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第131話 あくまで憶測

「イシュド君。この辺りには、あぁいったモンスターが良く、現れるのかい」


ガルフと同じく、ギリギリ膝を付かずに耐え抜いたアドレアス。


「いや、この辺じゃあ、滅多に現れねぇ個体だ。この辺りだったら……せいぜい現れても、この前倒したケルベロス? 強い個体つったら、あれぐらいだ」


ケルベロスといった名前のモンスターがどういったモンスターなのか、アドレアスとディムナも知っている。


故に、口ぶりからして一人で三つ首の番犬を倒したイシュドの実力に……再度震えずにはいられなかった。


(当然と言えば……当然なのだろうな。実際にケルベロスと対峙したことはないが、おそらく、イシュドが今しがた討伐したあのオーガの方が強い)


奥歯を噛みしめながらも、ディムナは冷静に……目の前で起こった現実を受け入れるしかなかった。


「なんにしても、昨日の今日でぶっ倒せたのは幸いだったな」


「半年も経てば、イシュドがガチのガチで戦っても、半々みたいな相手だったてのを考えたら、確かに今日倒せて良かったんだろうけど…………なぁ、イシュド。仮にあのオーガ、剣鬼だったか? あいつの斬撃が何もない空間に放たれてたら、どうなってた」


「そりゃフィリップ、バッサリとそこら辺の木々だけじゃなく地面を……大地を斬ってただろうな。言っとくが、お前らが束になっても防げないぜ」


「んな事ぐらい解ってるっての。つか、仮に自分に向けられたら全力で避ける事しか考えねぇよ」


「はっはっは!!!! まっ、それが一番だろうな」


防ごうと、相殺しようと動くのではなく、全力で回避しようとするのが一番。


そう口にした人物が種類は違えと、分類的には同じ刀を振るって対処したので、少し説得力がないものの……現時点でガルフたちの中で一番最大攻撃力と防御力があるダスティンであっても、先程剣鬼が放った斬撃を見て……真正面から対処しようとは思えなかった。


「それにしてもイシュドは通常の刀だけではなく、太郎太刀までお使いになるのですね」


「普段は使わねぇけどな。でも、デカブツを相手にしたりするときには、こっちの方が良い場合もある。まさに、一刀両断って感じでぶった斬れるしな」


相変わらず大和出身の武器を好んでいると解るイシュドの表情にほっこりするも……イブキは直ぐに先程剣鬼が放った斬撃を思い浮かべ……険しさを浮かべる。


(あのオーガ……剣鬼、でしたか。あの一太刀は…………完全に、私の太刀を上回っていたっ!!!)


モンスターには、色々と理解不能な点が多い。


剣鬼は剣鬼という存在に進化するまでは、二振りの大剣を使用していた。

大剣という両手武器を片手で、ロングソードの様に使用する……これは、オーガが人ならざる腕力を有しているからと、まだ納得出来る。


しかし、オーガが剣鬼という存在に進化すると同時に、イシュドが放った斧技、狼牙によって切断された二振りの大剣が一つに混ざり合い……野太刀へと変化した。


「それにしても……モンスターが上位の存在へと進化するのはまだ解りますけど、武器まで変化するとは」


「んだよ、知らなかったのか、デカパイ?」


「知識としては知ってましたわよ。ですが、実際にこの眼で見るのは初めてですわ」


彼等にとって、武器の融合どころかモンスターの進化を見るのも初めてだった。


「それに……のオーガ、剣鬼という存在に進化するまでは、大剣を使用していたのでしょう。にも拘らず、あの大きな刀の振るい方…………明らかに初めて振るうとは思えませんわ」


「私も同じ事を、考えてしました。結果として受け止めるべき事なのでしょうが、それでも……本当に摩訶不思議な変化です」


「ふむ…………イシュド君、君ならもしかしてその変化を、ある程度言葉に出来るんじゃないかな?」


「おい待てこら。なんでいきなりそうなるんだよ」


俺は物知り博士じゃねぇんだとツッコみたいイシュド。


しかし、剣鬼の死体回収を終えたイシュドに向けられる視線は……全員、アドレアスの言葉に同意、納得するものだった。


「イシュド兄さんなら、そういった事を考察し、言葉にするのも不可能ではないかと」


「リュネぇ…………はぁ~~~。とりあえず歩くぞ。俺の考えを説明はしてやるが、モンスターと遭遇したらそっちに集中しろよ」


剣鬼との戦闘、合計で五分程度のものであったため、まだまだ屋敷に戻るまでガルフたちが野性の獣と戦り合える時間は十分にある。


「俺たちとモンスターは、似た点もあるが、似てない点もある。その似てない点に……俺は所有する武器の変化が関係してるんじゃないかと思ってる」


「似てない、点というのが具体的にどういった点でしょうか」


「一番、スタミナとかそこら辺じゃないですか? 俺らも鍛えたりレベルを上げれば自然と上がりますけど、あいつらは生まれたての時からそこら辺が俺らとは比べ物にならないらしい。会長パイセンだって、そんなモンスターの理不尽的なスタミナに苦しめられたことはあるんじゃないっすか?」


「そうですね……確かに苦い経験があります。イシュド君も同じですか?」


「俺はそうなったらそうなったらで、燃えてくる状況って思っちゃうんで、別に苦い経験って感じではないっすね」


やっぱりこいつはおかしいと思いながらも、彼女たちはそこでいちいちツッコまず、話の続きを聞く。


「スタミナっていう、生物としての根本的な強さ? 身体能力もそうか。そこら辺が違う」


「再生のスキルなんざ持ってなくても、再生する化け物もいるしな」


「そういうこった。俺たちと似てるようで、俺たちと似てない部分も多々ある」


「あなたは、そこが先程起こった現象の理由、と考えてますのね」


「一応な。後、さっきの剣鬼に限っては、あいつは死の淵で……俺に勝てる力を望んだ…………かもしれねぇ」


自信など欠片もない。

ただ、本当に直感的に感じた、イシュドの妄想である。


「その結果が、新しい大剣ではなく、野太刀だったと」


「あの元オーガが侍、刀、野太刀っていう存在を知ってたのかは知らねぇけどな」


全てがイシュドの憶測。


しかし、オーガから進化した剣鬼と実際に獲物を、刀をぶつけ合ったのはイシュドしかおらず……その説明には、妙な説得力があった。

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