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人間兵器

作者: atfc

「陛下、召喚魔法を提言します」


宮廷魔導士が力説する。異世界から現れた英雄が世界を救うなど伝説でしかないが、不思議な異人の記録はある。森の民の話では我らの祖が異世界にあるとか。召喚というのも不可能ではなかろう。だが……。



「陛下、邪国との戦争は苛烈を極め兵も損耗しております。長くは持ちませぬ」


将軍も賛同する。残った兵では国境を閉ざすことしかできぬ。遠征軍を出す金も、資材も、士気もないのだ。されど……。



「陛下、候補者も見つかっております」


遠見の水晶に異世界人が映し出される。なるほど、説明通りだ。この者を召喚できれば成功の見込みはあるだろう。しかし……。



「陛下、ご決断を」


大臣たちに逼られ承諾してしまった。無関係な異世界人には迷惑な話であろう。せめてもの償いとして、我が国の歴史書に英雄として名を刻もう。




「あのう、ここはどこですか?」


うーむ、困った。言葉が通じない。聞いたことのない言葉だし装飾や建築も見たことがない。着の身着のままで、持ち物といえばポケットの中に僅かばかりしかない。困ったものだ。


言葉はわからないが歓迎されていることはわかる。おそらくここは宮殿で、さっきから握手とハグを交わしているのはこの国の王侯貴族や将軍たちであろう。なぜここまで歓迎されているのか分からなかったが、大聖堂に案内され合点がいった。どうやらここは異世界で私は召喚されたらしい。彼らには異世界人が英雄となり世界を救うという伝説があるようだ。壁画や絵巻物、神官の身振り手振りでそう結論付けた。


しかし私に英雄は務まりそうもない。早々に辞退したいのだが言葉が通じないのではそれも簡単ではない。うまく説明できぬ間に食事会が開かれてしまった。まあ、しばらく満足な食事がとれていなかったのでありがたい。食事中、代わるがわる会いに来る人たちに言葉の通じるものが居ないかと話しかけてみたが、誰にも通じてはいないようだ。だがボディランゲージは通じた。水瓶を指差しカップで飲む仕草をすると給仕が水を注いでくれた。


「ありがとう」


そういうと私はポケットに残った最後の風邪薬を口に入れ、水で流し込んだ。




「陛下、作戦は成功しました」


参謀によると邪国は流行り病により国が疲弊し、戦争どころではなくなり我が国に有利な条件で終戦した。


伝染病に罹った異世界人を邪国に召喚するとはなんともはや業が深い……。

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