だが、ミシェラはきっちり……ハッキリと覚えている。

この目の前のちゃらんぽらんな男に、今年の激闘祭準決勝で負けてしまったことを。


それ以降も、イシュドたちが訓練を行う時は、常にフィリップも一緒に訓練を行っていた。

ちゃらんぽらんで、二大ノット・オブ・ノット紳士の一人。

公爵家の令息としては色々とあり得ないツッコミ要素はあれど……イシュドという同世代の青年と出会ってから、変わった部分は間違いなくある。


だからこそ、ミシェラは一旦守備に専念しようとしたフィリップに対し、ムキになって斬撃だけで倒そうとするのではなく、確実に倒す為にストレスが爆発させつつも冷静さだけは失わずに戦っていた。


(っ!! チッ! ……クソが……………………しゃあねぇか)


ちゃらんぽらん、ノット・オブ・ノット紳士。

確かにフィリップを表すには正しい表現である。


ただ…………戦闘が関わってくると、フィリップは広い視野を持ち、見かけによらない冷静さを持ち始める。


心の中で悪態を突く回数が増えた。

つまり、自身の視野が狭くなり始めている、苛立ちで今度は自分が冷静さを失いかけていると自覚。


(……とりま、勝つか)


自覚した瞬間、明らかに先程までの目と異なり、勝利への姿勢が生まれた。

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