第17話:脱出
「おい、みんなもっととばせ!」
走りながら和司が大声で叫ぶ。イーターは移動速度を上げてこっちに向ってくる。亮太はバッグからベレッタM92を取り出し、イーターに向けて発砲するが、走りながらのため狙いが定まらない。
「この先はT字路だ。二手に分かれるぞ」
康太がそう言うと、全員こくりと頷き分かれた。左の道には康太、こうちゃん、亮太が、右の道には和司、リョスケ、和磨、星野と分かれた。イーターは右の道へ進んだ。
「おい、こっちかよ」
和磨が言った。そのまま走っていくと広い部屋に出た。部屋には大きなモニターとたくさんの機械があった。モニターには「感染率90%」と映っていた。道理でラジオからニュースが流れなくなっていたのか。
「ここで戦うしかない」
リョスケはモスバーグM590、和司はM24SWSを構え、和磨は指にメリケンサックをはめた。星野は機械の陰でその様子を見続ける。
「本来、狙撃用なんだがこの状況じゃ仕方ないか」
和司は通路を走っているイーターに銃口を向けた。そしてイーターは部屋に入ってきた。
「これでも食らえ」
和司はスコープを覗き、引き金を引く。しかし銃弾が出てこない。
「あれっ?」
何度も引き金を引くが銃弾は出てこない。イーターは舌を伸ばしてきた。その直後、和司の視界からイーターはいなくなった。横を見るとリョスケが引き金を引いていた。リョスケの撃った散弾は和司に当たることなく、イーターに当たり、和司はなんとか助かった。
「大丈夫か?」
リョスケが心配した。
「ああ、おかげで何とか」
和司は答えた。イーターが体勢を立て直してきた。
「和司、硫酸入りおにぎりは?」
リョスケが聞いた。
「悪いが無い。おまけに俺のM24SWSは故障だか何だか知らないが、動かない」
くそっ、こんな時に。おまけに室内では火炎瓶も使えなかった。
「来るぞ」
和磨はそう言った。イーターはリョスケに襲い掛かる。リョスケは引き金を引き、至近距離で散弾をイーターに当てた。空中でイーターはバランスを崩し、床に落ちる。イーターの後ろにあるスクリーンの液晶画面が割れた。倒れたイーターの顔面目掛けて和磨は殴った。イーターはそのまま、壁に強くぶつかり、うめき声を上げる。リョスケは間髪入れずに、イーターに向けて計四発の散弾を浴びせた。
「死ね、死ね、死ね、死ね」
撃った散弾がイーターの体に当たる。
「これで、しばらくは立ち上がれないな」
リョスケは安心した。もう銃弾の残りは無かった。複数の足音が聞こえてくる。
「大丈夫か」
康太達が息切れを起こしながら聞いた。
「何とかね。でも銃弾は全て使い切った」
「それはこっちもさ」
見ると、みんな疲れきっている。
「早くここから出よう」
康太がそう言うと、みんな歩いて部屋を出て行った。
星野は部屋から出ずに機械の陰に隠れたままだった。そして、あるスイッチを見つけてしまった。
「緊急脱出装置」
星野は一人で考えた。このまま出るとみんなに殺される。でも、これでどこに脱出するかわからない。
「どうしよう。」
星野の頭にはみんなと過ごした日々が思い出された。
「やい、くそ星野、本当におにぎりだな」
「万年補欠プレイヤー」
「おい、またシカトか星野」
「死ね死ね死ね死ねくそおにぎり」
「何で生きてんだよ。早く死ね」
そうだみんなに殺されるのは決まっている。ならば少しの可能性に賭けよう。
星野がスイッチを押すと、横の壁が突然開いた。奥を覗くとそこにはロケットがあった。星野はすぐに乗り込み、発射スイッチを強く押した。
「何でこんなに心が寒いんだろう」
そう呟くとロケットは研究所から発射された。