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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第104話 真面目に動けない

「よぅ、ロベルト爺ちゃんの実力はどうよ? 半端ねぇだろ」


「半端ないと、言うか……なんて言えば良いんだろう、フィリップ」


「……あれじゃねぇか? 絶対に傷付けられない動く鉱石と戦ってる感じ?」


「分厚い分厚い……圧倒的な差、という言葉ですら、生温く感じましたわ」


彼等は最後の最後まで、体力と魔力が力尽きる時まで諦めず、亜神と呼べる男に挑み続けた……どう考えても、並ではない精神力や根性があるのは間違いない。


それでも、いざ振り返ってみると……あれは本当に人なのか? といった類の感想しか出てこない。


「イシュドがあの方を亜神、と評する理由が良く解りました」


「でしょ~~~、会長パイセン。俺もロベルト爺ちゃんが歳で死ぬ前に良い勝負が出来るぐらいまで強くなりたいんだけどな~~~」


天才、鬼才、怪物、超人と呼ばれる者たちですら足を踏み入れられない領域に突入しているロベルトではあるが、種族的には純粋な人族。


そのため、どれだけ健康的に生きたとしても、限度がある。

レベルや職業による補正で長寿と呼べる年齢になっても動くことは出来るが、減っていく残りの寿命まではどうしようもない。


(……イシュド君なら出来ますよ、何て簡単に言えませんね)


本気で戦うイシュドの姿を見た。

激闘祭で自分たちと戦った時のお遊びとは違う……正真正銘の本気。


だが、そんなイシュドが放った渾身の一撃でさえ、ほんの僅かな傷を与えるにしか至らなかった。


「俺としては、あの方が……王家などに恨みを持っていない事に対しての安堵が強い、な」


「あれっすか、もしかして下剋上っつ~か、反乱の心配ってことか」


「言葉を隠さなければ、そういう事になるな」


無礼な事を言っている自覚はある。

しかし、ダスティンはイシュドに対して言葉を隠す必要はないと理解していた。


「だ~いじょうぶだって、マジで本当に。そんな反乱とかしたら、後の統治? とかがクソ面倒じゃん」


「……ふっふふ、それもそうか」


まだ長い間とはいえないが、レグラ家の人間たちと関わったことで、彼らがどういった意志の元、動いているのか解かってきていた。


(権力という力が下らないとは思えないが、それでも……彼等は殆ど興味を示さず、絶対的な個の力にしか興味がないのだろうな)


ほっと一安心……するのはダサい。

そう思ってもおかしくないが、やはり貴族の一人として内乱など一番忌避すべき事。


それがおそらく起こらないだろうと解った。

ダスティンだけではなく、フィリップたちが安堵するのも、無理はなかった。


「さて、と……もう丁度良い時間みてぇだし、とりあえずシャワーを…………って、無理か」


「悪いな、イシュド。マジでちょっと、動くのがきちぃっつーか……体を洗ったりしてたら、本当にそのまんま寝ちまう」


先日の訓練後ですら、湯船に入れば速攻で寝てしまう自信があったフィリップ。


本日は昼過ぎまで同じくメインではない武器を使った試合を繰り返し行ってきたが……ロベルトとの試合? では柄にもなく自身の全てと使い尽くして戦った。

そのため、先日よりも疲労の色は濃く、強烈な筋肉痛に襲われている感覚が続いていた。


「は、はっはっは。それもそうか。ぶっちゃけ、俺も体の節々が痛いし……皆も、フィリップと同じか?」


「恥ずかしながら、同じですわね」


「私も、申し訳ありませんが、今湯を浴びてしまうと……」


「オッケーオッケー。んじゃ、今日は夕食をここで食べちまうか。ちょっと待ってろ、料理長たちに行ってくるわ」


本人が口にした通り、体の節々に痛みが残っているものの、一応歩くことは出来る。


イシュドは自分の体を引きずりながら、厨房へと向かった。



「お待たせしました。どんどん運んできますので」


結局厨房に辿り着くまでにメディと遭遇し、事の内容を伝えるとメディはイシュドを抱えてダッシュで特別訓練場まで運び、その後再びダッシュで厨房へと向かい、シェフたちにイシュドたちの分は特別訓練場へと伝えた。


「あぁ~~~、美味ぇ~~~~。やっぱ、食欲には、敵わねぇ~な~~~」


「フィリップの、言う通りだね」


全員食べ方が少々ぎこちないものの、全員減りに減りまくった腹を満たす為に、床に置かれている料理へと手を伸ばす。


「…………」


「何しかめっ面浮かべてんだ、デカパイ。苦手な野菜でもあったか?」


「お子様扱いは止めなさい! ただ、床で食べるようなこういった真似は……」


「狩りで実戦訓練してる時の昼飯とか、大体こんな感じだろ。何を今更恥ずかしがってんだよ」


貴族の令息、令嬢として生活していれば、床に座って料理を食べるなど、まず体験しない。


「それはそれ、これはこれですわ!! ここは野営地ではないのですわよ!!」


「ふ~~~~ん? でも、騎士として活動するようになれば、野営することなんてザラなんじゃねぇの? 今のうちに慣れといて、損はねぇと思うけどな。なぁ、会長パイセン」


「えぇ……そうですね」


「ぐっ!!」


クリスティールお姉様に同意を求めるのは卑怯だ!!!! という心の声が思いっきり顔に表れている。


「こういった食べ方に慣れても、貴族としての品位を忘れなければ、問題ありません」


「大事なのは根っこの部分って事だな。流石会長パイセン。強いだけじゃないねぇな」


「……ありがとう」


慰めている、煽りではない事は、解っている。

それでも……イシュドが強いという言葉に、どういった意味を含ませているのかは、解る。


(イシュドは、将来楽しみな存在の中では強い方、と思ってるのでしょう…………まずは、彼と同じステージに立たなければ、話になりませんね)


二次職と三次職、その差はレベルによるものだけではない。


「そういえばイシュド。俺達は、いつ頃周辺のモンスターと戦うのだ」


「早く実践したい感じっすか、ダスティンパイセン」


「正直なところ、その気持ち自体はある。ただ、訓練を疎かにして実戦に臨むなど愚の骨頂。それは理解している」


「はは! さすがっすね。まぁ、そこら辺もきっちり考え解いてるんで、安心しといてくれ」


にっひっひ……と笑うイシュドの表情に、肩を震わせたのは決してダスティン一人だけではなかった。

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