失語症状のリハビリ・原稿用紙1枚+αで何が書けるか(三題話/49話目)
※脳出血後の失語症状リハビリとして、一時間(+α)に400字詰め原稿用紙1枚(+α枚)で手書きしていたものです。
リハビリは現在も継続中です。
2020年 2月26日 執筆分(テキスト化中に修正あり)
(49話目)『些細なこと』
※三題:ウィルス、問題児、虫
特殊なウィルスが蔓延してから、すでに一年が過ぎていた。
直ぐに終わると言われて、春から一年。もう終わるだろうと言われた秋からなら半年。今だに対策がわからないまま、現場にいた多くの医師たちも命を落としていた。
「ほら見ろ。だから、最後まで私に任せろと言ったのだ」
バイオ化学の問題児であるP博士が、ふんと鼻を鳴らした。
「君が勝手に突っ走った挙げ句、希少な虫を絶滅させてしまったからだよ。その上、ワクチン開発も失敗した。どんなひどいことをしたのか、わかっているのか?」
大統領が顔をしかめたが、博士は全く動じなかった。
「途中で俺をクビにしておいて、何を言っているのやら。まあ確かに、あの虫には申し訳ないことをした。だが、地球を救うことを考えれば、些細なことだった。貴方は大統領なのだろう? ならば、地球規模で考えて頂きたい」
「地球規模で、か……」
確かに、地球規模で考えれば、甘んじて受けるべきだろう。改心した大統領は、P博士を再雇用した。
そして。博士の発明により自然は回復し、人類は絶滅した。
彼にとって人類は、全滅してもかまわない、厄介で些細な生物に過ぎなかったのだった。
(終わり)