第18話:希望
薄暗い通路に明るい光が差し込む。
「もうすぐ出口だ」
亮太が声を上げると、みんなに笑顔がこぼれる。先頭にいる和磨が階段に一歩踏み出した時、後ろから風を切る音が聞こえてきた。
「誰だ」
みんな目を凝らし通路の奥を見続ける。
「イーターか」
こうちゃんがそう言う。そこにはさっき倒したはずのイーターが傷だらけの姿でいた。やはり、梅干を貫かない限り復活するのか。すぐに、みんな全速力で階段を登り始めた。
「たくさんいすぎだろ」
傷だらけのイーターのすぐ後ろに、数匹のイーターがいた。もう、銃弾は残ってない上、あんなのと戦う体力は残っていない。和司はバッグからビンを取り出し床に叩きつけた。バリンとビンの割れる音が通路に響く。イーターはこっちに走ってきた。
先頭の和磨は研究所を出る直前だったが、最後尾の和司の後ろにはイーターが来ている。
「みんな飛び出したら伏せろ!」
和司が叫び、自分の後ろに火炎瓶を投げつけた。その瞬間激しい炎と爆風がイーターを呑み込んだ。爆発により、和司の前にいる亮太とリョスケはテニスコートまで吹き飛ばされた。
「痛ってぇ~」
テニスコートで和司が頭を押さえる。すぐにこうちゃん達が駆けつけた。
「今の爆発は何だ?ただの火炎瓶にしては爆発が大きすぎるぞ」
康太が聞いた。
「水素だよ。最初に水素を充満させて引火させたんだ」
和司が答える。
「そうか、いずれにしろ全て終わったな」
こうちゃんがそう言うと、みんな爆発で崩れた研究所の入り口を見続けていた。
その時、亮太の携帯が鳴った。
「もしもし、おっ純」
それは純からの電話だった。
「国外に行く準備が出来た」
小さな歓声が上がる。
「よし、行こう」
和磨の声を合図にみんな車に乗り込んだ。
「よし、浜松城目指していくか」
リョスケがそう言うと、和磨はアクセルを踏み込んだ。
星野はいない。だが誰もそのことは口にしなかった。
「夜明けだ」
和司が呟く。みんな東の空を見つめる。真っ直ぐな光が散らばって、僕達の心に束になって降り注ぐ。やっと手に入れた希望。もう放したりしない。
その五日後、星野はタイに流れ着いていた。発射されたロケットが途中で海に墜落したのだ。海に落ちる前に星野はロケットから脱出したから助かった。だが星野は自分がどこに流れ着いたのか分かっていなかった。なんであんな博打のようなことをしたのだろう。まあ、いい。命は無事だ。
「腹、減った」
よろよろした足取りで星野は立ち上がった。向こうに何か明かりがある。星野は明かりのある方へ向った。明かりの正体は小さな料理店だった。料理店の前に着いた。米が欲しい、米が。ドアノブに手を掛けた時、星野の体に異変が起きた。体中が熱いし、頭が痛む。そして・・・
注射の跡から米粒が溢れ出してきた。
第一部完結です。第二部は三月頃連載開始予定です。