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第161話 知的に見える

「相変わらずあの人は面倒な事考えてんな~~~」


何故ミシェラが強烈なデコピンを食らったのか。


放課後の訓練中、諸々の内容を聞いたフィリップはとりあえず爆笑した後、軽く呆れた顔をしながらそう言った。


「面倒とはなんですの、面倒とは!!!」


「だってよ~~、あの人昔らか俺にちょくちょく絡んできて、進むべき道に戻りなさい、みたいな事伝えてきてたんだぜ。相変わらず面倒な事してる、考えてるって思うだろ」


「……あなたへの声掛けに関しては、非常に賛成ですわ」


嫉妬もあってか、令嬢がしていい顔ではない顔をしながら賛同するミシェラ。


「どこの国も、抱える問題は似たり寄ったり、ということですね」


「大和でも、こういった問題は珍しくないのですか?」


「恥ずかしながら、珍しいとは断言出来ません」


イブキとしても、放っておいて良いと思える問題ではなかった。


「んで、イシュドはまた良い案を出した訳だ」


「なんでそうなるんだよ」


「だって、イシュドってクリスティールパイセンの事嫌いじゃないだろ」


「…………」


「あなた!!! クリスティールお姉様のどこに不満がありますの!!!???」


(……ダル)


どう答えるのが正解なのか迷っていると、クリスティール大好き娘からの理不尽なクレームが飛んできた。


「っ!!!??? な、何をするんですの!!!」


「うっせ、黙れクソデカパイ縦ロール」


ただただムカついたイシュド。

距離的にデコピンすることは不可能だったので、魔力を指先に纏わせ、デコピンで発射。


殺傷能力は低くしているが、固さを考えれば……内出血する可能性は十分にあった。


「別に大した提案はしてねぇよ。良い方向に変えたり、世の中の不正を全部正すのはどうせ無理だから、自分と同じ正しきを目指そうとする人増やせば良いんじゃないかって伝えたんだよ」


「ほ~~~~~ん。なんつーか、思い付きそうで思い付かない真理って感じだな」


「……ねぇイシュド。僕は政治とかそういうのが全く解らないからあれなんだけど、どうしてクリスティール先輩が目指す理想? は絶対に実現しないの」


「簡単な話だ。もう世の中には思いっきり貴族と平民っていう差別を助長しやすい立場が整ってんだろ。後は…………それ以前の問題で、俺らに心っていう感情……心っていう感情ってのは言い方がおかしいな。とりあえず、そういうのがあるからだ」


つまり、廃人になるのが正解と?

という事をイシュドは言いたい訳ではない。


「あぁ~~~~~…………はいはい、そういう事ね……ザ・根本的な問題……問題って言って良いのか?」


「言っちゃ駄目だろうな。けど、真理っぽいだろ」


「真理っぽいな~~」


イシュドの「え、何その考え?」に対して高い理解力があるフィリップは直ぐに納得、把握するも他三人は「「「??????」」」状態になっていた。


「わ、解り易く説明しなさい!!!!!」


「嫌に決まってんだろ、バ~~~~~~カ。ちっとは自分の頭で考えろ。そんなんだから胸にしか栄養がいかねぇんだよ」


「なっ!!!! む、胸以外にもちゃんと栄養は行ってますわ!!!!!!」


巨乳を越えて爆乳なのを自覚しているからか、胸に栄養がいってることに関しては否定しなかった。


「こ、心や感情、か。難しい話だね」


「考えに考えて、深く考え過ぎてもどうせ正解なんてねぇ話だからな」


結局解かる訳がないと語る割には、正解らしい正解を知ってる様な口ぶりをするイシュド。


そんなイシュドに対し……基本的に友人ではあるが、非常に強い敬意を持っているガルフと、よくイシュドと関わる三人の中で……一番そういった気持ちを持っているであろうイブキは、何故かいつもよりイシュドが知的に見えた。


「俺、イシュドは何だかんだでカリスマ性があると思うけどな」


「おいおい、俺がカリスマって面してるかよ」


「激闘祭で登場する時、結界をぶっ壊しながら着地しただろ。もう、あのパフォーマンスだけでカリスマ感満載じゃね?」


フィリップの突然の評価に納得はしないものの、一応ぶっ飛んだパフォーマンスを行った自覚はあった。


「フィリップ、本当にこの男に人が付いてくると思ってますの?」


「強さってのは、ある意味正義だろ。そんなら、何だかんだで付いてきそうな奴は一定数いそうじゃん。それに、イシュドはお前から見て粗暴かもしれねぇけど、理不尽な暴力とか悪意は振りまいてねぇじゃん」


「…………」


訓練前に一回デコピン、先程魔力の弾丸をデコピン発射されて額にダメージを食らわせられた身としては……文句を言いたい。


しかし、自分以外の者に理不尽な暴力や悪意を振りまいてる光景は見たことがなく……一応、黙った。


「お前らからどう見えてるのかはしらねぇけど、多少でもそれがあるなら、有り難いっちゃ有り難てぇな」


「……イシュドでも、そういった思いはあるのですね」


「常日頃から欲しいと思ってる訳じゃねぇけど、卒業して実家に戻れば遊撃騎士? 的な感じでモンスター共と戦うからな。その時、上手く部下になる騎士や魔術師たちを率いられるに越したことはねぇ」


将来的な事を考えれば、イシュドは非常に至極真っ当な考えを口にした。


しかし、その発言を聞いたフィリップとミシェラの二人が、顎が外れそうなほど大きな口を開いて驚いていた。


「お前ら、なんつー顔してんだ。面白過ぎて絵画にしたくなるぜ」


「そいつは、止めてくれると、嬉しいな」


「ぜ、絶対に阻止しますわ」


「あっそ。んで、なんでアホみたいな顔して驚いてたんだよ」


イシュドとしては、特に驚かれる様な発言をしたつもりは一切なかった。


「い、いやぁ~~~。だってよ、俺、イシュドは実家に帰ったら基本的に一人でモンスターと戦い続けるのかと思ってたからよ」


「私も同じですわ。部下なんて居たら、思いっきり暴れられなくて邪魔になると考えているとばかり思ってましたわ」


「……狂戦士なだけに、その意見は否定出来ねぇな」


珍しくミシェラの失礼な発言に否定出来なかったイシュド。


「けどな、レグラ家に仕える騎士や魔術師が、並じゃねぇのはお前らも知ってるだろ。お前らの実家に仕えてる連中とは訳が違うんだ。んな心配する必要ねぇんだよ」


「っ……そうでしたわね。ふんっ!!」


家に仕えている騎士たちを大切に思っているミシェラとしては聞き捨てならない言葉だったものの、レグラ家に訪れた際に大海を知ってしまったため、反論するだけ無駄だと理解しており……ツンとした態度を取るしかなかった。

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